真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
そして2人は新宿にやって来た。
初めて来た新宿の街は、想像とかなり違っていた。
この場所は2年前に核の洗礼を受けた。
なので、地上部分には細々とした建物は無く。
残っているのは、鉄筋コンクリートの大きな建物ばかり。
吹っ飛んだ建物がいくつか散見され、見るも無残な様子だ。
そんな中、ほぼ完全な形で生き残っている巨大ディスプレイが異様だった。
そのディスプレイは死んでおらず、未だに映像を流し続けている。
『皆さん、今日の命があることを神に感謝しましょう』
(これがスタジオアルトの街頭テレビ……)
その東京らしいオブジェクトに、2人は思わず見入ってしまう。
そのオブジェクト……街頭テレビは、セミロングの黒髪の清楚そうな少女の祈りの姿を映している。
少女は厳かな口調で話していた。
『2年前のあの日、東京は核の炎に包まれました』
放送しているのはメシア教徒のようだ。
テレビの中の少女が、メシア教徒の衣服……メシア服を身に着けているから。
画面の中で、少女は
『それでも我々の命があるのは神の御加護のお陰なのです』
そう、説法のようなことを一方的に喋っている。
その内容は「今に絶望してはいけない。未来のために」という前向きな内容。
何も知らなければ大事な事だと思えたかもしれない。
しかし忍と真月の2人は、今のこの状況がメシア教徒の暴挙のせいであることを知っている。
メシア教徒が行動を起こさなければ、今の状況は起きていないか、早急に元に戻っていたはずだ。
よって間違いなく、今の状況は全部彼らのせいなのだ。
『我々は悔い改めなければなりません。あの悲劇は、そのための戒めなのです……』
彼ら2人は話が終わる前にその場を立ち去る。
聞く価値が無い。
聞くだけ無駄で。
怒りが湧くだけだ。
「ここが、今の新宿……」
そして彼らは今の新宿に辿り着いた。
今の新宿は、地下にその拠点を動かしていた。
地下街に場所が移っても、その煌びやかさは遜色ないのではと思える。
もっとも2人とも、大破壊前の新宿を知らないのであるが。
人は沢山いた。
さすがに昔漫画やドラマで見たような、派手で綺麗な洋服をきた人々ではないわけであるが。
問題はそこではない。
この街は、悪魔と人間が混じっていた。
人に交じって、異形の存在がいる。
蝙蝠の翼が生えた者。
尻尾が生えた者。
身体の色がおかしい全裸の女の姿をした者。
人ではない存在が堂々と人と混じって存在している。
「人と悪魔が共存しているの……?」
真月は呆然とした声を出していた。
あまりにも予想外のその状況に。
悪魔と人の共存。
そうとしか思えない状況だった。
それだけではない。
ふと目を向けると、おどろおどろしい雰囲気の立て看板のある店舗があり。
良く見ると、それはガイア教の神殿だった。
そしてその傍に、小奇麗な青白い教会のような店舗があり。
それはメシア教の教会だったのだ。
なんと。
メシア教とガイア教が共存状態にある。
信じられない状況だ。
そこで彼女はハッとする。
それは自分たちの格好だ。
自分たちは今、暫定政府の職員の制服を着ている。
これではあまりにも目立ってしまう。
今、自分たちはメシア教徒が普通に存在する東京にいるのだ。
これはあまりにも不味い。
着替えなければ。
「いらっしゃい」
そして彼女らは防具屋に駆け込んだ。
そこにはショーケースの中に防具が置かれている。
ゴテゴテした装飾がついたもの。
とことん武骨で、見た目は格好悪いもの。
色々とあった。
そしてそれらをざっと見た後
「ここで一番売れてる女性用防具と、男性用防具下さい!」
真月は金網で防護されたカウンターの向こうに居る店主にそう注文を出した。
「一番売れ筋ね。分かった分かった」
すると店主は真月の注文を快く聞き入れ。
2点の品を運んで来てくれた。
金網越しに見せられるそれに、2人は息を呑む。
男性用は普通であった。
特に変では無い。
普通の近代的デザインのブレストアーマーに、カーキ色の丈夫そうなズボンを合わせた商品。
別に変なものではなかった。
問題は女性用だった。
「これが本当に売れ筋なんですか……?」
真月の戸惑いの混じったその言葉に、店主は堂々と答える。
「これが売れ筋商品のハイレグアーマーだよ」
ハイレグアーマー。
白いハイレグ型レオタードに、胸と膝までの脚部分だけのアーマー要素を追加した防具。
(こんなものを街中で着ろっていうの?)
ハッキリ言って恥ずかしい。
まるで変質者ではないか。
しかし、店主の様子を見るに嘘を言ってるようにも思えない。
ならば……
(……仕方ない)
街中でこんなものを着るのはものすごく恥ずかしい。
だがこれが売れ筋で、一番街に溶け込めるのであれば仕方ないと言える。
彼女は覚悟を決め、更衣室に入り。
誤魔化しの最後の悪あがきで一緒に購入した白いマントと同時に装備してみる。
そして彼女はシャッとカーテンを開けた。
「どう?」
夫に向かって仁王立ち。
今の自分の姿について訊ねる。
そして彼女に訊ねられた夫は
「良く似合ってる」
そう、お決まりと言えばお決まりではあるが。
おそらく本心である言葉を返した。