兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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新米史家の大切断

 

私の英雄が生き方を変えた

 

 少しだけ驚いて、そんでほかの子たちよりも衝撃は少なかったかなぁ〜、あの子が生き方を変えてあの子の冒険はもう見れないのかなぁ〜とは思ったけど、私は思ったよりも英雄であるあの子より、一人の男の子として好きになってたみたい。

 

 あの子の女の一人になって、それなりの経験をして、そしたら他の娘達も生き方を変えていって、近くでそれを見続けて、そしたら思ったんだ。その変えた生き方もあの子と、そして『未来』のために芯を置いていることに

 

 

そしたら、私も何かしてあげたくなったんだ

 

 

他でもない、大好きな人のために

 

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「これ終わったらベルに3日は抱いてもらうんだ。アイズとレフィーヤも誘って。だからどっかを貸し切って予約しといてルルネ、、、あ、温泉のある所がいいなぁ、後3日分のご飯も」

 

「すっっっっっごいこと言ったなオイ」

 

言葉にするのは簡単だが人間の限界を試すとてつもない所業をもはや決して拭えない色に染まりまくった倫理観となってしまったティオナが言うのなら、きっとそれは難しくてそれでも彼ら彼女らはやってのけてしまうのだろう

 

 

『フィアナ・コーズウェイ』

 

かつて古代の英雄である【フィアナ】が切り開いたとされる『真勇の蹄跡』抉れた峡谷の跡に2人の女性が地面にシートを広げて話し込んでいた。

 

「【単眼の王】ごと峡谷を貫いた【勇者の一槍】神様の恩恵無しでここまでするなんて、やっぱり凄いね」

 

そこにいるのはベルの妻の一人であるティオナとヘルメス・ファミリア団員のルルネ

ファミリアを越えた友人同士がなぜここに来ているのか?

 

それは『取材』のためだ

 

 

 

 

ティオナは背中に背負ったパックパーカーから出した『紙』と『筆ペン』で資料となる情報を書き込んでいく

 

 

 

 

 

ティオナは『史家』の道に挑戦することに決めたのだ

 

 

史家とは主に歴史の事実を調査して研究してそれを記録し執筆する専門家のこと

 

ようは【語り部】の一種

 

 

ティオナはベルの女になってから髪を伸ばした。腰にまで届くほどの長さとなって少しの風でもなびいている。

ついでに『眼鏡』をかけてベレー帽を被っている。視力が悪くなったからではない、ロキに『文学少女に眼鏡とベレー帽ついでに黒髪ロングは必須や!』と理由のわからないことを言われてティオナなりに考えて、形から入るのは大事、という認識をしたためそれっぽさを出すための伊達メガネとベレー帽だ

 

 

 

当然難儀した

そもそもが肉体派のティオナには難しすぎた。アイズはメイドになるためにゼロから積み上げたが、ティオナはある意味マイナスから積み上げることとなった。確かにティオナは英雄譚に詳しくそれなりの知識もあるが、それだけでは史家は務まらない。文章やら書き方やら起承転結やらで頭がおかしくなりそうだった。

彼女を知る者はなぜわざわざ茨の道に?と思っただろう

 

それでも彼女にはやりたいことがあった

 

 

 

 

ベルと英雄の活躍を世界に知ってほしい

 

 

 

 

その思いだけで苦手な勉強も頑張って一応の様にはなった。しかし苦手なものは苦手なので毎回気疲れで顔を青くしている。

 

ティオナの上記のセリフはその気疲れで弱ってストレスが溜まっていた時にでた言葉である

 

 

 

「こんだけ頑張ったんだからそろそろ【6人目】産んでもいいかなって、あと普通にしたいし」

 

「おいおいまだ産むつもりかよ、もう私数えるのずいぶん前に辞めたぞ、レフィーヤはもう訳がわからないくらい産んでるし」

 

「うん、一番子供の数多いよ、2番目は春の七人で3番目が私とヘルンの5人で並んでる」

 

「実際言葉にされるとなおさら頭がクラクラしてきた」

 

 

オラリオ外の案内役としてルルネはティオナに付いていた。

もちろん案内料をもらってだが

 

 

 

「もっと気軽に会えれば良いんだけどそうもいかないからね〜」

 

「あぁちくしょうなんでこんな目に」

 

「まぁ自業自得なところもあるから」

 

「だからって【ホーム】をオラリオ外に移す羽目になるなんてよぉーーー!!なんとか言ってくれよ母親だろーー!!!」

 

「正直あの子たちの気持ちも分かるから無理」

 

「薄情者ーーーー!!」

 

 

ヘルメス・ファミリアは現在オラリオ外にホームを構えている。ローリエやアスフィ辺りの一部を除いて実質追い出されるかたちでだ

何故そんな事が起きたのか?

