真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第55話 アイスエイジスマッシュ

 仮面ライダーベルゼブブはクルセイダー・エキドナに突き進んだ。

 迎え撃つエキドナは、その両手を彼女に向け

 

「マハブフーラ!」

 

 魔法を使う際の重大事項。

 相手への通知の言葉を発する。

 

 マハブフーラ……

 中級位階の広範囲氷結魔法。

 

 複数の敵を一網打尽にするための氷結魔法である。

 

 この距離で発動させれば回避は極めて困難だ。

 

 だが、彼女はその巻き起こった吹雪に……

 

 即座に反応した。

 両腕をクロスさせてそのまま突き進み、突破したのだ。

 

(……なんという強引なやり方!)

 

 エキドナはその選択に驚愕した。

 自身の耐久力にそこまでの自信があるのかと。

 自身のスペックを頼みにした、力技である。

 

(だが!)

 

 エキドナはそれを嘲った。

 

 彼女はギリシャ神話の怪物・邪神エキドナをモデルに調整を受けたクルセイダーである。

 エキドナはギリシャ神話において、様々な怪物を産み落とした化け物であり。

 

 クルセイダーとしての彼女は、エキドナが伝説上産んだとされる怪物の能力を使うことが出来るのだ。

 

 強引に氷結魔法を突っ切り、彼女の間合いに飛び込んで。

 

「スパークッ!」

 

 雷を纏った突きや蹴りを繰り出して来る相手から

 

 逃げに徹しつつ彼女はその両腕を大鷲の翼に変える。

 

 モード・エトン。

 

 エトンとは。

 大神ゼウスが人間に火を与えた神・プロメテウスを罰するために、毎日その肝臓を喰らう事を命じられた大鷲の怪物である。

 

 エキドナは羽ばたき、宙高く舞い上がった。

 

 このモードは空中戦に特化している。

 

(この相手が地上戦を真っ先に選択したということは、空中戦は不利ということだろう。ならばこうするまで……!)

 

 

 

(飛ばれちゃったか)

 

 桃井夏子……仮面ライダーベルゼブブはそれを厄介だと感じた。

 

 それは彼女は飛行状態に入ると、まともな打撃ができないからであった。

 空中に逃れたエキドナを追いかけることは出来るが、まともな一撃を入れることが難しくなる。

 格闘技は下半身の安定性が重要項目。

 飛行状態だとそこを確保するのが難しい。

 

 前回の京都での戦いの後、彼女は夫のコネクションで格闘技の手ほどきを授けてくれる相手に引き合わせてもらい、指導を受けてはいた。

 指導者からは「そんなに筋は悪くない。むしろ才能がある方だ」と言われてはいる。

 

 だがさすがに、あの男……暫定政府の公務員夫婦の夫のレベルには到底達していないのだ。

 当たり前の話ではあるが。

 

 何故なら、あの男は達人の域にあるわけだから。

 ただ、学生時代体育の成績は割と良い方だっただけの女が、ちょっと真剣に鍛えただけで追いつけるレベルであるわけが無い。

 

 あの男ならば、きっとものともせずに追いかけて。

 そのまま、自分の持つ技を問題なく繰り出して対処するに違いない……

 

(だからまあ、しょうがないよね)

 

 少しだけ抵抗はある。

 真面目に格闘技を学び始めた身としては。

 

 彼女は背中の羽根を羽ばたかせ、空中に浮かび上がった。

 蠅特有の、速やかな速度上昇。

 鳥類とは明らかに違うその飛行法。

 

「撃ち落としてあげるわ! くたばれ!」

 

 エキドナは自分に迫ろうとする彼女に、高笑いをしながら大きく羽ばたき。

 

 その翼の羽根を撃ち出してくる。

 それはまるで弾丸のように。

 機関銃のように。

 

 彼女に向かって降り注ぐ。

 だが

 

(そういうのは効かないんだよね)

 

 そんな、手数だけ多い雑な攻撃は彼女には通じない。

 全て見えている。

 

 彼女は蠅特有の精密な飛行能力で、その全てを回避していく。

 

「そらそらぁ! 我がヤブサメショットからいつまで逃れられるか見ものよッ!」

 

 だがエキドナは自分の優位を疑わなかった。

 

 避けられはしているものの、距離を詰められていないからか。

 当たれば勝てる。

 そう思っているのかもしれない。

 

 だが

 

 そんなエキドナに向けて、火球が爆裂した。

 背後からだ。

 

「ぐあぁ!」

 

 悲鳴。

 そのダメージは致命的ではなかったようだが……

 

 ヤブサメショットの雨が停止する。

 

「な、誰ッ!?」

 

 彼女は振り向く。

 死角の方向に。

 

 そこには……

 

 

 灰色の、有翼の虎……妖獣キュウキが。

 吼えるように牙を見せていた。

 

(先ほどの火球はこいつのせいなのか!?)

 

 ヤブサメショットを仮面ライダーベルゼブブに命中させるために、意識を集中した隙。

 その隙をついて、この悪魔は卑怯にも後ろから攻撃して来たのだ。

 

「卑怯者め!」

 

 エキドナは吠える。

 だが

 

「……あなたたちがそれを言わないで」

 

 それが致命的な隙になる。

 

 いつの間にかエキドナに仮面ライダーベルゼブブが来ていた。

 ゼロ距離に。

 

 仮面ライダーベルゼブブはエキドナの片翼を掴み。

 力任せに地上に向けて叩きつけるように

 

 投げ落とした!

