真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第85話 私設警察たちと

(一体何事?)

 

 突然の品の無い声に。

 

 真月は視線を向けた。

 品の無い声の主たちは

 

 綺麗にクリーニングされていると言い切れるような小綺麗な制服に身を包んだ4人組で。

 そいつらは見るからに偉そうな雰囲気を撒き散らしつつ、店内に入ってくるところであった。

 

(まさか)

 

 真月は彼らのその振る舞いに思うところがあった。

 そしてその答え合わせは

 

「はわー! ご苦労様です私設警察の警察官の皆様!」

 

 バーテンダーがいきなり背筋の伸び切った姿勢で挨拶することで行われた。

 彼らこそオザワの施設警察の警察官なのだ。 

 

(……こいつらが……私設警察……!)

 

 真月は嫌悪感を持った。

 警察を自称するにはあまりにも横柄で驕り昂ったその振る舞いに。

 

 彼らは勝手に近くのテーブル席に座り

 

 

「パトロールしてたら喉が渇いた。何か酒を持ってこい!」

 

 

 暴力的な態度を隠そうともしないで、酒を要求した。

 もう、警察官というよりごろつきである。

 

 だが

 

「はっ! ただいま!」

 

 バーテンダーは即座にそう返し

 

「アケミちゃん! グラスを人数分!」

 

「はいっ」

 

 バーテンダーはバニーガールと手分けして

 

 私設警察の面々の人数分のグラスと酒を準備する。

 バーテンダーは棚から褐色の瓶を取り出して、私設警察たちのテーブルに運んで行った。

 

 瓶のサイズと色合い的に、おそらくブランデーかウイスキーだと思われる。

 

 

「どうぞごゆっくりお楽しみください」

 

 

 そしてグラスと酒瓶を用意し終えて。

 バニーガールが一礼して去っていくとき。

 

 ……その去り際に、私設警察の1人が彼女の尻を撫でた。

 

(最低……)

 

 真月はムカムカとした。

 

 彼女の育った環境には、このような男は1人も居なかったからだ。

 

 忍は当然そうであるし。

 

 彼女の父親もそうだった。

 そしてその彼女の父親の親友である夫の父親もそういう人物では無い。

 

 

 権力に溺れ、威圧的にふるまうような。

 誰にも止められないからと、欲望を剥き出しにするような。

 

 人よりも獣に近い人間。

 

 あまりも不愉快である。 

 

 しかし 

 

 

「すみません。旅の者なんですけど」

 

 

 彼女は愛想笑いを浮かべて、一礼して彼らに近づいた。

 不愉快だろうが、接触しないわけにはいかない。

 

 彼女らには情報が必要なのだ。

 

 近づいて来た彼女に対し 

 

 

「……なかなか美人な女だな。何の用だ?」

 

 

 私設警察のひとりが真月を気に入ったようであった。

 

 彼女はその私設警察の男の視線に正直、ゾッとしたものを覚える。

 ねばつくような視線を胸元や下半身に感じ、嫌悪感を覚えた。

 

 しかしそれを表に出すわけにはいかない。

 

「私設警察の一番偉い人って、いきなり会う事って可能でしょうか?」

 

 愛想笑いを浮かべたまま彼女は、内心の不愉快さを覆い隠してそう頼み込んだ。

 

 すると

 

「警察長官か? ……おうおう。丁度良かったな。……俺が警察長官の直属の部下よ」

 

 そんな返答が返って来た。

 

(お、ラッキー)

 

 真月はその返答に心でガッツポーズをした。

 上手くすれば警察長官と話をすることができるかもしれない。

 

 そうすればオザワに会うことも夢ではないはず。

 

 道が開かれた。

 そう思っていた。

 

 そこまでは 

 

「その代わり……」

 

 その後、私設警察の男は暴挙に出た。

 

 そいつは彼女に手を伸ばしてきて……

 

 彼女の胸に触れたのだ。

 アーマー越しではあるのだが。

 

 

 そして、言ったのだ。

 

 

「……一発やらせろよ。それで話をつけてやってもいい」

 

 ニヤつきながら。

 

 

 

 胸を触られた。

 それを知覚した瞬間。

 