それは

 

 

 

 

「ヘルメス様に会っちゃうとあの子達本気で殺しに行っちゃうから」

 

 

ヘルメスがベルの子供達にバチクソ嫌われてるからだ

 

 

 

 

 

 

 

 理由はまぁ彼らを知るものならすぐに分かるだろう。信用ならない神の一柱、母親を変態の目で見た罪状、度重なる迷惑行為、黒竜討伐がなされたことにより余裕が出来たために弾けた悪戯心、ときおり自分たちの様子を見に来る【超絶残虐破壊衝動女の女神】からの教え、何よりも異端児(ゼノス)の一件が決定的だった

 

 

その後なんやかんやあって子どもたちにとってヘルメスは

『母親だけでなく父親にまで手を出そうとした屑』

という第三者からしたら誤解しか生まない認識となった

 

 

確かに恩はあるが、相手は善意の塊であるベルではない、ベルの子供たちなのだ。父親が止めても生理的嫌悪は何とかならなかった。

 

 

神様じゃねぇよ紙屑だよ

 

殺していい存在

 

ネバネバとへばりつく邪悪

 

不運の化身

 

食が失せる

 

単純に気持ち悪い

 

帰れ、永遠に

 

なんであいつ死刑になんないの

 

醜悪の底の底

 

触るな本当に触るな

 

あいつ殺した奴に金払うぞ

 

 

 

 

父親を尊敬する子どもたちが唯一全力で拒否ったのがヘルメスだった。

ちなみにアポロンは【フレイヤと似たようなものとしてある程度のセーフ判定を受けている】

 

ヘルメスはアポロンに負けたことにショックを受けた

 

フレイヤはアポロンと同格に扱われたことに膝から崩れ落ちた

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「はぁ~〜〜〜疲れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「大丈夫?ティオナ?」

 

 頑強で怪物な力を持つ第一級冒険者のティオナが机に突っ伏していた。口からヨダレが垂れるのも気にせずに大口を空けて沈んでいる。ぶらりと力無く垂れた両手の五指にはインクの匂いが染み付いている。

 そんなティオナにベルは優しい声色で優しい力加減で背中を撫でて優しい味のする飲み物を差し出す。ベルはティオナの頑張りをずっと見ていた。眼にクマを作ってポーションを飲みまくってティオナは確かに『一冊』を書き上げたのだ。

 

苦節半年

 

時間をかけて書き上げたのだ。

 

「この本が誰かの笑顔になればいいんだけどね」

 

 作りたての一冊を手に持ってティオナは眉をひそめて呟く。当たり前だ。ほぼほぼ未知の領域、今まで読む側でしかなかった自分が書き手側に回る。いくら天真爛漫なティオナでも初めての挑戦に不安を感じるのは仕方なかった。

 

「何とも言えないね、僕も詳しくないから」

 

「えぇ~そこは嘘でも大丈夫って言ってよ〜」

 

 てっきり慰めの言葉をかけてくれるものと思っていたのに思いのほか現実を加味した言葉が出てきてティオナはベルに不満の眼差しを送る

 

「ゴメンね、でも家族目線だとどうしても贔屓しちゃうから、下手なことは言いたくない」

 

「、、、、、、、、そんな本気にならなくても」

 

 自分の書いた一冊にそこまでの価値はあるのだろうか?まだ販売も評価もされていないがそう思ってしまうのはティオナが自分の頭の悪さを自覚しているから、そして英雄譚のファンだからこその引け目

言うなれば触れるのが恐れ多い『聖域』に手を伸ばしている気分

 

だがベルは

 

「本気にもなるよ、そしてそれはずっと」

 

「!」

 

そんなものなんのそのという感じでティオナと目を合わせる

 

「これからも僕は、本気でティオナを見るし、応援するよ。ティオナが僕を見て応援し続けてくれたように、ずっと僕も応援する、君に貰った元気や暖かさを返せるように」

 

 ティオナの、ティオナだけが持つ魅力にベルは何度も救われた。何度も笑顔になった。たくさんの物を貰った。だからベルはお返しをしたかったのだ、言葉だけでは全て伝えきれないたくさんの『ありがとう』を

 

 

 

「ずっと?」

 

「うん、ずっとだよ」

 

「、、、、、、、、、、そう」

 

 

 

 

 

 

 

「私もそろそろ子供欲しいなぁ」

 

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「あの日は燃えたな〜」

 

「聞きたくないんだけど」

 

