真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
クルセイダーロードが去り。
大きな危機は去った。
去りはしたが……
「……あの」
ようやく驚愕やら混乱が収まって来た真月が、イザナミにそう話しかける。
その巨大な姿を見上げながら。
イザナミは彼女を見下ろし
「うむ。許す……なんじゃ?」
その死を体現したような恐ろしい姿とは不釣り合いに。
口調は酷く優しい。
真月は
「……助けていただいてありがとうございます」
深々と頭を下げながら礼を口にする。
その彼女の態度に神は
「なに、気にせんで良い。お前たちが気に入ったからしたまでのこと」
変わらず優しい口調でそう返した。
そして続けて。
神は衝撃の一言を発する。
それは
「今年の勅使に指定して呼びつけて良かったわ」
勅使に指定……!
その言葉には衝撃を受けるしかない。
この神は、2人が勅使であることを知っていた。
いやむしろ、そう仕向けた。
ということは……
「ひょっとして魔王マーラの段階から、全て仕組まれていたのですか?」
真月は震える声でそう訊ねた。
あの突然の魔王の出現。
あれがあったから、彼女は菜々子をただの被害者であり、悪魔の変身体である可能性を考えなかったのだ。
その言葉にイザナミは
「……うむ。おぬしらの本性を確かめたかったのでな。一芝居打たせて貰った」
認めた。
「あまりにも強大過ぎる敵対存在に遭遇したときにどう振る舞うか……? そこが知りたかったのじゃ」
強大過ぎる敵に出会って、自分だけ助かろうとする人間たちであれば見捨てよう。
そういうことということか。
しかし……
(だからといって魔王マーラを召喚するなんて)
イザナミの言葉に真月は少しやり過ぎなのでは無いかと思ったが。
(でも、そのおかげで魔王マーラとの契約を結べた面はあるわけよね)
じゃあ結果オーライなのか?
そう思う。
というより……
神のやることに文句を言うのは身の程知らずかもしれない。
神はスケールが大きい。
試し行為の規模が大きいのは当然なのだ。
そう思い、真月は
「あの、我々は助力をいただけないかなと思い、政府から……」
話を切り出した。
イザナミは
「……今はこの国が大変なことになっておるのは知っておるよ」
厳かな声でそう返して来た。
「この国は一度大きな戦に敗北し、滅亡の危機に瀕したが、此度はその比では無いな」
無人の街になった八十稲羽市を見渡すように見つめつつ。
「……元々はここにも無数の人草が居た。それが今はこの有様じゃ」
その声には寂しさが感じられる。
悲しみとは違った。
寂しさだ。
だったらもっと早く助けてほしかった。
そんな言葉が2人の頭に浮かんだが
(そうできない神々の理屈があったのかもしれない)
(助けてもらえなかったことに不平を言うのは違う)
そう思い、飲み込んだ。
そして
「……良かろう」
そう2人を見下ろしながら
そう言ったのだ。
何が「良かろう」なのか?
それは……
イザナミが急激に。
今度はイザナミが急激に縮んでいった。
そしてまた、あのちょこんとした年齢一桁にしか見えない、ワンピースの少女の姿……
堂島奈々子を名乗った姿に戻った。
その姿で。
こう言った。
「契約同意書を出して。悪魔召喚契約を結んであげるよ」
真月の目が大きく見開かれる。
酷く驚く。
……無理もない。
イザナミは日本の創造神の一柱である。
そんな存在と悪魔召喚契約を結ぶ……
これは……すごいなんてもんではない……!
(真月……)
忍は妻の様子を見つめる。
彼女がどう振る舞うのか。
彼女は……
「……分かりました。少々お待ちください」
彼女は……逃げなかった。
この重圧を背負う覚悟を即座に固め、契約同意書の準備を進めて行く。
その手は震えていたけれど。
そして……
投影される契約同意書。
そこにサインをするイザナミ。
契約が結ばれた。
契約が完了すると同時に、イザナミはこう言う。
「私は天津神イザナミ……これからあなたが死ぬまで一緒だよ。お姉ちゃん」
そう、言い残して消えて行ったのだった……。
「……本当にご苦労だった」
そして。
2人は京都御所に戻り。
仕事の顛末を上司であるライドウに報告した。
ライドウは2人の報告を受けて
「魔王マーラに、天津神イザナミを仲魔にするとは」
自分のデスクで2人の提出した報告書を読みつつ、そう返す。
「いずれも強力な悪魔であり、うち一柱は日本の創造神……ここまでの結果は予想していなかった」
そして彼は「ご苦労だった。後はゆっくり休んでくれ」そう、言おうとした。
だがそこで
「待って下さい」
真月が口を開いたのだ。
ライドウの目が彼女に向く。
彼女は
「夫と相談して決めたのですが」
その視線を正面から受け止めながら
ハッキリと言ったのだった。
「私たち、東京に攻め込もうと思います」
ライドウの目が見開かれる。
予想していなかったのか。
「……本気か?」
そう訊き返す。
彼女は頷く。
そして忍はその様子を黙って見つめ、それを肯定の言葉とした。
彼女は言った。
「……報告書に書きました通り、草薙の剣は今、最強のクルセイダーが所持しています」
現在の日本の領土から悪魔を叩きだすため。
三種の神器の本体を全て揃える必要があり。
現在、草薙の剣の本体がこの京都御所に無い。
そしてその草薙の剣の本体は、クルセイダーロード……
メシア教徒テンプルナイトの人造悪魔人間・クルセイダーのリーダーである少女が所持している。
クルセイダーのリーダーだ。
普通に考えて、品川近辺からまず出てくるはずがない。
仮に出て来たとしても、向こうは剣を奪還されることを最大限警戒するはず。
そこを狙うのは現実的では無いだろう。
だとしたら
「取り返すには品川に乗り込んで、クルセイダーロード……仮面ライダーサタンを名乗る、悪魔人間を倒すしか無いんです」
そう。
その方法しか無いのである。
こちらから品川に乗り込み、なんとか剣の所持者である仮面ライダーサタンを倒し、奪い返す方法しか。
そしてそれが出来るのは
「それが出来るのは、今は私たちしか居ないと思います」
その言葉を口にした真月の表情には怯えが無かった。
無論、簡単に成し遂げられるとは思っていない。
しかし
「悪魔人間である仮面ライダーアモン……私の夫と、魔王マーラと天津神イザナミを仲魔にしているこの私しか」
自分たちの力を信じて突き進む。
きっとこれは人任せにはできない。
そうすることでしか、未来を掴めない……
それがふたりで話し合った結果であった。
「だから……お願いします」
「認めてください」
ふたりの言葉が合わさり。
ふたりは同時にライドウに深く頭を下げた。
それを見つめて
ふたりの上司である白髪の少年……17代目葛葉ライドウは
「分かった……行くがいい」
それを認めたのだった。