「故郷じゃ変な子だったんだ私」
昔、一度だけお母さんの故郷の事を聞いた
とても苦しそうな顔で答えたお母さんに罪悪感を感じて咄嗟に謝った
そしたらお母さんは優しく私の頭を撫でて
「だから他と違う事をリコも気にすることはないよ」
リコはアマゾネスという種族にとって【異端】と言ってもよかった
異性に免疫がなく控えめで謙虚、他のアマゾネスが薄い露出度の高い服を着る中、彼女は【恥ずかしい】と普通の服を着ていた。自分の妹達は自分とは違い露出の高い服を着ているなかで彼女はどこか劣等感のようなものを感じていた
だがそんなものはすぐに消えた
「リコはリコでいいんだよ」
母の眩しい笑顔のお陰だった
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「一体何が!?オラリオだよね!!?」
驚愕を言葉にせずにはいられなかった。謎の光に包まれていつの間にか全く別の場所にいた。しかもそこは間違いなくオラリオなのだが、自分の知っている街並みと大きく違う、正真正銘の緊急事態に冷静さを失いそうになったリコだったが
「きゃあーーーー!!!」
「!」
誰かの悲鳴を聞いた瞬間、彼女は走り出していた
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バベル周辺はパニックになっていた
突然現れたモンスターに人々は逃げ惑い冒険者達は訳が分からずとにかく武器を振るった
ギルド内にいる者達は外に現れたモンスターのせいでその場を動けなかった。なんせ発生源がバベルに引っ付いているのだから、だがこの状況下においても動き出すことが出来る者も存在する
「行ってくる!」
「勇敢すぎでしょエイナぁぁぁ!!!」
エイナ・チュール
優秀で度胸もある彼女は同僚のミイシャの静止を受けながらも行事を胸に前に進んだ。
「ドルムルさん!ルヴィスさん!」
「「エイナさん(ちゃん)!?」」
たまたまギルドにいたエルフとドワーフの二人に受付嬢であるエイナが声をかけた
「外の様子を教えてください!あと護衛をお願いします!直接見て現状を把握します!ここにはオラリオ中に放送できる魔導具があります!正確な情報を伝えてオラリオ中に緊急事態を届けなくては!」
「任せろ!」
「おまかせを!」
「おい田舎ドワーフ!私が任されたんだ!引っ込んでろ!」
「お前が引っ込んどれヒョロヒョロエルフ!」
好意を持つ女性にいいところを見せようとお互い譲らずそれでいてしっかりと武器を構えながらエイナを護衛する
外に出てみれば冒険者達が戦って一般人は見当たらなかった。死体がないことからどうやらうまく逃げれたらしい
そして上を見て驚愕した
バベルに正体不明の繭がくっついていたのだ。それもかなり大きく城1つ分の面積が広がっていた
「なんか光ったあといきなり現れたんや!」
「あんな巨大なものがいきなり現れて我々もどうすればいいか!」
2人の言葉を聞きながらエイナは現状を認識しようと頭を回転させる
(繭の正体は考えても今はわからない!これだけ大きければオラリオ中に見えるはず!きっと有力派閥が駆けつけてくれるはず!今やるべきことは近くにいる人達を支援して放送で医療設備に呼びかけて整えて貰って)
その時だった
「なんだありゃ!!?」
「「「!?」」」
一人の戦っている冒険者が指をさして叫んだ
他の者とそれを目にする
それはバベルをぐるぐる回るように屋根を駆け回っていた
それに触れたモンスターは灰燼となった
とてつもないスピードで何かが行われていることを視力のいい冒険者達は理解した
それは赤く煌めいていた
人の目を引きつける炎
それが高速で動き撒き散らされる火花が軌跡を映していた
そして感じる【異臭】
獣人の冒険者は真っ先に気づいた
そして特別鼻が効くわけでもないエイナ達もそれを理解した
「燃えてる!!?」
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「うまく動けない!」
リコは【市街戦】をしたことがない、ダンジョンに潜って今より過酷な状況を経験したことはあっても町の中で戦ったことなどなかった。ダンジョンという単純な地形では学べない複雑な身体の使い方を今ここで覚えるしかなかった。
「ここはオラリオ、それはわかるのになにか変!?なんなの!!?」
人の悲鳴を聞いて助けてそれでも再び浮かび上がった状況の異常にまた思考を持っていかれる。そんな事を考えている場合ではないことは分かっているのに混乱が収まらない、リコは今だに未熟なのだから
それでも
「うわぁーーー!!!!!」
「っ!!!!」
誰かの悲鳴を聞くたびに走り出す速さだけは鈍らない
(あれはバベル!でもあの繭は何!?戦ってるモンスターと関係がありそうだけど情報が足りない!でも走りを止めたら誰かが死ぬかもしれない!)
