真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
本来、洗脳は手としては外道である。
しかし、洗脳以外でこの場で真実に辿り着くのは困難で。
彼ら2人は、ここで時間を掛けるわけにはいかない理由がある。
彼ら2人には時間が無いのだ。
(さて……)
多少罪悪感を覚えつつ。
彼女は目的を果たすべく行動する。
やるべきことは
「まず聞きたいのは、あの女性は何?」
この男が隠そうとした、あの裸の女が何者なのか?
そこのことについてであった。
真月に質問に、オザワは
「……税金未払い女……人間の……クズです」
そう、ぼそぼそと。
うつろな表情で返答する。
税金未払い女。
そういえば、税金を払えない住民はオザワに連れていかれるという話があった気がする。
それ自体は普通のことだと思う。
許容できるかどうかは別にして、特段異常な事では無い、
こんな、原始的な状況下では。
たしか古代帝国では「税金が払えぬのであれば、妻子をいただく」という国があった気がする。
この男なら同じことをしても別に変では無い。
なのに、それを隠す意味が分からない。
隠すほどのことなのか?
「それを何で隠したの?」
納得がいかないので彼女は質問を重ねた。
自分のイメージが悪化するなんてことが理由としては意味不明だからだ。
隠すからには、隠すだけの意味があるはず。
そしてその真月の質問に返って来た言葉は
「子供を生贄に出してるから……それがバレるとマズいと思ったです……」
子供を生贄に出している……?
それ自体は許せない事だ。
大破壊後、そういう目的で女子供を攫う人間が現れた。
だが、それが何故裸の女の存在から繋がると言うのか?
そこで真月の中で閃くものがあった。
(まさか)
「……そういえば男性も連れて行ってるのよね」
そこで真月は言葉を切り。
意を決して、続きを話す。
それは
「生贄にする目的で、子供を作らせているの?」
その真月の言葉に
オザワはコクリと虚ろな目で頷いた。
(なんて……なんてことしてんのよ……!)
絶対に許せなかった。
悪魔に捧げられるために生まれてくる子供。
そんなものを、同じ人間が作ろうとするなんて。
「アンタなんて人間じゃない! 悪魔だわッ!」
あまりにも酷過ぎるその内容に、彼女はオザワを罵るが
「……何のために生贄を用意する? 町の治安のためか?」
激昂する彼女とは対照的に、彼は冷静にオザワにさらなる質問をする。
声に不愉快さはあったが、怒り狂う自分の妻の様子を目にして、冷静になったのかもしれない。
「そうです」
それに対するオザワの返答。
この街は悪魔と人間の共存が成っている。
そのからくりが、これであったとは。
こちらから極上の生贄を用意するから、ここの悪魔は人を襲わないのか。
納得の理由だった。
……しかし、それならばおかしいことがある。
「だったら時間が合わないな。子供が生まれるのに10か月は掛かるだろ。どうなってんだ? 大破壊からまだ2年だぞ?」
忍のさらなる追求。
その通りだ。
2年の間に行われてしたにしては、すでに街が出来過ぎてる。
悪魔を動かすには先に生贄が必要であり、ここまで安定するのに十分な時間があったとは思えない。
先に住民の子供を生贄用に攫ったのであれば、この街に人がいるとは考えにくい。
彼らの中では、どんなに安全でも子供を攫うような支配者がいる街は論外だった。
親は黙ってはおらず、絶対に反抗すると思っていた。
逆らえないのであれば集団で脱走を考えるはず。
……だとすれば、税金未払い者の男女に作らせた子供の生贄の数が揃うまで待っていたことになる。
だがそれは大いに矛盾する気がした。
奇跡的にここまで非常に上手く行って、今こうなってる。
その返答であればどんなに良かっただろうか。
オザワの答えは
「魔界の植物に、胎児を急成長させるものが……それを使ったです……生まれる子供に障害が出るですが……生贄ならそれで充分で……」
……というものだった。
その言葉で今度は
「てめえッ! 子供を何だと思ってやがるッ!」
忍がオザワに殴りかかりそうになった。
真月はそんな夫の怒りを理解しつつも、抱き着いて止めた。
「忍! 抑えて!」
彼女とて許せない気持ちは同じだ。
けれどもここでこの男を撲殺しても、この街が崩壊するだけ。
それはきっと、この街の住民にとって不幸な出来事だ。
なので彼女は
「……ただちにその行いをやめなさい。そして今後どんな理由が出てきても絶対にするんじゃないわ」
とりあえずそれだけ命令し。
オザワに暗示として刷り込んだ。
命令を受諾した証拠にオザワは、コクンと頷く。
これでとりあえず、この街でこれ以上悪魔の餌にされるために生まれる人間がいなくなる。
だがしかし……
貢物が無くなれば、悪魔は再び街の住人を襲い始めるだろう。
それはどうする?
真月の中ではそれの方がマシだという思いはあった。
だがそれを決めるのは、通りすがりの人間である自分たちではなく、ここで住んでいる住民たちだ。
ならば、何かしら解決策を考えなければならないだろう。
それが用意できないのであれば、黙って居るべきかもしれない。
でもそれは……
「……おい、お前が取引してる悪魔はどこのどいつだ?」
そのとき。
忍が口を開く。
彼女が街の治安と子供たちの命を秤に掛けて、葛藤して何も言えなくなっているときに。
その言葉に真月は
(ありがとう。あなた)
自分の夫に感謝した。