真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第68話 堂島奈々子

(とてつもなく強大で凶悪な悪魔を仲魔にしてしまった)

 

 真月は召喚契約を終えた後。

 自分が魔王クラスの大悪魔の契約者になったことを実感し。

 

 恐ろしさを感じた。

 

 悪魔使いとしては

 

 魔王、魔神、破壊神、邪神。

 

 この4種の悪魔たちは別格の存在である。

 いずれも強力な種族で、元となる伝承や神話でも強大な存在として描かれている存在だ。

 

 自分はそんな悪魔のうちの1体を仲魔としたのだ。

 

 畏れのようなものを感じた。 

 

「真月、やったな」

 

 だが彼女の夫は、そんな彼女を称賛する。

 彼自身は悪魔使いではない。

 なので、自身の妻が悪魔使いとして上のステージに昇ったことを純粋に「祝福すべきこと」と捉え、称賛する。

 

 彼女自身はそれが嬉しくもあったのだが。

 

「ありがとうあなた」

 

 礼を言いつつも

 

「……いきなり勢いで、こんな強大な悪魔との契約を結ぶことになるなんて」

 

 そう呟くように言った後

 

「全く想定してなかったから、なんだか不安になるわ」

 

 その自身の胸の内を吐露した。

 忍はそんな妻の言葉に

 

「そうか。……まあ、俺が傍にいるから」

 

 力に振り回されそうになっても、俺が傍で見ている。

 彼は自身の妻にそう伝え。

 

 その言葉を貰った彼女は

 

「……うん。お願いね」

 

 そう、夫の気持ちを汲み取り微笑んだ。

 

 そして

 

 

 ……もう1つの問題に向き合う。

 彼女は後ろを振り向いた。

 

 

 このゴーストタウンと化した田舎町で遭遇した、この幼い女の子のことだ。

 

 幼い女の子は、不安そうな顔を彼女らに向けていた。

 

 

 見た感じ年齢一桁の幼い少女。

 

 髪の毛を後ろで2つに分けて括っており、おさげにしている。

 着ているものはピンクのワンピース。

 

 良く似合っている。

 似合ってはいるが。

 

(なんか大破壊前の普段着みたい)

 

 真月は思う。

 なんでこんな、場違いな子供がここに居るのか……?

 

 とはいえ。

 この子供はあの魔王に追われていたのだ。

 

 被害者なのは間違いない。

 

 だから彼女は

 

「えっと……あなた、どこから来たのかな?」

 

 とりあえず、信じることにした。

 あのような凶悪極まりない存在に追い回されていた子供が、悪魔の化身であるなんて。

 とても思えなかったから。

 

 そんな真月の言葉に。

 少女は悲しそうに眼を逸らした。 

 

 そして

 

「……昔、ここに住んでた」

 

 そんなことを小さく呟く。

 微妙に答えになっていない。

 

 真月はその言葉を聞き

 

「昔は? ……つまり今はここには住んでないの?」

 

 さらにそう訊ねると

 

 少女は小さく頷いた。

 

 ならば、この少女はどこから来たのか? 

 

 不自然であったが。

 

 彼女の脳裏に、魔王マーラの姿が過る。

 この少女は魔王に追い回されていたのだ。

 

 あれが弱小悪魔であったなら、自分たちを騙すための狂言であったという可能性もある。

 だが、そうでは無かった。

 むしろ普通は、この少女を見捨てて逃げる方が自然な相手。

 魔王は役割としては適当ではない。

 やるならもっと、勝てる相手を用意すべきだ。

 

 つまり狂言として成立しない。

 

 だからきっと何か、複雑な事情があるのだろう。

 

 それをこの年齢の子供に説明を強要するのは酷ではないだろうか?

