兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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※強い独自設定有り


序章・後編

 

頭がふわふわしている

 

ここはどこだっけ?僕どうなったんだっけ?

 

確か黒竜と戦って、、、、そして、、、、、

 

 

死んじゃったのかな?

 

 

「「「「「「「「させるか」」」」」」」」

 

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴン!!

 

 

「グッハ!?」

 

よくわからない現状でよくわからない状態でよくわからない攻撃を受けた

背中に大量の蹴りを喰らったかのような衝撃はベルを数回ほど回転させた

ベルは咄嗟に姿勢を立て直して後ろを振り向くと

 

誰もいなかった

 

「え?」

 

ならばあの声は?あの蹴りは?

そしてベルは周りをキョロキョロしてみると目を見開いた

自分の周りには『夜空』が広がっていた

足場はなく浮遊しているのに歩けている。綺麗だが理由のわからないその空間にベルはいた

 

「ここは、、、、あっ」

 

すると一筋の光が見えた

その光は近づいてくる

いや、ベルの身体が引っ張られているのだ。ベルはその一筋の光に飛び込むべきだと直感する。

気になるのはさっきの声

彼らは自分をこの光に近づけるために?

そう思って再び振り返った

 

そこには誰もいなかったが、ふわふわと何かが浮かんでいた

なんとなくだが、ベルはそれから人の気配と意志を感じた

 

「人、、、、いや、もしかして、、、魂?」

 

浮遊するそれが『魂』なのではと何故かそう思った

 

するとそのうちの『3つ』が近づいてきた

 

いや、3つのうちの1つがもう2つの魂の間に割って入って片方をぶっ叩いている

 

ぶっ叩かれた魂はビシバシとシバかれながらもこちらに向かってきた

 

なんとなく『情けない男』を感じた

 

そしてぶっ叩いている魂には『怖い物を』

 

残った1つには『心地よさを』

 

何がなんなのかわからないただそれを避ける気にはなれなかった。

そして自分の目の前で止まった

3つの魂がこちらに向かって何かを伸ばしてくる

ベルはいつの間にかそれに手を伸ばしていた

 

ベルの手と魂が触れた瞬間

 

 

 

 

それは聴こえてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ俺達のところに来るんじゃねぇ

 

まだ私たちのところに来ちゃダメだよ

 

楽しめよ

 

良くやった

 

頑張ったね

 

 

 

 

気づけば涙を流していた

あぁ、きっとこの人たちは、、、

 

そして身体が光の方に向かって吸い込まれる

ベルは何かを伝えねばと思った

何を言えばいい?何を伝えればいい?

 

 

いや きっと 悩む必要などない

 

 

伝えるべきはシンプルな言葉でいい、なんとなくだが彼らにはそれで十分だと思ったのだ。3つの魂とその後ろにいる沢山の魂がこちらを向いている。そして笑っているように見えた。だからそう、彼らに伝えるべき言葉は、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ベルくん、、、」

 

 ヘスティア・ファミリアのホーム内でヘスティアは眠り続けるベルに寄り添っていた

ベルの部屋には沢山の人達のお見舞いの品が飾られており、掃除が意気届いているのか埃1つ被っていない。

 

「この半年間、沢山の人達が君のために動いてくれたよ」

 

 眠り続けるベルの見た目は前と同じくらいには元に戻っており、本当に普通に寝ているだけのように見える。だがそのようになるだけでもベルを助けようとする多くの者たちの頑張りがあった。

 

 黒竜を倒したあの場で意識のあったヒーラー全員が回復魔法をマインド・ダウンするまでベルにかけ続けた。それでやっとその場を動かせるまで身体を繋ぎ合わせ、出来うる限りの事を済ませた後はベルをオラリオに運んでオラリオの医療関係の全てがベルの蘇生のために動いた。

身体は原型があるだけで外も内も炭とかしておりポーションやエリクサー、そして回復魔法でも全てを元通りにすることなど出来なかった。

 緊急のため外よりも内の回復を注視したが、骨も内臓ももはやもとに戻すことなどできず、混迷を極め、見た目を元通りにするにも3ヶ月を要した。

 

「それで戻すことのできない臓器や骨をどうしたと思う?」

 

そもそもがもとに戻らないなら『別』のところから持ってくればいいと神の見解により提案された

 

「移植だよ」

 

それは腕をアガートラームにするのとは訳が違う。人の複雑で存在な臓器や骨を他人から拝借して移植するという。下界の者たちには早い発想だった。

 

「あのときは大変だったよ。アイズくんが『私の使って!』て言ってその場でお腹を掻っ捌きそうになったんだから。」

 

話を聴いた一部の者たちが遠慮なしに腹を掻っ捌こうとしまくって一悶着あった

 

肉も骨も血の一滴も全部使ってもいい!

