「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!痛い!痛い!手ぇ握ってベルーーー!!!」
「うギャァァァあぁああああぁぃぁぁぁぁ!!!死んじゃう死んじゃうじゃうぅぅぅ!!無理無理無理無理ィィィイィィ!!アルカナムぅぅ!!アルカナムを使うのぉぉぉぉぉぉ!!!あの娘をたすけるのぉぉぉぉぉぉぅぉぉぉ!!!」
「落ち着けと言っているだろうアフロディーテぇぇぇ!!」
「ハルモニアぁぁぁぁぁぁ(涙)!!!!」
涙、汗、鼻水、唾液をフルバーストの出力で噴き出しまくる。アフロディーテの美の神の所以であるその顔は、台無しという名のグレートダウンを1秒ごとに更新していく。だが自分の眷属のためにそれほどまで取り乱してなりふり構わないその姿は確かに美しかった、、、のかもしれない
そこは病院だった
そして壁一枚隔てた向こうで『ハルモニアの2回目の出産』が行われている
余裕綽々で椅子に座っていたアフロディーテはハルモニアの悲鳴が聞こえてきた瞬間全てを投げうった。愛しき眷属の悲鳴に送還覚悟で神の力を使ってまで何とかしようとしたのは尊敬に値する行為だが、そうなれば病院が損壊してしまうためぶっちゃけいい迷惑だった。これで2回目なのに1回目と全く同じリアクションだった。
今は、ヘスティアと他の眷属が全力で止めている。半狂乱のためか『魅了』も使わずただただ暴れていた。
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「神様!無事産まれましたーー!」
「タックル!!」
「え?」
「ぶっ飛ばされ!!?」
何が起きたかというとベルが扉を開けた瞬間アフロディーテがベルを突き飛ばしてハルモニアの元に向かおうとしたが、フィジカルが違いすぎて逆にタックルしたアフロディーテがぶっ飛ばされたのだ。二〜三回転がって地面に打ち付けた頭を抱えて悶絶したあと、頭を抱えたままハルモニアのもとに再び直行した。
「あ、アフロディーテ」
「ハルモニアぁ」
「これで私も天才子持ち女優から天才2児の母女優ね」
息をゼーハーゼーハーと言わせて産後の疲労を引きずりながらいろんな液で顔がグチョグチョになったアフロディーテに向けてピースサインを送るハルモニアを見た瞬間、アフロディーテの目元に『滝』が出現した。そして歓喜の抱擁を抑えられなかった。
「ハルモニアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(涙)!!!!!」
「ぐえっ!痛い痛い痛い痛い!!待って!待って!苦しい!私まだ産後!いろいろ元に戻ってない!あぁ!呼吸がァ!意識がァ!」
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「最初は耐えてたんだよ。体育座りで震えながら、、、けど本格的な悲鳴が始まってからそれはもう暴れて暴れてそして今、僕たちは雑巾がけをする羽目になってる」
「アハハ」
ベルはヘスティアと眷属達と共にアフロディーテがいろいろ撒き散らして出来てしまった『水溜り』を掃除していた。
「しかしあの様子だとしばらく離れないな〜、、、、まさかオラリオに住むとか言い出さないよなぁ」
眷属のために本気で泣ける優しい善神ではあるが、わがままで自由人な美の女神であるアフロディーテがオラリオに居座るのは正直なんだかなぁ~と思うところだった。
そしてアフロディーテのホスト風眷属達が口を開いた
「それはないと思いますよ。ヘファイストス様もいますし」
「だろうな〜」
「まぁ良いじゃないですか、アフロディーテ様も嬉しいんですよ。無事に2人目も産まれてきたことが」
「もう何回か立ち会ってるからすっかりこなれたなぁ〜ベルくんは」
既に二桁の子供の父親であるベルは落ち着いていた。そしてそれでもなお一人一人の出産を疎かにせず一切の怠惰なく妻のために尽くすその姿に女たちは再び惚れ直しまたその身に子を宿らせるというサイクルはちょっとあれと思うヘスティアだった。
「それにハルモニアの事だからすぐにまた舞台に復帰しますよ」
「うん、、、そうだね」
「ただ一つ心配なのが」
「ん?」
「ハルモニアってときおりアフロディーテ様に似るじゃないですかそれで前も」
「あっそう言えばそうだった」
