真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
第47話 伊勢に行こう!
伊勢への出張は明日の朝早くに迎えが来るらしい。
今日は明日の出張に対する準備をしろとのことで。
半ばバカンスに近いところがあるなぁ、と2人は口には出さないがそう思った。
伊勢では特に神饌を受け取る以外の仕事は無い。
向こうでは自由にしていいと言われていた。
(だったら、海で遊ぶくらいはいいはずよね)
真月はそう判断した。
なので
「水着って無かったよね?」
京都御所から出てしばらく後、彼女はポツリと言う。
帰宅途中、忍は隣を歩く妻のその一言に目を向けて
「えっ、そこまでやるの?」
「やるよ? 折角のチャンスでしょ?」
それで真月の目が本気であることが忍にも伝わる。
本気で水着を買う気になっていることが理解できた。
その言葉に忍は動揺した。
愛妻と一緒に海に行きたくないわけでは断じて無い。
しかし……
「でもバカンスじゃないって」
最初に一応「バカンスじゃない」と言われたことが気にかかる。
そこまで調子に乗っていいものだろうか、と……
しかし彼の妻はそこで折れなかった。
こう返した。
「それは別に特別休暇じゃないってだけで、菅野さんだって海に行くことを想定してたよね?」
これをくれたときに。
そう言いつつ、自分の右手に握られている紙袋に視線を向ける。
中には菅野から受け取った鞭型COMPが入っている。
彼女は言っていた。
これは海に持ち込んでも防水だから何も問題ない、と。
それはつまり、そういうことだろう。
神饌に使われる魚介類は、政府に雇われている漁師が行うので、別に彼ら2人は関係無いのだ。
船に乗ることも言われていない。
時間になったら指定の場所でモノを受け取るだけ。
それはつまり、そういうことだろう。(2回目)
「だったら買うか……」
「そうそう! 楽しまなきゃ! これは新婚旅行だよ!」
忍が乗り気になったので、真月は嬉しそうにそう言って握りこぶしを持ちあげる。
確かにこの2人は新婚旅行なんてしていない。
……結婚式もしていないのだが。
そこに忍は思い当たる。
なので
「結婚式もしてないよね?」
そう、何気なく呟くように言うと
真月は
スッと喋らなくなり。
その表情を見ると
物思いに耽るような。
そんな表情になっていた。
そして
「……そうね」
そう返し
彼女は
「でもその前に……」
そう言いながら忍に視線を向け。
彼の目を見つめながら
「神器を取り戻し、前の世界を取り戻さないとね」
彼女は語った。
彼女の思う結婚式というものを。
それは
「結婚式ってお世話になった人を集めてやるものだよね? ……日本の今の状況じゃ、とても無理だから」
……ということだった。
忍はその真月の言葉に頷く。
「俺もそう思う」
そして
彼は前を向き
「……どこかで決断しないといけないよね」
今、三種の神器の草薙の剣はメシア教徒の手の中にある。
それを取り返さないと、日本の復活は無い。
だからどこかで……
(メシア教徒の懐に飛び込んで、神器を取り返して来なければ)
その決断をしなければいけないのだ。
そして2人はその後。
水着を買いに京都を歩いた。
水着と言えばスポーツショップだが……
この京都にはスポーツショップが無く。
代わりに大手の衣服販売店のユニコーンクロニクル……略してユニクロがあって。
そこで水着を取り扱っていた。
ただ、あまり種類は無い。
聞くと、あまり伊勢に人が行くことはないらしい。
もっぱら、この京都の結界内にあるプールで泳ぐために使用するようだ。
で、その少ない種類の中から……
真月は水色のセパレートタイプの水着を選択した。
下の部分にフリルがついて、スカートっぽくなるものだ。
「どうかな?」
更衣室の中でクルクル回ってみせる。
真月は身体のラインが綺麗なので
「良く似合ってるよ。……キミは本当に綺麗だね」
そう素直に、忍は妻の美しさを褒めた。
彼女のことはずっと見つめてきているが、彼は彼女を見飽きることは無かった。
夫のその言葉に
「ありがとうあなた。明日が楽しみになって来たわ! お仕事だけど!」
そう言って悪戯っぽく笑い
続けて、そっと耳打ちするように彼女は
「まあ、おそらく伊勢には私たちしかいないと思うから……貸し切りみたいなものだね!」
そう自分の夫に囁いた。
あまり大きな声で言えることではないから、当然かもしれない。
そしてその日が終わり。
夜が明け、次の日になったとき。
2人の住む職員の宿舎であるマンションに人が来た。
伊勢にはターミナルを使用して行くらしい。
そして転移した先には特別に結界が張られた場所があり
彼ら2人には、
そして京都の結界ギリギリまで車で移動した後。
2人が結界を出る前に。
「これをどうぞ」
車の運転手を務めてくれた暫定政府の職員が、彼ら2人にカードを手渡して来る。
それは……
『ターミナル使用許可証』
2人の顔写真と名前、そしてバーコードが印刷されたプラスチックのカード。
ターミナルを使用する際、このカードのバーコードをターミナルの読み取り機に読み込ませる必要があるという。
「これからはこのカードを使用して、自由にターミナルを使用して下さい」
そしてカードを眺める2人に、職員がそう簡潔に伝えて来た。