真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「タケミナカタ様。久々に俺に逆らうバカが出たんです。捕らえるのを手伝っていただけますか?」
オザワはタケミナカタにそう恭しい口調で召喚したワケを口にした。
召喚者と仲魔の関係性は、普通は召喚者の方が上。
だが彼らの場合はそうではないらしい。
タケミナカタはオザワの言葉に鷹揚に頷き神の威厳を見せ
「任せるがいい。オザワよ」
そう答える。
そして立ち上がりつつ、周囲に落ちている武器類をその念動力で浮かび上がらせる。
タケミナカタは両腕が無い神である。
その理由は、天津神の武神タケミカズチと戦った際、斬り落とされたからである。
となると、その後タケミナカタが念動力に目覚めるのは当然の理屈と言えた。
周囲に落ちている武器。
剣や斧、そして拳銃。
それはオザワの私設警察警察官たちの持ち物で。
奥に進むに従って、倒れ伏している彼らがいて、傍にそんなものが転がっていた。
どいつもこいつも気絶であり、死亡はしていないようであった。
だが、無傷とは到底言えない。
前歯を失っていたり、鼻が折れていたり、手足がおかしな方向に曲がっていたり。
オザワはその中で、まだ気絶していない警察官を見つけた。
蹴りつけて、声を掛ける。
「オイ、何があった?」
そいつは呻き声を上げて苦しんでいたが、相手がオザワだと気づき
「……拳銃が通じない化け物みたいに強い男と、メスガキの姿をした悪魔が俺らをフルボッコにして、警察長官のところに……」
拳銃が通じない男にメスガキ……?
オザワはその言葉で具体的なイメージが湧かず、首を捻ったが
「タケミナカタ様。とりあえず銃撃は過信しない方がいいみたいです」
「承知した」
タケミナカタと情報を共有し、先に進む。
そして怒号と悲鳴がどんどん大きくなり
やがて、かつては中華料理屋の店舗だった場所で。
数多くの回転テーブルが並んだ店の真ん中で、警察長官に彼が任命した男が、胸倉を掴み上げられて悲鳴をあげていた。
周囲には手下の警察官たちがバタバタと倒れていて、全員ピクリとも動いていなかった。
警察長官を掴み上げているのは、一目で身体を鍛え抜いていると分かる男で。
その鍛え方は実際に強い男になることを目指したもの……格闘家体型であることが一目で分かった。
そしてその傍に、アームターミナルを装着しマントを身に着けたハイレグアーマーの女。
それは髪が長くて、清楚な見た目。
育ちが良い女である雰囲気を振りまいていた。
彼の周囲には居なかったタイプの女である。
しかも美人だ。
こいつら2人が「恐ろしく強い武術家と悪魔使い」なのか?
「オザワはどこにいる?」
「大人しく全部吐けばこれ以上危害は加えないわ!」
……そして驚いたことに、彼ら2人の目的は彼自身……オザワのようだった。
どういうつもりなのか。
私設警察に怒りを覚え、潰しに来るまでは理解できても。
彼自身を
何故って、自殺行為では無いか。
だから
「そこまでだバカども!」
思わず叫んでいた。
すると男の傍にいた美人な女が彼に目を向け
そして
その傍にいたピンクのワンピースの姿をした幼女がこちらを向いた。
(ピンクのワンピースを着た、ガキ……?)
確か道中で出会った、ボコボコにされた彼の手下が
メスガキの姿をした悪魔。
そう言っていた。
ということは……
そこから彼が、この幼女の正体に辿り着き、具体的な行動を起こす前だった。
その幼女がこちらに向かって歩き始めた。
そこで彼は反射的に叫んだ。
「タケミナカタ様! あの子供を射殺してください!」
あの子供はヤバイ。
絶対におかしい。
だがタケミナカタは
「ちょっと待て。それはさすがにまずかろう」
……難色を示す。
明らかに弱い存在に、銃器を使用する姿が美しくないと感じたのだろうか?
仮にも彼は戦いの神である。
だからその代わりか
念動力で拘束しようとした
しかし……
「何だと!?」
タケミナカタの赤い目が大きく開かれた。
幼女は変わらず歩き続けている。
(念動力が通用しなかったのか!?)
タケミナカタの振る舞いから、即座に何が起きたのかを察し、オザワは
「だから射殺して下さい!」
再度、この幼女の姿をした悪魔への発砲を要請する。
だがそれは
「喰らえ! 大雷!」
……少し、遅かった。
幼女の姿が瞬間移動するようにタケミナカタの前に移動した。
恐ろしく速い踏み込みだ。
そして気合とともに右ストレート。
そのストレートは拳に黒い稲妻を纏っていた。
それがタケミナカタの腹に食い込む。
「グボォ!」
悶絶する。
子供のパンチであるというのに。
体重差、筋力的にあり得ない。
それだけでも信じられない事なのに
「鳴雷!」
攻撃はそこで終わらなかった。
幼女は中段突きから中段廻し蹴りに繋げた。
これも黒く帯電している。
「グハァ!」
これもタケミナカタは大打撃を受けたようだ。
何が一体起きているのか。
この幼女は何者なのか。
幼女はまだ止まらない。
「これが若雷!」
中段廻し蹴りからの、跳躍を伴った帯電アッパー。
それはタケミナカタの顎を砕き。
そして
「土雷!」
空中に飛びあがった幼女が、その手を空中で組み合わせてタケミナカタの頭頂部に振り下ろす。
連続攻撃で翻弄されているタケミナカタはそれで地面へと叩きつけられて
そこに
「伏雷!」
幼女は黒く帯電した両足で、地面に叩きつけられたタケミナカタの頭部に追撃の踏みつけ攻撃を行った。
それが、決定打になった。
タケミナカタがマグネタイトに分解し始めた。
倒されてしまったらしい。
(そんな馬鹿な)
(アリエネエ……)
自分の虎の子で、一番信頼できる仲魔。
国津神タケミナカタ。
それが倒されてしまった……!
瞬殺……!
「火雷、黒雷、析雷も出したかったよ……!」
そんなオザワの心境も知らず。
不満そうにシャドーボクシングをはじめる幼女。
「オ……オザワ様」
そしてそこに。
彼の手下である警察長官が情けない声をあげる。
「この人がオザワ? ……ただのチンピラにしか見えないわね」
その言葉を聞き、美人は困惑気味にそう言い
「アンタがオザワなのか?」
格闘家風の男は、掴み上げていた警察長官を放り出しつつ
彼に鋭い目を向けて来た。