真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
上野の街はガイア教徒が支配している街である。
上野の街も大破壊で壊滅的な打撃を受けたが……
地下に逃れた人間。
一部の大悪魔が張った結界に逃れた人間。
それらが生き残り、その後この街を急ピッチで再生した。
国立科学博物館もその1つである。
この博物館は、奇跡的に原形通りに残るに至った。
窓ガラスは残らず破損し、その他外装にも重大なダメージがあったのではあるが。
ガイア教徒たちはこの奇跡を「何らかの魔術的理由」と考え
街を修復する際、ここをガイア教徒の総本山……本拠地にしようと決めたのである。
その最上階である3階にある一番大きな部屋。
ガイア教徒たちはそこに円卓を運び込み、ガイア教徒たちを引っ張る13人の実力者の会合の場所とした。
その大部屋で、現在その会合が行われている……
桃井明は妻の夏子と共に、13人衆の他のメンバー12人の前で。
京都に出向いて果たすはずだった仕事の結果についての報告を求められていた。
「で、どうなったんだ? 報告してくれ」
この場にいる13人のリーダーを務める男……
彼は元々、世界的企業の支社長を務めていたほどの男で。
この13人の中では最も人を牽引する力を持っていた。
元々富裕層、上流階級の男。
そんな男が何故ガイア教の信徒になったのか。
おそらく闇深い事情があるのだろう。
一級の男らしく、その身体は鍛え抜かれており骨格も太い。
研ぎ澄まされたような肉体を、黒いスーツで固めている。
桃井明はこの男が嫌いではなく、むしろ好感を持っていたので
「……失敗しました」
旧政府の奴らにも、俺の妻同様、悪魔との合体に成功した人間がいました。
この理由を先に言いたかったが
ビジネスの報告はまず結果を先に言え。
13人衆の1人になったとき。
それが最初にこの男に指導されたことで。
この男は2度目以降のミスには極端に厳しくなるので、グッと耐えた。
「へぇ、キミが失敗するなんてねぇ」
13人の1人……
明はこの男を嫌悪していた。
他者を基本的に見下し、小馬鹿にした態度を崩さない。
ただ「強いからここにいる」
それだけの男。
彼の姿はよれよれの紺色の背広に赤いネクタイ。
ネクタイの締め方も適当。
そんなナリだが……元々の職業は警察官。
警察にいるのが嫌になったから、警察を辞めると同時にガイア教徒になった。
前に、訊いてもいないのに自分で言っていたのを聞いたことがある。
「どしたの? 奥さんが最強の魔王と合体したから、夫婦力を合わせてやり遂げてみせるとかデカいこと言ってたのにさぁ」
心底楽しそうに煽る言葉を吐きかける。
明は激しい怒りを覚えたが
負けたのは事実であり。
そしてこれは、事情を訊ねられたのであるから
「……旧政府にも悪魔人間の職員がいて、そいつに撃退されました」
簡潔に、失敗した理由を返答する。
その言葉に、この場にいる人間全てが衝撃を受けた。
「そんなこと、あり得るの?」
13人の1人・
彼女は数少ない女のメンバーで、元々は旧家の資産家の令嬢らしい。
そんな人間がここにいる。
何故ここにいるのかについては、一応明はそれを知っていた。
……彼女は自分の両親と婚約者を殺害し、悪魔の生贄にしたのだ。
どうも意に沿わない結婚を強制されたのが原因らしい。
大破壊前に流れた報道と、本人が口にした言葉からの想像であるが。
彼女は動きやすさを重視した、上級の女をイメージする衣装……
濃い青色のジャケットと、タイトパンツ……そこに白のシャツとスニーカー。
そんな衣装に身を包んだ、栗色の入った長髪の女。
顔の造形は美人の部類であったが、目付きがキツイのが特徴的で。
彼女が大破壊前に行った罪状を考えれば、納得の容貌ではあった。
「……見間違いでも勘違いでも無いです。俺の妻と同じことが出来る相手だったんですから」
明は千晶の言葉に即座に言葉を返す。
放っておくと面倒くさい話が長引きそうな気がしたからだ。
その言葉で千晶は再び席に着き顎に触れながら
「……成功例がある以上、あり得ない話では無いわけよね……でも、こんなことってあるんだ……」
納得はしたものの、そのあり得なさに動揺が隠し切れないようだ。
「……なるほど」
そこにもう1人。
明が任された仕事……三種の神器破壊について提案した張本人……
彼は
「元々、我々の戦力に悪魔人間が加わったことで、その勢いで不安を払拭しようというのが主旨であるから」
明に向かって、別に批判も労いも無い、淡々とした言い方で
「向こうにも同じものがいるのであれば、こちらに攻め込んでくる気配が無いなら放置しておく方が良いのでは無いか?」
そう、再提案する。
元々彼はコンピューター技術者で、その世界では高名な人間だったらしい。
彼は所謂アルビノで、髪の色は白であり、赤い目が特徴的。
整ってはいるが慈悲の欠片もないような冷たい顔つきをしていた。
しかしTシャツの上に半纏とだぼだぼのズボン、下駄。
ファッションセンスが壊滅的な男であった。
直哉のその提案は
「私も賛成するわ。知恵を絞ってまで解決しなきゃいけない問題でも無いでしょ。この2年は何も無かったんだし」
円卓に肘をつき、千晶が賛成を示し
「僕もまぁ、頑張る価値は無いと思うなぁ」
足立も賛成。
……なんとなく、賛成の方で纏まりそうな雰囲気があった。
明はその状況に
これであの2人と交わした言葉が空虚なものにならずに済みそうだと安堵し。
同時に
これでもう、あの2人と再戦することは無いのかもしれないと、少しだけ悔しくなった。