真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
第60話 襲撃の真相
京都に帰りつき。
そして、伊勢であったことを報告。
クルセイダー2体の襲撃を受け、それを撃退したことを報告。
隠すわけにはいかないから。
その際、ガイア教徒の協力を得たことも報告書に書いた。
……かなり迷いはしたが、これも隠すわけにはいかない。
隠したことにより、自分たちの立場が悪くなる可能性を考えると、書かない選択肢は無かった。
「……お前たちの行動が読まれていた?」
自分の席に腰を下ろし。
足を組みながら提出した報告書を目の前で読みつつ。
ライドウがしかめ面で呟く。
「どうもそうとしか思えなかったです」
「狙いすました様に伊勢に来たわけですし」
忍と真月はライドウの前で立ち、年下の上司に自分たちが経験した問題について思うところを口にした。
ライドウはしかめ面を崩さずにそれを聞き。
最後に大きく頷いて。
「……まぁ、無事でよかった。君らが奴らの手に落ちたら、私の決断が間違いであったという結論になる」
そう淡々と言い。
立ち上がった。
2人は上司に道を譲るように一歩下がる。
「すまない」
そしてそう一言言って。
ライドウは、彼らに割り当てられた部屋から出て行った。
おそらく彼らの書いた報告書から、今後の対策と原因究明のために動くのだろう。
(この京都御所にスパイがいるのか……?)
ライドウの後姿を見送りながら。
忍はそう、なんとなく考えた。
魔法という手段がある以上、必ずしもそうとはいえないが。
その可能性は普通は考える。
そして。
その答え合わせは
1週間後に訪れた。
その日、京都の街に放送が流れた。
『……本日正午より。京都体育館運動場にて。この京都御所に災いを呼び込んだ大逆者の公開処刑を行います。この人類最後の希望である京都の街を、己の欲望を優先させ危機に陥れた不届き者の最期です。ご興味のある方は是非ご覧ください』
(えっ)
初めて聞く内容の放送だった。
忍は隣で鞭を振るう練習をしている妻と顔を見合わせた。
(公開処刑なんて……)
あまりにも野蛮である。
未開の国の風習だ。
しかもその場所はここだった。
彼ら2人は、その京都体育館運動場で日々の訓練を積んでいたのだった。
一体、誰が処刑されようとしているのか?
野蛮だから。
あまりにも趣味が悪いから。
そんな理由で退散してはいけないのではないか。
彼ら2人はそう思った。
その理由は……
大逆者。
帝を害そうとした人間につけられる呼び名である。
そこであった。
普通の罪を犯した人間ではない。
政府の人間の1人として。
その真相を知る必要があるのではないか……?
そう思ったのだ。
そして彼らは。
運動場の外に出て。
時間が過ぎるのを待った。
正午は約2時間後。
待てないほどの長さではない。
食事はどうしようか迷ったが、取らないことにした。
罪人とはいえ、人が殺される前に食事なんて。
あまりも下種に感じるから。
そして1時間過ぎた後。
政府の車が多数この京都体育館の運動場近くにやってきて。
駐車場に駐車せず、作業に都合よい場所にバラバラに停車した。
そんな停め方をしたら外から人が運動場に入りにくいだろう……
そう思った。
だけど
ひょっとしたら、それを狙っているのかもしれなかった。
この公開処刑は、暫定政府の指導者たちが嬉々としてやっているものではないから。
入りにくければあまり中に人は集まらない。
遠巻きに、運動場を囲む金網の外から覗くだけに留まる。
そういう状況を作りたいのかもしれない。
そしてその30分後。
政府の装甲車が運動場にやって来た。
その装甲車から……
若い女と、中年の男が下ろされて来た。
若い女の方は普段着で。
中年の男は、白い服を着せられていた。
なんだかそれは……
江戸時代の斬首刑を受ける人間の衣装を思わせた。
ざわざわ。
ざわざわ。
運動場のフェンスの外に。
かなりの人が集まって来ていた。
怖いもの見たさだろうか?
放送で大逆者と呼ばれた罪人が、一体どんな者なのか。
罪人たちは並べて座らされていた。
2人とも、縄で縛られている。
若い女は青褪めていた。
だが、落ち着いていて。
穏やかに目を閉じて何かをぶつぶつと呟いている。
そして中年の男の方はガタガタと歯の根も合わないほどに震えていた。
(……こいつらは一体何者で、一体何をやったんだ?)
その発表は未だ無い。
それはいつなのか……
そう思い、忍は腕時計を確認し、今の時刻を目にしたとき。
時計の針が正午を差していた。
その瞬間
『公開処刑を行います』
放送が始まった。
その内容は
『――本日処刑される大逆者は……』
元暫定政府職員。
罪人の素性と、その詳しい罪状について。
それは……
この罪人は、メシア教徒と通じ。
この京都御所における重要情報をメシア教徒に伝えた。
その罪により公開処刑に処されることとなった。
……らしい。
さすがに、わかる。
(内通者がいたんだ)
肝が冷える。
この街は希望だ。
希望の街を、自ら滅ぼす方向に動くもの。
そんな奴が居たなんて。
肝が冷え。
同時に
(ふざけやがって!)
……激しい怒りがこみあげてきた。
許せない。
「クズが!」
誰かが叫んだ。
怒りの籠った声だった。
その声を皮切りに
「京都が嫌いなら1人で出ていけカス!」
「お前みたいな奴がいたから、大破壊が起きたんだ!」
罪人に向かって、激しい非難の声が沸き上がって来る。
忍も声こそあげなかったが、同じ気持ちだった。
そこで
「仕方なかったんだ!」
罪人の男が声をあげた。
男は顔をくしゃくしゃにしながら涙を流し
「彼女がはじめて俺のことを好きって言ってくれた女性だったんだ! 運命の相手がたまたまメシア教徒だっただけなんだ!」
弁解をはじめた。
構図が見えてくる。
つまり
あの男が、メシア教徒のハニートラップに引っ掛かり。
そして忍と真月の伊勢出張の情報をメシア教徒に洩らし。
そのせいで、先日のあの襲撃が起きたのか。
そのせいで、危うく妻が拉致されそうになった。
彼の脳裏に、あのときの……
クルセイダーたちに、妻を連れ去られそうになったときの記憶が蘇る。
その瞬間。
(何が仕方ないだ! 絶対に許さない!)
憎悪が吹き上がり、叫びそうになった。
だが
そのとき。
彼の妻が、彼の袖を引いた。
ハッとした。
顔を向けると、真月が悲しそうな顔で彼を見ていた。
それで一気に冷静になった。
……怒りに呑まれ、自分はあの男の首が飛ぶのが待ちきれない気分になっていた。
この公開処刑、刀による斬首で行われるのか。
刀を持った政府の職員が、刀に水を掛けて清める儀式をはじめていた。
おそらく、あと数分経てば。
ここに2つの生首が転がるのだろう。
それが見たくてたまらないという気持ちになっていた。
だけど……
あの男の死を心から歓迎している自分がいる。
そんな俺を、真月はどんな気持ちで見ているだろうか……?
そこに気が付き。
「……悪かった。あと、ありがとう」
「ううん。いいよ……」
ニコリ、と真月は彼に微笑む。
……これ以上、ここに居ない方が良いと思った。
2人はそっとそこを離れた。
そんな彼らの後ろで。
人々の歓声が聞こえて来た。
男の大きな泣き声と共に。
……最初はメシア教徒から処刑されたのかもしれない。