真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「明さん、どうするんですか?」
夏子が夫に向かって頼る言葉を掛ける。
その腕に、縋り付いてくる泣きじゃくる我が子を抱きながら。
彼ら2人の子供は、金縛りになったことがよほど怖かったらしい。
無理もないと忍は頭の片隅で思い
立ち上がった。
(悪いが、他人の心配をしている暇は無い)
真月が攫われてしまった。
追わなければならない。
何故メシア教徒がこの伊勢にピンポイントタイミングで乗り込んで来たのか。
超オモイカネがこのことに対して警告を出さなかったのは何故なのか。
気になることは沢山あるが。
考えている暇は無い。
そんなことは、全部後だ!
(今すぐ助けに行く!)
そう思い、彼は悪魔人間の姿……仮面ライダーに変身しようとした。
だが
「……ちょっと待ってくれ。焦る気持ちは分かるが」
その直前で止められる。
明に。
忍は顔を向ける。
その表情は険しい。
一目で「余裕がない」ことが見て取れる。
彼は
「何だ!? 俺は油売ってる時間は無いんだが!?」
荒い言葉でそう返し。
明は
「だから落ち着け。焦るのは分かるって言ってるだろ。……それともアンタの嫁を見つけるテでもあるのか?」
リュックから取り出したアームターミナルを装着しながら、淡々と言う。
手はあるのか?
その質問に忍は詰まる。
返答としては「無い」
じっとしていることができないから、動こうとしただけだ。
考えていたのは「変身して飛行して、上空から探す」くらいだ。
あまりにも心もとない。
でも、そんなことを言ってる場合か!
その気持ちで抑えられず
「アンタにはあんのかよ!?」
焦りのままに、荒い口調で返す。
自分でも不味いとは思ったが、止められない。
真月は彼の全てであったからだ。
今の世界で、現実に存在しているたった一人の愛する家族。
大切な奥さん。
そんな人間を攫われて。
平常心でいることなど無理だ!
だが、そんな彼に明は
「あるよ。だから言ってる」
そう言いながら。
(手がある……?)
忍はその言葉で、さらに言おうとしていた言葉が止まった。
そんな彼を一瞥もしないで。
明は水着姿のまま、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイを装着し。
彼は左腕のキーボードを叩いた。
すると
明の足元に浮かび上がる3つの光の魔法陣。
そこから3体の悪魔が召喚される。
1つは牛頭4つ目6腕の巨人の悪魔。
もう1つは緑色の狛犬。
そしてもう1体は……
翼を持った灰色の虎。
(何なんだこれは……?)
巨人と狛犬は分かった。
彼らが御所に攻め込んで来たときに見た覚えがあるから。
あの後真月に訊ねたら
軍神シユウ。
霊獣コウ。
名前を教えて貰えた。
いずれも強力な、中華系の大悪魔らしい。
……だけど。
あの、灰色の翼を持つ虎は何なんだ?
意図が見えず何も言えなくなる。
そんな彼を他所に
「シユウ、お前はここに残って俺たちの娘を頼む」
「承知」
「コウ、これから敵を追う。頼むぞ」
「ショウチ」
明は自分の仲魔たちに指示を飛ばした。
そのまま明は最後の武装か、鞘付きの剣を取り出して腰に吊るし。
そしてコウの背中によじ登ろうとして
そのとき
「ごめん、ちょっといいか?」
耐え切れず、忍は訊ねてしまう。
それに対して
「何だ? 時間が無い。早くしろ」
明は咎める口調でそう返す。
今は時間が無いのに余計なことを言うな。
そう言いたげに。
明は苛立っていた。
忍は申し訳なさを感じたが
それに詫びることはせず
「……何で助けてくれるんだ? あと、どうやって助けるんだ?」
忍の言葉に明は渋面になる。
そして
「時間が無いのに2つも質問するな……まあいい」
そう言って、明は簡潔に答える。
「お前らには京都で見逃して貰った恩と、ここで俺たちを力づくで排除しようとしなかった恩がある」
そこまで淡々と言い
「それと……」
続けて
「俺だって、自分の嫁さんは大事で、同じことになったら全力で救いに行く」
これがそんなに変な理由か?
そう言いたげな表情で言ってきた。
忍はその言葉に熱いものを感じた。
「……ありがとう」
思わず礼を口にする忍を見つつ明は
「礼には及ばない。あと、追跡方法だが……」
流すように、彼は話を進めていく。
有翼の灰色の虎の悪魔を指差しつつ。
「こいつの名前は妖獣キュウキ。中国で四凶として数えられる凶悪な悪魔だ」
説明をする。
四凶……
忍はその名前を聞いた覚えがあった。
何かの本で読んだ気がする。
その四凶を、どうするのか?
彼は腰に吊るした剣を引き抜き、左手でそれを握りながら
さらに説明を続ける。
妖獣キュウキとは
「悪い人間が大好きで、悪人を擁護する妖獣だ」
悪を助け善を挫く凶獣。
それが妖獣キュウキ。
その説明を聞き、忍は困惑した。
そんな意味不明の悪魔を使って、一体どうするのか……?
全く理解できない。
だがその疑問は
「悪人を擁護できるという事は、こいつは悪人を嗅ぎ分けられるという事だ。本能的に」
その言葉を聞き
「だから、こいつを呼んだんだ。多分、こいつなら今なら追える。自分たちの目的のため、海で楽しく遊んでいた女を突然誘拐するようなクソ野郎を、こいつが嗅ぎ分けられないはずがない」
さらに続いたこの言葉で、氷解する。
(そういうことなのか……! だったら)
希望が持てる。
……妻を助けられる!
彼の目に闘志が満ちた。
それを目にして、彼の戦意の高まりを知り
明は言った。
「そういうことだ……行くぞ。変身だ夏子」
夏子は夫の言葉に頷いた。
彼らの娘は
「ぱぱままがんばえー!」
軍神シユウの手のひらの上から、そんな幼い声援を飛ばす。
2人は頷き
「変身!」
「変身ッッ!」
同時に各々の変身ポーズをとり
次の瞬間、青い光と緑の光がその場で輝いた。