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「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ離れたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!寂しいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「だあーーーー!もう!何回同じやりとり繰り返す気!!?もうノイローゼになるくらいおんなじ悲鳴おんなじアクションを繰り返してこっちもムカついてしょうがないのよ!!?こっちだって『子ども』と離れるんだから気を使って優しくしたいのに流石に見苦しすぎよ!!」
アフロディーテがハルモニアの腰をつかんで引っ張るが物凄い力でホームの柱にしがみついていてビクともしない、外で馬車が待機しているのだが、ハルモニアの悲鳴に馬車の馬はビクリと身体を震わせてびっくりとしていた。
ハルモニアの舞台復帰
公演はオラリオ外
赤子は旅に連れてはいけない
ハルモニアの次女はベルの腕に抱かれており、その眼で母を見続けていた。
長女はちょっと呆れを含んだ目を向けている
「もう復帰やめるーーー!!!専業主婦になるーーーーーー!!!」
ガッツリとした幼児代行、まぁ無理もないがこんな姿はファンの方々には見せられないなと思いながらベルは可愛いと思っていた。
「おバカが!!アンタが決めたことでしょうがーーー!!!そしてこのパターンも既に何回もやったわ!!!!」
「じゃぁベルも一緒に来てよーーー!!!私たちの娘を守りながら一緒に来てよーーーー!!!」
「ごめんね、ほかの子たちも居るから」
「ほら!私の可愛い天使も私に行ってほしくないって!」
「幻聴を捏造してんじゃないわよ!」
「やだやだやだやだーーーーーー!おうちに居たいよーーーーーーーー!!!!!」
「ほらお母さんに手を振って」
「バイバイ」
「いやベル冷たい!寂しくないの!?昨日の夜あんなに燃えたのは演技だったの!!?純真なヘタクソ演技のベルはどこ言っちゃったのーー!!?」
「子供の前でやめてハルモニア、このままじゃ引きこもりになっちゃうから、それに君を待ってる人も沢山いるんだよ。娘に凄いところを見せるんでしょ?」
「ううううううううううううう!」
夫に余裕のある顔で諭され長女にはドライな対応をされてハルモニアは捨てられた子犬のように哀れなうめき声を発する。
「だからほら、この娘の前で泣かないで」
ハルモニアの娘が母親に目を向ける。その小さな手を母親の方に伸ばしている。抱いてほしい触れてほしいと願っているように
ハルモニアはもう人の親、その姿を子供に見せる責務があるとベルは遠回しに伝えている
その意思を汲み取ったハルモニアは、、、、
「もーー!わかった!わかったわよ!娘の前で無様は去らせないのは確か!最高至高の歌姫であるこのハルモニアがすることじゃないわ!!」
「もう手遅れなくらい無様も醜態も醜聞も晒してるけど」
「おだまりアホ女神!やってやるわよ!例えホームシックになろうともエンジェルシックになろうとも私は女優!乗り越えて演じきって魅せるわ!!」
今だに涙目ながらようやくハルモニアは地に足をつけて産まれたばかりの娘を抱きしめて長女も抱きしめて舞台への道に戻っていった。愛する家族の声援を受けてより輝きを増した存在としてその軌跡を刻みつけるために
「でも何かあったら駆けつけてよ?」
「大丈夫、いつでも駆けつけるよ、英雄としてそして夫として」
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世界的歌姫ハルモニア
英雄ベル・クラネルの妻の一人という新しいファクターを手に入れた彼女はその確かな実力と人を惹きつける輝きでますます磨かれていった。
彼女は今でも世界を巡りそして多くの人々に輝きを届けている。
しかし
そうなってくると、『めんどくさい連中』も出てくるのは必然だった。
「スキャンダル狙いの記者にガチ恋の粘着系、後は自分勝手に神格化する妄想厄介ファン、まぁ前からそんな存在は当たり前にあったけど『子供』が出来てからは増えたわねぇ」
アフロディーテは考える。いくら英雄の妻の一人だとしてもどこかには必ず『無敵の人』が出てくるものなのだ。そしてその対象はハルモニア自身だけでなくその子供にも向けられる可能性が高い
『魅力』は時に幸せだけでなく歪曲も引き起こすのだ。なればこそ、色々と備えなければならない。当然、ハルモニアもそれは誰よりもわかっている。
(『推し』がハーレムの一人である現実を受け入れない連中とかは特に、、、ハルモニアは私がついてるからいいけど対象がハルモニアの娘以外、、 ベル・クラネルのほかの妻との子供も視野に入れて)
すると
