真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第77話 菜々子の正体

 菜々子が、彼ら2人の前に立っている。

 まるで2人を守るように。

 

「菜々子ちゃん危ない!」

 

 真月は半ば悲鳴のような声をあげる。

 ひとりの大人として、彼女だけは守らないといけない。

 

 その意識があったから。

 

 逃げなさい!

 と言おうとした。

 

 メシア教徒は子供であろうと容赦しない。

 異教徒であるという理由だけで子供でも、必要ならば赤ん坊でも平気で殺す連中だ。

 それぐらい狂っている。 

 

 前に出ても相手は立ち止まらず、一緒に躊躇いなく巻き込んで攻撃してくるだろう。

 

 その思いから彼女が発したその言葉を

 

「……お姉ちゃん。昨日、魔王マーラの魔力に耐えたあなたの想いの強さには感動したよ」

 

 菜々子は、全く返答になっていない返答を返す。

 

 まるでこれまでの状況を理解していないような。

 いや……問題視をしていないような。

 

 これは一体どういうことなのか?

 その異様さに、真月の言葉が止まる。

 

 さらに菜々子は 

 

「そしてお兄ちゃん」

 

 真月を守るために前に出ている忍に目を向け。

 

「神器の真の力を理解していながらも、大切な奥さんを守るために前に出るその姿」

 

 ニコリ、と微笑みながら。

 

「……とても尊いと思う」

 

 そう言った。

 

(えっと……)

 

 忍は思った。

 

 この子は……菜々子は……

 

 一体何者なのだ……?

 

 

 ……そういえば

 

 

 思えば菜々子は

 

 彼が変身したとき、何も発しなかった。

 生身の人間が、突然人間ではない存在に変わったというのに。

 

 それに驚くなり、怯えるなりがあっていいはず。

 なのにだ。

 

 黙って見守るなんておかし過ぎる。

 

 真月の脳裏にも、これまでの菜々子の変な振る舞いが吹き上がった。

 

 この少女、小学校低学年なのに。

 誰かに甘えるということが無かった。

 1人でこんな街に居たことも不自然だ。

 

 大破壊後の世界で、こんな年齢の子がたった1人なんて。

 あり得ない。

 近くに保護者にあたる人間が居ないと絶対におかしい。

 

 魔王に追い回されていたということで「守らねばならない存在」と決めつけていたけれど。

 

 

 ……この子は一体、何者なのか……?

 

 今更ながらに彼らがその疑問に辿り着いたとき

 

「……邪魔ですね。殺しますねムシケラ」

 

 クルセイダーロードが、仮面ライダーサタンが。

 全く平然と、草薙の剣を振りかぶる。

 

 そこに全く何の躊躇いもない。

 

 本気で菜々子を斬り捨てるつもりで、斬撃を放った。

 

 だが……

 

 

「えっ」

 

 

 忍からマヌケな声が洩れた。

 

 ……菜々子が、その袈裟懸けの斬撃を指先で受け止めたからだ。

 

 親指と人差し指と中指の三本で。

 

 理解不能の菜々子の振る舞いに混乱し、彼女を庇うことが間に合わなかったというのに。

 そもそも、その必要が無かった。

 

「ど、どういうことッ!?」

 

 クルセイダーロードが狼狽える。

 全く予想もしていなかったその事態。

 

 彼女はマズいと思ったのか、大きく後ろに跳び退く。

 

 そして彼女は油断なく草薙の剣を正眼に構えた。

 

 その様子に

 

「……嘆かわしい。この国土を統べる者に与えたはずの神器がこのような目的で使われるとは」

 

 少女らしからぬ言葉で菜々子。

 

 菜々子は、そんなクルセイダーロードの姿を見つめていた。

 その目は小学生の少女のものではなく。

 

 大人……

 

 いや……

 それは人の域から逸脱していた。

 

 まるで神のような……!

 

「法の神の尖兵に成り下がりし元はこの国の人草よ。……もはや、お前は、お前たちは我が国土に住まう住人ではない」

 

 その声には厳かなものがあり

 他者を圧倒するものがあった。

 

 その外見に不釣り合いなそのオーラ……

 

 その場に居る者は誰も動けず

 

 そこに

 

「佐上真月よ」

 

 菜々子はそう呼び掛ける。

 真月は

 

「えっ、はい!」

 

 彼女に圧倒され、訳も分からずそう返し。

 そのまま

 

「手を出せ」

 

 言われるままに

 

 真月は自分の左手を彼女に差し出した。

 

 菜々子の小さい手がその手を掴む。

 

 そして彼女は

 

「少し、いただくぞ……」

 

 目を閉じてそう言った後

 

 

「お前の、マグネタイト……!」

 

 

 カッ、と見開いた。

 その瞬間。

 

 

 菜々子の身体が膨張する。

 

 膨れ上がる。

 

 膨れ上がって、全然別のものに変わっていく。

 

 

「え……?」

 

 

 数瞬で、変身が完了していた。

 

 堂島菜々子だったものは……

 

 

 身長10メートル近くある、赤黒い色で多腕の巨大な骸骨。

 そんな人外の姿に成り果てていた。

 

 その骸骨は二重構造になっていて。

 本来、頭蓋骨がある位置に、女の上半身が生えている。

 

 ……ミイラのような、干乾びた長い黒髪の女の上半身が。

 

 

 これが菜々子の正体であった。

 堂島奈々子は人では無かったのだ。

 

 

 誰も言葉を発せなかった。

 流石の真月も絶句していた。

 呆然とした表情だった。

 

(……何なんだ……? これ……?)

 

(……どういうこと?)

 

 疑問、驚愕、動揺、混乱。

 

 誰も全く動けなかった。

 

 そこに

 

「……我が名はイザナミ。冥府の神。この国の人間の死を司る創造神の一柱……」

 

 その悪魔が厳かな声で名乗りをあげる。

 その声は穏やかだったが、聞く者に畏怖の感情を呼び起こす強大さと神聖さ、そして闇を感じさせるもので……

 

(イザナミ……?)

 

(イザナミだって……?)

 

 堂島奈々子の正体……

 それは……

 

 彼らが接触しようとしていた存在……天津神イザナミであったのだ。

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