真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
(クルセイダーロード……?)
名乗りを受けた忍と真月。
2人は動揺した。
クルセイダーのリーダー・クルセイダーロード。
その名を名乗る者が、真面目で清楚そうな少女に見えたからだ。
メシア教徒の武闘派中の武闘派であるはずのクルセイダー。
そのリーダーがこんな少女であるなんて。
「……あなたがクルセイダーのリーダーなの?」
真月が油断なくアームターミナルに手を添えながら。
声を絞り出すようにして、言葉の意味を確認した。
お前の言った言葉の認識に間違いは無いか? その意味で。
その真月の言葉に
「ええそうですね」
クルセイダーロードはそう返しながらバイクを降りた。
そして脚を軽く開き、彼らに向き合う。
右手を、左腰に吊るしている剣の束に置きながら。
……相手は少女だ。
抵抗はある。
だが
「悪いがアンタらには容赦しない。人を殺すのは嫌だが、あんたらはそうしないと駄目な気がする」
そう言いつつ、忍は構える。
右半身の構えで。
そして構えながら
(明らかに俺より弱い相手)
忍はそう彼女を認識した。
彼女の立ち方には素人でないものを感じた。
だが、それは素人で無いだけだ。
自分と比較したらお話にならない。
本気でぶつかり合えば、30秒で絶命させられる。
その確信があった。
だが
「殺すと来ましたか……まあ、良いでしょう。邪悪なる者たちよ」
クルセイダーロードと名乗った少女は不敵に笑う。
そして続けて
「面白いですね……やれるものならやればいいでしょう」
お前を殺すと宣言した忍を正面から見据えながら
「……やれるものならね!」
そう言い放った。
凄まじい自信。
自身の勝利を毛ほども疑っていない。
それは自身が仮面ライダー……悪魔人間であるということから来るものなのか。
クルセイダーロード……
彼女が悪魔人間であることに彼らが気づいたのは推理の結果である。
これまでのクルセイダーとの戦いで、クルセイダーたちの中に本物の悪魔人間が存在することは彼らは既に知っていて。
その上で、彼女は仮面ライダーを名乗った。
そこからの推理だ。
(多分、真月と同じ感想を持ったんだ)
悪魔との合体に成功した悪魔人間の外見は、仮面ライダーに似ることに。
悪魔人間との戦い……
楽な戦いではないだろう。
自分と同じように、究極合体魔法を使用できるはずだから。
武術家としての実力に天と地の差があろうとも、油断は禁物だ。
究極合体魔法には無限の可能性がある。
理想は先にこちらが変身し、一方的に畳み掛けて勝利すること。
彼はそのチャンスを探った。
(真月……)
彼は妻を頼った。
真月ならば、そのチャンスを作ってくれる……!
「……何が邪悪なる者よ。邪悪な者はあなたたちでしょうが」
彼女はそんな夫の無言の要請を察したのか。
仕掛けてくれた。
……その声に怒りが籠ってはいたけれど。
「迷惑な布教活動を行い! 集団で他者に改宗を迫り! 果ては平気で詐欺行為にまで及ぶ! ろくでもないやつら!」
(……そういやあったな)
忍は大破壊前の学生時代を思い出した。
「メシア教の学生を標的にした勧誘が後を絶たないです。気を付けるようにしてください」
大学の担当職員がオリエンテーションでそう言ってた記憶がある。
彼らは出家信者から全財産を収奪するだけでは飽き足らず、メシア教で無い一般の人間から詐欺を働いていた。
訪問販売で粗悪品を高値で売りつける行為、マルチ商法、さらにはこれは噂だが、振り込め詐欺までやっていたらしい。
だから大学は「メシア教徒に気を付けてください」という内容の注意喚起を行っていたのだ。
あまりにも常軌を逸した連中であるから。
興味本位で近づくようなことは絶対にするな。
そこまで言っていた覚えがある。
だが。
真月が指摘する、そのあまりも酷過ぎるメシア教徒の実態について。
「……何を言っているんですか?」
クルセイダーロードは呆れたように言い、後をこう続けた。
「浄財という言葉を知らないのですか? 何も問題は無いでしょう」
浄財。
それは寺社仏閣の慈善事業や寄付、あるいは社会事業のために送られる、私利私欲の混じらない清らかな金銭のこと。
つまり……
「金を捧げさせてやったのだ、って言いたいの?」
「そうですね」
不快さに震える真月の声に、呆れ声のクルセイダーロード。
他者の金を強制的に巻き上げておきながら、それを「浄財させてやった」と言い放つ。
その狂気に真月は怒りを覚え。
同時に戦慄した。
会話出来ない相手だ。
クルセイダーロードはさらに続ける。
「正しい宗教を信じない罪で死んだら確実に地獄に堕ちる魂を、僅かながらでも救ってやろうというのです。感謝したらいかがですか?」
……全く悪びれてない。
というより
あなた、頭がおかしいですね?
冷静に考えてみたらいかがですか?
そう、説教をされている気分になってしまうような、そんな落ち着きぶりで。
普通の者ならば、何も言えなくなってしまうだろう。
その異様さと迫力に。
だが、真月には
「……正しい宗教ですって?」
全く効いていなかった。
怒りに震える声で続ける。
忍は知っていた。
彼の嫁は、こういうことを何より嫌うのだ。
傲慢に他人の価値観を侮辱するような行為を。