そんな混乱する頭で彼女にとっての第一は
「みんなに危害が及ぶかもしれない」
彼女の家族、兄、姉、弟、妹、そして両親たち
ここがオラリオなら自分より遥かに強い先達達がいるだろう
だがまだ小さく幼い下の子たちを思うと恐怖で震えた
もし間に合わなかったら
「っ!!!」
そう思った瞬間リコは【燃えた】
後先を投げ捨ててモンスターの殲滅に全力の神経を注ぐ
地形で動きづらいのはその分炎でゴリ押しして誤魔化す
燃えた後動けなくなるがここがオラリオなら誰かが助けてくれるかもしれない
迷惑をかけることを申し訳なく思いながらリコは本気を出した
【家族のなかでも自分にしか出来ない『全霊』を】
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「あぁーーもう鬱陶しい!!一気に切りたい!」
「相性悪いわねアンタ!」
ティオナが大切断を振り回しながら苛立ちを口にする。相手は犬猫サイズの虫型、あちこちを飛び回り素早くティオナの武器のウルガとは相性が悪かった。
2人がモンスターを倒しながらバベルへ向かっていると
「アレは!?」
「え!何!!?」
ティオネが何かを目にした
それは赤い光だった
バベルの周りを高速でぐるぐると回っている
その軌跡は火花で大きな円にも見えた
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「あの人燃えてますよね!!?」
エイナが身体を燃やしながら戦うリコを目にして二人に聞いた
「エンチャントじゃないのか!?」
「まさか、自分の身体を燃やすほどの炎を!」
「っ!」
彼女の正体を知らないままエイナは心配だった。炎で顔が見えない、褐色の肌と武器の二刀流しか分からず男か女かもわからない、だがこのままでは死んでしまうと彼女の倫理がエイナを再び思考の海に落とす
「ポーションはありますか!」
「すまん!ない!」
「すいませんありません!」
「一旦ギルドの中に戻ります!他の冒険者からポーションを借りないと!」
「「おぉ!(はい!)」」
エイナはポーションが必要と判断してギルド内に戻る、そしてルヴィスとドルムルが他の冒険者から半分奪うかたちでポーションをかき集めた。事は一刻を争うかもしれないと思ったからだ。
その時
「入ってきたぁーーーー!!!」
「「「!」」」
一匹のモンスターがギルド内部に侵入した。元々犬猫サイズの虫型、さっきまで入って来なかったのが幸運だったと誰もまだ理解していなかった。
「「エイナちゃん(ちゃん)!!!」」
「あっ」
そしてそのモンスターはエイナに向かって飛んでくる、いや、進行方向にたまたまエイナがいただけの不運。エイナが迫りくる衝突に備えて両手をクロスして身を庇おうとした
その瞬間
ザン!!!
向かってくるモンスターが灰燼とかした
「え?」
そしてエイナは咄嗟に瞑ってしまった瞳を開けて前を見た
そこにいたのはさっき見た【燃える人】身体から炎と煙を撒き散らして自分の前にいた。
恐らくギルド内に滑り込んでモンスターを倒したであろう低い体勢で
エイナは見た
彼女の顔を
そしてリコも助けた人を見た。リコは襲われそうになっているのがエイナだと気づいていなかった。顔を上げて初めて自分が助けたのがエイナだと気づいたのだ
2人の目が合う
エイナは衝撃を受けた
黒い髪に褐色の肌のアマゾネス
だがその赤い目と顔つきは
あまりにも
自分の好きな男の子に似すぎていた
「貴女は」
「なんでここにいるの!!?」
「え!!?」
すると目の前のアマゾネスが突然立ち上がり声を上げた。まるで自分を知っているような顔で
【それは奇跡と呼ぶにふさわしい瞬間だった】
リコは現状のオラリオが変であることに気づいているが『過去のオラリオ』だと言うことに気づいていない。というかそんなの普通考えつかない
そして彼女は緊急事態故に頭が【モンスター絶対倒すウーマン】状態にあり 目の前のエイナが自分の知る母のエイナではないことに気づいていない
一刻を争う危機、リコが考えるのは家族の無事
すぐに戦いに戻らなければいけない現状
そして何より奇跡的だったのは【未来のエイナの現状】
ギルド内部の全員が二人を注目していた
そしてリコは『大きな声』で『簡潔』に周囲に呼びかけた
「この人はお腹に4人目の赤ちゃんがいるので誰か護衛をお願いします!」
〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈ピシぃ!〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉
モンスター襲来の恐怖すら吹き飛んでその場が無音に支配された
なんて?
