真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第65話 田舎町で遭遇したもの

「ただいま戻りました」

 

 合体材料が揃ったので。

 忍たちはホテル業魔殿に戻って来た。

 

 受付で何かの作業を行っていた赤い目のメイドは

 

「おかえりなさいませ。早速合体を行いますか?」

 

 そう訊ねてくる。

 彼らにはのんびりと休憩している時間は無かった。

 

 準備が出来たなら可能な限り速やかに、目的地である八十稲羽市に向かう必要がある。

 なるべく巻きで動かないといけない。

 彼らはここまでの流れでそういう心境になっていた。

 

 時間を置いたせいで、メシア教徒に付け入る隙を与えてしまったら元も子もないではないか。

 

 なので

 

「お願いします」

 

 ……答えはこれ以外無い。

 

 

 

 赤い目のメイドはその言葉を受け、手元のパソコンキーボードを操作。

 合体施設への道を開いた。

 

 

 そして暗い螺旋階段を降り、地下に入り込み。

 

 地下合体施設に辿り着いて。

 

 合体させる3体の悪魔を真月は呼び出した。

 そして

 

「あなたたち3体を合体させるから」

 

 床に描かれた3つの魔法陣から出現したその3体に、合体ポッドに入るように命じる。

 

「よろしくお願いね」

 

 

 ……こうして、悪魔合体の準備が完了する。

 

 3身合体だ。

 合体ポッドに入っているその3体は

 

 

 アラビア風の衣装を身に纏った有翼の乙女……妖魔ペリ。

 

 そして、小さい昆虫の翼を持つ風の妖精……精霊シルフ。

 

 最後は先ほど、彼女が悪魔ナンパしてきた龍王ナーガ。

 

 

 ナーガは最初の召喚でいきなり合体に回されたことに、ショックを受けていた。

 しかし、悪魔召喚契約というものはそういうもので。

 諦めてもらうしかない。

 

 

 そんな悪魔たちが納められた3つの合体ポッド。

 そのそれぞれに分解液が満たされて、中の悪魔たちが情報に分解される。

 

 

 そこに赤目のメイドがパイプオルガンを演奏した。

 荘厳な演奏であった。

 

 

 優れた仲魔が合体されそうな気がした。

 

 

 分解された情報が、中央のスタイリッシュな台座に集まっていく。

 集められた情報から、台座の上に非常識な大きさ光の玉が生まれる。

 

 そして膨れ上がった光の玉は明滅を続け、その周期が高速になった瞬間……

 

 あたりは光に包まれた。

 

 その光が消えた後。

 その場所に一羽の霊鳥が出現する。

 

 合体が完了した証である。

 

 

 

 そこに出現した霊鳥の姿は。

 

 クジャクに酷似している姿だが。

 身体の模様に違いがあり。

 本物の孔雀より派手な体色に見えた。

 

 そしてその尾羽にはギョロギョロと蠢く目玉がついている。

 

 真月たちが見守る中。

 その霊鳥は新しい自分の主人に目を向け。

 

 大きく吠えた。

 獣のように

 

 こんなことを

 

「うぉれは霊鳥アルゴス! うぉまえは白樺派かァァァァァァァ!? うぉまえはドストエフスキーとかキライーとかどっちだァァァ!?」 

 

 

 

 そして彼らは。

 ターミナルを経由してY県の田舎町八十稲羽市に向かった。

 時刻は夕刻近かったが、決行した。

 

 

 

「うぉ、うぉれは、気にしてねぇぇぇ! マッドで悪いかぁぁぁ! うぉまえこそ、マッドじゃないから、ちょっと安心しろぉぉぉ!」

 

 彼らの傍で、霊鳥アルゴスは意味不明の叫び声を上げ続けている。

 騒がしいが仕方ない。

 

 警戒用に呼び出した悪魔であるわけであるし。

 

 だが

 

「なぁ」

 

 忍は隣を歩いている妻に問いかける。

 この悪魔、本当に大丈夫なのか?

 そういう意味合いを込めて。

 

 すると

 

「人間の身体から鳥類の姿になる際に、精神に異常をきたしたんでしょ」

 

 真月はそう、何でも無いように言った。

 

(いや、それはそうなのかもしれんけど……)

 

 彼が訊ねたいのは、この悪魔が信頼に足るものなのか?

 そういうことなのであるが

 

 それに対しては

 

「心配しなくても、これは『気にしなくていい』って意味だから、敵が近くに居ないって意味よ」

 

 彼女は、しれっとそう答えた。

 

 何でこれで分かるんだよ?

