真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語   作:XX(旧山川海のすけ)

9 / 70
第9話 聖女

 突如輝きだした瀕死の仲魔に。

 真月は流石に動揺する。

 

 何が起きたのかと。

 

 彼女の手からピクシーの肉体が消える。

 光になったのだ。

 

 そしてその光は空中で再びピクシーの姿を形成し。

 

 その姿が変わっていく――

 

 倍以上の大きさの、逆立った銀色の髪を持つピクシー。

 

 そこからさらに膨張し

 

 鎧兜を身に着けた、女戦士の姿に変化した。

 

 女戦士は青い甲冑と羽根飾りがついた兜を身に着け。

 背中に純白の白鳥に似た翼を備え。

 そして腰に一振りの長剣を吊るしている。

 

 ピクシーの変異が終了した。

 

 ……全く予想していなかったこと。

 

 その場の誰もが動けなかった。

 

 そんな中、その変異した悪魔は真月の前に舞い降りて来て。

 膝を折り

 

「マスター……あなたの想いを受けて、私の身に変異が起きたようです……」

 

 真月の奇跡を願った行動が、この結果を産んだ……?

 全く理解が及ばなかった。

 

 どうしてこんなことが起きたのか、意味が分からない。

 

 混乱してしまい、動けない真月。

 そんな彼女に、その悪魔は

 

「私は妖魔ヴァルキリー……今後ともよろしくお願いします」

 

 名乗り、新しく忠誠を誓った。

 

 ヴァルキリー……

 北欧神話における天女のような位置づけにある悪魔だ。

 

 ピクシーはそんなものに変化したのか。

 元のピクシーの記憶は引き継いでいるようだが。

 口調が前と違っているが。

 

 あまりのことに、その忠誠の言葉を受け止めきれず、戸惑う。

 そんな彼女に対して

 

 ヴァルキリーは

 

「では、ここからはお任せを!」

 

 そう言い放ち、大きく羽ばたいた。

 

 舞い上がり、目の前で展開した出来事に同じように停止状態に陥っていた邪神オーカスに向かっていく。

 

 ヴァルキリーは剣を引き抜き、その剣に雷を纏わせて斬り掛かった!

 

「喰らうがいい!」

 

「ブオオオオオ! そんな馬鹿な! ピクシーがヴァルキリーになっただと!? ありえん!」

 

 高速飛行し、無数の斬撃をオーカスに浴びせるヴァルキリー。

 

「ハァァァァァ!」

 

「ありえん! ありえん! 無いはずだッ!」

 

 まるで稲妻かかまいたちのように、オーカスを切り刻んでいくヴァルキリー。

 オーカスは圧倒されていた。

 ヴァルキリーの機動性に対応できていない。

 

 オーカスの身体から緑色の血液が流れ、飛び散り、徐々に動きが鈍くなっていく。

 

 そして

 

「とどめです」

 

 ヴァルキリーは腰の鞘に剣を納め

 

 その両手を高く掲げた。

 そこに生まれる雷のエネルギー。

 

 雷は激しさを増し、集中していく。

 

 オーカスは

 

「そうか……お前!」

 

 真月に視線を向けた。

 自らに撃ち込まれるその雷の魔法を無視して。

 

 我を忘れた感じだった。

 

「聖女なのか!? そういうことなんだな!?」

 

 自分をこの世界から叩き出す致命打になる一撃。

 それを忘れてしまうほどのこと。

 

 それほどのことに思い当たったらしい。

 

 聖女。

 

 聖女とは何だ……?

 

 真月は知らなかった。

 忍も知らなかった。

 

 言葉としては知っている。

 だが、そう呼ばれる特別なものは知らない。

 

「何だ、聖女って」

 

 忍はオーカスの言葉に思わずそう返す。

 

 だがその返答が来る前に

 

「――マハジオンガ!」

 

 ヴァルキリーの雷の魔法が発動し、凄まじい雷撃がオーカスを直撃した。

 

「ブオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 ヴァルキリーの魔法に絶叫するオーカス。

 オーカスはそのままどうと横倒しに倒れ。

 

「お……おのれ……お前が聖女と知っていたら……」

 

 ぶるぶると震え。

 真月に視線を向けた。

 

「真っ先にお前を喰ろうたものを……」

 

 目の前に宝物があったのに、見逃していた。

 それが悔しくてたまらない。

 

 そんな気持ちが溢れた声。

 

「口惜し……や……」

 

 己の運命への悔恨と怨嗟の声。

 その言葉を最後に。

 

 オーカスは動かなくなり。

 その緑色の眼が、黒く濁った。

 

 ……どうやら死んだらしい。

 

 だが、その死骸は消滅しない。

 この悪魔はカネシロという人間の男を素材に実体化し、この世界に現れたのだ。

 だから消えないのだ。

 

 

 さすがに人間の肉体を素材にした悪魔を食べるわけにはいかない。

 なので彼らは

 

 万が一にもオーカスが息を吹き返して復活してしまう可能性を断つために、その死骸を可能な限り破壊した。

 悪魔相手とはいえ、死骸に鞭打つのは気になるがしょうがない。

 

 そんなことは言っていられない時代だ。

 

 

 

 そしてオーカスの肉体をなるべく破壊した後。

 忍たちは、気絶していたカネシロの手下たちから銃器類を全て取り上げて

 

 もう二度と悪事をするな、次は無いと言ってから解放した。

 

 カネシロの手下たちは忍たちに悔しそうな視線を向けて。

 だんまりを決め込んでいた。

 

 絶対に反省してはいないが、だからといって殺すことには抵抗はある。

 この選択は責められまい。

 

 別に彼らは正義の味方では無いのだ。

 

 

 

「一体、何なんだろうね? 聖女って」

 

「まぁ別に、俺としてはキミが聖女と呼ばれるのは納得しか無いけど」

 

 そしてミンキラウワ狩りに来たときに盗まれないように、隠して停めていたバイクに2人乗りで乗り。

 自分たちの今の家であるガラ吉の家への帰路につきながら。

 

 2人はオーカスの言い残した「聖女」という言葉について話し合った。

 

 聖女……神のような人格をもった女性に贈られる称号。

 それが一般的なイメージではある。

 

 だが、悪魔が口にするそれは、恐らくそういう意味だけでは無いのだろう。

 何かあるはずなのだ。

 

 それが何なのかは分からないが。

 

 

 

 ……彼らがその言葉の真の意味を知るのはさらに2年後。

 

 彼ら2人が、一流の悪魔使いの何でも屋……「デビルバスター」として独り立ちを果たしてからのことであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。