真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「お、落ち着け……!」
アスファルトの道路に叩きつけられたテュポーンは身を起こし、立ち上がる。
その足には震えがあった。
今の連撃で相当なダメージを受けたらしい。
「待つのだ……! キミならテンプルナイトの上位層に行けるのだぞ……? クルセイダーロード様の右腕の地位を狙うことだって……」
これ以上の攻撃は受けたくない。
何とか説得して押しとどめなければ。
その言葉にはそんな気持ちが溢れている。
だが
「黙れ」
忍は。
仮面ライダーアモンは一切聞き入れなかった。
怒りのままに突っ込んでいく。
テュポーンは震えた。
恐るべき脅威が自分に迫って来る。
迎え撃たねば!
彼はその両手を向けた。
そして
「ザンダイン!」
彼にとっては渾身の一撃。
最強クラスの衝撃魔法。
魔法の力を決定づけるための言葉が発されると同時に
彼の手から波動が発生し、空間を震わせながら衝撃が走っていく。
直撃すればただでは済まない恐るべき衝撃波――
しかし。
「魔反鏡!」
仮面ライダーアモンの声が響いた。
その次の瞬間。
吹き飛ばされたのは、仮面ライダーアモンではなかった。
テュポーンだったのだ。
「グハアアアアア!?」
敵に仕掛けたはずのザンダインが自分に返って来て。
それをまともに浴び。
後方に吹き飛び転がる。
よろめきながら立ち上がろうとするテュポーン。
前よりもさらに深刻になったダメージを自覚しながら
彼は、今見たことを思い返した。
虎の子であるザンダインを浴びせたはずの相手が……
急停止し。
掛け声と共に構えた両手をくるりと回転させ。
正面から来るものを受け止めるような構えをとっていたことを。
(あれ、確か廻し受け……)
昔、何かで見たことがある。
空手における受けの技だ。
矢でも鉄砲でも火炎放射器でも捌いてみせる。
そのときに実演者からそんな言葉を聞いた覚えがある。
……こいつは、それを
究極合体魔法に昇華したのか!?
成功した悪魔人間のみに許された秘法。
究極合体魔法。
それは彼らのリーダーであるクルセイダーロードも所持している。
それゆえに彼はその結論に達し
彼は戦慄する。
だったらコイツには攻撃魔法のほとんどが通用しないじゃ無いか!
(いきなりだったが、間に合ったな)
怒りのままに行動していたが。
魔反鏡が間に合った。
今のはかなり大掛かりな魔法で。
まともに喰らっていたらそれなりに辛かっただろう。
それを反射し、相手に直撃させたのだ。
その結果に
『絶好調だな。実に愉快』
会心の究極合体魔法の発動に、彼の中のアモンも感嘆の言葉を放つ。
必要以上に喋らない自分の中の同居人のその言葉に
(そりゃあ良かった)
そう短く返し。
彼は地上に降り立った。
彼の持つ最強の技。
それを繰り出すために。
必殺の究極合体魔法――
『決めろ』
忍の意図を察したアモンのその言葉に
(ああ)
そう返しながら。
彼は腰を落とした。
(このままではやられる)
テュポーンはそれを悟っていた。
自分は今、どうしようもなく追い込まれていると。
相手は自分の言葉には全く耳を傾けようとしない。
どう説得しても、自分を抹殺する方針は変えないだろう。
(ふざけるな。何故この私が)
到底受け入れられない。
何故正義の使者である自分が、正義の使命を果たせずに命を落とさなければならない……?
一介のくだらないテンプルナイトならそういうこともあるかもしれない。
何故なら優秀では無いからだ。
でも自分は違う!
エリートなのだ。
クルセイダーなのだ……!
(神よ。私に力をお貸しください……!)
目の前に突きつけられた圧倒的理不尽。
それを切り抜けるための最後の手段。
それがたった1つだけ、彼にはあった。
(石化の息……ストーンブレス!)
