真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
時間になったのか、突如ブザーが鳴った。
同時に電話が掛かって来る。
それに跳び起きた真月は裸のままベッドから抜け出して、それに出た。
受話器の向こうから、老婆の声が響いてくる。
『チェックアウト10分前だけど、延長するかい?』
真月はそれに
「いえ、延長しません。出ます」
そう返した。
電話を壁に設置された台に戻すと、さっきのブザーで同時に起きていた夫に視線を向け
「10分以内にチェックアウトよ。急ごう」
そう言って、彼女は脱ぎ捨てて、近くの棚に畳んで置いていた衣服を再度着用し始めた。
昨日、散々愛し合った後。
そのまま眠ってしまったのだ。
そして一緒にラブホテルをチェックアウトし、店を出た。
自動ドアを潜るとき、真月は自分の腹部に触れる。
隣の彼女の夫はその様子に
「お腹が空いたの?」
時間にしては朝のはずなのでそう訊ねると。
彼女は
「……いや、2日くらいここで生きてるんだよね」
そう呟いたので。
忍は返答に困り
「朝ご飯はご飯系メインで探そうか」
そう返す。
確かに2日から5日くらい精子は女の胎内で生きている。
それはそう。
でもそんな話をいきなり聞かされてもどう返せばいいのか言葉に困る。
無論、嫌なわけは無いのだが。
彼女の言葉には、彼と家族を作る意志が乗っている。
嫌なわけがない。
反応に困るだけだ。
なので彼は、彼女への返事の代わりに
真月の腕を掴み、強引に引っ張るようにして歩き出した。
「朝ごはんも大事だけど……ついでに聞き込みもしよう」
そう忍は、隣で彼の腕を取り一緒に歩く妻に言う。
真月は頷いて
「そだね。人が居る場所を選んで、ついでに」
時間は無駄には出来ない。
彼らとしては、品川に辿り着くための最適解を探る必要があるのだ。
昨日の行為で、タイムリミットが設定された可能性があるわけだし。
そして2人で地下街を歩き回っていると。
大鍋でお粥のようなものを煮て、それを販売している店を見つけた。
鍋を外に出し、座席やその他備品を奥の店に収納している。
実質屋台のような店だ。
お粥の屋台。
普通なら日本では見ない屋台である。
それがこの大破壊後の東京では普通に商売しているようだ。
2人はそんな店を前にして
「ここにしないか?」
「そうね。人も多いみたいだし」
そう言葉を交わして。
お粥の鍋の前に出来た列に並んだ。
列に並びながら2人は傍の人に話し掛け
彼らはこの新宿の街の詳細と、品川に向かう場合にどうすれば良いのかを確認する。、
「この街は、オザワっていう悪魔使いの男が仕切ってるんだ」
「オザワは悪魔と取引して、ここの悪魔は人を襲ってこない。だから共存できるんだ」
「ここは悪魔は襲ってこないが、税金を払わないと逮捕される」
「オザワの要求してくる税金の額だとか手足の私設警察だとか。不満はあるけどさ……不満を言った人、連れていかれた後、別人みたいに大人しくなったりするんだよな」
「税金払うのが嫌で逃げようとしているのを私設警察に見つかると、射殺されるぞ」
「メシア教徒とガイア教徒が殺し合いをしてない理由? そりゃあ、街に教会と神殿を置いておきたいからじゃないの? 殺し合いの原因になる、ってなったら、オザワに殺されるからね」
「東京は今はあちこちミサイルの余波で通れない場所が出てる。どこまで行きたいの?」
「品川まで行きたいのか。だったらここからまず渋谷に行って……」
「渋谷までの道中の代々木の方にある森に、妖精たちが住み着いてる。不用意に入ると殺される可能性あるから気を付けた方が良いぜ」
……聞いた話はこのようなもので。
それをまとめると、こんな感じである。
まず、この新宿の支配者はオザワという男であり。
オザワは悪魔と取引を行い、ここで悪魔が人を襲わないようにしている。
そのためこの街では悪魔と人間の共存が実現している。
そしてこの街ではオザワに逆らうことはご法度で。
逆らえばオザワに仕える私設警察により逮捕または処刑をされてしまう。
あと品川に行くためには、まず渋谷を目指した方がいい。
……以上のような感じだ。
これら情報を前にして。
真月は並んで買ったお粥……品種不明のコメらしき穀物を、悪魔の肉と思しき肉片と一緒に煮たもの……に口をつけつつ
「オザワって男に会っておいた方が良くない?」
そう夫に提案をした。
(……確かに)
この新宿の支配者であるオザワ。
どのような人物なのかは不明であるが、実力者であることは間違いない。
出来ることなら現在の東京の実情を確かめたい。
問題は、どうすれば会うことができるか、だ。
……そしてふたりは新宿のバーにやってきた。
大破壊後の世界でも、こういうお洒落な店は存在するようで。
ふたりはこういう盛り場に行けば、何か手掛かりが掴めるかもと思ったのだ。
そこは綺麗な店だった。
チェック模様の床。
小綺麗な照明……。
「いらっしゃいませ」
……バニーガールが彼らの接客に来た。
(バニーガール)
なんとなく、新宿のバーに相応しい気がした。
貧困な発想力と言われるかもしれないが。
「おふたり様ですか?」
そう訊ねてくるバニーガール店員。
忍は頷く。
そして
「カウンター席に案内して貰いたいんだけど、出来る?」
そう訊ねた。
「私設警察の偉い人にいきなり会うのはできないか? だって?」
なんとなく、信頼性の高い情報を取るならカウンター席だろうと。
お願いして案内して貰ったのだが
「そりゃなかなか難しいんじゃ無いか? あの人たち……アレだし」
カウンターで仕事をしているバーテンダーはそう、少し言いにくそうに彼らの問いにそう返した。
確かに難しいかもしれない。
かなり高圧的で、傲慢な人間揃いと聞いているから。
けれども
「私たち、どうしてもオザワという人に会いたいんです」
そう真月が主張する。
簡単に諦めきれない問題だから。
「……うーん……」
真月の言葉にバーテンダーは悩む。
本人としては頼まれたのだから何とかしたいと思っているのかもしれない。
(難しいかな、やっぱり)
そして真月が自分たちの動く方向を再検討すべきかと考え始めたときだった。
「邪魔するぜえええええ!!」
粗野な声が店内に響いたのだ。