真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
サイレンが響き渡った後。
アナウンスが続いた。
それは
『全員に通達。建礼門正面より賊徒あり。皇居防衛隊は直ちに迎撃態勢に入れ。各員、直ちに所定の防衛位置へ。繰り返す、建礼門正面に……』
正面。
災厄は危惧した通りこの京都御所が標的で。
敵は正面から攻めて来た。
……賊はメシア教徒では無いのかもしれない。
その予感が2人にはあった。
メシア教徒であれば、そのような非効率な手段は取らないはずだ。
必ず目的達成のために、卑劣で卑怯な手段を取る。
正面から攻め込むような方法は取らない。
それを2人は、確信に近い思いで認識していた。
「……敵の目的がここなら、ここまで来られるのは問題では無いですか?」
忍がライドウにそう進言する。
ライドウは忍の言葉に頷き
「それはそうだが、戦力の分散は下策だぞ?」
そう、一般的な戦略思考から出る一般論を返して来る。
戦力を分散させることは、各個撃破を招く下策である。
戦いで最優先されることは勝つことであるから、常に「必ず勝てる」戦力を投入すべし。
それは当たり前のこと。
しかし……
「俺は、この場所を戦場にするのは避けるべきと思います」
そして
「攻め込んできている奴ら、メシア教徒のような奴らでは無い気がします」
自分たちが正しいのであるから、どんな汚い手段も正当化される。
そんな腐りきった奴らと違う気がした。
なので
「ここ、お任せしてよろしいですか?」
忍はライドウにそう訊ねる。
彼は真月と一緒に賊の迎撃に出向く許可を取りたいのか。
それをライドウは思案し
「……良かろう。元々、この場所は私が守護を任されていた場所。行って来い」
彼にGOサインを出した。
ここは元々、自分一人で守っていたのだから、それが元に戻るだけであると。
最後に
「ただし、無理はするな」
こう付け加えて。
その言葉に2人は頷き、夜を明かした聖域を飛び出して行った。
賊は2名。
男と女で。
男の方が悪魔使い。
凶悪な悪魔を召喚し、この御所の職員を威圧しているらしい。
現在のところ、負傷者は数名出ているが死者は出ていないとのこと。
アナウンスであった建礼門に向かって走りつつ、他の職員に訊ねた結果であった。
建礼門。
そこは京都御所の正門である。
敵はそこにやってきた。
つまり、京都御所の戦力を正面から突破するという意志を持っているということだろう。
果たしてどんな奴らなのか。
彼ら2人はある意味期待に近い気持ちで現場に駆け付けた。
建礼門に辿り着く。
大規模な寺院、神社の正門であると言われても何の違和感もない格式高い建造物。
そこの前の広場に賊たちは居た。
それは……
(えっ、あの人たちって……)
間違いない。
真月は2人を知っていた。
賊だという男女2人、それは
2人の行きつけの中華料理屋で出会った、あの美男美女のカップルであった。
あのときの男は腕にアームターミナルを装着し、多腕の牛頭巨人と狛犬のような大型の獣系悪魔を召喚し、使役している。
真月はその悪魔たちの名前を知っていた。
牛頭の巨人の名前は軍神シユウ。中国産の悪魔だ。
6本の腕と4つの目を持ち、この世に存在する武器を全て発明したと伝えられる戦争の神である。
この悪魔はそれぞれの腕に、戦斧、盾、剣、槍、弓矢を握っていた
獣型悪魔は霊獣コウ。これも中国産である。
神仏が乗り物として傍に置いておく霊獣。
ただし、それは「コウが神々しく神聖な獣であるから」という理由ではない。
あまりにも凶暴過ぎるので、神仏が目を離すわけにいかないからそうなのだ。
その実力は龍神に匹敵すると伝えられる。
そんな悪魔たちを従える悪魔使い……。
真月は己のアームターミナルに指を這わせながら、この戦いが楽には終わらないことを確信していた。
賊の2人が忍と真月の2人に気づく。
そして
「昨日、中華料理の店で会ったかしら?」
女の方がそう言った。
憎しみとか、嫌悪とか、そういう負の感情が一切ない声であった。
真月はその言葉に
「ええ。あのときの美人さんがまさか敵だとは思わなかったわ」
油断なくそう返した。
女は微笑み
「……ここはいいところね。でも、あると都合が悪いのよ」
そう、事務的な口調で呟くように言う。
都合が悪い……?
その都合というものに2人の意識が向いたとき。
それを訊ねる前に
「俺たちは、ガイア教徒だ」
男が堂々とした声音で名乗りを上げた。
それに衝撃を受ける。
ガイア教徒……
真月の脳裏に、野蛮人そのものであった「これまでのガイア教徒」の姿が過る。
そのイメージと全く結びつかない2人。
「俺の名は桃井明!」
「その妻・桃井夏子!」
そして名乗りを上げる。
その振る舞いに、2人は嘘を感じなかった。
相手に名乗られた。
ならばこちらがやることは
2人は視線を合わせ、頷き
「俺は佐上忍! ここを守護ずる公務員だ!」
「その妻・佐上真月! 同じく公務員よ!」
2人とも暫定政府に支給された制服を着用している。
所属まで名乗る必要は無い。
だが同じ返しをしなければならないという思いが、彼らにその名乗りを行わせた。
2人の名乗り返しを聞き終え、ガイア教徒の女・桃井夏子は
「あなたたちを倒せば、私たちの使命『神器破壊』に一歩近づくのね」
真剣な表情を浮かべ、言った。
神器破壊……
それが2人の目的なのか。
それは絶対にさせてはならないこと。
日本が復活する最後の望みである三種の神器。
絶対に守り抜かねばならない。
「絶対にさせないから……! 神器は最後の希望なの」
真月は夏子の言葉にそう返す。
夏子はその言葉に
不敵な笑みを浮かべ
そこで、彼女に変化が起きる。
青い輝きとでも表現すべきものが夏子の括れたウエスト周りに出現し。
その輝きの中から夏子の腰に、ベルトが出現したのだ。
バックルに描かれているのは、髑髏。
(……ッ!)
あまりのことに、硬直する2人。
そのまま、女は足を肩幅に開いた姿勢で
身体を捻りながら腰を沈めていき……
バッ、と天を掴む勢いで伸びあがりつつ
宣言した。
「変身!」
その瞬間だった。
女の身体が蒼い光を放ち、輝く。
……そして光が消えたとき。
そこに居た者は。
全体的なフォルムは、青いライダースーツを着た女性ライダー。
胸のライン、腰の括れ、臀部のラインがそれを隠せていない。
真紅の複眼。
全体的なイメージは、蠅。
そして首に巻かれている虎柄のマフラー。
その姿を目にし、真月は思う。
(間違いない……この人)
(忍と同じ、悪魔との合体に成功した人間だ……!)
それを理解したとき。
真月は激戦を覚悟した。
まさか自分の夫と同様に、悪魔との合体に成功した人間がいるなんて。
そんなものを相手にして、楽に勝てるとは到底思えなかった。
固まる2人の視線を受けながら。
変身を終えたガイア教徒の女は、腕を天に伸ばし停止していた。
そこからその伸ばした腕を戻し、常態の位置に戻した。
そのとき。
彼女の背中に、四枚の透明な羽根が生える。
昆虫のような羽根が。
そしてそれは、髑髏のマークが描かれた羽根だった。
これで変身完了。
その場にいる誰もがそれを理解する。
その妻に、夫である明は呼び掛けた。
「行くぞ夏子……! いや、仮面ライダーベルゼブブ!」
ひらりと、自分の仲魔である霊獣コウの背中に飛び乗りながら。