真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第32話 視点変更~品川の日常~クルセイダーロード

 東京・品川。

 

 ここはメシア教徒が自分たちの聖地と設定している土地である。

 

 大破壊が起きる前。

 核ミサイルの熱線と爆風をやり過ごすため、彼らは一部の選ばれた信仰心の高い信者のみを選び出し。

 品川の地下街での集会と称し、避難を実行。

 

 そして核ミサイルの投下が成された後、彼らは行動を開始した。

 品川で生き残った他の人間で、メシア教徒でない者を聖絶したのだ。

 聖絶には毒ガスを使用し、誰一人として生き残らせなかった。

 

 その後浄化され、あらゆる意味でまっさらな土地になった品川で彼らは聖地に相応しいものを建設した。

 

 巨大な建築物・品川大聖堂を。

 

 この世のあらゆる宗教的建築物を上回るものを、という意識で作られた。

 

 その建設にはメシア教に救いを求めて来た新規入信者の労働力が使われ、一部研究中の悪魔の能力も使用された。

 結果、多大な尊い犠牲の上で、極めて短期間でその完成に漕ぎつける。

 

 選ばれしメシア教徒のみが住むことを許される、煌びやかな聖なる建物。

 それが品川大聖堂。

 

 そこで今、裁判が行われていた。

 

 ここは品川大聖堂「断罪の間」

 罪を犯したメシア教徒を裁く場所。

 

 

 赤い絨毯が敷かれた荘厳な場所で、メイガスの地位にいる白装束に身を包んだメシア教徒の男性が、目の前で正座をしている一般メシア教徒が身につける衣服……青と白基調で、赤い十字架の紋章がデザインされた服……通称メシア服を着た少年に冷徹な視線を投げかけている。

 そしてそのメイガスの隣には、テンプルナイトの制服を身に纏った少女が椅子に腰掛けていた。

 その少女は厳しい表情を少年に向けている。

 

 美しい少女であった。

 髪の毛は柔らかい長髪。モナリザの髪に近い雰囲気があった。

 

 キラキラと光を反射して輝いているように見える。

 

 スラリとした体形で、美の極致と言っていい姿。

 その顔つきは何処か中性的であった。

 胸のふくらみが無ければ、美少年でも通りそうな容貌であった。

 

 そして腰に鞘に納められた一振りの剣を吊るしている。

 

 この場に引き出されているこの少年は罪人で。

 その目の前に置かれた木製の小さい机の上には、証拠品として缶詰が置かれていた。

 

「……君は、この品川の共同体の備蓄庫に運び込まれようとした荷物から、この缶詰を抜き取った。これは神への奉仕に励む同胞たちの血肉となるべき聖なる糧だ。この罪は十罪のひとつ『盗みの罪』である」

 

 少年は絨毯の上で正座をし、メイガスの言葉に消え入りそうな声で答えた。

 

「申し訳ありません……。でも、妹が……今日、誕生日で……それなのに何も祝えないことが悲しくて……」

 

 少年は、妹の誕生日を祝うため。

 缶詰を1つ盗んだ。

 ビスケットの缶詰を。

 

「黙りなさい。それは理由にはならない。十罪は神がお決めになった『してはならぬこと』である。どんな理由があろうと許されることにはならない」

 

 メイガスは厳しく少年を断罪する。

 だが、そこに

 

「まあ、メイガス松浦さん。この少年は妹を喜ばせたいと思って罪を犯したのですよ」

 

 隣に控えて、この裁判を見守っていた少女が口を開いた。

 その表情は厳しかったが

 

「その思いは、十徳の精神である『愛情』でしょう。妹の喜ぶ顔を見たかったのです。その分を加味すべきではないでしょうか?」

 

 その声には慈悲が含まれている。

 その言葉にメイガスは

 

「そうですねクルセイダーロード様。仰る通り、それは十徳……神が人に願う在り方の1つです。ですので……」

 

 メイガスは少年に目を向け、宣告した。

 この裁判の判決を。

 

 それは……

 

「重度の労働奉仕3日。その苦しみの中、己の罪を反省し生まれ変わりなさい」

 

 少年はその判決に対し

 

「しっかりと務めさせていただきます!」

 

 額を床にこすり付け、罪の反省と、教団の慈悲への感謝の言葉を口にした。

 その後少年は、控えていた他のテンプルナイトたちに連れられ、この断罪の間より連れ出されていく。

 

