「私の息子だかなんだか知りませんが、やるなら本気でやりますよ」
『黄昏の館』の中庭に2人の『魔法剣士』が立っていた。一人はレフィーヤ・ウィリディス、先程までのパッションは身を潜めて品性溢れるエルフらしい顔つきとなって『短杖』と『短剣』を構える
そしてもう一人のハーフ・エルフの青年はヘディン・セルランドと同じ『ディザリア』を構えていた。そして自分を産んだ母親であるレフィーヤと目を合わせて
「当然だ隠れ淫乱垂れ肉エルフ」
「まだ垂れてなぁぁぁぁぁぁぁぁい(泣)!!」
「ギリギリですよ兄様!」
一瞬でいつものレフィーヤに戻した。あまりにも許容出来ない未来に涙を流して怒りをあらわにする。あんまりな暴言に弟であるツヅミがツッコミを入れた
「いずれ引っ張られまくって垂れんだから早いか遅いかだ」
「兄様ギリギリですよ!!」
「ングぁぁぁぁぁぁぁ!!!」(ワシャワシャワシャ!!!)
思えば彼らが来てから自分は死にかけてばかりだ。彼らも大変だろうがそれでも自分への被害がえげつなさ過ぎる。あまりの苛立ちに頭に爪を立てて掻きむしってしまうほどに、それでいつの間にかこの苦しみの元凶兼未来の息子と組み合うことになった。
それを見ているのは全団員とたまたま居合わせた関係者たち
シル・ヘディン・ヘグニ・ガリバー兄弟
ヘファイストス・椿
※ちなみにリューはいない、色々限界だったので『竈火の館』で寝込んでいる
「アコーディオ君はどんな輝きを見せてくれるでしょう!」
シルは既に熱狂していた
「愚兎め、碌な教育をしていなかったら承知せんぞ」
ヘディンが見極めるように目を細めた
「枝史に分かれた幼子よ、その良血は以下に」
(ベルの長男、すっごいワクワクする)
ヘグニは内心ワクワクしていた
「しかし、なんだな」
「過激苛烈な言動と顔は似ているが」
「流石に品がないな」
「似てるとは言えば似てないとも言える」
ガリバー兄弟はアコーディオの性格に引っかかりを覚えた
「あれがヴェル吉の作った『ディザリア』か!」
「えぇ中々ね、研鑽を積んでるようで安心したわ」
ヘファイストスと椿は武器に夢中だった
同じレベル4の魔法剣士、幹部たちも他の者たちもその組み合いに注目する中、アコーディオが宣誓した
「じゃあ始めんぞ」
「えぇそうですね!焼却しなきゃですね!」
そして組み合いが始まった
その瞬間
アコーディオが突撃した
それも『詠唱』をする気配も『守り』の気配もない純粋な『突撃』
レフィーヤはあせることなく構えたが
アコーディオは『ディザリア』の大振りの構えを取った
慣れた実力者や同じレベルなら大振りの隙を見逃さないがレフィーヤは同じレベル4であっても【魔法剣士の経験はまだ浅い】故に2の手を出すのを遅れてしまった
ギイィィィン!!!!
最もアコーディオはその隙を与える気もないが
「くっ!」
同じレベルでも手が痺れる一撃
恐らく『力』のアビリティはあちらのほうが上
更にそこからの『守る気のない連撃』が続いた
レフィーヤはベートに中途半端の意味の無さを教えられている。だからこそ分かるのだ。アコーディオは最初から攻撃にしか意識を割いていない、『防御』も『回避』も『詠唱』すら今は頭に入っていないと
その勢いに押されてレフィーヤも防御一辺倒を強制的に命じられ『防御』と『回避』に注視せざる得ないのだ
「攻撃一辺倒で来たか。魔法は使う気がないな」
「荒々しいのぉ苛烈な部分をよく表しておる」
「レフィーヤの近距離の経験の少なさも理解しているのだろう」
三首領が評価する
「このままなら近接だけで押し切られんな」
「すごいよ!めっちゃ速い!」
「アマゾネスに似た戦い方ね」
ベート・ティオナ・ティオネもそれに通ずる
「つぅ!」
エルフの血を引いているとは思えないほどの圧力、むしろドワーフやアマゾネスのそれに近い野蛮が自分由来であることに若干気が引けるがベル・クラネルにもそういうところがあるし絶対あっちだなと理由のわからない現実逃避をしながらレフィーヤは『魔法を待機させる』
二重追奏(ダブル・カノン)
ある程度慣れた瞬間レフィーヤが待機させたのは『アルクス・レイ』レフィーヤはすぐに理解したのだ。これは激しい戦いになると故に何があっても良いように先ずは得意を待機させた