いちとにとさんは?
なんて言った!?
いちとにとさんは?
赤ちゃん?
いちとにとさんは?
エイナちゃんが!?
いちとにとさんは?
誰と?
いちとにとさんは?
4人目?
いちとにとさんは?
めっっっっちゃしてんじゃねぇか
イチトニトサンハ???
「行かなきゃ!」
そしてリコはそれだけ伝えて駆け出した
最初に思考を取り戻したのはギルドにたまたま訪れていた〈神〉の人柱
走りゆく背中に咄嗟に声を上げた
「父親誰よ!」
そしてリコは声を上げて答えた
そう答えてしまった
それも緊急のために一番大きな声で
「ベル・クラネルに決まってるでしょう!!!!!」
「「「「「「「「「ぐはぁ!!」」」」」」」」」
そこにいた一部の男たち(ドルムルとルヴィス含む)が血を吐いてぶっ倒れた
一部の女たちはモンスターの存在を忘れて顔を赤くしてエイナを見た
そして当本人のエイナはたったまま気絶していた
そのせいで咄嗟の弁明ができず話が広がることになる
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殆どのモンスターはリコの手により倒されていた
しかし『大きな個体』がいた。そのサイズはシルバーファングにも匹敵する巨大
明らかにほかの個体より強い
それも十匹
それを理解したリコは【奥の手】を使った
それを使えば確実に《丸一日》は意識がなくなる
正真正銘の最終手段
リコの身体が更に燃え上がった
そして
「アレは!」
「燃えてる!?」
ティオナとティオネの姉妹はその瞬間に出くわした
いや、2人以外にも駆け付けた多くの冒険者がその瞬間を目にした
それは『決着』の瞬間
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リコはベルに一番似ている
それは魂が見えるとされているフレイヤのお墨付きだった
彼女の魂の色は『薄白』
限りなく透明に近い純白
透明の魂を持つベルに一番近い色だった
そのせいか彼女は、、、、、、
『ベルの聖火の親和性が一番高かった』
その証拠に
リコは
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ディオス・アルゴ・ウェスタ
偽現・聖火の英斬
の
「聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)!聖火(ウェスタ)ぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
10連発
『リコは丸一日の意識消失を代償に短時間だけレベル差を超越してベルの強さをトレース出来る』
彼女の二つ名は『黒兎の脚(ブラック・フット)』
ベルに近いからこそ得た異名
全てのモンスターが灰燼に帰した
それを見ていた冒険者は驚愕にその目を開く
見えなかった追えなかった
そのあまりの速さに何も、、、、、
「あっ」
ティオナが止まった彼女を目で捉える。
身体中に広がっているであろう大火傷
よく見れば片目が蒸発している
そして残った片目でリコは
この時代の母を見つけた
自分の知る母親と別だとは気づかずに
(あぁよかった、お母さんが来てくれた)
その瞬間、身体の力が抜けて意識も遠のいていく
倒れると見ていた者たちは理解した
「「!!!!!!!!」」
そして姉妹が動いた
体の奥底から湧き上がる血に導かれてティオナは駆け出した、それはティオネも同じだった。直接的な血の繋がりはなくともリコは妹の子供、そして妹は自分と血を分けた双子、ティオナと同じように血に導かれて動いてしまった。
前のめりに倒れるリコを姉妹は受け止めた
身体を動かす衝動の正体がわからないままかつてないほど気を使って受け止めた
身体の炎は消えていたがその余熱は人の肌を焼くほどに熱かった
だがどうでもよかった
そして意識を絶つ前にリコはティオナと目を合わせた
ティオナはその赤い目があまりにもあの人に似ていることに気づいた
そして
「後はお願いお母さん」
それだけ言ってリコは眠りについた