真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「オザワ様!」
突然部屋に入って来た手下に舌打ちする、オールバックの髪型の裸の男。
凶暴な目付きで、暴力を日常にしているのが一瞬で分かる顔つき。
オールバックの髪の色は黒で、さらに男にしては長く、背中に届く長さ。
その身体は特に弛んではおらず、日常の暴力で自然についた筋肉で覆われている。
彼こそ、この大破壊後の新宿を支配する男・オザワであった。
「ちっ、ノックくらいしろ!」
ちょうど彼は、税金が払えず娼婦堕ちした女相手にお楽しみ中であったのだが、さあこれから寝取りを愉しもうというときに邪魔が入った。
外見がそこそこで、元々恋人持ちの女だという触れ込みだからわざわざ身請けしたのに。
彼の手下はオザワが全裸で、傍に全裸の女がいることから察して
「あっ、申し訳ありません!」
一応頭を下げる。
オザワの方もそれ以上追求はしない。
しかめ面で部屋のソファの上に脱ぎ捨てていたパンツを拾って穿き、他の衣服も身に着けていく。
それを傍で棒立ちで見ている手下。
早く服を着てくださいと言いたげである。
(イラつかせるなよ畜生)
心で毒づきオザワは
「要件を今言え! 着替えしながらでも話くらい聞けるだろクソが!」
彼の怒声に、手下の男はビクリと震え。
慌てて叫ぶように報告した。
「私設警察の本部に殴り込みです!」
その言葉を耳にしたとき。
オザワの手が止まった。
「ハァ?」
そして困惑の表情を浮かべる。
彼の中ではあり得なかったのだ。
この自分の王国で反逆を企てるような者がまだいるなんて。
てっきり、ガイア教徒がゴリ押しをしてきているのかと思っていた。
新宿の王を辞めて、ガイア教のために諏訪を支配しないか? と。
しばらく前から彼はガイア教徒に勧誘を受けていて、今回もその関係だと思ったのだ。
だが、違った。
殴り込みだなんて。
(どこのバカだ? 命、いらねえの?)
彼は鼻で笑った。
この自分に逆らおうとするなんて。
私設警察に喧嘩を売るということはそういうこと。
この、国津神タケミナカタ様と召喚契約を結んでいるこの自分に喧嘩を売るつもりだということだ。
そう思い、彼は唇の端を歪めた。
今も昔も、馬鹿をぶちのめして従わせるのは気分が良い。
今までそれで、上手く行かなかったことは無かった。
……そのとき。
彼の脳裏にたった1人だけ、どれだけ殴りつけても自分に従わなかった男がいたことが一瞬過る。
眼鏡を掛けたバカ野郎だ。名前は忘れた。
そいつだけは彼に従わなかった。
ずっと「お前らのような下種野郎には絶対に負けない」と言い続けていた。
……まあそれは、大破壊が起きる前の話で。
今となっては関係の無い話。
どうでもいい。
「殴りこんで来てるのは、凄腕の悪魔使いと格闘技の達人なんです! 私設警察の面々では全く歯が立ちませんオザワ様! どうか!」
彼の鼻で笑う態度を誤解したのか、手下は頭を下げまくる。
自分のキャパオーバーの相手であると主張する。
オザワが来てくれないと詰む。
それが態度に出ている。
「安心しろ。行ってやるから」
そう、溜息を吐きつつ。
革のジャケットを着込み、服装を整え。
最後にデスクに置いてあった自分のアームターミナルを左腕に装着する。
このアームターミナルは大破壊前から使い続けて来た愛用のもの。
自分の相棒も同様だ。
それを見つめ、ニヤリと笑う。
そして
「じゃあそのままちょっと待ってろ」
ソファの1つに裸で横になってる女にそう言い捨てるように言い。
彼は部屋の外に出ていった。
彼のいた場所は元々ヤクザの組事務所だった場所で。
ここ新宿を支配するとき、一番彼に楯突いた暴力団の事務所だった。
その暴力団の構成員を皆殺しにして、彼はそこを自分の居城にした。
それは暴力団たちへの力の誇示の意味もあったが、この場所が業の深い場所であることも大きかった。
この場所は暴力の世界で生きていた者が集まっていた場所。
そこを居城とすることで、彼の中の攻撃性が強まるような気がした。
そんな場所で住めば、この自分の仲魔であるタケミナカタ様も強くなるかもしれない……!
タケミナカタ様。
彼がこの悪魔を仲魔に出来たのは偶然であった。
彼は元々、大破壊前にクーデターを起こした男・ゴトウの下で働いていた男であった。
ゴトウは自衛隊の一部を兵士として使っていたが、それだけでは足りずに彼のような無法者を取り込んでいた。
彼はその1人。
彼がゴトウの下で、悪魔召喚を行う術を手に入れ、悪魔使いになった。
その後核ミサイルを撃ち込まれ、大破壊で旧世界が終わった後。
なんと核の洗礼から逃げのびた彼は、より強力な仲魔を求めて日本中の神社を巡ったのだった。
国津神タケミナカタとは、その過程で出会った。
そこで彼は、タケミナカタに気に入られるに至る。
何がそうさせたのかは分からない。
タケミナカタが天津神に負けた神であり、諏訪に押し込められた神であることが、正道を歩いては来なかった彼と共鳴するものがあったのかもしれない。
私設警察の警察署がある場所は新宿地下街でのショッピング街「新宿サブロード」だった場所。
そこの数々の店舗を、警察署施設として流用した。
そして彼がSUBROADの文字を見るところまでやってきたとき。
彼は奥で怒号と悲鳴が湧いていることに気づいた。
襲撃はまだ続いているようだ。
彼はアームターミナルのキーボードを叩いた。
彼のアームターミナルはヘッドディスプレイが無いタイプで。
アームターミナル本体にディスプレイ部分がついている。
形状としては剣道の小手のようだった。
そしてそこのディスプレイに表示された。
『KUNITSU-KAMI SUMMON』
同時に地面に魔法陣が描かれ。
呼び出されたのは……
「……オザワよ。我に今日は何の用だ?」
弥生時代の衣装を着た角がある屈強な男性悪魔。
その肉体は逞しく、筋肉の塊であるが
両腕が無い。
両腕の無い猛き悪魔。
これが国津神タケミナカタであった。