真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
彼女は神話や伝説が好きで、その過程で色々な宗教の在り方を学んできた。
その結果彼女は
「宗教は人の心の支えであって、どれが正しいなんて無いわ!」
正しい宗教……つまり1番の宗教なんて存在しない。
そう考えていた。
宗教の役割は、どうしようもないことに直面したとき。
絶望しそうになる辛い状況に追い込まれたとき。
最後に寄って立つための杖なのだ。
その役割が果たせるのであれば、それは別に何であってもいい。
だからこそ、彼女はメシア教徒を嫌っていた。
彼らは自分たちこそ真理を知った正しい宗教であり、他の宗教は全て邪教であると公然と主張していたから。
だが
「この世で正しい宗教はメシア教ただ1つです」
クルセイダーロードは平然とそう言い放ち、ブレない。
目つきが険しくなる真月。
呆れ顔のクルセイダーロード。
クルセイダーロードが続ける。
「逆に聞きたいですね……メシア教以外の宗教のどこが正しいのですか? 戦争を起こし、差別を生むだけの欠陥品ばかりじゃないですか」
その言葉は真月を確実に怒らせる。
彼女は
「そのまんまあなたたちに返してやるわ!」
即座にそう返したが。
クルセイダーロードは
「……意味不明ですね。メシア教が原因で戦争が起きたとしたらそれは聖戦であり浄化です。それは全て、悪を滅ぼし千年王国を築くためなのです」
全く。
平然とした口調で。
そんな狂った返答を返す。
そして彼女は
「……狂った平等、歪な正義、ケダモノの愛……旧世界は歪み切り、もうどうしようもなくなっていました」
遠い目をして。
そう呟くように言った。
「……歪み?」
真月が言ったその言葉に。
クルセイダーロードは
「歪んでいましたよね……? 多様性? 平等? 可能性? ……全て悪を正当化し、自分の獣欲を満たすためだけの戯言ですよね?」
その言葉に。
忍は少し思い当たることはあった。
多様性。
多様性という言葉は優しい言葉である。
世界には色々な人が居る。
その違いを認め合い、許し合う。
それが多様性だ。
それは人種や肌の色だけではない。
高尚な趣味なんて持たなくてもいい。
収入が多くなくてもいい。
結婚に向いて無くてもいい。
異性を好きになれなくてもいい。
そういうことを認めること。在ることを許すこと。
それが真の多様性。
だが……
それを盾に、自分の頭の中で思い描いた妄想を実現するために、暴れまわっていた人間が存在した。
確かにそういう人間が居たのだ。
旧世界には。
多様性。
それは悪を正当化し、自分の獣欲を満たすためだけの戯言である。
(一理あるかもしれない)
忍はそう、クルセイダーロードの語ったことについて考えた。
だが。
真月は黙らなかった。
「それとメシア教が1番正しいこととは全く何の関係も無いわね」
全く淀みなく、堂々と。
忍はそんな妻の振る舞いに
誇らしさと。
ある種の劣等感を抱いた。
彼女はブレない。
己の中で定めた正義の基準から1歩もずれない。
(真月は強い)
「それは単に特定の言葉を言い訳に我儘をほざいたクズが居ただけの話でしょ。宗教関係無いわ」
そう彼女は堂々を言い返した。
その言葉を聞き、クルセイダーロードは
眉を顰め
そして
「……とある少女の話をしましょうか」
突然。
こんな話をはじめた。
それは……
とある一組の夫婦がいた。
男は所謂高所得者で、女に惚れぬいて、必死で稼げる男になった。
女はそんな男の能力を認め、晴れて二人は結婚。
そしてその二人の間にひとりの女の子が産まれた。
娘が産まれたので、男はさらに一生懸命働いた。
女は稼げる夫を持ち、幸せだったはずだった。
だが。
女が裏切ることにより、この家庭は崩壊する。
自分の言いなりで働き続ける男がつまらなくて、他に男を作ってしまったのだ。
つまり、不倫をしたのだ。
そして夫婦は離婚することになった。
しかし……女は困らなかった。
……娘の養育費を毎月貰えることになっていたからだ。
女はこう言った。
この子の養育費を節約して貯金すれば、私の老後は安泰よ。もう、結婚なんてこりごりね。
……そんな、あまりにも酷過ぎる理不尽な話。
一生懸命家族を養おうと身を粉にした男を裏切り、金を奪い取り私腹を肥やした最低の裏切り者の話を。
それを語り終えたとき。
クルセイダーロードは少し、震えていた。
そこに忍は
(これは……)
思うところがあった。
彼女は
「少なくとも」
自分の話に続ける形で
「メシア教で同じ罪を犯せば、この罪人の女は間違いなく斬首刑です。凌遅刑すらありえますね」
もしメシア教で、この恥を知らない最低の女が同じ罪を犯した場合に受ける裁きを口にする。
メシア教で同じことをしたなら、この女は処刑されていると。
その目には何の迷いもない。
そして
「この一点だけでメシア教は間違ってないと断言します! 他の宗教など全てゴミです!」
その目は強い光を帯びていた。
(これって……)
その目の光で彼は確信した。
……今の少女の話は、おそらく、この少女自身の話なのだ、と。
この少女は実の母親が犯したあまりにも醜い罪に絶望し、母の罪を断罪する宗教……メシア教に入信したのだ。
ある意味、この少女も被害者かもしれない……。