 

そんな言葉を主にベルに思いを寄せる女たちが叫んでいた

 

実際そう簡単な話ではない。『移植』自体が下界初の試みであり、なおかつベルの肉体に必要なのは骨や内臓だけでなくそれを繋ぐ腱や筋繊維もそのものが焼け焦げており、『移植』するパーツがあまりにも多すぎた。

そして『実施』するための『試行』もしなければならない。

詳しく調べもしないまま『移植』を行って取り返しのつかない副作用が出たら本末顛倒

 

つまり『治験』と『試作』が必要だった

 

「そのためには時間をかけてトライ&エラーを繰り返すしかないってミアハとディアンケヒトが言ってさ、、、必要な素材も物資もオラリオ外のものも必要でさ、、、そしたらみんなが、、、君のために、、リスクもあるのに、、、生活もあるのに、、、世界中を飛び回って素材を集めてくれたんだよ、、、自分の身体を切り売りしてくれたんだよ」

 

今思い出しても泣いてしまう

『移植』計画のために必要なのは『大量の治験と試作』そして『素材』

手術のために必要な物資や【実験体】はベルと関わりのある彼らが何の躊躇もせずになってくれた

一時期はベルの手足を義肢にすることも視野に入れていたが、そんなことはさせない、可能性があるなら戻してやりたいと多くの者たちがそれに反対した

 

焼けて朽ちた四肢をもとに戻すには筋繊維も含めた多くの提供が必要だったがその心配はなかった。

 

多くの者たちが自らの身体の一部を差し出してくれたのだ

もちろん回復魔法で後遺症が残らない献血程度のものだが、中には腕丸ごと差し出そうとノコギリを取り出した者もいた

 

そのまま移植すればいい話ではない、『治験』が必要な以上、その多くが【試作品】として消費され使い道のない『廃棄物』としてゴミ箱に捨てられるものとなってしまうだろう

だが彼らはそれでも構わないと提供してくれたのだ

『移植』だけに頼ってはいられないと冒険者達はベルの治療方法を求めて世界中を飛び回った

ガセとなる情報にまで細かく食いついた

それを利用して金儲けを企む醜悪な者たちは彼らが直接【粛清】した

ベルのためだけにどんなところにでも行った。プライドの高い頭を下げることも厭わなかった

 

「それで『移植』方法が確立されてなんとか今の状態にまで戻すことができたんだよ」

 

眠り続けるベルには『移植』された数多の骨、臓器、腱、筋繊維がその肉体に移植された

その中には馴染みのある先達のたちの物もあった

 

今、ベルの肉体には彼が紡いできた者達が差し出して繋ぎ合わせた物がある

それがベルの命を繋ぎ止めている

 

もう黒竜との戦いが終わった直後のように24時間態勢でヒーラーが代わる代わる回復魔法をかけなくてもいい

 

あの時のように1秒後に死ぬ状態ではない

 

 

 

 

だけど 

 

 

 

今だに目覚めない

 

 

 

 

 

「ベルくん、早く戻ってきてよ、みんなが待ってるんだよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「アイズ、昼食を取れ」

 

「リヴェリア、、、、」

 

そこはとある『教会』

ベルとヘスティアがかつてホーム代わりにしていた場所だった

そこはだいぶん前に修繕されていた

アイズが金銭を使って依頼を出し直していたのだ

なんてことはない、少しでも彼のために何かしたかったからだ

 

修繕された教会でアイズは膝をついて両手を合わせて祈っていた

その姿は傍から見れば聖女にすら見えただろう

 

 

アイズはいつからか1日の殆どを『祈る』ことに使うようになった

 

黒竜討伐後にアイズは一度たりとも剣を握っていない

一度もダンジョンに潜ってなどいない

身体なんて殆ど動かしていないのに目に見えて痩せていて顔色こそ普通だったが、その身体は雰囲気も相まってあまりにも細くなっていた

 

時刻は午後の15時

リヴェリアはアイズの昼食を持って探していたのだがさっきこの場所を見つけたのだ

 

