真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
妖精の森。
ピクシー・ガリカの案内で入り込んだそこは、外から見るより広く感じた。
そこを訊ねると
「空間を歪めているのよね」
先行するガリカは、そんなことを口にする。
続けて。
「あたしから離れると出られなくなるかもしれないから気をつけてね」
その言葉に「なるほど」と思う。
新宿で聞いた話「不用意に入り込むと殺される」という話は、別に妖精たちに襲われるという意味では無いのかもしれない。
単純に出られなくなって、野垂れ死にするということか。
その結果、殺されたように見えるという話かもしれない。
「それはやっぱり、外敵の排除目的?」
そう訊ねるとガリカは頷いた。
そしてこう言った。
「まあ、それもあるかな。妖精族はそんなに強力な種族じゃないしねー」
それもあるかな。
ならば他にも理由があるというのか。
真月は少しそれが気になったが、なんとなくとんでもない理由が返って来そうなので、敢えてそこは訊ねずにおいた。
妖精の森は最初こそ普通の森であったが。
奥に行くほど、木々の樹皮の色が紫がかり、葉の色が灰色になり。
異様さを増していく。
(ああ、本当に空間が歪んでいるのか)
その様子に真月はその事実を納得せざるを得なかった。
ここは異界である、と。
そしてしばらく歩いていると……
頭がカボチャで、手にランタンを持っているちんまりした悪魔に出くわした。
衣装として魔法使いのようなとんがり帽子と魔法使いのローブのようなものを身に着けている。
この悪魔は妖精ジャックランタン。
炎の妖精である。
彼はガリカに話し掛けて来た。
「おお、ガリカ。悪魔使いを見つけて来たホー?」
「なんとかね。真面目そうで良い人っぽい人間がたまたま外に居たのよ」
……どうやら彼女は、外の世界で危なくなさそうで強い人間が通りかかるのを待っていたらしい。
彼女の言葉を聞いたジャックランタンは
「それはそれは嬉しいホー」
喜びの舞か。
クルリ、クルリと空中を踊るように飛ぶ。
「そんなに嫌なの? 水場の占拠」
あまりにもその舞に気持ちが籠っているから。
真月はそう訊ねた。
ジャックランタンは舞を継続しつつ答える。
「当たり前ホー。皆困ってるホー」
彼曰く。
魔王キングフロストは水場を凍結させて、スケートリンクのようにしているそうだ。
そこは魔王キングフロストと、ジャックフロスト、フロストエースのような氷の妖精由来の妖精族以外は誰も喜ばない極寒の地になっているそう。
おかげでジャックランタンは寒すぎて水場に近づくことができなくなり。
水の妖精であるケルピーやローレライが大迷惑している。
で、皆が止めろと言っているのに。
相手は一切聞く耳を持とうとしない。
「そんなもん。ぶっ殺すしか無いホー」
物騒な言い方だが、悪魔としては普通の意見である。
「なるほどね」
被害者であるジャックランタンの話を聞き真月は
「取り敢えず、任せておいて」
改めて、この件を引き受けることを口にした。
問題の水場に着いた。
確かに話の通りである。
周囲は凍てついており、気温はおそらく氷点下にまで下がっている。
池の周囲の地面には霜が下りていた。
そしておそらく池だったと思われる広い氷のグラウンド。
「
真月は自分の身体を抱くようにして震える。
今の彼女はハイレグアーマーである。
当然防寒などまるで考慮されておらず、腕や太腿が丸出しで寒い。
縮こまる彼女に
「……なんとかしてあげたいけど、俺も防寒対策グッズは持って無いから」
隣に立つ忍はそう言って
「とっとと片付けよう」
そう続けた。
それに関しては
「……そうね」
これ以外言いようがない。
彼女は冷気を無視して。
アームターミナルのキーボードに触れた。
凍り付いた池の上をゆっくりと歩く。
完全に凍り付いているのか、割れるようなことも無く。
彼ら2人は問題なく歩いていくことができた。
凍り付いた池の中央。
そこにそれはいた。
「ヒーホッホッホッホーッ!」
体長10メートル近くある、巨大な雪だるま。
その雪だるまは貴族のようなカールの掛かった髪を生やし、頭には王冠を被って。
赤いマントを羽織り、その手には王笏を握っている。
鏡餅のような体型で、脚部には無数のジャックフロスト……青い頭巾を被った雪だるまの姿の妖精……が寄り集まり、この悪魔がどういう経緯で誕生したのかを予想させた。
(この悪魔が魔王キングフロスト……)
2人は息を呑んだ。
見た目はマヌケだが、軽く見て良い相手では無いことが分かったからだ。
そんな2人に、魔王キングフロストは
「……なんだお前らはホー? ゴキゲンなオイラの邪魔をしに来たホー?」
その声は何重にも聞こえた。
おそらく、何体ものジャックフロストが統一した意志で喋っているのだろう。
穴ぼこのような目と口しかない、呆れるほど単純な顔。
なのに恐ろしいほどの威圧感を感じる。
……魔王を名乗るだけの実力が伴っていると思える。
真月は声を張り上げた。
「あなたがここを占拠することで、迷惑する人たちがいるのよ!」
こちらの要求を叩きつけるために。
「……だから今すぐ立ち退くか、私たちと戦いなさい!」