 

 続いて。

 

 

 テンプルナイトたちに連れられて、その日の2人目の罪人が入って来る。

 それは先ほどと同じく、メシア服を身に着けた女で。

 若い女だった。

 

 女はガタガタと震えていた。

 

 そしてこの断罪の間に引き立てられた女は、彼女を連行して来たテンプルナイトたちに床に突き飛ばされた。

 崩れ落ちる若い女。

 

 そこにメイガスが厳しい言葉を投げ掛ける。

 

「お前の罪状は不倫。お前は夫とした男を裏切り、獣欲に身を任せた。これは伴侶への裏切りであると同時に、神の前で誓ったことを破る大罪である」

 

 その言葉に女は顔を上げ、震え声でこう言った。

 

「……後から本当の伴侶に出会ってしまったのです。人を愛することの何が悪いと言うのですか……? だから私はあの人に離婚を切り出して……」

 

 その瞬間

 

「……今、離婚と言いましたか?」

 

 メイガスの隣に座る少女……クルセイダーロードと呼ばれた少女が口を開いた。

 その声は、先ほどの少年に向けたものと違っていた。

 

 絶対零度に冷え切り、その視線はゴミを見る目で

 

「……メシア教の聖典には、離婚の規定は無いです。そんなことも知らないのですか」

 

 そしてクルセイダーロードはメイガスに目を向け

 

「今の言葉は十罪で最も重い罪……神を冒涜する罪……『涜神の罪』に該当します。それを加味なさい」

 

 そう言い放つ。

 メイガスは頷いた。

 

 その表情は同じように冷え切っていて

 

「不倫の罪は、慈悲深く斬首が通常。しかし、お前は己の罪を認め反省するどころか、神の法が書かれた書『聖典』を冒涜した。その罪の重さ、斬首では到底足りない」

 

 メイガスは冷酷に、女にその判決を言い渡した。

 それは

 

「お前への判決は凌遅(りょうち)刑。その罪を少しでも多く、お前のその穢れた肉体を削ぎ落すことで償え。その苦しみの中で、自分の罪と向き合うのだ」

 

 女はその判決に悲鳴を上げた。

 

「そんな……! 酷過ぎる! せめて殺して! 一思いに殺して下さいぃぃぃ!!」

 

 そんな女の悲鳴をかき消すように、テンプルナイトたちがやってきて。

 自殺防止用に拘束具を装着していく。

 猿轡をされ、手錠を嵌められる。

 

 女はそのまま、引き摺られるようにこの断罪の間を引っ立てられていった。

 

 クルセイダーロードはその様子を、ニコリともせず厳しい表情で見つめていた。

 

 

 

 断罪の間での裁判が終了し。

 部屋を退出したクルセイダーロードは報告を受けた。

 

 駆け寄って来た他のメシア教徒の男に

 

「クルセイダーロード様」

 

 目を向けるクルセイダーロード。

 メシア教徒の男はその場で膝を折り

 

 報告する。

 

「クルセイダー・アトラクナクアが消息不明です。任務に失敗したものと思われます」

 

 その報告にクルセイダーロードは顔を顰める。

 

「……なんですって?」

 

 クルセイダーは神の使徒である。

 優れた選り抜きのテンプルナイトを、メシア教の最先端の悪魔科学を駆使し疑似的な悪魔人間へと調整した戦士。

 

 その能力は()()()()()()()()()()クルセイダーロードには及ばないまでも、並のものではない。

 

 そんなクルセイダーが、任務に失敗するなんて。

 

 一体、何があったのか?

 

 クルセイダーロードは訊ねる。

 一番の懸念事項を

 それは

 

「佐上真月の消息は?」

 

 聖女の消息。

 メシア教が地上を制覇するための大切な鍵。

 

 それは……

 

「そちらも分からなくなっており、現在調査中です」

 

(……厄介ですね)

 

 クルセイダーロードはそう心で呟く。

 アトラクナクアが任務に失敗し、聖女の行方も分からない。

 

 一体、何が起きているのだろう?

 

 分からないことだらけだ。

 しかし

 

「……急ぎなさい。そして見つけ次第、今度はクルセイダーの投入量を増やすのです。最低2人で行きなさい」

 

 そう、クルセイダーを率いる者として。

 彼女は男に的確な指示を飛ばした。




次回は視点は主人公近辺に戻ります。
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