「祈るのにも体力を使うだろう?ちゃんと食べろ」

 

アイズの祈りをリヴェリアは止めることなど無かった

むしろ下手にダンジョンなどで暴れられるよりもずっといい

ベルがオラリオでの治療で生命の安定がなされるまでの間が酷かった

自分の身体も治りきっていないのにホーム病室から飛び出してベルのいる集中治療室から離れようとせず、1秒後に死んでしまうかもしれない現状から眠ることなどできず、体力の限界で奇絶してもすぐに悪夢を見て飛び起きる、その繰り返しが何度も行われ、リヴェリアはそれを見ていた

だから、1日の大半を『祈り』に使ってくれたほうがこちらとしては気が楽で危険もない

だがアイズの目はずっと沈んだまま、聞いてみたら何を食べても味がしないらしい

だが食べなければ本当に身体が持たない

 

歯痒さを感じながらもリヴェリアはアイズを見守り続けた

 

「リヴェリア」

 

「何だ?アイズ」

 

「私には精霊の力があるんだよね」

 

「あぁ今更どうしたんだ?」

 

「精霊は人のために、救うために、加護を与えるためにいるんだよね?」

 

「、、、、、あぁ」

 

「だけど私には、、、加護を与える力なんてない、、、」

 

「アイズ、、、、」

 

「ただ力だけを付けてきた、、、全部、、復讐のため、、全部全部全部、、、自分のため、、、でもそれももう終わった」

 

「あぁ」

 

「ベルが終わらせてくれた、、、」

 

「あぁ」

 

「だけど、、、、、、起きなくなっちゃった」

 

「アイズ」

 

 

 

「私なら良かった、、、、私なら良かったのに!!」

 

 

深い自責の念が言葉となって彼女の喉から湧き出る

アイズは時折こうなるのだ

やっと終わった

アイズを苦しめる元凶は消えた

だがそれによりある意味アイズは『存在証明』の一つを失ってしまった

何より自分が成すべきだった事を一人の少年に押し付けてしまったのが彼女を苦しめた

 

「精霊は人間を守るためにいるのに!そのために私は強くなったのに!私はベルに何もしてあげられない!重ねてきた強さなんて何の意味もない!私は加護を与えられない!」

 

命をかけて強くなってきた

それが正しいことだと何よりも最善なことなのだと信じてきた

だが眠り続けるベルを起こすのに力なんて役に立たなかった

出来ることなんて限られている

だが力だけを追い求めてきたアイズにはほかの人よりも出来ることは少なかった

自分以外の者たちはそれなりの方法でベルを蘇生させようと動いている、動けている

世界中を飛び回って、素材を集めて、藁にもすがる思いで怪しい噂や信憑性のない話にも『もしも』を考えて首を突っ込んだ

だが無器用なアイズにはそれが出来ない

辛かった

培ってきた強さが大事なときに何の役にも立たないのが何よりも辛かった

 

「私が眠っちゃえばよかったのに!なんで代わって上げられないの!!?私が、、、、、私があんなふうになるはずだったのに、、、なんでベルなの、、、、、」

 

「そんな事を言わないでくれ、そうなったら今度は私やみんなが悲しむ」

 

「うん、わかってる、、、けど、、、ごめん、、、、」

 

「お前が謝る必要なんてない」

 

リヴェリアの隣に座りアイズは寄りかかる、今にも折れてしまいそうだったから、そんなアイズをリヴェリアは優しく抱き留めていた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

歩く 歩く 歩く

 

吸い込まれた光のなかにあったのは道なき道だった

地面が見えないだけど歩ける そんな奇っ怪な状況でベルが考えていたのはみんなのことだった

 

早く会いたいな

どうしてるかな?

心配かけただろうな

怒ってるかな?