『防御』と『回避』に何とか『詠唱』を付け加え全力で耐えるが『攻撃』が出来なければ勝てはしない、そして攻撃を加えることはまだ出来ない、そうした瞬間にやられると分かるからだ
「豪傑、狂血、蛮行の極み、とか思ってるだろう?」
「!」
「その通りだよ、品のあるエルフ様がよぉ」
「『一掃せよ、破邪の聖杖』ディオ・テュルソス!」
ぶち込まれる雷弾
アコーディオはそれを頬にかすめながらペースを崩さず攻撃を続ける
「自ら隙を作るなどなめているのですか」
その言葉に怒りは乗っても大声ではない、冷静に苛立っているレフィーヤは魔法を撃てたのはアコーディオが喋る隙を晒したからだということに気づいていた。
「悪いな、実力を鑑みても俺の知ってる母と違うなと、母さんは俺の苛烈さなんてもはやツッコむのも失せるくらい理解してるからな」
攻撃をやめて距離を取りアコーディオは話を続けた
「、、、なるほど、どうやら諦めたようですね未来の私は」
きっと色々歯噛みしながら苦労してんだろうなぁと未来の自分に同情した
「俺の知る母は、思ったより大人だったみたいだ。アンタはあまりに潔癖すぎる」
「、、、、貴方もエルフの血を引いてるならわかるでしょ」
エルフの多種族との問題はどうしても出てしまう。確かにエルフは品性と清廉も重んじて野蛮を嫌いすぎる傾向があるのでこちらが悪い場合もある。だがそれは生まれながらなのでしょうがないのだ。ある程度の線引きは必要、しかし品性と清廉は実際大事なもの、ようは難しい話である
「貴方だって口は悪いですが所々に潔癖を感じます。未来の私がどうであるかは知りませんがこれはエルフ、ひいては人として大事なものでしょう」
「バチクソ抱かれてるアンタが言っても説得力ねぇ〜」
「この身は純潔です!!」
どうにもアコーディオにはエルフらしきこだわりは薄いようだ
「エルフらしくないって思っただろ?」
「!」
「図星、顔に出やすいのは変わらないな、、、」
アコーディオは少し考える仕草をしたあと、とあるところを指さしてこういった
「そこにいる同じハーフ・エルフのトライアの方がよっぽどエルフらしくないぞ?」
「え?」
「な!」
「「「「「「「「ん?」」」」」」」」
レフィーヤと見物人がトライアのほうを向いてトライアは自分に話が振られたことに驚いた
そして
「なんせ子持ちの女と寝たやつだからな」
「「「「「「「「「ぶっ!!」」」」」」」」」
「うぉぉい!!?」
アコーディオがいきなりぶっ込んできた
トライアは疾風の子供
その子供の現状に皆が驚いた。特にリューと関わりの深いものが特に
リヴェリアは再び石化した
ヘディンはゴミを見る目でトライアを見た
ヘグニは信じられないようだ
シルですら驚いていた
「一応言っとくが不貞じゃねぇぞ」
「いや今のどこに不貞ではない要所が!!?」
「敵国の女を奪うのは人類の伝統だろ」
「ハァイ!!?」
「その女は戦争仕掛けてきたラキア出身のエルフで夫からないがしろにされてたからせっかくだしついでに娘共々略奪しとくかって」
「娘ともども!!?」
「おいアコーディオ!誤解を生む説明をするなぁ!」
トライア
「最初に娘さんから母を助けてくれるように頼まれたんです!だから兄さんは悪くないんです!」
ツヅミ
「観光も略奪も出来たから楽しかった」
ピアノ
「えっとその〜そのないがしろにしていた男の人を懲らしめるためにちょっとラキアで暴れてしまって」
リコ
「宝物庫まで行き届くように計算して城に火をつけて燃えたことにして一部をガッツリいただいてだいぶん儲けたなあのときは」
シュバル
「トライア兄さんはその親子を助けたんだよ!今はウチで親子揃ってメイドをやってもらってるし!」
モニカ
いきなりぶち込まれたとんでもエピソード、ベルをよく知るものは物凄くベルの血を感じた
「やはりあの暴れ兎の子供、、、いや待って寝たって」
「いやそれはその」
「正確には食われた」
「おい!」
「結局不貞じゃないですかぁぁぁぁぁ!」
(((((食われちゃったか)))))
「娘も一緒になってな」
「「「「「「「「ぶーーー!!!」」」」」」」」
どうやらトライアは想像以上の存在らしい
男たちは心の内で尊敬のまなざしを送った
女達は顔に出して凍てついた目を送った
「で?どう思ったよ」
「不潔!不浄!不誠な所業!エルフじゃなくても拒否反応を示しますよこれはァーーー!!!」
「だから俺は『こうなった』」
「え?」
