真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「その母親は確かにクズね。同じ女として恥ずかしく思うわ。死んでしまえばいいとすらね」
クルセイダーロードの告白。
あまりにも醜悪なその内容に気圧されかねない。
確かに大破壊が起きる前の世界では、彼女の母親に彼女が納得する裁きを下すことはできなかっただろう。
だが
真月はそれに全く動じた様子を見せない。
「……でも」
そしてこう続けた。
彼女が大破壊前の世界を否定する言葉に合わせるように。
「あなたたちはこの国から神器を奪って日本の復興を妨げ、加えて私の命を狙って私たちの幸せを阻んでいる」
メシア教徒が日本国民に対して、そして忍と真月のふたりに対して現在進行形で行っている加害行為を。
彼らが日本の社会を壊し、安定した世界を壊し。
数多くの人々の幸せを奪ったことを。
……そして、こう言葉を叩きつける。
「この二点であなたたちは日本の敵であり、私たちの敵よ……! 妥協点なんて……無い!」
同時に、真月の指がアームターミナルのキーボードを叩く。
彼女の足元に浮かび上がる魔法陣。
そこに出現する、翼を持った青い甲冑の乙女……
妖魔ヴァルキリー。
「行ってヴァルキリー! あの女を斬り伏せて!」
全く淀みなく指令まで下す。
そして忍もそれに合わせる。
「変身!」
先に変身をし、クルセイダーロードが悪魔人間の力……仮面ライダーサタンの力を解放する前に倒す。
不意打ちであり、本来なら禁じ手の行為。
だが彼らは勝たねばならないのだ。
この闘争にそんな正々堂々は入り込む余地はない。
相手が卑怯だったから負けた。
そんな理屈で敗北を正当化できないのと同じだ。
緑色の輝きの中、忍は仮面ライダーアモンへの変身を果たし。
ヴァルキリーに加勢する形で飛び込む。
剣を打ち合わせている音。金属音。
クルセイダーロードは、腰の剣を抜きヴァルキリーと切り結んでいた。
その姿は、彼女の相当な練度の高さを伺わせる。
堂に入った安定した剣であった。
(思った通り、相当な訓練を受けている剣裁きだ)
あの年齢であの技量。
どれだけの修練を積んだのか?
彼女の先ほどの告白を信じるなら、彼女が訓練をはじめたのは幼少期ではないだろう。
メシア教に入信してからのはず。
そんな彼女がここまでになった……
才能もあるだろうが、並大抵の努力ではあるまい。
そして……
彼女の振るっている剣は直剣であった。
(……あれは!)
見覚えがあると思っていた。
最初、鞘に収まった状態で見たときから。
抜き放った状態を目にして彼は確信した。
あれは古代日本の戦士が振るっていた剣であると。
古墳から出土する青銅剣。
それと形状がそっくりであったのだ。
だがしかし
(だったら一体何なんだ? 何故メシア教徒がそんなものを持っている?)
メシア教は古代日本の要素を持つ宗教ではない。
なのに、古代日本で振るわれていたような形状の剣が使われていることに違和感がある。
……どういう理由だろう?
彼はそこが気になった。
だけど、今はそれどころではない。
一刻も早くこの少女を叩き伏せ、制圧せねばならない。
――変身される前に。
クルセイダーロードはヴァルキリーの逆袈裟斬りを受け止めた。
下段に構えた剣で斬撃を阻んだのだ。
つまり、ガードが下に下がっている。
チャンスであった。
忍は風のように間合いを詰め、速やかに足を跳ね上げ。
雷光のような上段蹴りを叩き込んだ。
少女の頭部に。
容赦なかった。
少女の頭部を躊躇いなく、だ。
それは会心の蹴りだった。
放った瞬間、忍はそれを確信する。
これがクリーンヒットした以上、少女はただでは済まないはず。
鍛え抜いた男であっても気絶必至。
これで一発で気絶に追い込めば、まだ道がある。
クルセイダーロードを何とか拘束し。
それで彼女を人質に取れれば、メシア教徒と取引をすることだって可能かもしれない……!
そう思ったとき。
ゾッ
……彼は寒気を感じた。
慌てて飛び退く。
片足で跳躍したのだ。
無理矢理に。
強引に行ったため着地の姿勢が乱れる。
けれど
それが間一髪、彼の危機を救うに至った。
なんと……
クルセイダーロードは変身した忍の蹴りに全く何のダメージも受けた様子も無く。
下段に下がった剣で、そのまま切り上げの斬撃を彼に放って来たのだ。
彼が無理な緊急回避行動から体勢を取り戻したとき。
彼はクルセイダーロードの顔を見た。
……彼女は真顔だった。
ダメージを受けた様子が全く見えない。
ありえない……
(そんな馬鹿な)
驚愕せざるを得なかった。
忍は幼少期から父親から家で代々門下生を取って教えている伝統的な空手の技術を叩き込まれ、ずっと鍛えて来た男だ。
それは決して楽な修行ではなかった。
血反吐を吐いたこともある。
でも歯を食いしばり、鍛え上げて来た技なのだ。
それをまともに喰らったはずなのに、全く何のダメージも無いなんて。
ありえない。
そう、思い上がりでもなんでもなく。
そうとしか思えなかった。
忍のそんな動揺と困惑を感じ取ったのか。
クルセイダーロードは
「……教えてあげますよ。無知で邪悪な異教徒どもに」
にやあ……
凄まじい笑みを浮かべた。
もはや揺るがない勝利を前にして。
獲物の血を飲み尽くす瞬間に舌なめずりしている肉食獣……
そんな笑みだった。
彼女は自分が絶対に勝つことを毛ほども疑っていなくて。
そしておそらくそれは、思い上がりではなく根拠がある。
それが皆に分かった。
「ウフフフフフッ、アハハハハッ」
それを理解したのか、クルセイダーロードは大きく笑った。
口元に左手を当てて。
そこに隙が生じたが、誰もそこに打ち込めない。
それをしても無駄なのが理解できたから。
そして彼女は
右手に持った剣を目の前に真横に掲げて、こう言った。
「これ……神器・草薙の剣なんですよ」
そんな、衝撃的な一言を。