真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
受付の老婆から貰った鍵で鍵を開け。
2人は借りた部屋に入った。
ここは地下街なのだが……
部屋の内装はキチンとされていた。
ピンクがかった壁紙が貼られていて。
そして照明は薄暗い。
いかにもな感じである。
地下街にラブホテル。
あまりピンと来ないわけであるが。
改装したと思えないくらい、完璧なセッティングに見えた。
まるで元からそうだったんだ、と思えてしまうくらいに。
部屋にあるのは大きな丸いベッドがひとつと、ガラス張りのシャワールームで。
シャワールームには浴槽がひとつあって、かなり大きそうに感じる。
……おそらくふたりで一緒に入ることが前提の大きさだ。
そして、それ以外の備品は無いようだった。
ローションやマットなどは見当たらない。
忍は浴室を覗き込んでそんなことを考える。
別に彼はこの部屋を存分に楽しもうとは考えてはいなかったのだが、なんとなく。
知識として知ってはいても、見たことのないものだったから。
だが彼の妻は
ベッドの方に向かい。
その枕元の棚や引き戸を開けまくり、中をチェックしていた。
(えっ)
彼は「まさか」と思う。
だが
「コンドーム、コンドーム……」
どうやらその「まさか」のようだ。
真月はこの部屋の機能を完璧に楽しもうとしていた。
つまり……
彼と身体を重ねようとしているようだ。
「ゴムを探してるの?」
忍が一応確認でそう訊ねると。
真月は頷き
「うんコンドーム探してる。そっちにない?」
振り返ってそう言ってきた。
まるで普通の様子で。
忍は突然のその調査要請に応え、戸惑いつつも一応周辺の戸棚やクローゼット、引き出しを開けて中を調べる。
だが、中には見覚えのある箱は入っていない。
無論、個別包装の方もだ。
なので忍は
「……無いみたい」
正直にそれを妻に伝える。
その言葉で彼の妻はベッドに腰掛け、腕を組み。
何事かを考えて。
そして夫に向かって
目を正面から向け
「……あなた、やろう!」
真面目な顔でそんなことを言ってきた。
妻のそんな言葉に、何故か彼の方が動揺した。
そして
「やろうって、何を?」
内心理解しつつもそう訊ねる。
そんな夫に真月は
「セックス」
真剣な顔でそう返した。
そしてそのまま
「だって、ありえないでしょ」
プレゼンを開始する。
この場で、ここで夫婦の営みをすることの意味について。
「あなた、あのね。……私たちの使命は、絶対に成し遂げないといけないことだけど、失敗に終わる可能性も大いにあるわけよ」
そこには照れや恥じらいは無かった。
本当に真剣だ。
彼女は手を大きく振ったり、広げたりして。
ここで夫婦で交わることの必要性と意味合いをスラスラと語る。
「考えたくないことだけど、そんな事態になったときに」
彼女は部屋全てを示すように手を動かし
「こんなおあつらえ向きの場所に来ておきながら、そこで最高の思い出作りをしなかったとしてさ」
そう言って指を1本スッと立て
「それを後悔して泣きながら死んでいくことになると思わない?」
そこまで言われて忍は
「そりゃあ……」
するかもしれない。
俗っぽい話ではあるけれど、最愛の妻とこういう場所に来て、ただ寝ただけなんて。
勿体ない話である。
彼の脳裏に、さっきゴムを探して色々と開けたとき。
クローゼットに色々な衣装があることに気づいたことが蘇る。
彼はそういうのが好きであった。
妻とは身体の関係になるのが成人してからだったから、余計に。
コスプレで、自分たちのifについて成り切って楽しむことをよくやっている。
……家では。
ここには色々衣装がある。
もっともっと、最高の思い出を作れるかもしれない。
よって……
彼には妻の言葉を否定できなかった。
だけど
1つだけ大きな問題があった。
それは……
「避妊具が無いだろ」
セックスすれば女性は妊娠する可能性がある。
これは動かしがたい事実である。
そして今の自分たちは使命がある。
その使命を果たす前に真月が妊娠して行動に支障が出るのはどう考えてもまずいのではないか?
だが、しかし
それについても。
「悪阻の時期は、妊娠第5週くらいからなんだよね……!」
真月はそう、即座に言い返して来た。
つまり彼女は
例え妊娠しても、第5週までは行動制限が起きるような事態は起きない。
だから
「5週間以内に使命を果たせば何も問題起きないでしょ!?」
……と言いたいのだ。
まるでRTAである。
東京攻略RTA。
そんな言葉が彼の脳裏に過った。
彼としては。
誘いに乗りたい。
そして彼女は、完全にやる気になっていて、超積極的だ。
ここで断るのは……
やっぱり、何か違う気がした。
ここで自ら期限を切って、追い込むことが神の意志であるとすら、何だか思えた。
だから彼は
「分かった。……絶対に5週間以内に使命を果たそうな」
そう言って彼女の肩に手を置いた。
真月はそんな夫に
「そうこなくっちゃ!」
そんな言葉を返して満面の笑みを浮かべる。
彼はそんな妻の振る舞いを心底愛おしく思い。
彼女が忍の首に抱き着き、唇を重ねて来たとき。
彼は彼女を抱き締め
そして、彼女をそっと抱き上げたのだった。