 

 エキドナは全く抗うことができず墜落し。

 まともに地面に激突する。

 

 その衝撃でアスファルトは砕ける。

 

「お……おのれぇぇぇ……!」

 

 そして立ち上がったエキドナは

 

 右腕をだらりとさせていた。

 どうやら今の一撃で痛めたようだ。

 

 もはや飛行は不可能かもしれない。

 

 それを目視し

 

「……終わらせましょう」

 

 仮面ライダーベルゼブブは空中をホバリングしながらそれを見下ろし。

 

 両腕を広げた。

 そして広げ、高らかに

 

「――究極合体魔法!」

 

 宣言する。

 成功した悪魔人間のみに許された最強の魔法の行使を。

 

 その宣言と同時に巻き起こる激しい吹雪。

 

 それは仮面ライダーベルゼブブの姿を隠さんばかりに荒れ狂い

 

「ふ、吹雪だとッ!? 馬鹿めッ!」

 

 一瞬、気圧されていたエキドナが吼える。

 そこには見下した響きがあった。

 

「教えてやるッ! この私は氷結吸収相性だッ! そんなものは通じないッ!」

 

 凄まじい吹雪であるが、それが氷結魔法であるのなら。

 自分には効果を及ぼさない。

 

 一度気圧されたからか、その言葉には激しい怒りと侮蔑の色がある。

 彼女は続けた。

 

「それに究極合体魔法ですってッ!? それが行使可能なのは悪魔人間のみッ!」

 

 そこには別の怒りがあった。

 

「すなわちクルセイダーロード様のみッ!」

 

 ……彼女たちのリーダー。

 クルセイダーロードへの侮辱。

 

 彼女は仮面ライダーベルゼブブの言葉をそう判断した。

 故に、絶対に許すわけにはいかなくなった。

 

 エキドナは吠える。

 獣のように。

 

「ハッタリなのは見え見えッ! 叩き潰してやる!」

 

 そしてその怒りの声と同時に。

 エキドナの身体が大きく膨張する。

 

 筋肉で。

 

 モード・パイア。

 イノシシの怪物であるパイアの力を発現させるモード。

 その効果により、剛力無双になるエキドナ。

 

「さあ来い! ひと捻りにしてやるッ!」

 

 痛めた右腕も構える。

 正面から受け止めるつもりらしい。

 

 そしてその間に。

 仮面ライダーベルゼブブの究極合体魔法は最終段階に達していた。

 

 吹雪の中で彼女は構えを取る。

 

 右足を突き出した。

 飛び蹴りの構えを。

 

 吹雪が彼女の右足に凝縮し、白い輝きになっていく。

 その輝きが最高潮に高まったとき。

 

 彼女は叫んだ。

 

 

「アイスエイジスマッシュ!」

 

 

 その声と同時に彼女は弾丸のように

 

 吹雪の残滓を身に纏いながらエキドナに向かって突き進み

 

 

「ごオオオオオッ!?」

 

 

 直撃。

 エキドナの胸に叩き込まれた。

 

 その衝撃でエキドナは後ろに数メートル吹き飛び

 

 その軌跡上のアスファルトが霜柱で覆われる。

 

 氷結のライダーキック。

 アイスエイジスマッシュの直撃であった。

 

「えっ」

 

 その結果はすぐにあらわれた。

 蹴りを受け止めきったと思っていたエキドナが、恐怖に満ちた声をあげる。

 それは

 

「私は氷結吸収相性の身体のはずよ! それなのに何故凍るの!?」

 

 そんな、理不尽なものだった。

 氷結吸収相性のはずの身体に、何故か氷結魔法がまともに効果をあげているのだ。

 

 アイスエイジスマッシュが決まったエキドナの胸を中心に、エキドナの身体がどんどん凍っていく。

 

 氷結系極大魔法「アイスエイジ」は耐性を元々貫通する。

 それをライダーキックというものの形を取り入れることで威力を凄まじく引き上げたもの。

 

 それが究極合体魔法「アイスエイジスマッシュ」

 

 命中したらその時点で終わりである。

 

 仮面ライダーベルゼブブはエキドナを見つめていた。

 自分の究極極大魔法を喰らった相手がどうなるかを見届けるために。

 

 エキドナの声から尊大さが消えていた。

 ただの悲鳴になり、それが 

 

「ああ、凍っていく! 身体が動かなくなっていく! 助けて! 神様!」

 

 嗚咽になる。

 

「嫌だ! 絶対に間違ってる! 私何も悪いことしてないのに! 何で助けてくれないの!? 神様!」

 

 人の命を奪いに来ておいて。

 自分は死ぬ覚悟を決めていなかったのか。

 当然生きて帰れると思っていたのか。

 

 あまりにも無様な最期である。

 そうこうしているうちに。

 

 エキドナはその頭部以外が青白く凍結し、氷の彫像となっていた。

 そして最後に

 

「私、クルセイダーなのよ!? 死んでいい人間じゃないのに! どうしてこうなるの!? ああ、ああ……助けて」

 

 イヤアアアアアアア!

 

 そう叫んで。

 

 完全に凍結。

 氷の塊になり。

 そして次の瞬間。

 

 その氷の塊が、粉々に砕け散った。

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