真1の大破壊後の世界で、日本復活のために悪魔と戦うある男女の物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「わ、分かったホー」
そしてキングフロスト以下、氷の妖精たちがその場に座り込み、武装解除の意志を示す。
真月はそんな彼らに歩み寄る。
彼女の傍に機動力のあるヴァルキリーと、タフネスさに信頼性のある魔王マーラが護衛につく。
そして
「こっちの要求は、この水場の占拠をやめなさいということ」
真月は依頼されている要求を改めて口にする。
それに対して
「だからそれはオイラたちの居場所が……」
食い下がる氷の妖精たち。
だが真月は
「あなたたちは力を持つまでは、別にこの水場の占拠をしてなかったハズでしょ?」
即座にそう返し、暗に「考慮しない」と言った。
真月の言葉に彼らは
「オイラたちにとって、この代々木の森は暑すぎるホー」
「オイラたちはいつもいつも、暑さをしのぐために固まって暮らしていたホー」
「そして固まっていたオイラたちの一部が、王様に進化したのだホー」
……どうも。
氷の妖精である彼らは代々木の森の気温でも暑苦しいらしく。
普段から辛かったらしい。
分からなくもない。
氷は融けるものである。
融けない季節があるとすれば、それは冬だ。
だから氷の妖精にとってはこの森が真夏の環境なのだろう。
しかし
「アンタたちは良くても他の妖精たちが寒いのよ」
真月はその言葉を斬って捨てた。
彼らの快適が真冬の環境である以上、そういうことである。
それに対して
「そんなの、ちょっとくらい我慢するホー!」
そう、即座に言い返して来る氷の妖精たち。
その言葉を聞き真月は
「あっ、なるほど」
静かではあったが
「じゃあ、全員殺してしまうことにするわね。折り合う気が無いならそうするしかないわよね」
……確実に怒りを押し殺した声でそう返す。
彼女はこういう態度が嫌いであった。
自分の要求をゴリ押しして、他者に一方的な忍耐を強いるような態度は。
真月の殺してしまう、という言葉に氷の妖精たちは
「オイラたちは北極以外住むところは無いと言うのかホー!?」
「酷過ぎるホー!」
「何て残酷ホー!」
非難の大合唱である。
忍はそれを前にして
「……お前ら、自分の要求が100パーセント通ることが当たり前だと思ってるだろ?」
見かねたようにそう言った。
彼は交渉事は妻に全部任せようと思っていたのだが、あまりにも幼稚で話にならない氷の妖精たちにとうとう耐えられなくなったのだった。
交渉というものは、結論が先に決まっていてそこに辿り着くまでの茶番では無い。
異なる事情を抱えた者たちが、双方我慢できる部分、許してもいい部分を探り、共存するためにすることなのだ。
この氷の妖精たちは、そんな当たり前のことを理解していないらしい。
だから自分たちの理想から1ミリでも外れると、拒絶の意志を示してくる。
そういう態度なら、こちらとして取りうる手段は殲滅以外無い。
「こっちとしてはお前たちを皆殺しにしても別に構わないのだけど、それは面倒だから交渉を提案しているんだ。そこを少しは考えろ」
ハッキリ言う。
妥協点を探る気が無いなら、このまま皆殺しにすると。
この言葉で自分たちがすべきことを彼らは理解したようだ。
全員で相談するようにキングフロストを中心に、フロストエースたちが集まり会話を開始した。
「どうするホー?」
「こんなのはどうホー?」
「それは良い考えホー!」
そして彼らは
「オイラたちを仲魔にして欲しいホー! 仲魔になれば暑苦しいところにいなくてもいいホー!」
そんな結論を。
真月に向かって出して来た。
「ええと」
予想外の解決策に、真月は頬を指先で掻く。
彼らを仲魔にするという解決策には、致命的な難点があったのだ。
それは
「……あなたたち、数が多過ぎる」
キングフロストとフロストエース。
合わせた数は10に届く。
アームターミナルの仲魔の契約容量は無限ではない。
数に限りがある。
それなのにこの数は無茶だ。
「悪いけど、それは却下」
今度は真月が却下した。
その言葉に
「そんなホー!」
「何とかならないかホー!?」
「ちょっと詰めたらいけるんじゃないかホー!?」
氷の妖精たちは嘆きの声を上げた。
「詰めるって……契約ってそういうものじゃないし」
それに困った声で真月が呟くと。
氷の妖精たちは
「やってみなければ分からないホー!」
「皆! 王様を中心に可能な限り詰めてみるホー! ひょっとしたらそれで1体の悪魔として認識して貰えるかもしれないホー!」
無茶なことを言い出した。
あまりにも無茶なそのアイディアに
「そんなの出来るわけ……」
無いじゃん、と真月は言おうとした。
しかし
その前に
「どるわぁーホー!」
キングフロストに向かってフロストエースたちが抱き着き、身体を密着させていく。
ポンポン次々と、寄り集まって……
そして
ある一点を過ぎたとき。
彼らは白く輝いた。
その輝きに忍と真月は一瞬硬直し。
その光が消えた後に
その悪魔はいた。
それは……
黄金の鎧を身に纏ったジャックフロスト。
高貴さを感じる豪奢な金ピカ鎧に、赤いマント。
その手には一振りのロングソード。
奇妙なデザインの剣で、
(これは一体……?)
全く知らない悪魔であった。
無理矢理1体の悪魔と認識されるために寄り集まろうとした彼らの意志が、奇跡を呼んだのかもしれない。
悪魔は名乗った。
その名は……
「オイラは魔神フロストエンペラー……今後ともよろしくホー!」