そして突然アコーディオはうちに秘める実力を引き出してきた
「解き放つ紅蓮の炎、宿命の奴隷の命を示せ」
「短文詠唱!」
「ウラコス・ロア!」
アコーディオの魔法・ウラコス・ロア
炎の魔弾を放つ単射魔法、一度に複数放つことも可能で込める魔力で威力も上がる。ヘディンのカウルス・ヒルドの炎形である
アコーディオはその魔法を『空』に放った
一同がなぜと思うなか、その炎弾は『空中で静止』した
魔力操作による魔法の移動操作
魔道士たちが目を細める中、レフィーヤが仕掛けた。
レフィーヤの攻撃を受けながらアコーディオは『ウラコス・ロア』を何度か空中に放ち続けた
「これは」
フィンがその光景に既視感を覚えた
「戦争遊戯でヘディン・セルランドがやったのと同じ」
リヴェリアが口に出した
そして名前を出されたヘディンはその光景をじっと見つめた
レフィーヤの斬撃をアコーディオは『防御』で対処した
力のアビリティが上な以上回避するより確実だからだ、その間に詠唱で空中に魔法を放ち続けた
気づいた時には『空中に50を超える魔弾』が静止していた
この間、数十秒ほど
「ヘディン・セルランドと同じ戦法、どうする気ですか」
レフィーヤは焦らずに現状を把握、そして既視感から攻撃に備えた
全員が空中の魔弾に注視する
そして
「行くぞ」
そのうちの4つが降りてきてそして
『2つがぶつかった』
同じでも魔法同士がぶつかれば相殺する、操作ミスを疑うが、これほどの戦法をするアコーディオがそんなミスをするはずなどないと実力者は油断などしない
ならなんなのか
それは
「っ!!」
レフィーヤは『想定外の速さで飛んできた魔弾』を咄嗟に避けた
大多数が何が起きたのか分からない中、目で追えたものはそれを見ていた
「なるほどな」
「そういう使い方か」
「出来るんだなこういう事」
「器用なやつだ」
「アルフリッグさん達説明を」
目で追えなかったシルがガリバー兄弟に説明を求めた
だがその間に『魔弾の全体が動き出した』
空中の魔弾は魔弾にぶつかり、弾け、加速した
まるで檻のようにその火花散る軌跡がレフィーヤを包み込む
そしてその間にレフィーヤに向かって弾けた魔弾が降り注いだ
「魔弾に魔弾をぶつけた『跳弾』」
それがアコーディオがやった戦法だった。炎に炎をぶつけて加速させ軌道を変え想定外の方向から炎をぶつける技。それを一度に複数操作して全方位からアコーディオの魔法操作技術が炸裂する
「ぐっ!」
レフィーヤは全てを回避できず幾つかを食らってしまった。身体を焼く魔弾に歯を食いしばる中で、それでもなおレフィーヤは『詠唱』を続けた
「解き放つ一条の光」
後ろで跳弾が2発炸裂する
「聖木の弓幹」
加速した魔弾に再び加速が追加される
「汝、弓の名手なり」
それがレフィーヤの顔を狙う
「狙撃せよ、妖精の射手」
直感で首をひねり左頬をかすめ焼かれた
「穿て、必中の矢」
それでもなお詠唱を完成させた
「アルクス・レイ!!!」
バカ魔力と言われるレフィーヤの力が乗った単射魔法は空中に打ち出される。魔法操作により軌道をコントロールした魔法は空中の『炎』に向かって行く、そして魔弾であるアコーディオの魔法は『大砲』であるレフィーヤの魔法に蹴散らされてしまった。
たった一度の魔法でアコーディオが用意した魔弾は全て撃ち落とされたのだ
魔力の決定的な差
それこそがレフィーヤの強み
全員がレフィーヤの凄さを実感する中でアコーディオの顔に歪みはなかった。
「やっぱりすごい!」
ティオナが声を上げてレフィーヤを賞賛するなか
「ベル・クラネルに出会ってから強くなったんだろ」
「!」
アコーディオが話し始めた
「そう、父さんに出会ってからアンタは『炎』を得た」
「、、、何が言いたいんですか?」
「ついでに言うとそこからアンタのギャグキャラっぽさが加速したんだろ?」
「「「「「それはそう」」」」」
「ちょっとぉ!!?」
「俺にもそういう『炎』を得た出会いがあったんだよ」
「!」
アコーディオが話そうとしているのは恐らく彼の行動理念によるものなのだろうとなんとなく察した
「それも物心ついたころからな」
「なんですって?」
それはつまりアコーディオにはすぐに『出会い』があったということだ。レフィーヤにとってのベルのような存在が
そしてアコーディオは口にした
「俺に『炎』をくれたのは俺の弟と妹たちだ」
