真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第70話 視点変更~クルセイダーロード~

 夜の闇の中。

 ライトが闇を切り裂いて。

 

(あと少しで八十稲羽ですか)

 

 暗い無人の道を激走する1台のバイク。

 ヒーローが乗りそうな鋭角的な大型バイク。

 そのバイクを駆る少女ライダー。

 

 メシア教徒テンプルナイトのエリート集団「クルセイダー」

 そのリーダーであり、全てのクルセイダーの原型である悪魔人間……クルセイダーロードその人である。

 

 彼女は白いライダースーツに身を包み、フルフェイスヘルメットを被り。

 限界速度で夜の道路を疾走していた。

 

 大破壊前ならば、確実にスピード違反で切符を切られてしまう速度だ。

 衝突事故も予想される。

 

 まあ、今は違反切符を切る警察も存在しないし。

 衝突事故を起こしうる対向車にも、まず遭遇しないのであるが。

 

 そのおかげで彼女は、心おきなくアスファルトの道を駆け抜けていた。

 

 

 目指す先は八十稲羽市。

 Y県の田舎町である。

 

 

 その目的は、そこに訪れている聖女を確保すること。

 

 前に伊勢に送り込んだクルセイダー2名が帰還せず、続いて京都に送り込んでいた諜報員のテンプルナイトからの定期連絡も途絶えたので、決断したのである。

 

 聖女・佐上真月の京都外での活動。

 確保の機会。

 

 このチャンスを逃すまいと。

 最強のクルセイダーである彼女が出向かねばならないと。

 

 このチャンスを察知したのは神の導きと言っていい。

 教団で「神託」を研究している部門が幸運にも探り当ててくれたのだ。

 

 

 これから佐上真月がY県の八十稲羽市を訪れると。

 

 

 こんな幸運は二度と起きまい。

 これを逃せば、もう機会は訪れないかもしれない。

 

 ならばそこに、速攻で最強の駒を送り込むのは当たり前のことである。

 入念な準備を行う余裕はない。

 速攻だ。速攻が必要なのだ。

 

 速攻でメシア教徒の最強の駒……つまり彼女を送り込む。

 これは決定事項だ。

 

 だから彼女はたった1人で向かっていく。

 彼女が行けば間違いない。

 人数が多くなれば察知される恐れが高まる。

 他は要らないのだ。

 

 彼女だけで十分な理由。

 それは……

 

 

 彼女はライダースーツの腰に吊るしてある剣の鞘を意識した。

 

 

(これがある限り、私は無敵です。待っているがいいです……聖女よ)

 

 八十稲羽市に到着したら、ある民家を目指す。

 その住所も神託で判明している。

 自分はそこに朝までに辿り着きさえすれば良い……

 

 彼女はバイクを120キロオーバーの超速度で疾走させつつ、自分の使命について考えていた。

 

 

 そのときだ。

 

 

『……ソコノ武装勢力、止マリナサイ』

 

 

 電子音声が響き渡った。

 耳慣れないものであった。

 

 彼女は

 

(面倒ですね)

 

 バイクの速度を落としつつ、舌打ちした。 

 

 この電子音声は耳慣れないものであった。

 だが彼女はそれが何であるか知っていた。

 

 バイクを停止させると、彼女の傍に舞い降りてくるものがあった。

 それは

 

 青い塗装がされた、人型のロボットだった。

 名を「T93G-X」という。

 

 大破壊前に、国が開発し、自衛隊に配備されていたマシン兵である。

 

 全体的なフォルムは人型のロボで。

 違う部分は脚部の逆関節の構造と。

 背中に搭載されているジェットロケット。

 そして頭部で光る真っ赤なカメラアイ。

 

 これにより、飛行状態で日本の海岸からの外国勢力の工作員の侵入を監視する。

 

『Armed forces, lay down your arms and surrender. Stop where you are』

 

 T93G-Xはその手の部分に装備されているマシンガンの銃口をクルセイダーロードに突きつけつつ、英語で警告を発した。

 相手が日本語を理解できないことを想定した仕様だろう。

 

 クルセイダーロードがこのマシン兵の警告に従ったのは、ここでバイクを破壊されると任務に支障が出るからだ。

 

 だからバイクを急停車させ、彼女はバイクを降りた。

 バイクを守るために。

 

 

 ……何故、国防用のマシン兵が彼女を襲っているのか?

