真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第37話 混沌夫婦の猛攻

 仮面ライダーベルゼブブ。

 

 ベルゼブブと合体し、自分の意識を残すことに成功した悪魔人間ということか。

 ベルゼブブ。

 

 忍はなんとなく、その悪魔の名前に聞き覚えがあった。

 ということは、相当有名な悪魔なのだろう。

 

『ベルゼブブか』

 

 そこにアモンの声が忍の脳内に響いた。

 アモンはその存在を知っているらしい。

 

 ベルゼブブ。

 それは……

 

『七つの大罪の暴食を司る魔王であり、大魔王ルシファーの右腕とも称される存在』

 

 元は豊饒の神バアルであり、それがキリスト教の布教により悪魔へと貶められた存在。

 故に強力で、魔界の実力者に収まっている大悪魔。

 

『平たく言うと、我より数段上、いやそれ以上の存在だな』

 

 ……アモンの言ったことはそんな内容で。

 

(なるほど)

 

 忍はそうアモンの言葉にそう返しながら

 

「変身!」

 

 自分も腕を腰の前でクロスし。

 

 自分の腰にベルトを召喚。

 そして緑色の輝きと共に

 

 悪魔人間……仮面ライダーアモンへ変身する。

 

 これに今度はガイア教徒の2人が動揺する。

 

「夏子以外の悪魔人間……!?」

 

「明さん……?」

 

 信じられないものを見た顔で、桃井明。

 そんな夫の様子に不安げな声を洩らす夏子。

 

 だがしかし

 

「……気にするな! お前が合体した悪魔は魔王ベルゼブブだ! 大魔王ルシファー様の次に強力な魔王なんだ! お前なら勝てる! 絶対に!」

 

 桃井明は己の動揺を振り払うようにそう言い切る。

 その声を受けて

 

「はい!」

 

 桃井夏子……仮面ライダーベルゼブブは拳を振り上げ、佐上忍……仮面ライダーアモンに突撃していく。

 背中の羽根を激しく羽ばたかせて。

 

 その構えは……

 

(あの人、格闘技経験が絶対にない)

 

 真月の目から見て、それは明らかだった。

 彼女は夫の空手家としての姿をずっと間近で見て来た。

 だから本当の格闘技者がどういう構えを取り、どういう動きをするのかは理解している。

 

 仮面ライダーベルゼブブの構えには無駄が多い。

 コンパクトさが無い。

 まるっきりの素人……

 

 だが

 

 振り上げた拳が突き出される速度は異常に速く。

 そして

 

「ブラスト!」

 

 その掛け声と共に繰り出される雷撃。

 雷の籠った拳だ。

 

 その効果範囲は広く、彼女の夫がその拳を回避することへの余裕が感じられない。

 夫も背中の翼を活用し、電撃を貰わないように立ち回ることに集中していた。

 

(……技術の無さを、悪魔の力でカバーしている!)

 

 ただのがむしゃらな殴りつけるだけの拳を、魔法と併用することで捌くのが困難なものに変えている。

 あの拳は、通常の格闘技の技法で対処するのはおそらく不可能だ。

 

 夫の忍は空手の達人で、人間相手ならあんなもの平気で捌き、即座に反撃の猛攻を叩き込んで秒殺している。

 だが、あれはそうはできないのか。

 

(だったら)

 

 彼女はアームターミナルを操作し、仲魔を召喚する。

 地面に浮かび上がる魔法陣。

 

 呼び出すのは

 

 妖魔ヴァルキリー。

 

 呼び出される甲冑を身に纏った戦乙女。

 呼び出されたその女悪魔は剣を鞘から引き抜きながら

 

「マスター! ご命令は!?」

 

 その言葉に

 

「あの、空の上の敵をお願い!」

 

 短く、手早く。

 

 真月は指示を飛ばした。

 ヴァルキリーは大きく羽ばたき

 

「御意です!」

 

 霊獣コウの能力で宙を舞い、上空から自分のパートナーを支援する悪魔使いの男に立ち向かっていく。

 

 

 

(日本政府の生き残りに、悪魔人間が居るなんて予想もしていなかった)

 

 桃井明はその事実に一瞬狼狽えたが、すぐに思い直した。

 

 自分の妻である夏子は、あのベルゼブブと合体したのだ。

 相手の悪魔人間がどんな悪魔と合体したのかは分からない。

 

 だが、それがベルゼブブ以上の悪魔である可能性はおそらく無いはずだ。

 

 それぐらいベルゼブブは強力な悪魔なのだ。

 

 そんな悪魔と合体して自分を無くさなかった妻に彼は敬意を持っていたし。

 それ以上に信頼をしていた。

 

 自分の嫁なら、絶対に誰にも負けないと。

 

(夏子! 俺が全力でサポートをする! 心置きなく戦ってくれ!)

 

 そう思い、彼は仲魔の軍神シユウに命じて敵である仮面ライダーアモンへの攻撃を指示しようとした。

 そのとき

 

「ハァァァァッ!」

 

 鋭い気合の声。

 女の声だ。

 

 それが地上から迫って来て

 

 コウが咄嗟に身を捻ると、すれすれの位置を翼ある女性の影が突き抜けて行く。

 

 それは身を翻し、羽ばたいてホバリングをしながら剣を構える。

 

「妖魔ヴァルキリー……」

 

 桃井明はその女悪魔を見つめ、呻くように言う。

 その実力は彼の仲魔の霊獣コウには及ばないだろう。

 しかし、だからといって放置していても構わないほど弱い相手ではない。

 

 その機動性。

 舐めてかかれるものでは無いことは、先ほどの一撃で彼は理解していた。

 

「コウ! 焼き払え!」

 

 桃井明の指示に従い、霊獣コウはファイアブレスを吐き出した。

 その口腔から吐き出される紅蓮の炎。

 

 だがヴァルキリーはその攻撃を自身の機動力で、かき乱すように回避する。

 

 

 

(明さん……!)

 

 夫が上空で敵悪魔使いと悪魔同士の戦いを繰り広げていることを感じ取り

 

(こちらは任せてください!)

 

 決意と共に、連撃をさらに激しく繰り出した。

 

 魔王ベルゼブブの力を得た自分には、世界の全てがスロウに見える。

 蠅という生物は、動体視力がとてつもなく高いらしい。

 その影響だろうというのが彼女の夫の見立てで。

 

 そこに加えて、強化された筋力と体力。

 そして強大な魔力。

 

 それだけ揃えば、相手が誰であろうと必ず勝てる。

 彼女はそう信じていた。

 

 現に、この政府側の戦士として自分たちの目の前に現れた悪魔人間。

 防戦一方で、反撃なんて一切してこない。

 

(つまり、私は圧倒的なんだ)

 

 だから勝てる。

 きっと勝てる。

 

 彼女はそう思っていた。

 

 しかし

 

 相手の悪魔人間……佐上忍は

 

 彼女の連撃を全て避け、大きく後ろに跳び。

 

 距離を取ったとき。

 

 こう言った。

 

「……大体分かった」

 

 その声は落ち着き払っていて

 

 彼は

 

「武術って言うのは、体格差だとか、腕力のようなありのままでの不利な条件をひっくり返すために磨くものなんだよ」

 

 嘲るでもなく、淡々と

 

「……これ以上続けるなら、容赦しない。止めるなら今のうちだ……どうする?」

 

 そんなことを。

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