真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第69話 即断即決!

「ええと、何でそう思うの?」

 

 真月は少し動揺する。

 隠すつもりはなかったことではあるが、見抜かれるようなことをした覚えが無かったからだ。

 

 別にこの少女の前で酷くべたべたした覚えはないし。

 あなた呼びはしたかもしれないが、だからと言って「イコール夫婦」とはならないだろう。

 

 魔王マーラは自分と忍が男女の関係にあるかと訊いて来た気がするが、それは即夫婦関係とはならないはずで。

 

 ……自分たちは結婚指輪をしていないから、見た目で関係は分からないハズ。

 そのはずなのだが。

 

(え、何で? 何でこの子、そんなこと知ってるの? 私、何か言ったかな?)

 

 動揺し、混乱する。

 どこからそこに辿り着いたのかが分からなかったから。

 

 だけど。

 そのとき忍が

 

「そうだよ」

 

 先に、真月の代わりに菜々子の言葉に返答した。

 

 自分ではなく、夫に認められる。

 それは彼女にとって自尊心を満たされる思いだった。

 

 自分の夫の中で、自分の存在が妻として位置づけられていることの宣言。

 

 嬉しくないはずがなかった。

 

 だから何故菜々子が自分たちが夫婦であることを看破したのかについては、置いておくことにした。

 別にどうでもいいことではないか。

 

 彼女は自分たちを害そうとはしていない。

 そこは信じているのだから。

 別にどうでもいいことだ。そこは。

 

 そう思い、動揺と混乱から立ち直った彼女に

 

 菜々子は目を輝かせながらさらに訊ねる。

 

「プロポーズはどっちがしたの?」

 

 プロポーズ。

 プライベートな質問である。

 

 でも、この年齢の子供であれば気になることではあるはずで。

 彼女は別に、それは秘密にすることでも無いと思った。

 

 なので。

 

 ちらり、と隣の夫に視線を送り

 

「私よ」

 

 そう正直に答えた。

 その答えは

 

「えっ!」

 

 菜々子には意外だったようだ。

 口元に手を当て、忍に視線を向け 

 

「……お兄ちゃんじゃないの?」

 

 信じられない、という口調でそう言う。

 

 彼女の中では、プロポーズは男がするものというのが常識だったのか。

 確かにそんな常識は存在しただろう。

 

 しかし

 

(だって、しょうがないじゃん。余裕なかったんだし)

 

 大破壊が起きる前と、起きた後。

 世界の常識が違うのだ。

 

 いつまでも生きていられる保証がない。

 ならば、どちらがすべきだとか、タイミングだとか。

 そんな些末なことは考慮するに値しない事柄だ。

 

「今は先送りにできることじゃないから。結論が先にあるのなら、即決断すべきなのよ」

 

 彼女は語って聞かせる。

 子供にも理解できるように、かみ砕いた言い方で。

 

「私の旦那様は結婚を申し込んだら即OKしてくれるというのは分かってたから」 

 

「死んでしまうときに旦那様と結婚してお嫁さんになっておくんだった! って後悔しても遅いんだよ」

 

 子供に聞かせるには厳しい内容である。

 自分の死を考慮に入れて行動すべき、などというのは。

 

 だが、今の社会は子供だからと言って手を緩めてくれることはない。

 ならば伝えるべきことは伝えるべきであろう。 

 

「ふぅん」

 

 だが菜々子はそんな真月の語る厳しい世界の話を聞いて

 

「……お姉ちゃんはとても現実的で……本当に旦那さんのことが好きなんだね」

 

 そう、少し憧れ……

 

 いや、綺麗なものを見るような目で真月を見て。

 

 そう呟くように言った。

 

 その言葉を聞き、真月は

 

「当然よ」

 

 その言葉に対して照れも何もなく

 

「行動は早く起こすべきなのよ。……これは、今も昔もね」

 

 自分が思う真理を口にして、肯定を返した。

 

 

 本当に夫が好きだから。

 彼女はすぐに行動を起こし。

 

 夫が自分に惚れるように仕向けて。

 自分の望む結果に向けて突き進んだ。

 

 周りは待ってくれないし。

 周りは全て、それぞれの意志がある。

 欲しいものがあるのなら、口を開けて待っているだけではだめなのだ。

 自分から取りに行かないと。

 

 だからそんなの当たり前で。

 

「そうだな」

 

 それは忍も肯定した。

 

 ……彼は彼で、自分の妻に対して交際の申し込みをしたのは同じ思いであった。

 

 早く告白しないと、他の男に取られるかもしれない。

 その思いがあったから。

 

 他の男に先に告白されて。

 それで真月が他の男の恋人になり。

 

 そいつに愛情の籠った目を向ける様……もっと言えば抱かれている様を想像したら、動かないわけにはいかなかったのだ。

 だから中学時代の彼は、自分の恋心を自覚すると同時に彼女にそれを伝えた。

 

 

 ……もっとも。

 彼はそのことを彼女に伝えたことはない。

 

 

 そんな言い方をすれば「あなた以外に告白されても全部断るに決まってるじゃない。早い者勝ち? 舐めんな!」と返されることが容易に予想できるから。

 良い気はしないだろう。

 

 ……彼女の愛はとても大きくて。

 その大きさは、魔王の邪な魔力すら弾くほど。

 

(絶対に怒るに決まってる)

 

 だから言わない。

 

 何でもかんでも言えば良いってものではない。

 

 言わないが……

 

「菜々子ちゃん。キミも誰かが好きになったら、チャンスがいつまでも目の前にあるなんて考えないようにするんだよ」

 

 そう、幼い少女の将来が輝かしいものになるように。

 年長者として、大人として。

 

 自分が掴んだ真理について、そう一言。

 

 簡潔に伝えたのだった。

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