無事だといいな

 

そんな事を考えながら歩いていると

 

 

 

「ーーーー!」

 

 

 

目の前に何かが映し出された。それはあまりにも既視感のある光景、かつて自分がその身で体験してそして乗り越えてきた試練の日々がそこに映し出されていた

 

「あはは、今更だけど、ほんとによく死ななかったな〜」

 

オラリオに来てからは驚きと試練の日々だった。英雄に憧れて大切なものが出来てそしたらそれがどんどん増えていって、最後には黒竜を倒して下界を救った

 

「英雄に、、、なれたんだよね、、、」

 

いつも控えめで遠慮がちなベルでもさすがにもうわかっている

自分は世界から英雄と言われるのだろう

黒竜を倒したのは自分の力だけではない断じてない

だがベルはこれまでのいろんな経験から自分が英雄として祭り上げられる事を分かっていた

正直に言うと申し訳ない、、、とは思っていなかった

黒竜との戦いはまさに自分の集大成

全てを出して戦った

あの時のベルはいついかなる時の自分よりも強かったと自負できる

 

そう

 

例えば

 

これから先

 

 

 

 

 

あのように燃えることなどないのだろう

 

 

 

 

「、、、、、、、、、、」

 

 

 

 

おそらくもう2度と

 

 

 

 

 

 

「あれ以上は、、、僕にはない、、、、本当にアレが僕の最高で、、、至高だった」

 

 

 

 

 

 

もう2度と自分はあのようになることはないのだろう

 

何故なら『たどりついてしまったから』

 

 

 

「、、、だったら、、、僕はこれから、、、」

 

 

 

それは成し遂げた後の人生を決める『岐路』だった

 

 

 

「僕は、、、、、、」

 

 

 

道なき道に終わりが来る

ここが終わればのぞみは叶う

そしてその後は、、、、、、、、、

 

 

 

 

その瞬間思い返されるのは『大切な者たちとの大切な記憶』

 

そしてついさっき感じてしまった『魂』の、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、決めた」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それでハーレムを作ることにしたの?」

 

「いや、家族を持ちたいっていうのが漠然とあってハーレムになるとは正直思ってなかったかな〜」

 

「毎日『母さん達』といちゃついてる『父さん』がそれ言っても説得力ないよ」

 

「あはは、目覚めたあとが大変だったな〜みんな人を轢き殺せるくらいの威力で抱きついてきて」

 

「話をそらさない〜」

 

ヘスティア・ファミリアホーム『竈の館』中庭

 

そこに設置されたテーブルと椅子に座って行われていたのは『父』と『息子』の歓談

 

2人は紅茶を飲みながら『春姫農園』から作られたレモン菓子を摘んでいた

『息子』は『父』の味覚を受け継いだのか甘い物が苦手でこういうノンシュガーなティータイムで一緒になることが多々あった

ほかの兄弟姉妹は普通に甘い物が好きなのが多いからだ

 

『山吹色の髪色』で少しだけ尖った耳はハーフエルフの証拠でありレモン菓子の酸っぱさで少しだけピクピクと揺れている。きれいに揃えられた短髪はあの時の彼女を見ているようだと最近よく思う

 

「あとちょっと聞きたいことがあるんだけど、、、聞きづらいけど」

 

「ん?」

 

「もしかして、、、俺が母さんの腹にいることがわかったから仕方なくハーレムを作ったってことは」

 

「ないない!それはない!なんでそんな考えに!!?」

 

「いやほら俺って長男だし最初に出来た子供だし」

 

「ちゃんと付き合ってからだから!ていうか親子でこんな話やめない!!?」

 

「結構前から気になってたんだよ、、、聞きづらいけど教えてくれ」

 

「えぇ~と、、、あの、、、」

 

「早く、もう勢いのままに」

 

「、、、、、、、割と刺激の強いこと言っていい?」

 

「俺今年で14歳だよ、もう色々知ってる歳だから良いんだよ、ていうかそもそも刺激の強い家族だろ元から」

 

「あはは息子にそう思わせちゃうなんて申し訳ないな〜」

 

「いいから」

 

「、、、、、、、、初めての日、、、いや、レフィにとっては初めての日」

 

「あぁ〜父さんの初めてはアイ母」

 

「いいから!、、、、、、その、、、」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「、、、、、、、、、ヒトバンデヒッチュウしてしまって」

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりか」

 

「やっぱりか!!?」

 

「同じ母の弟妹が多けりゃそう思うよ」

 

あの時とは変わらない慌てようだが確かにベルは変わった

前のような無茶はしなくなった

あの時よりも自分の幸せを考えるようになった

善性はそのままに自分のことを考えるようになったのだ

だからこそ『彼ら』が生まれたのかもしれない

 

これはそんな『変わらずに変わった彼らの未来』

 

 

 

 

      出会いの果ての未来

 

 

 

 

 

 

 




※子どもがめちゃんこ多い設定のために子どもの名前を付けるのを諦めました
皆様の想像に委ねます
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