真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第56話 絶対に許せないことは

(打撃がまともに決まらない)

 

 忍……仮面ライダーアモンはクルセイダー・テュポーンと空中戦をする。

 

 彼はテュポーンを翻弄していた。

 機動力の面で彼はテュポーンに負けていないどころか

 

 明らかに上回っていた。 

 

「メギドフレイム!」

 

 右手から牽制目的のその火炎魔法を放つ。

 牽制目的で放つため、威力は低い。

 

 だがダメージは与えられずとも……

 相手を怯ませたり。

 相手の視界を遮り行動を阻むことはできる。

 

 そのまま彼はテュポーンに迫り、その拳の連撃と廻し蹴りを叩き込む。

 テュポーンはそれを防ぐことはできなかったが……

 

 大きく羽ばたき、間合いから離れる。

 

 あまり効果が出ていないようだ。

 理由は分かっている。

 

(踏ん張りが利かないのは想像以上にツラいな)

 

 踏みしめる大地が無い。

 それが格闘技においてどれだけのマイナス要素なのか。

 

 そもそも、人間の格闘技は飛行能力を持っていることを前提には作られていない。

 

 飛行能力を持つことを前提にする格闘技があるとしたら、それは全くの別流派と言ってもいいかもしれない。

 

 そんなことを考える彼に

 

「お前……悪魔ではないのか?」

 

 彼の連撃から逃れたテュポーンが信じられないものを見る目で言ってくる。

 言われた瞬間

 

(何言ってんだこいつ?)

 

 忍はその言葉にそう思っていたが。

 そこで気づく。

 

 自分はコイツの見ている前で変身をしていない。

 

 ということは……

 

(俺は桃井夫婦の旦那と契約している悪魔だと思われてたってことか)

 

 納得した。

 納得し

 

「違うな。だから何だ?」

 

 彼は別に話し合う気は無かった。

 このままコイツを倒す……つまり、殺してしまうつもりだった。

 

 メシア教徒からの刺客は誰一人生かして返さない。

 来ればやられる。損失が増えるだけ。

 

 その思考を相手に叩き込む必要があるから。

 

 それが大破壊が起きて、それからの2年で彼が学んだ厳しい世界の鉄則であった。

 

 だが、そんな彼に

 

「……異教徒であるのに、まさか悪魔との合体に成功するものがいるとは」

 

 テュポーンは感嘆の声音を洩らす。

 どうやら忍の返事で、彼が悪魔人間であることを見抜いたらしい。

 忍が悪魔ではないことを数度の攻撃で見抜き。

 そこから彼が悪魔人間であることに気づく。

 

 そのテュポーンの洞察力よりも

 

 彼は

 

(は?)

 

 戦闘中に何だ? と。

 忍は理解不能の感情を抱え、攻めるのを忘れた。

 

 そんな彼に、テュポーンは続ける。 

 

「お前は素晴らしい。我々の仲間になるべきだ」

 

 いきなり、勧誘を開始した。 

 

 だがその言葉に

 

「断る」

 

 彼は即答する。

 だが、そんな彼の言葉に構わず 

 

「安心してくれ。我々の仲間になればこんな戦いは無意味だ」

 

 テュポーンは明らかに説得する言葉を吐く。

 

「この戦いは不幸な行き違いだ。悲しいことなのだ」

 

 その言葉には……

 

「十徳には慈悲と勇気がある。怖がらなくていい」

 

 嘘が無いように思われた。

 忍に対する熱意……

 

「悪魔の精神力に打ち勝ち、悪魔の力を手にすることが出来た人間。君は選ばれたのだ。我らと一緒にテンプルナイトとしてこの世に真の救いを齎そう!」

 

 間違いなく、テュポーンの言葉にはそれがあった。

 

 けれども

 

 

「断る!」

 

 

 2度、忍は同じ言葉を繰り返した。

 そんな彼の言葉に 

 

「……それは何故だ? 我らが嘘を吐いているとでも思っているのか? ……それは」

 

 テュポーンはさらに食い下がろうとした。

 だがその言葉は

 

「そうじゃない」

 

 忍はそう一喝して打ち消す。

 続けて

 

「お前たち、俺の奥さん……佐上真月の命を狙ってるだろうが! その時点でねぇよ!」

 

 彼はそう言った。

 絶対に譲れない、そのことを。

 

 彼らは彼の妻を、唯一神召喚のための生贄にしようとしている。

 そんな連中の仲間になるなんて話を受け入れられるはずがない。

 

 彼にとっては当たり前のことだった。

 

 だがテュポーンは

 

「……あのような穢れた女など、君に相応しくはないと思うぞ? 君のように強靭な選ばれた男は、もっと素晴らしい女性が……」

 

 なおも、食い下がった。

 

(あっ)

 

 その瞬間。

 彼の中で何かが切れて。

 

 同時に思い出した。

 

 

 

 それは……

 高校時代の思い出だった。

 

 彼の妻の真月は、彼の地元では一番の美少女と思われていた。

 彼女も自分を女として飾ることに余念がなく、元が良いためにますますそうなった。

 

 そんなときだ。

 

「なぁ、キミは本当に綺麗だな。キミほど美しい女の子は見たことが無いよ」

 

 一度だけ、彼女を口説こうとした男がいた。

 そいつは学校一のイケメンで、運動部のエース。

 学年順位も10番台に入れる男だった。

 

 所謂ハイスペイケメンの候補生。

 そんな男だった。

 

 その男が、彼女を口説いたのだ。

 真月が男に「私には中学時代から付き合ってる相手がいる」と言っても引き下がらず。

 

 男はこう続けた。

 

「佐上忍のことかい……? あんな腕力だけで、他はパッとしない男なんて将来性ないぜ? 話だってつまんないんじゃないの? 俺にしとけよ。絶対に君を幸せに出来るから……」

 

 その言葉を彼は聞いていた。

 本当に偶然だった。

 

 向こうの方も、彼が居ない瞬間を狙ったのかもしれない。

 

 だが

 

 忍が激怒して、そいつを威圧して追い払う前に

 

 

「……ざっけんなよ、テメエ?」

 

 

 真月は酷く冷たい声でそう返したのだ。

 だから彼は飛び出さず、その場に留まった。

 

 真月は激怒した。

 自分の恋人を侮辱されたことに激怒したのだ。 

 

 その怒りは、相手の男を怯えさせ、退散させるほどのもので。 

 

  

 

 彼は大きく羽ばたいて。

 これまでで最速の速度でテュポーンに接近し。

 

 近接の間合いに入り。

 

 そして

 

「ぐぼおおッ!?」

 

 彼はテュポーンに正拳で鳩尾、肘打ちを側頭部、そして膝で顔面、最後に浴びせ蹴りを加えて地上に叩き落していた。

 

 それは地上で加える連撃と比較しても全く遜色ないもので。

 その全ての打撃に、彼は確実な手ごたえを感じた。

 

 そして最後の浴びせ蹴りでテュポーンをアスファルトの道路に叩き落したとき。

 

 思った。

 

(あのときのキミの気持ち、分かったよ)

 

 パートナーへの侮辱は、自分のことより許せない。

 瞬間的に相手をバラバラにしてやりたいような、激しい怒りと憎悪に突き動かされ

 

 その結果、飛行状態と打撃格闘が噛み合うに至ったのだ。

 

「……これが怒りのパワーって奴か。そこだけは感謝だよ狂信者」

 

 彼は地面に叩きつけられたテュポーンに冷たい視線を投げながら、そう呟いた。

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