真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「いらっしゃいマセー」
そしてその日。
忍と真月の2人は、中華料理屋の上城飯店に昼食を摂りに来た。
いつもの女性店員が彼らの応対をする。
この店には何度か来ているが、いつもはこの店の店員は……
店の名が入った緑色のエプロンを普通の服の上に着用するスタイル
なのだけど。
今日は赤と白基調のチャイナドレスだった。
2人ともそれに少し驚く。
「えっ、何でまたチャイナドレスなんですか?」
真月のそんな言葉に女店員は
2人を席に案内しながら
「今日でここに来て1年の記念日なんデス」
そう、接客用のニコニコ顔での返し。
1年……
1年前の自分たちは、大破壊で変わってしまった世の中に、ようやく慣れて来たところだった気がする。
ガラ吉の家で生活するようになり、最初に強盗に襲われたのが大体その1カ月後。
ガラ吉が警戒で呼び出していた仲魔が、家に侵入してこようとする男たち数人を見つけ、追い払った。
そのとき真月は生まれてはじめて本格的な犯罪行為を目にして、軽くショックを受けた。
その後、町に物資を確保しに出向いたとき。
また男たちに襲われた。
忍と一緒に行動して居なければ、ひょっとしたら危なかったかもしれない。
忍は刃物や鈍器で脅し「その女とお前らの持ち物を全て寄越せ」と声を張り上げる男たち全員を返り討ちにしてくれた。
あのときは「自分は空手の達人を夫に出来て本当に幸運だった」と思ったものだ。
なので真月は
「大破壊が起きてから2年くらいだけど、1年間は外で生きてたの?」
そう、思わず訊ねてしまう。
女店員はその質問に対し
「ハイ」
そう少し、遠い目で答えを返した。
そして
「なるべく、たくさんの人に混じっていこうとしたデスが、トラブル起きるとワタシが原因で揉めるデス」
具体的にどういうトラブルが起きたのかは口にしなかったが、そんなことを。
それに対して真月は
(そりゃ、そうなるでしょうね)
口には出さなかったが、彼女の言葉に同情しながらも納得した。
当たり前だと思った。
無法の状態で人の集団が出来、そこで盗みや事故などのトラブルが起きたら
おそらくたった1人だけの外国人の彼女の立場が悪くなるのは当然だ。
一番仲間の属性が低いのだから。
それだけで排斥する理由にするには十分だろう。
無論、その行為の正しさを度外視するとするならば、であるが。
「で、そのたびにセンセイがワタシを連れて出ていくコトの繰り返しデシタ。……ここに流れ着いテ、受け入れテもらえてホント良かったデス」
確かセンセイというのは、彼女の恋人の呼び名だったはず。
真月は
「それは大変だったのね。……でも、良い人を見つけられて良かったじゃない。あなたの恋人は間違いなくいい男だと思うわ」
そのことに触れ、女店員の想い人の漢気を称賛する言葉を口にした。
女店員は
「ハイ。色々大変デシタが、そこだけは本当にラッキーデシタ。ワタシ、幸運デス」
満面の笑みを浮かべ。
その表情は華のような印象を受ける。
そのとき。
ガララと店の引き戸が開いた。
新しい客が入って来たのだ。
「ア、いらっしゃいマセー」
女店員はその新規の客の応対に向かう。
そしてなんとなく忍と真月も視線を向けて
2人は少しだけ驚いた。
新しく店に入って来た客は、所謂美男美女だったからだ。
男の方はとても若かった。
成人年齢に達している忍と真月よりさらに若い。
年齢で言えばおそらく高校生くらいだろう。
だが、顔つきに大人の雰囲気を感じた。
人生に対する甘えが一切無い、みたいな。
そして女の方は文句なしの美女であった。
男の方よりは年上に見えたが、十分若い。
スタイルも抜群で、胸が大きく。
くびれのラインが理想的である。
髪型はポニーテール。
2人とも服装も整っていて。
男は洗練された灰色のジャケットにズボン。
女は黒いチャイナドレスに似たワンピース姿。
誰にもケチをつけられない、隙の無い姿だ。
(久々に、ここまで完璧に目の保養になる人を見た気がするなぁ)
まるでかつての世界の芸能人のように見えた。
トップアイドルのような。
「こちらの席にドウゾ」
女店員は2人を別の席に案内し、注文を取った。
2人は注文をし。
サービスの水を口にしながら
楽しそうに言葉を交わす。
(あれっ?)
そこで真月は違和感を持った。
あの2人……
顔立ちが似てる気がしたのに、どうやら姉弟ではないらしい。
何故なら
女の方が男に向ける視線に、明らかにオンナがあったからだ。
相手のことを自分の
伴侶であるという認識。
それが明らかに含まれていた。
同じように忍という伴侶を持つ彼女にはそれが確信できる。
だったら姉弟ではないはずだ。
(創作だと顔立ちの似た夫婦って、珍しく無いけど……現実にもあるのね)
そう彼女は良くない事だと思いつつも、そのカップルの様子を観察し。
同時に
(あの2人もこの京都の住人なのかしら?)
そう思い、あれだけ目立つ容貌なのに自分たちがこの1ヶ月くらいの間に一切気づかなかったことを不思議に思った。
そのとき。
忍と真月、彼ら2人の胸ポケットに仕舞っていたスマホが振動する。
暫定政府に「連絡用として」支給されたスマホに連絡が入ったのだ。