兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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『悪い魔女と泉の魔法』

 

とあるところのとあるばしょ

 

おうさまたちはオアシスをさがしていました

 

のどがかわいてしかたがないひとびとのために

 

しかしそこにイジワルな『悪い魔女』がやってきました

 

『悪い魔女』はりゅうのつかいまをつかっておうさまたちにおそいかかりました

 

そしてゆうかんにもたちむかったのは、、、、、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 巨大な大蛇の咆哮が砂漠を震わせる。口から吐き出された炎が爆風とともに砂塵を吹き飛ばす。人がいれば一瞬で燃え尽きるであろうその炎を『紙一重』で避けるものがいた。

 

「ただでさえ熱いのにクソ」

 

走りづらい砂の上を兎のように跳ね回るのはオッドアイの青年、両手に珍しい装備である鉤爪を装着したその男は、回避しながら【バジリスク】を呪い続けていた

 

大蛇の咆哮に変化が起こる

他の生物を圧倒させ萎縮させる咆哮から【絞り出される】ような肉々しい苦しみの鳴き声に変わっていった

 

「あいつは何をした!!?」

 

ロエはレベル2の視力で必死にメロを追っていた。メロはレベル4なのでときおり目にとらえられないがそれでも彼は見る限り鉤爪しか装備しておらず他の武器は見当たらない。詠唱もしていない、だがバジリスクは時間が経つたびに苦しみ続けている

 

「呪具だよ」

 

理由がわからずにいるといつの間にか隣にいた薄紅髪の男が声をかけてきた

 

「メロは【呪詛】の天才でねぇ【呪具】を作ることもできるんだ。今あのバジリスクを苦しめてる呪いはメロが呪具を使って呪い続けているからだよ」

 

「呪具!?だが鉤爪以外何も装備してないぞ!」

 

自分が目で追えていないのか!?それだけなのか!?

そんな当然の疑問を抱えた

薄紅髪の男はまるで予想していたようなリアクションをとるロエに顔のニヤつきが止まらなかった

そんなニヤけづらに気づいたのかロエは一瞬ムッとしながらも疑問を投げかけた

 

 

 

「どういうことだ!」

 

 

 

 

「【身体の中】に呪具を埋め込んでるんだよ」

 

 

 

 

「ーーーーーーーーっ!!?」

 

 

帰ってきたのは想像だにしなかった解答。目で追えていない、服が呪具、そんな考察を無に帰す想定外の答え、疑問を頭に抱えたまま再びメロのほうを振り向いた

 

「ハッ!」

 

ギリギリと音を立てて鱗が剥がされる。両手両指に装着された『黒紫の鉤爪』は切れ味が鋭いのかバジリスクの鱗を簡単に剥がしていく

 

「やっぱり巨体だとその分呪詛が効きにくいな、既にだいぶ呪い漬けにしてるが、狂っても死ぬ気配がない」

 

バジリスクは理由のわからない大量の呪いに漬けられて魔導具の命令すらもはや聞かずにひたすらデタラメに暴れ回っている。火を吐き、麻痺毒すらばらまき始めた。直後メロはバジリスクと距離を取って、ほかのみんなはニイナのラグリエル・クリスヘイムの魔法で難を逃れている

 

「麻痺毒が面倒だな、、、仕方ない、一気に決める」

 

メロは両指に力を入れてバジリスクの火と毒を避けながら目の死角に向かって走り出した。

 

「埋め込んでいるとはどういうことだ!?」

 

「そのままの意味だよ。肉を切って骨に引っ付けてるのさ、できる限り小型化して運動機能を損なわないように細心の注意を払って両腕の中を中心にいくつかの呪具をな」

 

「な!!?」

 

あまりの衝撃のないように喉の奥がギュッとなるような感覚に襲われる。倫理をある種無視したその所業は、やろうとしてもなかなか出来やしない、身体に異物を入れる覚悟だけではなく、それを準備するための手術は信頼が置けてなおかつ腕のいい医療関係者がいなければ無理だ。

 

「一体なぜそんな事を!」

 

「並ぶため」

 

「は!?」

 

「積み重ねるだけじゃ届かない人達に並ぶため、ただそれだけだ」

 

薄紅髪の男は笑いながら言った。しかしその言葉には確かに真剣な何かをロエは感じていた

 

「俺たちは所詮、温室育ち、人と変わったことをするのは当たり前、温室育ちの俺たちは更に1つ2つ次元が違うことをしなきゃ、黒竜討伐の英雄たちには並べないのさ」

 

