真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「俺が、その悪魔を屈服させる……それ以外方法は無いだろ。だからお前が取引をしている悪魔を教えろ」
忍の表情は硬い。
自分が口にしていることが簡単なことだとは彼は全く思っていない。
だが、これ以外の方法を思いつけないから。
だから、彼はこう言っている。
そんな彼の言葉に
「魔王パズス様です」
オザワは虚ろな目でそう答える。
「パズス……どっかで聞いたな」
忍はそう呟きながら記憶を探る表情を浮かべた。
そんな彼に
「中東の方の悪魔だよ」
真月の助言。
「有名?」
「どうかな?」
2人はそう、軽い感じで話す。
魔王を名乗る悪魔。
決して侮っていい悪魔では無く。
2人もそれは重々承知しているというのに。
魔王パズスはこの新宿地下街にはおらず。
地上部分に生き残っているビルの1つをその居城と定めているらしい。
その外観は、パズスの力で変えられており、見間違うことはないそうだ。
そこまで分かれば、やることは1つである。
「行く前に、悪魔に話を聞いてみようよ」
そう。
情報収集である。
「パズス様は風と炎の魔王だけあって、衝撃系と火炎系の魔法が得意でいらっしゃるホー」
「パズス様は他者に魔法の力を与える能力を持っていらしゃるわ。代償は要求されるけどね」
「パズス様? 食べることが大好きで、動くことが嫌いな方だな。大食漢で好物は人間で、そのせいで食人魔王って呼ばれていたこともあったみたいだね」
「パズスは相当な権力者みたいね。彼を軽視している悪魔は1匹も居なかったし」
そして再びあのお粥屋で。
食事しながら集めた情報について話し合う。
「だからこそ、悪魔が人間を襲わないということが実現しているのかもしれないな」
匙で程よく冷めた肉入りの粥を口に入れつつ忍は妻の言葉にそう返した。
そんな夫に真月は
「どう、勝てそう?」
探るような視線を向けつつそう言い
忍は
「話だけじゃなんとも……」
そう、曖昧なことを口にしつつ
「でも、必ず勝ってみせるよ」
その覚悟に伴う言葉を彼女に返した。
地下街から地上への階段を昇る。
出口は指定の場所を選択したので、出た先から問題のビルが見えるとの話だ。
出てみると、確かにあった。
異様な状態になっている奇妙なビルが。
まるで生物のような質感の、奇妙なビル。
黒光りする、エイリアンの外殻のような見た目。
そこに門番がいた。
中華風の甲冑で武装した戦士2名だ。
門番たちは忍たちに気づき、鋭い目を向けてくる。
「……何用だ?」
(中東の方の魔王なのに、門番が何で中華なんだろうな)
そんなことを頭の片隅で考えつつ彼は
「ちょっと、パズス様と話がしたいんだけど、通してもらえるかな?」
そう要求を伝え
「……要件は?」
門番のその問いに
「生贄の供給について」
彼はそう答えた。
その結果
「……入れ」
彼ら2人は、パズスの居城たるビルに入ることが許可された。
内部も生物的な質感に違いは無かった。
ただ、床部分だけが元のままの、塩化ビニルと思われるタイルである。
彼らはそのタイルが敷き詰められた階段を登っていく。
そのまま5階くらいまでを登り。
そこに1つだけドアがむき出しになっている大部屋があり
そこに
「……おお、良く来たな……」
1体の悪魔が居た。
全体的なフォルムは人型。
性別は男。
頭にトサカがあり、背中には昆虫の4枚の羽根。
そして尖った耳を持ち、臀部に蛇の尾を持つ。
胸部から腹部の正中線上に、赤い体毛を生やしている。
そして大きな威圧感を持っていた。
間違いなくこいつが
「生贄の話と聞いたが。次の生贄の予定の話か?」
……魔王パズスである。
忍は気合を込め
「残念ながら少し違う」
そう伝える。
ここで怯むわけにはいかない。
「……じゃあ何だ? 我は暇ではないぞ?」
その声に怒気が混じる。
相手は魔王。
気軽に面会……いや、謁見を要求して良い相手では無い。
ここからは戦いになってもおかしくない。
「今後、生贄の供給を止める」
まず。
こちらの決定を伝える。
その言葉に魔王は
「ならば、新宿の民不殺の契約も破棄で良いということだな?」
あからさまに不機嫌さが乗った言葉を返す。
落ち着いてはいたが、その苛立ちは隠しきれていない。
「それは受け入れられない」
忍は即座にそう返す。
その言葉に魔王は嗤う。
「我儘抜かすな。生贄が無いのであれば契約は即刻破棄だ。美味な赤子のマグネタイトが得られぬなら、契約を守る理由がない」
悪魔にとって、赤子のマグネタイトは美味なものなのか。
その他の人間に手を出すのを控えることを許容するほど。
だが彼には
「……守ってもらう」
絶対に見過ごせないことだった。
これから人の親になる覚悟を固めている彼には。
感情論と嗤いたい者は嗤えば良い。
そう思いつつ彼は
「変身!」
腰の前で腕をクロスし。
その言葉を発した。
緑色の輝きと共に、彼の姿が悪魔人間としての力を全力で振るうための姿……仮面ライダーの姿に変化する。
それを目にして
「ほほぅ……もしやお前、悪魔人間か」
興味深そうに瞳の無い白い目を見開き、魔王は呟き。
「ああ」
そして忍は頷き、半身で構える。
魔王は本物の悪魔人間を前にしてもまるで怯むことも無く
「面白い。……そうそう味わえるものではない。愉しませて貰おう……悪魔人間との戦いというものを」
魔王は背中の昆虫の羽根を振動させるように羽ばたかせ、宙に浮きあがる。
その両手に火炎と風を纏わせて――
そのとき。
「待って!」
真月が手を上げた。
忍と魔王パズスの視線が彼女に集まる。
真月は言った。
「……だったら、私と契約しませんか?」
「契約……?」
魔王は訝し気な視線を彼女に向ける。
真月は頷いた。
そして
「私と契約すれば、良質なマグネタイトを安定して受け取ることが出来ると約束します」
そう、言い切ったのだ。