「ーーーーーーーー」
アコーディオは自分の弟と妹のほうを一度見たあとレフィーヤと目を合わせる
「どいつもこいつも愚者の集まりだ」
「人の言うことを聞いても人に意思なんて委ねやしねぇ」
「そのくせに速いんだよ」
「油断すればすぐに俺を追い抜いてしまうほどに」
「だがそんなことは許さない」
「俺は簡単に追い抜かせない」
「弟達も妹達も尖りまくって才能の概念すら突き抜ける愚者ばかりだ」
「俺はそんなあいつらの長兄だ」
そしてアコーディオは一度フィンの方を向いた
「俺がロキ・ファミリアに入ったのは勇者のアンタがいたからだ」
「何?」
フィンが反応する中アコーディオは続けた
「俺はあんたをトレースしたいんだよ」
団員たちが動揺する中、フィンが口を開いた
「ほぅ、ようは僕のやり方を盗むためにロキ・ファミリアに入ったと?そしてそれは弟や妹たちの為ってことかい?」
「あぁそうだ、人の上に立つならあんたをトレースしたほうが速いからな、正直ファミリアにはあまりこだわりはない」
「なんかその感じやといずれ改宗するみたいに聞こえるんやが?」
「実際そうだからな」
ロキが質問するとアコーディオはあっさりと返した。そしてロキは軽く見られてる感じがしてちょっとイラッとした
「それとラウル先輩」
「え!自分っすか!!?」
突然話しかけられてビックリするラウルをそのままに続けた
「アンタは兄弟がいたよな」
「え?は、ハイっす」
「家族間の力関係は何で決まる」
「え?、、、、年齢」
「違う」
「えっと、、、収入」
「それも違う」
「な、なら一体」
「『気合』だ」
「気合!!?」
「ウチなんて特にそうだ」
「目標のためなら『気合』しかなかろうと突き進むやつらだ」
「なら俺はそんなあいつらの長兄として誰よりも気合で負けるわけには行かない」
「あいつらに崇め奉られる姿こそ俺の理想だ」
「あいつらが、どんな愚者になろうと英雄になろうと俺はその長兄」
「顔も知らない他人のために何かになろうとする気なんてさらさらない」
「偉人になる事にも興味がない」
「ただし俺は長兄であることにだけはこだわりを持っている」
「そのためならエルフの潔癖なんてどうでもいい」
「品性も清廉も興味がないわけじゃない、ただあの馬鹿どもの兄であるにはそれは邪魔なんだよ」
「そしてそのこだわりは『不動』だ」
アコーディオの行動理念
それは全て『弟妹』のため
アコーディオは自分の家族が何よりも特別であることを疑っていない、そしてそんな彼らの長兄である事はアコーディオの人格形成に大きく関わった
親からの遺伝と経験による人格形成は半々と言われている
レフィーヤはベルに出会ってから『炎』を得た
だがアコーディオは物心ついたすぐに『炎』を得た
負けたくないと幼少からずっと思い続けているのだ
「俺はアコーディオ・クラネルとして人のうえに立ち続けなきゃならないんだよ」
いつしかそれは『信念』となっていた
「俺は誰よりも『気合』の入った長兄だ、だからこそ、行くぞ」
アコーディオが『ディザリア』を構える
レフィーヤも構える
恐らく勝負が決まる
それを感じ取り周りの者たちが息を呑む
そして
アコーディオが飛び出した
「アルクス・レイ!!!」
レフィーヤが待機させておいた魔法を発射
アコーディオは『回避』か『防御』を強いられる
その間にレフィーヤは『詠唱』を新しく進める
はずだった
アコーディオは自ら魔法にツッコんだ
レフィーヤもほかのものも驚きに目を見張るなかアコーディオはディザリアで力ずくで魔法を切り裂いた
爆発の余波がアコーディオを襲う
常人ならその余波だけで吹き飛ぶが全く気にせずに魔法を迎撃する
力ずくで魔法を切裂き破裂させて『最短距離』でレフィーヤの前に立った
だがレフィーヤも高速詠唱で既に魔法を唱えおいていた
至近距離 外すはずもない
「アルクス・レイ!!!」
レフィーヤの魔法がアコーディオの目の前で炸裂したその瞬間
アコーディオは『受け入れた』
防御もせずに魔法がぶち当たった
だがディザリアを地面に突き刺して吹き飛ばされずにその場に留まった
アコーディオの我慢勝ち
レフィーヤと目が合いそして
アコーディオは『母の下顎を蹴り砕いた』
鮮血が舞い、肉から突き出た骨の破片すら舞う中でアコーディオはつぶやいた
「アンタ譲りの『気合』だ」