 フルトは理解していた。ただ積み重ねても先達の冒険者達には並ぶどころか足元を掴むこともできないと、先達の冒険者は過去に何かを失い苦しめられ地獄を見た者が殆ど、それを糧に強くなってきた。だが、幼少期から恵まれた環境で過ごしてきた自分たちでは彼らと同じ事をしようと並ぶことなどできはしない、メロの行いはその差を何とかしようと藻掻いた末の強行だった

フルトはメロのそんな所が好きだった

【やっぱり自分と似ているから】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「魔石の場所は掴んだ、その場所の鱗も剥がし終えた」

 

メロはバジリスクの急所を見つけ下準備を終わらせた

 

【黒紫の鉤爪】が妖しく光る

 

「行くぞ」

 

メロが再び跳ね回りバジリスクに近づく、バジリスクは生物としての本能なのか自分の身に危険が迫っていることを察知、先ほどよりも更に暴れ周り近づけなくなる。

 

だが【近づく必要などなかった】

 

 

メロはバジリスクに触れられない距離にいた

 

なのに構えを取った

 

それは【突き】の構え

 

それは【黒紫の鉤爪】だからこそ出来る選択肢

 

 

 

「ーーーーーーーーふっ!」

 

五指を突きだした状態の右腕の突き

 

《それがバジリスクに刺さった》

 

 

何故なら

 

「あの鉤爪は俺の折れた半身、【ヴィクティム・アビスの欠片】を元に作られた『斬撃範囲を拡大する鉤爪』」

 

 

拡大された斬撃範囲による突きが剥がされた鱗の隙間を抜けてバジリスクの急所を貫いた

 

 

 

だが

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「くそっ肉で防がれたか」

 

相手は竜種、急所を完全に貫かれても驚異的な生命力でその命には届かなかった

一撃で両断したオッタルが異常なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仕方ねぇ」

 

メロの身体が【燃えた】

 

 

「アレは!!?」

 

ロエの脳裏に浮かぶのは自分に向かってくるピアノの姿

間違いなくあれと同じ炎

これより繰り出されるのは斬撃範囲拡大の攻撃に加えて『英雄の聖火』が加わった【擬似的残光】

メロが出せる最大の攻撃

 

「ロエぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「!」

 

メロが自分の名を叫んだ

 

「しっかりと目に残せ!この姿を!!」

 

自らの炎に焼かれながら、メロは構えを取る、それは肘を曲げたまま下から上へ突き上げる、いわばアッパーカットの構え

 

ロエはもう一度その姿を目にした。ピアノの後ろに見えた蜃気楼のようなあの姿を、今度はメロの隣に

 

身の危険を本能で感じたバジリスクが正面から襲いかかってくる。

もはや急所に当てることなど考えていない正面から五指で引き裂く

 

アッパーカットのマストである握り拳から開かれた拳に変わった瞬間

それは打ち出された

 

 

 

 

 

 

 

         聖火の黒妖魔斬

     ヴィクティム・アビス・ウェスタ!!!

 

 

 

熱風とともに繰り出されたのは聖火をまとった5つの斬撃

身体に当たった直後から焼き切れた擬似的残光はバジリスクの顔を正面から引き裂き、そのまま通り過ぎていった

 

 

その瞬間をロエは見ていた

 

その後ろ姿はまるで、、、、、、、

 

「ロエ」

 

「あ」

 

メロがピアノのように身体を焼いた状態でこちらに歩いてきた

 

その顔は全身が焼けている、煙を吹き出している身体からは焼けた異臭が漂い、彼の痛みがそのまま流れ込んでくるかのようだった

よく見れば黒い方の片目が蒸発している

顔で無事なのはもう片方の赤い目のみ

そしてこの炎は内側も焼き尽くす

恐らく今彼は立つのもやっとなのだろう

ピアノよりも遥かに酷い大火傷

身体全部を焼くことでようやくあの威力が撃てるのだから

だがメロはそんなこと知ったことかと言う顔で自分と目を合わせ

 

言葉を綴った

 

「今回だけ俺はお前の英雄になってやる」

 

「ーーーーーーーーー」

 

「俺を頼れ、妹に会わせてやる」

 

気づけばその瞳から既に枯れたはずの涙が溢れていた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ほのおのせんしはりゅうのつかいまをたおしました

 

魔女はなきくずれました

 

ほのおのせんしは魔女のはなしをききました

 

魔女はびょうきでした

 

のどのかわきがとまらないびょうきだと

 

だからみずをひとりじめするしかなかったと

 