「途中でレフィーヤも入ってきて」

 

「だから止めろ」

 

「そんで二人がかりでレフィーヤを」

 

「だから止めろ!!!!」

 

 

 やはりティオナも性に奔放なアマゾネスなのだと再確認した。ティオナはベルと一線を越えた日からスキンシップが更に多くなった。ベルだけでなくハーレムの仲間である者たちの頬や額に何気なくキスをするようになった。ロキ・ファミリアで報告をしてそれが終わった時、レフィーヤがもう少しファミリアで話をすると言って留まり、その瞬間『じゃあまた後で』という感じで頬にキスをした。

当然知らないものからすれば衝撃的でひっくり返った

ロキだけが百合の花園を妄想して歓喜していた

最もその中心にはいつも兎がいるのだが

 

 ベル以外とキスなんてしたことがない者が殆どで(というかベル以外断固拒否)その2番目の相手が『共通』してティオナという割とカオスな現状にハーレム達はときおり頭を抱えている。物凄い力で掴んでくるから逃げられないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!取材完了!」

 

記載すべきものは全て紙に書いてティオナは帰り支度を始めた

 

「なぁもっと力抜いてやってもいいんじゃねぇか?」

 

「ん?」

 

「『最初の本』そこそこ売れてんだろ?それに英雄の妻の書いた本なんだからちょっと手を抜いたって買ってくれる奴は」

 

「それはダメだよ、本気でやるって決めたから」

 

「、、、、、、あぁそう」

 

ティオナの真剣な眼差しにルルネはその意を汲み取った。ならば何も言うまいと読み取ったのだ。

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「やぁやぁ!久しぶりだねティオナちゃん!」

 

「あれ?なんでヘルメス様がここに?」

 

オラリオへの帰り道にティオナは前からやって来るヘルメスと出会った。

 

「君が『フィアナ・コーズウェイ』の取材をしていると聞いてねぇ〜、、ほら、俺ってオラリオ入れないじゃん」

 

「うん、あの子たちが殺しに来るからね」

 

「希少な機会だからちょっと顔を見にねぇ〜」

 

「この前も本当に酷かった、思い返すだけで震えが止まんねぇ、ヘルメス様のせいだぞホントに」  

 

 

ルルネはヘルメスを睨みつけながら前にあった事件に身震いした。

 

何があったかというと

『ヘルメスがオラリオ外の宿の女湯を覗いてそのなかにクエストに出ていたレフィーヤの長女がいたからだ』

完全に悪のやらかしだった

 

それを皮切りにヘルメスの幾らか展開しているアジトがクラネル一家の子どもたちに襲撃された

 

【超絶残虐破壊衝動女】の情報提供を受けて暴れに暴れた

 

アジトには隠してあった【国家レベルの機密】や【世界的に珍しい素材】があったのだが襲撃の余波で破壊されるか悪知恵の働く悪ガキ組に強奪された。

 

親たちは止めなかった 自業自得だからだ

 

「おかげで最近は草のスープしか飲んでいない貧乏暮らしさハハッ!」

 

「ガキどもの一部がファミリアの資金くすねていきやがったんだぜ、【超絶残虐破壊衝動女のお許しが出たって】」

 

「あの女神さまは俺たちの資金が【孫の小遣い】にしか見えてなかったみたいだ」

 

「なんであんなヤバい女神に好かれてんだよ!」

 

「性格の相性の良さだろうな〜苛烈で理不尽で芯があって親という反面教師がいるから男女関係に誠実で、、、前の眷属たちを思い出すんだろう」

 

そんな話をしていると

 

「それ、教えてよ」

 

「「ん?」」

 

ティオナが目を輝かせてそういった

 

「次の本にするんだよ!そうだよそれがあった!」

 

ティオナの頭には既に【次の構想】が浮かんでいた

 

「私たちより前に伝説を築いたファミリア!それを書く!私たちを繋ぎ合わせてくれた!託してくれた人達だから!」

 

 

彼ら彼女らは黒竜に敗北した

 

だが確かに伝説だった

 

それが失われるなんてティオナには耐えられなかった

 

この世に確かに存在した伝説をこの手で書き上げよう

 

ただの敗北者で終わらせないために

 

 

 

「よし【ヘラ様】と【ゼウス様】を呼ぼう!」

 

「逃げる時間をくれないかティオナちゃーーーん!!ていうか2人が揃ったらオラリオ壊滅しちゃうからーーーーー!!!」

 

 

 

ティオナは未来の為に書き綴る

 

いつかそれが誰かの笑顔になれることを信じて

 

「頑張るぞーーーーー!!!」

 

 

 

 

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