真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第38話 私は最強の悪魔人間だッッ!

「止めるなら今のうち、ですって!?」

 

 桃井夏子……仮面ライダーベルゼブブは声を荒げる。

 大魔王ルシファーに匹敵する大悪魔と合体を果たし、その力を手に入れた悪魔人間としての矜持が彼女にはあった。

 

 別に力をひけらかしたいわけではない。

 だが、常人にはまず実現不可能なことを成し遂げた自負……誇り……プライド。

 それは彼女にもある。

 

 元々彼女は、桃井明の所有する女として上野での安定した生活を送っていた。

 ガイア教徒は教団内で力さえ示すことが出来れば、どんな人間でも上に行くことが出来る。

 彼女の夫である桃井明は若輩者であるが、その実力でガイア教団で最高の地位である

 

 ガイア教団13人衆

 

 その1人に加わることに成功したのだ。

 

 だが、夫がその地位に昇り詰めるまで傍でそれを見ていた彼女は

 

 13人衆の立場は他のガイア教徒に虎視眈々と狙われている地位であることを嫌というほど理解していた。

 夫だけに任せていると、その地位がいつか誰かに奪われるかもしれない。

 だったら、自分も何かをしなければいけないだろう。

 

 戦うのは男の仕事と、丸投げするのはあり得ない。

 何故なら自分は明以外の男に所有されるのは耐えられないから。

 彼とは一蓮托生なのだ。

 

 そこで出会ったのが、魔王ベルゼブブとの合体の機会であった。

 

 魔王ベルゼブブの分霊を封じた壷というものを夫が手に入れたとき。

 彼女はその壷を持ち出してその封印を解き、中に封じられていた大悪魔を自分の中に迎え入れた。

 彼女には悪魔との合体に耐え切る絶対の自信があったのだ。

 

 自分は家族を守るために悪魔人間になる。絶対になる。

 自分が夫の地位を守るために戦えるようになるためには、この手段しかない。

 

 その一心で彼女は魔王ベルゼブブとの合体に成功した。

 全てが終わった後、夫には激しく叱責されたが、彼女には後悔は無かった。

 

 そこまでして手に入れた今のこの力。

 それを軽く見られた。

 

 許せなかった。

 

「負け惜しみを言うんじゃないわよ! 私は最強の悪魔人間だッ!」

 

 軽く見られた怒りを足に込め、激しく踏みしめる。

 舗装された道路に、陥没が生じる。

 

 あの男、おそらく格闘技の経験がある気がする。

 自分は一切そんなことをやったことはないけれど、なんとなくそれが分かった。

 

 でも、だから何だと言うのだろう?

 

 今の自分は魔王ベルゼブブの力を使いこなせている。

 そんな自分が負けるはずがない!

 

(ベルゼブブ、全力で行くからサポートお願い)

 

『承知した。存分に我が力を振るうがいい……我が美しき同居人よ』

 

 自分の中の魔王の激励。

 それが彼女を奮い立たせて……

 

 ……飛び出させる!

 

「デヤアアアアアア!」

 

 雄叫びと共に、激しく拳を繰り出す。

 その拳に合わせ、魔王ベルゼブブが雷撃魔法を発動させてくれる。

 

(格闘技の経験があるからなんなのよッ!?)

 

(こちらには無敵の魔王の魔力と、人類を遥かに上回る身体能力があるのッ!)

 

(技術なんて無くてもそれだけで十分でしょッッ!)

 

 その思いだけでぶつかっていく。

 

 だが

 

 彼女のその連撃、連攻は。

 相手の男に全て躱され。

 一緒に魔王ベルゼブブが発動させてくれている雷撃魔法も、巧みに避けられ続け

 

 そして躱しざまに足を払われた。

 

 転倒しそうになるが、彼女には蠅の羽根があり

 

 羽ばたくことでそれを回避し、姿勢制御して連撃を継続。

 

 しようとした。

 

 

 そして彼女が気がついたときには

 

 

 深く踏み込まれ。

 相手の男……佐上忍……仮面ライダーアモンの拳がその腹部に食い込んでいた。

 

 その拳の一撃は

 

 彼女の内臓を直撃するような衝撃があった。

 

「ごはっ」

 

 思わず身体をくの字に折り、後ろに下がる。

 必死で距離を取り、精一杯の臨戦態勢を維持する。

 

(そんな……!)

 

 今の一撃で相当大きなダメージを負った自覚。

 どういうことなんだ……!?

 

 自分には強大な力があるはずなのに……!

 

 動揺する彼女に

 

 忍は告げた。

 

「……ただの力持ち、フィジカルエリートが何の訓練もなしに武術家に勝てると思っていたのか?」

 

 落ち着き払った声で。

 

「そんなわけあるかよ……甘いよ」

 

 少しだけ、苛立ちが混じった声で。

 

「知恵のある人間を相手にして、その人間を制圧するために作られたのが武術なんだ」

 

 そして

 

「もう一度言う。……止めるなら今のうちだ」

 

 忍は、桃井夏子本人と……上空で妖魔ヴァルキリーと戦っている彼女の夫に視線を向ける。

 

 その瞬間、彼女の頭の中は真っ白になった。

 

 自分の夫にまで視線を向けられて、彼女は悟ったのだ。

 

 今、自分だけでなく自分の夫まで見下されたのだ、と。

 

 甘いことを考え、身の程知らずに敵地に突っ込んで来た愚か者。

 そう思われたと。

 

 許せなかった。

 

 夫は彼女が生涯共にあろうと心に決めた男。

 それを見下されるのは絶対に許せない。

 

 だから……

 

(ベルゼブブ)

 

 彼女は呼び掛けた。

 自分の中の魔王に

 

(やるわよ……アイツに目にモノを見せてやる……!)

 

『良かろう。存分にやるがいい』

 

 彼女は決断をした。

 それは

 

「究極合体魔法!」

 

 完成された悪魔人間のみに許された秘法……

 

 

 ……究極合体魔法を!

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