真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第58話 お礼を言うなら……

「……終わったな」

 

 爆発四散したテュポーンが居た場所を見つめながら忍は呟き。

 そして変身を解いた。

 

 仮面ライダーアモンの姿から、水着を着た只の男の姿に戻る。

 

「忍」

 

 そこに真月が駆け寄って来た。

 そしてそのまま彼に抱き着いてくる。

 

 その背中にそっと手を回しながら、彼は。 

 

「……無事みたいだな。本当に生きた心地がしなかったよ」

 

 そう自分の妻が無事であったことを喜ぶ言葉を耳元で囁いた。 

 その言葉に真月は

 

「ありがとう。絶対に来てくれるって信じてた」

 

 そう言って微笑む。

 忍はその微笑みに嬉しさを感じつつも

 

「……危ないことしなかった?」

 

 そこを一応訊ねた。

 彼女の場合。

 

 自分の夫が必ず助けてくれると信じていたなら。

 そのまま夫の救出を黙って待っているような真似はしない。

 

 必ず、自分で出来る「夫への手助け」を実行するはず。

 忍にはその確信があった。

 

 だから

 

「……あいつらの聖典をネタにして、徹底的にメシア教をディスってあげたのよ。そしたらあいつら案の定激怒して、運転どころではなくなったんだよね」

 

 こんなことが返って来ても。

 正直「やっぱり」としか彼には思えなかった。

 

 自分の行った命知らずの策について、真月はあまり気負った様子は見せなかった。

 やってやった、という小気味良さすら感じていそうなその様子。

 

 これには 

 

「……そりゃキミは生け捕りが前提だから殺されないとは思うけど」

 

 忍の声に苦さが混じる。

 自分の一番大切な人間の無謀な行為。

 

 それに対する苦言。

 

「殺されなくても、報復で暴行を加えられる可能性あったよね?」

 

 そんな夫の言葉に

 

「うん。そうね」

 

 真月はあっさりとその可能性を認めた。

 

(知っててやったってことね)

 

 彼はさらに苦いものを感じつつ

 

「……やめて欲しいんだけど」

 

 そう、本音を口にすると。

 真月は 

 

「でも、そうやって逃走を妨害して時間を稼がないと、あなたが追い付く助けにならないと思ったし」

 

 正面から。

 夫の苦言を「聞き入れません」という態度を示す。

 

 彼は妻を説得するのを即座に諦めた。

 彼女は彼女で最善手がそれだと思ったからしたんだろう。

 

 そして彼女は、自分が正しいと信じることは曲げない女性で。

 彼はそこが好きだった。

 

 だから

 

「……絶対に俺が助けに来るって信じてたわけ?」

 

 彼女の決断の根拠を訊ねる。

 時間を稼ぐということは、そういうことだろう。

 

 それに対して彼女は

 

「当たり前でしょ?」

 

 さも当然のように、そう返し。

 彼女はその問答を締めくくった。

 

 そしてその言葉は

 

 彼の中の妻への愛情を増幅させて。

 彼に真月を強く抱きしめさせた。 

 

 

 

(向こうも終わったか)

 

 明は自分の妻がエキドナを撃破したすぐ後。

 ほぼ同時に向こうの夫婦もテュポーンを撃破したことに気づいた。

 

(さすがに強いな)

 

 唸らざるを得なかった。

 

 あの男……佐上忍は空手の達人で。

 そんな男に魔王クラスの大悪魔が合体し、悪魔人間になっている。

 

 悪魔人間の強さは総合力だ。

 それをあの男を見ると納得せざるを得ない。

 

(俺の妻は、魔王ベルゼブブと合体してその意識を保った。……そこは素晴らしい。だけど……)

 

 あの男と違って、格闘技の達人では無いのだ。

 なので正面から戦えば、おそらく勝つのはほぼあちらだろう……

 

 それが否定できないことが彼は少しだけ悔しかった。

 

 そこに

 

「あなた」

 

 彼の妻が彼の傍まで飛んで来た。

 滑るような滑らかさで。

 

 昆虫の飛行特有の動き。 

 

 そのまま彼女は、夫の仲魔の霊獣コウの背中……夫の後ろに乗って

 

 変身を解く。

 

 仮面ライダーの姿から、白いビキニを身に着けた極上の女の姿に変化する。

 その感触を背中に感じつつ

 

「……ご苦労さん。アイスエイジスマッシュを綺麗に決めたな。肉弾戦もなかなか様になってたと思うぞ」

 

 そう妻を労い

 妻は

 

「相手が氷結吸収相性で、正面から受け止めるという判断をしてくれたお陰ですよ」

 

 そう言って、究極合体魔法がまともに決まったのは運が良かった面があると呟いた。

 そんな妻の言葉を聞き

 

(そうでもないと思うぞ?)

 

 彼がそう思ったとき。

 

 

「なぁ! あんたたちー!」

 

 

 地上から、男の叫び声。

 公務員夫婦の佐上忍の声だ。

 

 その声はとてもよく通り

 

 

「あんたらのお陰で助かったー! ありがとうー!」

 

 

 上空に居る彼らにもハッキリと聞こえた。

 明は

 

 

「気にしなくて良いー!」

 

 

 同じぐらいの大声でそう返し

 そこに続けて

 

 

「だったらー!」

 

 

 明の後ろに居る夏子が

 

 

「今日いっぱいは、あのビーチで遊ばせてちょうだーい!」

 

 

 どさくさ感覚で、ビーチの使用許可を2人に求める。

 明は驚いて、後ろに座る妻を見る。

 

 彼の妻はそんな夫には目を向けないで

 少し、焦った表情を浮かべていた。

 

 抜け目のない要求。

 お礼を言うなら遊ばせろ。

 

 

 そんな、夏子の子を持つ親としての要求には……

 

 

 下の2人はダンマリであった。

 助けられた手前「それとこれとは話が別だ」とも言い辛い。

 かと言って「分かった、許可する」とも言えない。

 

 その結果の沈黙なのだろう。

 なんだか対応に困っている雰囲気を感じた。

 

 それを見て明は

 

(実質的にOKってことかな)

 

 そう判断する。

 

 多分そういうことだろう。

 許可したいけど、言えない。

 

 だったらそうさせてもらおう。

 貰えるものは全部貰う。

 

 それがガイア教徒だ。

 

 彼らはそのまま霊獣コウに命じて飛び去った。

 彼ら2人の子供が待っている場所に向かって。

 

 そのまま、海遊びを再開するつもりであったが……

 

(さすがに、場所は変えよう)

 

 遊ぶ場所の変更。

 これは必須だ。

 

 ……彼らの立場も考えねばならないからだ。

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