真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第54話 俺たち以外の相手に負けないでくれ

(速いな)

 

 忍はガイア教徒夫婦の機動力に感嘆していた。

 アモンの力を解放し、悪魔人間……仮面ライダーの力を全開にした自分が速いのは分かっていた。

 アモンの力……フクロウの羽根により、相当な高速飛行が可能だから。

 

 だが……

 彼らも相当早い。

 

 夫婦の嫁……桃井夏子が変身した「仮面ライダーベルゼブブ」

 背中に生やした昆虫の羽根を羽ばたかせて飛行している。

 

 ベルゼブブは蠅の王と呼ばれる大悪魔で。

 蠅は素早いものではあるが……

 

 事実として知っていても、少しだけ違和感があった。

 

 そして夫の方……桃井明は仲魔の霊獣コウに跨り、空を駆ける。

 霊獣コウは翼など持ってはいないが、まるで空を大地を駆けるように突き進んでいく。

 

 曰く「霊獣コウは元々は中国の死体から成った悪魔である、屍鬼キョウシが進化の果てに成ったもの」らしい。

 

 キョウシはキョンシーとも呼ばれており、呼び名としてはこちらが一般的で分かりやすい。

 

 キョウシという悪魔は、時間経過でより上位の存在に変化する。

 最初はただの人の血肉を求める蘇った死者でしかないのだが。

 時間経過により、念動力や飛行能力、その他数々の魔法を使用できる存在に変わっていく。

 

 そんな進化の果て。

 恐ろしいまでの時間経過の果てに辿り着くのが霊獣コウなのだ。

 

 霊獣コウはキョウシの最終進化形であるので、そこまでの進化の過程で出来たことは全てできるらしい。

 

 それはこの飛行能力と……

 

「見つけたぞ! あのワゴンだ!」

 

 明の鋭い声。

 

 彼らの前を先行している妖獣キュウキが嗅ぎつけた。

 醜悪なメシア教徒たちの腐敗した、狂った臭いを。 

 

 その先を先行するのが妖獣キュウキ。

 

 翼を羽ばたかせながら、その虎の巨体で宙を飛んでいく。

 そして無人のアスファルトの道を疾走する1台のワゴンを示すように、大きく吠えた。

 

 そのキュウキの振る舞いからその意図を察し、明はそう叫ぶと同時に

 

「コウ! あの車を停止させろ!」

 

「ショウチ!」

 

 コウがそう召喚主たる明に返し

 

 次の瞬間空気が震える。

 

 念動力。

 キョウシ由来の飛行の能力の応用である。

 

 コウの念の力は空気を震わせ、先を走るワゴン車を捉えた。

 

 ワゴン車はその動きをみるみる減じて、停止状態に陥る。

 その間、1分無い。

 

 凄まじいチカラだ。

 

 ただ、その力の行使にコウもその動きを止めたのであるが。

 

「……凄まじいな」

 

 思わず忍はそう言葉を洩らす。

 彼のその言葉に

 

「……私の旦那様を軽く見ないで下さい」

 

 仮面ライダーベルゼブブ……桃井夏子がそう言った。

 その声は誇らしげであった。

 

 そこには彼女の夫への尊敬と、信頼があった。

 

「ああ、そんなことは思ってないさ」

 

 忍は彼女の言葉にそう返す。

 

 この夫婦の関係性は本物だ。

 彼は彼女の言葉を聞いてそう思う。

 

 桃井明という男が相当出来る男なのは見てわかる。

 年齢は自分よりも下なのに。

 

 頭のキレ、決断力。

 

 そして度胸。

 全て一級品だと思った。

 

 そしてそんな夫に絶対の信頼を置いている妻。

 

 本物の絆だ。

 

(俺たちもそうありたいよ)

 

 2人の関係性に、そう心で呟いたとき。

 

 

 コウの念動力で強制停車状態に追い込まれたワゴンのドアが吹き飛んだ。

 運転席と助手席側の両方だ。

 

 そしてそこから人影がふたつ、飛び出して来た。

 

 それは……

 

 黒いワニみたいな頭部を持つ、有翼の人影。

 蛇女と称した方が良い、軽装鎧姿の女の姿。

 

 クルセイダー……。

 

 出現したクルセイダー2体は車から飛び出して、身構える。

 身構えて、怒りの声をあげた。

 

「我らの邪魔をするとは……神をも恐れぬ異教徒どもが!」

 

「許さぬぞ……我らの温情を仇で返すとは……!」

 

 彼らは温情という言葉を使った。

 忍はその言葉が理解できなかった。

 

 自分たちはこいつらに温情など受けていない。

 

 本当に分からなかったのだ。

 だから 

 

「……何が温情だ?」

 

 思わず聞き返した。

 すると彼らは 

 

「我らのバインドボイスで動きを封じた際、殺さないでおいてやったではないか」

 

「これを温情と言わずなんという」

 

 ……最初に不意打ちを決めたときに、お前たちを殺さなかった。

 それが温情だと言いたいらしい。

 

 その言葉は

 

「……ふざけんな」

 

 忍の怒りに火をつける。

 

 この狂信者たちの思考は理解の外だ。

 自分たちが不変の正義であり、自分たちの目的のためならどんな残虐な、非道な行いも許される……

 

 狂人だとしか思えない、独善的で傲慢な奴ら……!

 

 

「ふざけんなよ……カルト教団の狂信者どもが!」

 

 怒りで暴走しそうになる。

 こいつらさえいなければ

 

 大破壊後の地獄の拡大は防がれた。

 京都が立ち上がった時点で、日本中の悪魔は駆逐されていたはずだ。

 

 こいつらが悪い。

 こいつらが神器を熱田神宮から盗み出さなければ……!

 

 彼の脳裏に過る、様々な事。

 

 神器の事、結界の事、世界の事……

 

 そしてそのまま、怒りのままに彼らを叩きのめそうと思った。

 そのときだった。

 

「落ち着け」

 

 明が忍に語り掛ける。

 落ち着いた声で。

 

 彼は

 

「……あの中に、アンタの奥さんが居るんだろ? 俺にここまでさせといて、アンタが返り討ちなんて笑えねえよ」

 

 ワゴンを目で示しながらそう呟くように言い。

 続けて

 

「それにアンタが倒されたら、アンタらに勝てなかった俺たちの立場が無い。……俺たち以外の相手に負けないでくれ」

 

 まるで少年漫画の登場人物のような物言い。

 その言葉で、忍は一気に冷静になり

 

 笑った。 

 

「……アリガト。頭が冷えた」

 

 そしてそう一言返すと。

 明は「良かった」と短く言い

 

 続けて

 

「蛇女の方は俺たちに任せておけ! お前はワニ頭の方を頼む!」

 

 そう言い放ち、蛇女……クルセイダー・エキドナに向かい突っ込んでいく。

 

(了解だ)

 

 そして忍は。

 身構え、羽ばたきながら。

 

 同じように飛行状態に突入し、こちらに突っ込んでくるワニ頭……クルセイダー・テュポーンを迎え撃つように飛び出した。

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