真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「変身!」
即座に忍は変身した。
迷いはなかった。
ここは変身以外あり得ない。
どう見ても異常事態であり、変身しないとマズいのは誰でも分かる。
両手を腰の前でクロスし、手抜きなしで完全に変身を行う。
そして緑色の光と共に、彼は仮面ライダーに変身をした。
「……そこの卑猥な悪魔! そんな小さな子に何をするつもり!」
そして真月は素早くアームターミナルを操作し。
悪魔召喚のコマンドを打ち込み。
鋭い声を悪魔に向ける。
目の前の卑猥な姿をした悪魔は
「知れたこと! ワシの力を見せつけ、極楽にイカせてやるのよ! ガーハッハッハッハ!」
あまりにも下品な言葉を発しながら大笑いする。
そこに緊張感は無い。
……油断している。
だがそれは傲慢故ではなく、並外れた実力故にそう見える。
そんな予感がした。
この悪魔、言動に品性も知性も感じられないが……
とんでもない存在なのは間違いない。
「魔王マーラ……」
真月はその名を呟いた。
霊鳥アルゴスがそう言ったからだ。
この悪魔が出現する前に。
そう言えば。
仏教における悪魔の存在が「マーラ」と呼ばれていた気がする。
それがこの悪魔なのか。
(仏教が問題視する煩悩そのものの姿……妙な納得感があるわね)
そんなことを彼女は、この悪魔から逃げていた幼女を背後に庇いつつ思う。
そして地面に召喚の魔法陣が描かれる。
そこから姿を現す有翼の戦乙女。
妖魔ヴァルキリー。
彼女の切り札は女神ヘラではあるが、ヘラは召喚時間制限がある。
ここで呼ぶのは良くないとの判断か。
「お呼びですかマスター!?」
召喚魔法陣から出現したヴァルキリーは、羽ばたいて飛び立ちながら剣を抜き。
敵対者である悪魔……魔王マーラに目を向けてギョッとした表情を浮かべた。
「悪いわねヴァルキリー……あれと戦うのを手伝って」
流石に少しすまなさそうな響きが真月の声に混じる。
……あの悪魔に女性悪魔を差し向けることに、抵抗を感じるのだ。
あんな、下品極まりなく煩悩丸出しの姿をした悪魔に立ち向かわせるなんて。
「……ほほう。ワシが蹂躙する対象を増やすとは、なんという殊勝な心掛け」
そして魔王マーラは真月の悪魔召喚に対して全く問題視せず。
その触手をヴァルキリーに向かって伸ばす。
それをチャンスと見て。
同時に忍は飛び出した。
あの悪魔は女悪魔であるヴァルキリーを捕獲する方向に神経を割く。
その隙を突くつもりだった。
しかしそのとき。
『危ない! しゃがめ!』
彼の頭の中にアモンの警告が響いた。
反射的に従って身を低くした瞬間。
彼の頭上を、凄まじい波動が過ぎて行った。
「……男はお呼びで無いわ。黙っているがいい……モブ男が」
魔王マーラの冷たい声。
今の波動はこの悪魔の衝撃魔法か。
(なんてレベルだ……!)
直撃すればただでは済まない。
それは明らかだった。
魔王族の悪魔は、様々な宗教や神話で主神の敵として力を振るった悪魔たちだ。
それは伊達では無いということか。
戦慄する。
(……どうするんだ? まさかこんな悪魔に遭遇するなんて)
想定外のとんでもない敵に、彼は必死で考える。
自分たちはどうすれば良い……?
「ふむ。ちょっと工夫するかの」
焦る忍たちを他所に、魔王マーラは落ち着き払っていた。
そしてそんな呟きと共に。
ブチブチと、周辺の電柱からその電線が千切れる音がした。
(……念動力!)
発電所が止まっている関係上、感電の恐れは全く無いが。
そんなことよりもその事実が問題である。
魔王マーラは念動力すら備えている。
見た目に威厳は全く無い。
だが、その実力は恐ろしく高い。
とんでもない相手……
「さて、縛って料理してやろうかの」
魔王マーラのその言葉と共に。
妖魔ヴァルキリーに引きちぎられた電線が複数襲い掛かる。
ヴァルキリーは大きく羽ばたき
それに捕らえられぬようにその機動力を発揮する。
「グアーッハッハッハ! 逃げろ逃げろ! その方が燃えるわい!」
心底この状況を愉しみぬいている。
それが窺える魔王の哄笑。
(究極合体魔法を決めれば、おそらく勝てる)
忍はそう思い、接近を試みるが。
「やかましいな、モブ」
すかさず飛んでくる衝撃魔法の波動。
接近しようにも。
すぐにそれを察知され、衝撃魔法で牽制を掛けられる。
近づけない。
「忍!」
真月が叫んだ。
切羽詰まった声だった。
彼は振り向いた。
そして青くなる。
真月が宙づりにされていたのだ。
魔王マーラにその足を触手で捉えられ、逆さづりに。
真月は抵抗で、その手にAR15を構え即座に魔王に向けて発砲する。
スカートが捲れ上がって、白い下着が丸見えになったが彼女は構わなかった。
それどころではない。
だがその銃弾は
全て途中で空中停止し。
ばらばらと地面にばら撒かれた。
(念動力で銃弾すら止めるだと……!)
どうすればいいというのか?
絶体絶命だ。
そこに
「……フム。女……さてはお前はそこの男の妻か何かじゃな?」
魔王マーラはそんな指摘をした。
彼女の振る舞いからそれを察したらしい。
「だから何だと言うのッ!?」
宙づりにされた彼女は、銃を構えたままそう叫ぶように返す。
その顔には追い詰められた色がある。
そんな彼女の様子を愉しむように
魔王は言った。
「……ならば、お前の愛する対象を今日からワシに変えてやろうぞ!」