真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
岩場の向こうにはガイア教徒がいた。
そして見たところ、彼らに
ただのレジャー。
家族の思い出作りで来ているように見えた。
あの2人も水着姿だし。
子供までいる。
しかも明らかに遊んでる。
(というか……あの2人、子持ちだったのか)
忍はガイア教徒の一家に遭遇し、その姿を視認したとき。
そこにまず驚きを覚え。
同時に
(あのとき、決着に至らなくて良かった)
そう思った。
あんな小さな子に両親を無くす不幸を味合わせたくない。
それにモノがガイア教徒だと、そうなった場合の末路はどう考えてもとんでもないことになるだろうし。
彼はその可能性を考え、そんなことになったifを想像する。
地位が高い両親を失い、幼児がたった1人で放り出される。
その末路は
ガイア教徒の最下層の奴隷。
悪魔の生贄……。
他にもあるかもしれないが、大差は無いだろう。
(真月、キミはこの事態をどうするんだ……?)
忍は自分の傍にいる自分の妻の出方を見る。
彼にはどう動くべきなのかが分からなかったのだ。
彼の妻は――
1歩、前に出て
言った。
「……ここは日本政府の領域です。外国人は退去して下さい」
外国人。
真月は平然とそう言い切った。
ガイア教徒の2人はその言葉にショックを受けたようだ。
「外国人って、私たちは……」
「外国人でしょ。御所に攻め込んでくる奴は日本人じゃ無いわ。あそこにあるのは日本そのものなんだから」
真月はガイア教徒の夫婦の妻……桃井夏子の言葉に被せるように言った。
その言葉はとても酷薄で。
「でも私たちも日本列島で生まれて育って……」
「知らないわよ。覚悟も無しに日本に敵対して来るんじゃ無いわ。敵対した以上もうあなたたちは外国人。昔はともかく今はそうなの」
真月は一切取り合わない。
……言っていることはその通りだ。
今の暫定政府は一度崩壊した旧政府が、必死で立ち上げたもので。
そんな政府に攻撃を加え、滅ぼそうとした以上、もう彼らに日本人を名乗る資格は無い。
自分で古巣を否定し、滅ぼそうとしたのだから。
その古巣の支配領域に入り込み、勝手なことをすることが許されるはずがない。
それがしたいのであれば、戦いを意識するべきだ。
だがその言葉は
「明さんが気をつかって、京都での無差別テロはしなかったのにそんなことを言うなんて!」
桃井夏子の何かに火をつけたらしい。
キッと真月を睨みつけ、激しい怒りの目を向けながら指を差し
「京都御所って住民を信用して何も門番を置いて無いよね!? だからその気になれば内部に入り込んでから暴れることが出来たし!」
怒りのままに吼えるように
「京都の住民を無差別に殺して、混乱させてから攻め込むことも出来た!」
彼女は真月にそんなことを言った。
……彼女の言っていることは、京都の実情を知らなければその通りだ。
だが、実際は違う。
実際は、京都の守護の要である「超オモイカネ」が、災厄が迫って来た場合に警告を出す。
その警告が出た時点で、京都は防衛モードに入り。
外からの侵入者に厳しい監視の目を向け、神器と御所の防衛に注力するのだ。
なので、もしそんな人物が京都に迫って来ていたとしたなら、京都侵入の難易度が跳ね上がるので楽には進まない。
あのときは、そんなテロを行わない人間であったからこそ、京都に入り込むことが出来ただけの話。
……まあ、この情報は暫定政府の国家機密に当たる情報なので。
「だから感謝しろと? ふざけんじゃ無いわよ!」
真月はそこに一切触れずに、夏子の言い分を全否定した。
そのまま
「今すぐ退去! 出ていけ! 帰れ! 上野に!」
一方的に言葉を叩きつける。
ガイア教徒の夫婦は悔しそうな表情を浮かべた。
だが
襲い掛かってこようとはしなかった。
理由は単純で。
彼らには今、足手まといと言える子供が居るからだろう。
彼ら2人の娘は、両親が知らない大人と言い争っていることを理解できず、不安そうな顔で見回している。
口が動いていて「パパ、ママ?」と言ってる気がした。
(……あれは……)
傍で妻の行動を見守っていた忍はそこに気づいた。
なので
「あなたたちは他人に攻撃をしておいて……」
さらに追撃の口撃を浴びせようとする妻に
「真月、その辺で」
そっと囁く。
夫の言葉に真月はその言葉を止め
何を言うの?
そんな目を向けてくる。
彼は視線で、ガイア教徒夫婦の子供の姿を指し示し。
そのとき。
真月はそれにはじめて気が付いたのか顔を顰める。
そして……
「……とりあえず、退去しなさいよ。すぐじゃなくていいから。それだけだから」
しぶしぶ、と言った感じで
口撃を取り止め
「私たち一応公務員なので。密入国を見過ごすわけにはいかないのよね」
そう言い放ち。
彼女は
「行こう。忍」
そう言って身を翻し、ここから去ろうとした。
そのときだった。
キィィィィ!
金属を引っ搔くような音がした。
しかも物凄い音量の。
頭の中にねじ込まれるような音だった。
そして
……その音を聞いた瞬間、その場の誰もが金縛りになり。
身体が動かなくなった。