 そう内心思いつつも

 

 忍は自分の妻の知性を信じていたので。

 

(まあ、彼女が大丈夫っていうんだから大丈夫なんだよ。きっと)

 

 そう思うことにした。

 

 

 

 今、彼らが訪れているこの田舎町……八十稲羽市。

 かつては高校が2つある、人が生活していた街である。

 

 ここは商業施設がほぼ全滅していた典型的な田舎で、大破壊前は大型商業施設ジュネス以外ではまともな買い物ができないような状態だったようだ。

 

 そして大破壊が起きた後。

 ここの土地から人が消えた。

 

 そのため、今はこの土地は無人の土地である。

 

(……まったく、誰の姿も見えない)

 

 歩けど歩けど、誰の姿も見えない。

 ゴーストタウンである。

 

 良い気分にはならない。

 

「……まずはどこに行くんだっけ?」

 

 忍は真月に訊ねる。

 嫌な気分を振り払うように。

 

 問われて彼女は

 

「……辰姫神社ね。事件の後、イザナミを祭神として祀るようになった、って貰った資料に書いてたし」

 

 落ち着いた声でそう返した。

 彼女はこの街の様子を割り切っているのだろうか? 

 

 

 

「あ、バス停」

 

「ホントだ」

 

 目的の辰姫神社に向かう道で。

 彼らはバス停を発見した。

 

 今は何の意味もない、標識である。

 

 それを見て

 

「昔はここもバスが通っていたのかしら」

 

「どうだろうね……でも、懐かしいな」

 

 彼らは懐かし気に語り合う。

 この田舎のバス停の標識で。

 

「バスで旅行したときを思い出すよ」

 

「不便なのが良かったわね」

 

 本当に懐かしそうに。

 わずか2年前の世界の話を。 

 

「バスの中に電光表示が無くて、運転手のアナウンスしか無いバスあったよな」

 

「あったねぇ」

 

 当時を思い出したのか。

 真月は微笑んだ。 

 

「運転手のアナウンス聞き逃したら、今どこにいるのか分からなくなって詰んじゃうなんて」

 

「あれは緊張したな」

 

 フフ、と楽しそうに思い出を語り合う。

 忍は思った。

 

(楽しかったな)

 

 平和だったときは。

 

 今は無い、何でも無い日常。

 それをもう誰もいなくなった呉服店やら、豆腐屋やらの残骸というか廃墟を見ながら、思いを馳せる。

 

 この田舎町にも、かつてはそんな人たちがいたのだ。

 自分たちが旅行で訪れた町の住人のような、何でも無い人たちが。

 

 

 そして。

 

(そろそろ神社か……?)

 

 神社のようなものが見えて来て。

 そう思ったとき。

 

 

 ……霊鳥が騒ぎ出した。

 

 

「うぉまえら、神社をころしたぁ! 真月さんは悲しいぞぉぉぉ! うぉれ、うぉまえらと、警戒するぅぅぅ! うぉまえ、ラーメン屋に、報告しろっ!」

 

 

 この喚き声を聞き、真月の顔色が変わった。

 そして緊張した面持ちで

 

「忍……変身して」

 

 そう短く指示を出す。

 

「へ……?」

 

 だが突然の真月の言葉に。

 対応できずに、忍は固まった。

 

(え……どういうこと?)

 

 何故変身しなければならないのかが分からない。

 

 

 そのときだった。

 

 

「そこな幼女! ワシのギンギンの地獄突きで昇天させてくれるわッ! グワーハッハッハッハ!」

 

 下品な声と共に、神社と思しき場所から何かが飛び出してきた。

 

 巨大な存在が、誰かを追いかけている。

 

 追われているのは女の子のようだ。

 年齢はおそらく一桁。

 幼女である。

 

 ちょっと長めの髪を、ふたつに結んでいる幼女……

 

 愛らしい子だった。

 服装はピンクのワンピース。

 こんな時代なのに、小綺麗な格好で。

 

(……何故ここにこんな子供が?)

 

 混乱してしまう。

 

 だが。

 

 その幼女を追いかける存在に気づいたとき。

 彼はそんな違和感が吹っ飛んでしまった。

 

 そんなことは些細なことである。

 

 ……追いかけているのは

 

 

 緑色の巨大なチ〇ポだった。

 

 

 正確に言うと、触手の生えた全長4メートルはある緑色チ〇ポ。

 そうとしか形容しようがない。

 亀頭の部分が頭部のようで、そこから話しているようだ。

 

 

 忍と真月、2人は固まってしまった。

 一体、あれは何なのか?

 

 そこに霊鳥の叫び声が響く。

 

 それは……

 

「うっ! うおぉぉぉぉっ! まっ 魔王がぁぁぁ~っ! 魔界から! 魔王マーラがぁぁぁ! せっ……せんおぉ洗脳されるっ」

 

 ……魔王。

 

 どうもあれは、魔王らしい。

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