真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
(なんか知らない間にオザワを捕まえてしまった)
真月はこれから出向こうと思っていた人物が向こうからやって来て。
挙句、勝手に無力化されて確保できてしまったことに何だか物足りないものを感じていた。
別に楽しむためにやっていたわけではないが、行動を起こしたのだから多少のやりがいが欲しかったのだ。
……しかし
(まさかオザワがこんなチンピラ同然の男だったなんて)
彼女が頭の中で想像していたオザワは、もっと年を重ねた老獪な中年男性であった。
目の前にいる本人は丸っきりただのチンピラ。
ヤクザですらない。
大破壊前の世界では、コンビニ前にたむろしていた連中そっくりであった。
拍子抜けである。
「で、あなたに聞きたいんだけど」
チンピラ相手に緊張する理由は無い。
何かあっても夫が守ってくれる。
その安心感から、特に気負わずに訊ねる。
仁王立ちで見下ろすように。
オザワは忍の言葉で正座をし、簡単に逃げ出せない状態になっている。
左腕に嵌めていたアームターミナルも自発的に外していた。
オザワは真月の言葉に
「はい、なんでしょう?」
愛想笑いを浮かべている。
真月はその彼の振る舞いに気持ちの悪いものを感じた。
……強い者に媚び諂うことに躊躇いが無い。
それに対する嫌悪感……
(ああ、そっか)
彼女は何故この男に嫌悪感を持ったのかが分かった。
この男はこの男なりの美学や正義感で動いてない。
弱い者から搾取し、自分の腹を満たす。
獣の論理で動いている。
そこにたまらない嫌悪感を感じるのだ。
こいつにとっては自分が満腹であればそれでいいのだ。
そうやって生きて来た人間なのが伝わって来る。
(吐き気がするわね)
そう内心思った。
しかし……
「渋谷までの正確な地図って持ってる?」
自分たちは世直しの旅をしに来たのではない。
日本から悪魔を叩き出すために、草薙の剣を取り返しに来たのだ。
その目的を果たすのが最優先である。
個人の感情を抑えて、真月はそう訊ねた。
オザワはそんな彼女の言葉に
「ええ。ありますよ。俺の事務所に行けばあると思います」
愛想笑いべったりの顔で、そう答えた。
「東京は色々大変ですよ。メシア教徒、ガイア教徒の他に、バール信者という新興勢力がいますからね」
「バール信者?」
オザワ先導で地下街の通路を歩きつつ
オザワに現在の東京の状況を訊ねていると。
聞いたことのない単語を聞く。
バール信者。
どうも説明によると、大破壊後の東京で生まれた新興宗教勢力らしい。
魔王バエルを崇拝する連中だそうだ。
「主にガイア教徒の中のはみ出しモンで、数が少ないんで問題にはあまりなってはいないようですが」
最終目的が何であるのかが良く分からず、何でもありであるはずのガイア教徒ですら追い出した。
そこが不気味である。
(なるほどね)
こういう情報は正直欲しい。
オザワの話を2人は聞き流してはいなかった。
そして。
会話している間に百貨店の地下階のような場所に来る。
「ここにあなたの事務所があるの?」
真月の言葉にオザワは頷き
「元々、ここに暴力団の奴らが組事務所を移してまして」
そいつらをブチ殺して、場所をそのままいただきました。
オザワはそんなことを自慢げに語った。
そしてそのままそこに入って。
周辺の様子から、やっぱり百貨店の地下階だったのかという認識を深めながら。
もう動いていないエスカレーターを階段のように降りて、地下2階だと思われる階に出る。
薄暗い電灯の明かりに照らされたフロアをオザワの案内に従って歩き。
そして彼らは
奥の部屋に案内される。
そこにはテープラか。
文字が書かれたテープが貼られていた。
OZAWA、という。
「ここっすわ。ちとお待ちを」
そう言いつつオザワは、ドアを開ける。
そこには……
かなり高級そうなデスクと、壺などの調度品があり。
そして
裸の女性がソファの上で座っていた。
「あっ」
その瞬間。
オザワは、しまった!
という顔をして
「あっと……へへ。ちょっとお待ちいただけますか?」
また、あの気持ち悪い笑顔を浮かべ。
ドアを閉じた。
2人はその様子に疑問を持つ。
あの女性が愛人であるのであれば「出ていけ」というか「服を着ろ」というのが普通で。
こんな顔はしないはずだ。
まるで……
マズいものを見られた。
そう言いたげな顔は。
真月はそこを不審に思い
「あの人、あなたの愛人か恋人?」
そう、尋ねた。
すると
「あ、はい。そうですよ。全く、服ぐらい着ろって言うんですよねぇ」
うへへ、と愛想笑いしながらそう返して来た。
(この男、嘘を吐いている)
真月はそれを察し
そっと自分のアームターミナルのキーボードに指を走らせ
召喚した。
『DEMON KING SUMMON』
……魔王マーラを。
「ヌオオオオオ! 真月召喚士何用じゃ?」
呼び出される異形の魔王。
それを目にして、声も出せずに硬直するオザワ。
彼女は即座に命令をする。
「この男を洗脳して!」
その真月の命令は
「たやすい!」
「……え?」
即座に実行に移された。
「ワシの言葉は否定できない! ワシから目を離せない!」
その瞬間。
オザワの目が虚ろになった。