 激しい怒りが湧く。

 彼女は生涯夫以外の男に抱かれるつもりはなく。

 夫の子供以外産まないと決めていた。

 

 そんな自分が、夫以外の男に身体を触られた。

 許せなかったし、夫に対する罪悪感すら湧いた。

 

 だから

 

「てめえふざけんな!」

 

 反射的に手を振り上げ。

 彼女は自分の胸を触った私設警察の男に平手打ちをしようと

 

 ……したが。

 

 

 その前に

 

 

 彼女のすぐ傍からすごい速さで別の何かが飛んできて。

 

 テーブルやらオブジェやらを破壊する音を立てながら、そいつは吹っ飛んでいった。

 

 

 

 それは何だったのか?

 

 それは……

 

 

 彼女の夫の、忍の腕だった。

 

 

 彼女が触られたのを見た瞬間、踏み込んで一瞬で間合いを詰めて、妻の胸を触った男を殴り飛ばしたのだった。

 

 忍の拳を撃ち込まれた私設警察の男は死んではいなかった。

 しかし……

 

 前歯を上下ともに消失し、血まみれで。 

 ひいひい言いながら、這いずっている。

 

 仲間がそいつを支えて、助けようとしていた。

 

 そこに 

 

「……他人の嫁さんに何をしてくれてるんだ?」

 

 ドスの利いた声の彼の言葉。

 

 忍の声は……本当に怒りに震えていた。

 

 こんなに怒った夫を、彼女は見たことが無かった。

 

「てめえ殺すぞ……ああ?」

 

 彼女は夫の怒りに恐怖に近いものを感じたが。

 同時に少し、ゾクゾクしたものを感じた。

 

 嬉しかったのだ。

 

(……多分、健全じゃ無いよね。こういうの)

 

 夫の独占欲の発露。

 自分という女を他の男に触られたという彼の動物的な怒り。

 

 そこに彼女はときめいたのだ。

 他人に言えないことではあるが。

 

 

「き……キサマらッ! こんな真似してどうなるか……!」

 

 

 前歯を失った私設警察の男が忍を指差して、そう怯えながら脅し文句を口にする。

 そしてその隣の男が、自分の腰のホルスターから拳銃を抜いて忍を狙おうとした。

 

 その瞬間だった。 

 

 忍がまた一瞬で間合いをつめ、その拳銃を男が構えた手首ごと鋭い蹴りで蹴り飛ばす。

 

 すると見事、その男の手首から先があり得ない方向に曲がっていた。

 

 

「あぎゃああああああ!!」

 

「遅い! そんな遅い抜き撃ち当たるかよ!」

 

 

 怒声と悲鳴。

 その場は騒然となった。

 

 一瞬で2人やられた。

 その事実が私設警察たちの心を折ったようだ。

 

「お、覚えていろッ! オザワ様が黙っていないぞッ!」

 

 そう言い捨てて、彼らは逃げ帰っていった。

 

 それはまるで、一瞬の嵐のようであった。

 

「真月」

 

 逃げて行った私設警察を見ていた忍は、振り返らずに真月を呼んだ。

 

 その声に従い、彼女は夫の傍に近づく。

 

 

 すると

 

 

 彼女は夫にぐい、と引き寄せられて。

 

 そのままキスをされた。

 

 突然のキスに彼女は驚いたが

 

(そっか……きっと他の男に触られたから、自分の所有権を主張したくなったんだね) 

 

 他の誰のものでも無い。

 この女は俺のものだ。

 

 そんなあまりにも根源的な、夫婦間の欲望。

 

 彼女はそういう気持ちは素敵であると思う。

 

 

 そして。

 

 

 長めのキスを終えた後。

 彼女の夫はこう言った。

 

 

「……私設警察を潰しに行こう」

 

 

 いきなりの提案。

 

 しかもあまりにも暴力的で、野蛮である。

 勝てそうな連中だから、力で叩き潰してこちらの要求を通そうなんて。

 

 だけど……

 

「そだね。ぶっ潰してやろうか」

 

 彼女はそれに同意した。

 

 なんとなく今は

 

 野蛮と言われようと、心のままに暴れ回りたい気分だったから。

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