『オルクス』から連絡が入った
アフロディーテは嫌な予感がした。ハルモニアも顔を青くさせていた。まさかもう何かが!?そう思い『オルクス』を手に取って何があったかを把握しようとする
内容は
『子どもたちの年長組が新聞社にカチコミかけて潰したという報告だった』
2人とも開いた口がふさがらなかった
全員がまだ幼く恩恵すら持っていないのにこの成果と結果、本当にヤバいのは子供の方だったとアフロディーテは今更ながら気づいた。
後に『年長組の10人』はこう呼ばれることとなる
【十世長(ナンバーズ)】と
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「で、なんでそんなことになったの?」
ハルモニアがオラリオ外の公演から帰ってきて、娘たちに歓喜の抱擁をぶちかましたあと、部屋でベルと二人きりになっていた。
新聞社を潰した事件の始まりは【アイズの長女がじゃが丸くんでペラペラと喋ってしまった】事が始まりだった。
アイズの長女は母譲りの天然だった。しかし表情は豊かでよく喋る、アイズは口数が少ないが長女は天然なうえにお喋りなので『そういう人種』にはネギを背負ったカモ同然だった。
じゃが丸くん販売員に変装した者にペラペラと個人情報を喋ってしまい後にほかの兄弟との話によってそれが発覚。
同じ十世長(ナンバーズ)に拳骨を受けた
アイズの長女は狼狽して泣き出してどうすればいいか聞いたらなんやかんやで『襲おう』という選択になった。
春姫の長男が止めようとしたがほかの十世長(ナンバーズ)の口車に乗せられてやむを得なく参加
口車に乗せられはしたがほかの兄弟のために責任を分け合うという優しすぎる理由で参加した春姫の長男は
兄弟屈指のお母さん役(ゴールデンマザーキャスト)
と呼ばれている
そしてアイズの長女は【おバカキャラ】として兄弟の中で確立してしまった
アイズは泣いた
「貴方に似て本当に愉快な子達だね☆」
「アハハ、ホントに元気すぎで、アフロディーテ様は驚きながら楽しんでたみたいだね」
「まぁ面白い重視の女神だからね結局、ていうか今更だけどアフロディーテって子どもたちの間でなんであんなに評判いいのかしら?」
アフロディーテはハルモニアの主神であるためよくここに来る。そしてそのたびにベルの子供達に囲まれている
ただしすんごい遠慮がない
この前はやんちゃな女の子たちに背中に乗られてお尻ペシンペシンされていた。美の女神の臀部に触るだけで全財産を賭けられる男が実在するこの世界では物凄く贅沢なのだろうが、子供達はなんのその、アフロディーテは切れながら注意したが全く止まらず後に泣きながらカサンドラに薬を塗ってもらう姿が目撃されたとかしないとか
「それは、、、、、、まぁうん」
「あ、子供ってバカが好きって一瞬考えたでしょ♡」
「そ、そ、そ、そんな事は!!」
「アハハ!やっぱり慌てた方がベルらしいわ!」
ハルモニアは前より大人になったベルを見て、まだ子供だった彼を思い浮かべる。確かに大人になって彼は新たな魅力を身につけたが、やはり彼の純真なところはいつまでたっても最大の魅力なのだ。そしてそれはほかの妻たちも同じなのだろう。
ベルが目覚めないと聞いてオラリオに飛んできた
今は色々試行試作をしている段階らしい
集中治療室にいるため顔も見れなかった
脳みそ以外の全てが黒く焼けていたらしい
それでも生きていたのは奇跡中の奇跡というしかなかった
ハルモニアは歌った
せめてその歌が届けばいいと思っていた
そしてその歌はいつしか子どもたちの子守唄になっていた
世界の歌姫からの子守唄など下界最大の贅沢なのだろう
ハルモニアの歌を聴いた赤子たちは泣くのをやめて聴き惚れた
子どもたちは鼻歌でそれをいつも口ずさむ
母は違えど彼ら彼女らの誇りだった
「目覚めたときは本当に嬉しかったわ」
「うん」
「泣いて泣いて泣いて、、、あぁ恥ずかしい」
「正直うれしかったよ」
「そしていつの間にか2人も子供が出来てた」
「そうだね」
「これからもよろしくね私の英雄(エトワール)」
「はい」
「所で相談なんだけど?」
「ん?」
「ふふっ」
今夜はダーリンと呼ぶ女優の私とベルと呼ぶ歌姫の私
どっちが良い
物語を円滑に進める為今回登場した
【十世長(ナンバーズ)】
をネームドにすることにしました
リリルカの長男 春姫の長男 リューの長男
アイズの長女 レフィーヤの長男 ティオナの長女
カサンドラの長女 アイシャの長女
ヘルンの長男 ヘイズの長男
名前はベルの名前にちなんで『楽器』をモチーフに付けようと思います
どうかこれからもお楽しみください