真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「八十稲羽市ってどこですか?」
忍は聞いたことが無い地名であった。
そこを訊ねると、ライドウが答える。
「Y県の田舎町だ」
Y県……
忍たちが未だ行ったことのない土地であった。
無論、観光目的で行くわけではない。
「まぁ、とりあえずコレ読んでー」
菅野がA4の紙に印刷された文書を2人に手渡す。
そこにはかつてその場所で何があったのかを簡潔に纏めてあった。
それは今から5年前。
Y県の田舎町である八十稲羽市に、天津神イザナミが出現する事件が起きた。
小さな田舎町に妖鬼ヨモツイクサ、鬼女ヨモツシコメの大群が出現し。
周辺住民を黄泉の世界に引き込みはじめた。
そして現地住民の要請を受け、国が対処に向かい、その荒ぶる天津神を鎮め。
お祀りをすることでその事件は解決した。
その後、国は毎年勅使を派遣し。
それは現在も続いている。
(そんなことがあったのか)
知らなかった。
おそらく、報道規制がされたのだろう。
忍は文面を読みながらそう、想像した。
すると、隣で同じ文面を読んでいた彼の妻が
「イザナミ様は何故荒ぶったのでしょうか?」
そう言って、学生よろしく手を挙げる
「そこは色々あったらしい。一言で言えば、現行の日本国民の在り方が気に障ったようだ」
ライドウはそう、真月の問いにざっくり答えた。
何が原因だったのかは言いにくいのかもしれない。
あり過ぎて言語化が困難だとか。
複雑すぎて説明難易度が高いとか。
だが、それを説明しないということは
「……今はそこは大丈夫なんですよね?」
「無論だ。だから書いていない」
そういうことだろう。
書く必要が無いと判断されたから、余計な情報を書かなかったのだ。
……ひょっとしたら、秘匿したい理由だったのかもしれないが。
まあとりあえず、このことはこれ以上訊かない方がよさそうだ。
2人はそう判断し
「分かりました。すぐに出発準備を整えます」
そう言ってから一礼し。
2人はその場所から退室した。
そして御所を出て。
彼らはタクシーを拾い、京都の街の結界の境界に向かう。
そこでタクシーを降りてから
「一応、現地には明日向かう話になってるけど」
一般人に聞かれるとまずい、仕事の話をはじめる。
忍は真月に「今日から動くのか? 動くのは明日からで良くないか?」
そういう意味で、そう訊ねたのだが
真月は
「……先に伊勢で合体をしておきたいの。念のために作りたい悪魔があるのよね」
そう言って、ターミナルのある場所に向けて歩き出す。
京都結界の境界。
それは一目瞭然で。
結界に守られたエリアと、そうでないエリア。
道路の整備状況が違うのだ。
結界が無くなると同時に、道路の整備が全く行われていないことが容易に分かる状況になっていた。
破損した舗装も、砕かれた信号機もそのまま。
……ここから先は悪魔が出現する危険なエリア。
だが、2人は大して気負わずに進んでいった。
彼ら2人にとって、別に脅威では無いからだ。
「佐上様。本日は予約をいただいておりませんが、合体目的でしょうか?」
そして伊勢にやって来て。
まっすぐに業魔殿に向かい。
2人はまた、あの表情のないショートカットのメイドによる応対を受けた。
今日は宿泊予約が無いから合体をしにきたのか? と。
真月はそれに頷いて
「ええ。どうしても作りたい悪魔がありまして。……お願いできますか?」
そう訊くと
メイドは
「どうぞこちらに」
そう言って。
手元のパソコンのキーボードを叩き。
エンターキーを押すと同時に。
ゴゴゴゴと。
業魔殿エントランスの床の一部が開き、そこに地下へと続く階段が出現した。
メイドの案内で、この業魔殿の悪魔合体施設に案内される。
それは螺旋階段で、かなり地下深くにあるらしく。
階段は暗かった。
そこを懐中電灯の明かりを頼りに進んでいく。
「やっぱりここにも国のお金が入ってるんですか?」
階段を降りながら、なんとなく真月がそう訊ねた。
ふと気になったのだ。
だが、懐中電灯を使いつつ先行するメイドは
「支配人の私費です」
そう言って、国の関与を否定した。
どうも、相手の出自を問わずに悪魔合体を手助けをすることをずっと続けて来たらしい。
ここの業魔殿は暫定政府が主な利用客だが、他にも同じような施設があり。
そこはここのような使われ方をしていないらしい。
……相当、色々あったことが想像できる。
だけど、それは2人には関係ないことで
「……そうなんですね」
そう言って、真月はその話題は流した。
地下施設に辿り着く。
そこは邪教の館より少し広めの悪魔合体スペース。
合体ポッドの形は同じであったが、中央の合体悪魔が出現するスペースが少し違っていて。
魔術的な要素がほぼ無く、ほぼ機械であった。
魔術的要素と呼べるのは、中央スペースの床の部分にうっすらと魔法陣が描かれていることが視認できるくらいである。
「東北の邪教の館とは違いますね」
「最新式です」
そう言って、メイドはオペレーターの立ち位置なのか。
部屋の隅にあるパイプオルガンのようなものの前に向かい、そこの席に腰を下ろした。
真月はそれを尻目に。
パイプオルガンの反対側にあるデスクトップパソコンの前に向かい。
そこでソフトを立ち上げ、検索をはじめた。
妻のその行動に
「何を調べてるの?」
そう忍は訊ねた。
すると真月は
「……霊鳥アルゴスの合体レシピ」
そう短く、一言で答えた。