真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第86話 タケミナカタ

 バーを出る前に、壊した備品の代金を2人は払おうとした。

 かなり派手に暴れたから、当然のこととして。

 

 だがしかし

 

「お金なんて要らないよ!」

 

 彼らのその「当然のこと」は拒否された。

 バーテンダーは出入り口を指差す。

 

 出て行ってくれ、の意思表示。

 そしてそのまま続ける。

 

「私設警察に逆らうなんてあんたたちなんて真似をしてくれたんだ!?」

 

 口から泡を飛ばしつつそう叫ぶバーテンダーの顔色は真っ青であった。

 

「巻き込まれるのはごめんだ! 即刻消えてくれ!」

 

 周りを見回すと、他の客の顔色も大差ない感じである。

 そこで

 

「そんなに私設警察が恐ろしいんですか? 拳銃持ってるぐらいでしょう?」

 

 忍はこの状況を見た自分の正直な気持ちと。

 この自分の「自分の言葉」をどう否定して来るかを期待してそう言う。

 

 彼とて無論、私設警察が拳銃を持っているくらいで恐れられているわけがないことは理解している。

 

 私設警察が恐れられているのはオザワがバックにいるからだろう。

 

 ならば、どうしてオザワがバックにいると怖いのか?

 訊きたいのはそこである。

 

 バーテンダーはさらに叫ぶ。

 

「拳銃ごときでそこまで恐れる訳が無いだろう!? 怖いのはオザワ様だ!」

 

 オザワ様。

 

 それに関してはここに来るまでに色々聞いてはいる。

 

 この新宿を支配し。

 悪魔と取引をし。

 

 そしてとてつもなく強力な悪魔を使役するらしいことも。

 

 オザワが使役する悪魔。

 

 それに関しては「嗅ぎまわっている奴が居る」と思われるとマズいので、ここまでは突っ込んで訊いて来なかった。

 なので

 

「オザワ様の何が怖いんですか?」

 

 忍は突っ込む。

 返しを期待して。

 

 そしてバーテンダーは

 

「タケミナカタを仲魔にしてるんだよ! アンタ、古事記は読んだこと無いのか!?」

 

 激しくそう返す。

 

 タケミナカタ……

 

「無論、そのくらい知ってますよ」

 

(学生時代に真月と一緒に諏訪の方に旅行に行ったことあるし。それぐらい、当然知ってるさ)

 

 そう彼は心で呟く。

 

 タケミナカタとは?

 

 それは、国譲りの神話で登場する国津神である。

 

 彼は日本の国を実際に作った国津神であるオオクニヌシの息子神で、オオクニヌシが高天原に国譲りを迫られた際に異を唱えた神だ。

 

 彼は国譲りを成し遂げたいというのであれば、自分を倒してみせろと言い放った。

 そしてその結果

 

 彼は高天原より派遣された武神であるタケミカズチに完膚なきまでに敗れた。

 

 敗れた彼は国譲りを認め、さらに今後諏訪の地より出て来ないことをタケミカズチに誓ったという。

 

 ……一見すると負けた神である。

 しかしじゃあ弱いのかというと、そんなことはない。

 

 タケミナカタは軍神なのだ。

 それは……出雲で戦い始めて敗色濃厚になり、そこから諏訪まで逃げられたことにある。

 

 殺されなかったのだ。

 

 生き延びるという一点において、彼は間違いなく軍神なのである。

 

 侮っていい神では無いだろう。

 

 

 だが、2人は大して動揺した様子も見せず

 

「じゃあちょっと、警察署に詫びに行きたいので場所を教えてくださいますか?」

 

 そんなことをバーテンダーに言ったのだった。

 

 

 

 

 

 そしてバーテンダーから私設警察の警察署がある場所を確認した。

 私設警察の警察署は、新宿地下街に存在した一番大きなショッピング街である「新宿サブロード」にあるらしい。

 そこに行けば私設警察の警察長官に会うことができるようだ。

 

 2人はそこに向かいながら

 

「タケミナカタねぇ」

 

 真月はアームターミナルのキーボードを触りつつ、呟くようにその名を口にした。

 

「勝てるよな?」

 

 そんな妻に、忍はそう確認する。

 真月は夫の言葉に頷いて

 

「ネームバリューは大きいから、弱い神では決して無いけれど、生憎ここは諏訪じゃ無いから」

 

 彼女は語った。

 タケミナカタがどのような悪魔なのか。

 

 彼は戦いの神であるが、諏訪から出ないと誓いを立てた神である。

 そんな彼が、諏訪ではないここ新宿で、オザワの仲魔として召喚されている。

 

 平たく言うと約束破りだ。

 

 悪魔において、こういう約束破りはただの嘘吐きで終わらない。

 必ず代償を払うことになる。

 

 なので真月の予想では、タケミナカタは弱体化しているだろうとのことだった。

 

 しかし

 

「それでも強大な神であることは違いないわけだし。……オザワとかいう人がこの土地で王様をやる分には困らないかもね」

 

 そこは疑いない。

 弱体化しようと、元々強力な神であるのだ。

 絶対的な強さは十分高いハズ。

 

 けれども。

 

 彼女は

 

「……でもさ」

 

 そこで言葉を切り。

 アームターミナルのキーボードを叩いた。

 

『AMATSU-KAMI SUMMON』

 

 そして悪魔召喚。

 

 真月の足元に描かれる魔法陣。

 

 そこから光が吹き上がり。

 

 ピンク色のワンピース姿のツインテール幼女。

 堂島奈々子を名乗った姿を取った天津神イザナミが召喚される。

 

 イザナミは召喚魔法陣が消えた後。

 

「呼んでくれたね! お姉ちゃん!」

 

 満面の笑みでそう契約主たる真月に言葉を掛け

 

 真月は

 

「イザナミ様。申し訳ありませんがお手をお貸しください」

 

 膝を折って畏まる姿勢を見せ。

 自分が召喚した仲魔である神に敬意を示し。

 

 彼女の夫もそれに倣って膝を折った。

 

 

 

 ……そう。

 

 こちらにはこの神がいる。

 日本神話体系でとてつもなく大きな存在に位置しているこの神が。

 

 

 天津神イザナミが……!

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