そしてほのおのせんしはいいました

 

のどがかわいたひとたちをたすける

 

それは魔女もおなじだと

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後のことは『絵本』に残らないあまりにもあっさりとした消化試合

 

ワルサの王都に乗り込んだ

 

本物のロス王子を誘拐

 

王都に囚われていた妹を救出

 

ただそれだけ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「行くぞ」

 

メロが両手の十本指を砂漠の地面に突き立てた

 

斬撃範囲の拡大

 

そして

 

その場から『水』が噴き出した

 

その瞬間、この砂漠世界に新しいオアシスが誕生した

 

「ボフマン、例のものを」

 

「ハッこちらに」

 

するとアラム王がボフマンに用意させていたとある魔導具が運ばれてきた。色がランダムで変わる魔石灯、かつてフレイヤがとあるオアシスをナイトプールに変えたのと同じものだった。

 

「ここは厳密にはまだ正式なオアシスではない、だから今回限りのお楽しみだ。どうか楽しんでくれ」

 

それは砂漠の王の茶目っ気のある振る舞いだった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ」

 

「何度目のため息だ」

 

「仕方ないだろ!こんなことになるとは思わないだろ普通!」

 

目の前でほかの者たちがナイトプールで遊んでいる中、ロエはそんな気分にならず端のほうで座っていた

そこにメロが同じように座り込んだ

妹の方はナイトプールで他の者と遊んでいる

 

「言っとくが先達たちの教育は厳しいから覚悟しとけよ」

 

「操り人形じゃなけりゃ何でもいい」

 

「そうか」

 

姉妹はメロの提案を聞き入れ彼の家でメイドになることになった

まぁそれしか選択肢がなかったと言えるが

 

ロエは彼の横顔を見る

 

相変わらず怖い顔だが今は少し違う

 

それがとても頼もしいものに見えてしまう

 

そう思った瞬間

 

中々の速さで彼から目を逸らした

 

なぜ?

 

なんだ?

 

なんだか、、、、

 

心臓が痛いような

 

「ロエ」

 

「はいぃ!!?」

 

突然声をかけられ声が裏返った。そのことに顔を赤くしながら再び彼の顔を見た

 

「やる」

 

「え?」

 

何かを手渡された。素手で渡されたので手と手が少し触れた、それだけでビクリ!と反応してしまった

 

そして渡されたのは指輪だった

 

その瞬間グサリとハートに何かが突き刺さった

 

「その指輪は【不眠を促す呪い】をかけてある、しばらく勉強漬けの生活になるだろうからな、そこは同情するが、それがあれば勉強中に眠くなることは、、、、、、おい聞いてんのか」

 

メロは自分のやらかしに全く気づいていない

真っ赤な顔で石化した彼女は一晩もとに戻ることはなかった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ていうことがあった」

 

一同がオラリオに帰ってフルトがシャルザードで起こった喜劇を話していた

 

「性獣の血筋ィィィイィィィィィイィィ!!!!!」

 

ダーーーン!と音を立てたのはメロの母親であるヘルン。彼女は膝から崩れ落ちて両手を握りしめ地面を叩いた。そして涙目になっていた。仕方なかった、ヘルンにとって最も恐れていたことが起きてしまったのだから

 

「やっぱり貴方は殺しておくべきだったこの繁殖兎めぇーーーーーー!!!!!」

 

ヘルンがベルの首を絞めにかかった

 

「えっととりあえず連れてきた娘にはあとで会うよ!メロにも伝えといて!」

 

「あはは☆久しぶりに見たわヘルン母のパッション」

 

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おうさまは魔女がまもっていたいずみにまほうをかけました

 

するといずみのみずがキラキラとかがやいてたのです

 

みんながそのうつくしさにめをうばわれました

 

ほのおのせんしも魔女も

 

とてもよろこんでいました

 

そこはあたらしいオアシスとしてみんなにあいされました

 

 

おわり

 

 




とあるクエストについていた十世長(ナンバーズ)

突如襲いかかってきた驚異にして異端

そして気がついたら

『そこは過去だった』

まだ家族ではなかったあの時代

目にするのは全盛期の両親たち

黒竜討伐前

オラリオが討伐の準備期間に入っていた時系列

今とは違う彼ら彼女らは何を思うのか

そして始まる歴史を越えた共闘

ついでに起こる〚脳破壊〛!

女達の何かしらの《脳破壊》!!

世界に約束された〘脳破壊〙!!!




       時を越える兎たち
     イレギュラー・チルドレン



どうぞお楽しみください
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