 それは原因不明である。

 

 大破壊により国に与えられた指令が狂ったのかもしれない。

 

 このマシンたちは旧自衛隊駐屯地を本拠地とし。

 そこからこのように、周辺地域に住む人間を「全て外国から攻めて来たテロリスト」と認識して襲撃を掛けてくる。

 

 このマシンは一応武装解除を求めているが、従ったところで一時的に攻撃が停止するだけで。

 結末は同じ。

 

 最終的に「テロリストたちに反抗の意志が確認されたので、やむなく処理」

 彼らは狂った電子頭脳でそう判断し、実行する。

 

 なので今となっては、悪魔と同質……

 いや、話が一切通じないので、悪魔以上に厄介な存在である。

 

 

『手ヲ上ゲテ伏セナサイ』

 

『Hands up. Get down on the ground』

 

 日本語と並行して英語による警告。

 

 その警告に

 

 クルセイダーロードはその腰に吊るしている、剣の柄にそっと触れることを返答とした。

 

 その瞬間だった。

 

『抵抗ノ意志ヲ確認。射殺シマス』

 

 たらららっ。

 

 T93G-Xはあっさりとテロリストの射殺に舵を切った。

 その言葉が日本語のみで、英語が一切ないのは外国勢力に聞かせる気が無いからだろうか?

 

 マシンの手に装備されたマシンガンの銃口から、ほかほかに温められた鉛玉がクルセイダーロードに撃ち込まれた。

 全弾命中。

 

 それはクルセイダーロードのフルフェイスヘルメットを穴だらけにし、その白いライダースーツにも降り注いだ。

 

 普通に考えれば即死。

 生きていられるはずがない。

 

 だが……

 

「変身!」

 

 クルセイダーロードは銃弾を浴びながら

 

 変身コールを行ったのだ。

 

 剣を抜き放ち、腕を振り。

 高らかに叫んだ。

 

 その瞬間彼女は発光し、青白い光に包まれた。

 

 出現する髑髏に似たデザインを持ち、6つの翼を持つ水色の仮面の戦士。

 

 仮面ライダーサタン。

 

 

『射殺シマス! 射殺シマス!』

 

 

 狂ったように同じ言葉を連呼するT93G-X。

 想定していなかったのか。

 

 銃撃をまともに浴びせたテロリストが絶命しない事態を。

 

(無様ですね……!)

 

 彼女はそれを嘲笑う。

 

 ……効くはずがない。

 何故なら自分にはこれがあるから。

 

 彼女が右手に握る古代の剣。

 この剣の名は……

 

 草薙の剣。

 

 かつての日本の三種の神器の1つである。

 

 この剣は手にしている限り、決して負けることはない。

 そういう伝説を持つ剣で。

 

 実際、日本神話に登場する英雄・ヤマトタケルはこの剣を手放すまでは誰にも負けることが無かった。

 

 その理由が、これなのである。

 

 

 草薙の剣は、手にしている限りあらゆるダメージを無効化する。

 それは火炎や稲妻、冷気や衝撃。

 物理攻撃に至るまで。

 

 全ての加害の意志が含まれたダメージを完全に無効化するのだ。

 

 

 仮面ライダーへの変身が完了した瞬間、クルセイダーロード=仮面ライダーサタンはT93G-Xに掴みかかっていった。

 

 右手で草薙の剣を引っ提げて。

 

 

 T93G-Xのマシンガンが再度火を噴いた。

 

 たらららっ、と意外に軽い発砲音が再度響く。

 

 胸、腹、顔に被弾。

 

 だが、当然全くダメージは無い、

 

 

「……気は済みましたか? 穢れ狂った殺人人形」

 

 

 彼女は草薙の剣の切っ先をT93G-Xの赤いカメラアイに突き立てる。

 カメラアイの特殊プラスチックで作られていると思しきレンズ部分が砕け突き刺さった。

 

『射殺シマス! 射殺シマZIMA……』

 

 電子音声に乱れが生じる。

 T93G-XのAIに深刻な不具合が出ているのかもしれない。

 

(終わりです)

 

 そして彼女はその金属のボディに脚を掛け。

 剣を引き抜きつつ、敵から距離を取るように跳んだ。

 

 跳びつつ、彼女は

 

 剣を持たない空いた左で魔法を発動。

 選択した魔法はトリスアギオン。

 

 そして

 

「トリスアギオン!」

 

 魔法を使うための宣言を行い、灼熱の火炎魔法をT93G-Xに撃ち込んだ。

 

 例え火炎に耐性を持っていたとしても、相手を焼き尽くす紅蓮の炎。

 

 

『ギピピーPIPI!!』

 

 

 魔法が直撃し。

 耳障りなエラー音を立てて、燃え上がるT93G-X。

 

 その数秒後に、魔法の炎が他の兵器に引火したのか。

 

 T93G-Xは大爆発を起こした。

 彼女はその爆発を仁王立ちして全て受け止める。

 

 

 背後に停めた、大切な足であるバイクを守るためだ。

 

 一応、巻き込まれないように位置取りを気を付けたが。

 どうだろうか……?

 

 ぱちぱちと火花を散らしつつ、爆発したT93G-Xがもはや動かないことを確認した後。

 彼女は振り返って、自分がここまで乗って来たバイクを確認する。

 

 

 どこも壊れていなかった。

 

 

(良かった)

 

 彼女はホッと安心の息を吐き。

 変身を解き、再びそれに跨った。

 

 そして走り去っていった。

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