石化の呪いの籠った息を吐き出す魔法である。
息を吐き出す段階で魔法の効果が終わっているためか、一般の魔法反射魔法ではこの魔法を反射することはできないはずであった。
彼はそれに全神経を傾ける。
これをしくじればもう後は無い。
絶対に成功させなければならない……!
彼は大きく息を吸い込み。
体内でその空気に石化の呪いを掛けるために精神を集中する。
仮面ライダーアモンの動きを注視し。
相手との間合いを正確に測りつつ。
そして腰を落としていた相手が。
地を蹴り、滑るようにこちらに向かって突っ込んでくる。
(来た)
その距離は瞬く間に詰まっていき。
8メートル、5メートル、3メートル……
(喰らえ!)
そして彼がそのワニの大顎を開き
ストーンブレスを吐き出そうとしたその瞬間だった。
いきなり背中に衝撃を感じた。
背中という部位は防御力が高い。
だからそれは深刻なダメージでは無かったが
集中した意識が霧散するには十分な一撃だった。
(蹴られた!?)
衝撃の中、彼はそれに気づく。
自分はいきなり、強烈な蹴りを受けたのだと。
そして反射的に後ろを振りむき
そこに……
ローブを身に纏った美女……
おそらく女神に属する悪魔が。
渾身の蹴りを自分の背中に叩き込んだことを知った。
そしてその悪魔のずっと後ろに
生贄の巫女……聖女である女。
佐上真月の姿があった。
佐上真月は右手に鞭を持ち。
厳しい目をこちらに向けている。
あの女、バインドボイスの効果から脱したのか!?
いや、それよりも……
(……馬鹿な! この女悪魔はあの女の仲魔だとでもいうのか!?)
意味が分からない。
(どうやって呼んだんだ……!? アームターミナルも無いのに……!)
あり得ない!
その混乱が
彼にとっては致命的だった。
「トリスインパクトォ!」
その鋭い気合の声が彼の耳に届いたとき。
彼は鳩尾に凄まじい衝撃を感じた。
彼の胸に仮面ライダーアモンの拳が食い込んでいた。
致命的な、死の一撃が。
その衝撃に彼はよろめき。
「があああああああ!?」
絶叫し、膝を折る。
(……決まった)
究極合体魔法トリスインパクト。
空手の高等技術「鎧通し」を火炎系極大魔法トリスアギオンと融合させた即死魔法。
決まれば確実に相手を葬れる究極の技。
彼は拳を繰り出した姿勢から構えを戻し。
残心を示した。
その結末を見届けるため。
「あああああああ!!」
そしてはじまった。
テュポーンにとっての最後の時間が。
悶え苦しむテュポーンの胸に放射状のヒビが入っていく。
忍の拳が当たった個所だ。
そしてそのヒビから、火炎が噴き出して――
「ひいいいいい!」
その事実に、テュポーンは悲鳴をあげた。
己の運命を悟ったのか。
もう自分の命は1分無いというその運命を
「どうして私が……!? 私は千年王国のために献身して来た神の戦士なのに……!」
その声は涙声であった。
正しいことをしようとした自分が敗れた。
その理不尽が納得できない。
そんな思いに満ち満ちていた。
そして彼は
「い、今なら間に合うぞ!? この私を殺すなんて呪われるぞ……?」
この期に及んで、上から目線で
忍と真月、2人に命乞いをした。
声には哀願の色があったが。
言葉は傲慢そのもので
「後悔するぞ!? 止めるんだ! 神の意志に従うんだ!」
広がっていくヒビをどうすることも出来ず。
彼は2人に向かって叫び続けた。
その意味のない懇願を。
そして彼の全身がヒビで覆われ尽くしたとき。
「死に……ぐああああああ!」
彼は噴き出した炎に全身を包まれて。
大爆発を起こし。
この世から消え去った。