 

 なので

 

「……お名前は?」

 

 真月は疑問を飲み込むことにした。

 些末なことに拘って、確実に助けを求める子供を見捨てるようなことは、彼女はしたくはなかったのだ。

 

 真月のその言葉に

 

「堂島奈々子、です……」

 

 堂島奈々子。

 彼女は自分の名前をそう名乗った。

 

 

 

 

「ここが、昔住んでたお家」

 

 忍と真月は菜々子の好意に甘え、彼女がかつて住んでいたという家にやって来た。

 人が住まなくなると家は傷むというが、まだ大破壊が起きて2年しか経っていない。

 

 住むことに不安があるほどの劣化は無いのではないだろうか?

 

 案内された家は2階建ての一軒家で。

 表札に「堂島」とあった。

 

 見たところ、住むことに不安を覚えるような劣化は無いように思えた。 

 

「上がらせてもらっていいかな?」

 

 玄関の引き戸に手を掛ける前に。

 忍は元家主の子に確認する。

 

 菜々子がコクンと頷いたので、忍はその引き戸を開けた。

 

 鍵は掛かっていなかった。

 

 侵入者を少しだけ疑ったが、玄関に靴はなく。

 

 廊下には埃が積もっていた。

 

 ……これはどう見ても無人である。 

 

 

 

 菜々子の家は普通の家で、お世辞にも広い家と言える家では無かったが。

 屋根のある場所で眠れるのはありがたい。

 

 最悪野宿を覚悟していた2人には、それで充分ありがたかった。

 

 寝泊まりする部屋として、彼らは2階を選択した。

 

 2階は普通なら、いざというときの逃亡に不都合な場所であるが。

 窓から脱出するという選択肢が容易である彼らにはむしろ、1階からの侵入者に気づいて準備する時間を稼げる2階の方がありがたいのだ。

 

「……ここ、お兄ちゃんの部屋だった場所だよ」

 

 そして2階の部屋に案内してもらったとき。

 菜々子はそう、少し寂しそうに言った。

 

「そうなんだ……」

 

 真月はその言葉に込められている想いを想像し。

 そう返して。

 

 それ以上は聞かなかった。

 言いたいこと、話したいこと。

 そして話せること。

 

 それらは両立することもあるが、別になることもあるのだ。

 

 

 

 案内された部屋は、そんなに大きな部屋では無かった。

 木製のローテーブルとベッド、そして黒い2人掛けソファがあるだけの、飾り気の無い簡素な部屋である。

 

 まず彼らは床に溜まった埃を、途中で見つけた箒とチリトリで掃除することにした。

 

 そして真月が菜々子と協力して部屋の埃を一か所に集め終えたとき。

 

「まだ劣化してないビニール袋があった」

 

 忍が1階の戸棚から見つけて来たと言う、半透明のゴミ袋。

 それに集めた埃を全て入れ、口を縛り。

 

 廊下に投げ出して、彼らは部屋を綺麗にした。

 これで心置きなく泊まることができる。

 

 

 

「……何をしにここまで出てきたの?」

 

 そして。

 とりあえず菜々子に訊いておきたいことを真月は訊ねた。

 

 ここに来た理由くらいは言えるはずだ。

 そう思ったから。

 

 彼女は

 

「……この街の商店街の神社に、お参りが無いと日本が危ないって、お兄ちゃんが」

 

 そう、良く分からないことを口にする。

 そのお兄ちゃんとやらは何者なのだ?

 

 商店街の神社というのは、辰姫神社のことで間違いないだろう。

 そしてその神社に、天津神イザナミという強大な神が祀られていることも事実だ。

 

 おかしなこと、間違っていることは言っていない。

 ただ、知るはずの無いことを言っているだけだ。

 

 ……この子は一体何者なのだ?

 

 その疑念が膨らみ、2人が考えこもうとしたとき。

 

 

「それより!」

 

 

 いきなりだった。

 空気が変わったのだ。

 

 菜々子の雰囲気が変わった。

 ここまではどこかアンニュイな感じだったのだが。

 

 急に、キラキラした感じになった。

 

 そして

 

「お姉ちゃんたち、結婚してるんだよね!?」

 

 いきなり、そのことに触れて来た。

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