「あれ?そう言えば、フルト兄さんとメロ兄さんは?」
「「「「ん?」」」」
レフィーヤvsアコーディオはレフィーヤが気絶してしまい、試合はアコーディオの勝利で終わった。現在、レフィーヤは倒れたままリヴェリアの回復魔法をかけられてアコーディオもピアノの回復魔法をかけられていた。そんな時にリコが2人がいないことに気づいたのだ。
そして答えたのがアコーディオだった
「あの二人のことだ、多分『豊穣の女主人』に行ったんだろ、今の母親を見に」
「「「「え!?」」」」
豊穣の女主人
フルトの母親のヘイズとメロの母親のヘルンが務めているその酒場は未来の存在である彼らも知る店で、なんならよく行っている。
「あれ?でも路銀は?」
「『改造(レボリューション)』した万能者に出させる気だろ」
「えぇ!?」
「あの人操って3人で行きやがったな、俺も誘えって」
「でもしょうがないだろ」
「トライア兄さん?」
「あそこにはミアさんも含めて『実力者』がたくさんいるから、大勢で行くのはやばいだろ?」
トライアの懸念は従業員の者たちに正体がバレること、さすがにあんな場所で大々的にバレたらオラリオ中に広がってしまうからだ。
「行かないほうが一番いいけど、、、」
「まぁフルトは見たがるだろうなぁ」
「ふだんストッパーのメロもみたいだろうし」
「ていうか気づいてるか?」
「「「「ん?」」」」
「間違いなく今一番ヤバい状態なのは『この時代のヘルン母』だろ?」
「「「「あ!」」」」
アコーディオの言葉に全員がハッとした。ヘルンはシルを通して自分たちの存在を遠隔で知っている。なんならメロがシルに状態を聞いていたくらいだ。そして子供達はヘルンの性格をよく知っているが、よく聞くのは『この時代のダークがオープンだった時代』のヘルンがヤバかったということ、歳を重ねて母親になってからある程度落ち着いたが、時折ベルに対して闇を吐き出す姿が目撃されている。
それは子供達に取っては貴重なものでそれを見た日は幸運が訪れるなんて言われて全力でヘルン母を弄っている。
そんな彼女が愛憎対象のベルと自分の子供の存在を知って正気でいられるだろうか?絶対無理だ断言できる。
「メロも好奇心には勝てなかったんだろうなぁ〜」
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数時間前・お昼ごろ
例えバベルに謎の繭が出現しようとも、店を開くのは当たり前だとばかりに今日も今日とてその店は賑やかだった。
「いらっしゃいませニャ〜」
アーニャがいつものように店に入ってきた客たちに挨拶をして席に案内する。当たり前の光景だが、今日は少し違っていた。
先ずシルがいない。先日の件で現在ロキ・ファミリアにいるからだ、ちなみに店の従業員をしている女のエインヘリアル達はシルの護衛に参加していない。明日も店があると店長であるミアに怒鳴り声で止められたからだ。女達はシルの護衛に参加できず渋々残った。
つまり昨日の件を彼女達は把握していない
ヘルン以外は
「それにしても昨日のヘルンは何だったにゃ?」
「カースではなさそうだったけどそれしか考えられない狂いっぷりだったニャ」
アーニャとクロエがその事を話し始める
昨日のヘルンはおかしいなんてものではなかった。いきなりヘッドバンキングして祈って血を吐いて床を打ち上げられた魚のようにピチピチと跳ねて、流石にそんな状態のヘルンを働かせるほどミアは鬼ではないので現在ヘルンは部屋で寝かされている。
「精神的なものとしか言えませんねぇ〜シル様の何かを受信したんでしょうけど、、、何が起こればあんなふうになるのか?」
ヘイズも首を傾げていた
そんな時だった
店のドアが開けられた。お昼には少し遅い時間帯、入ってきたのは3人、一人は昨日いろいろと話題に上がっていた万能者
「アレぇ〜万能者じゃないですか〜誘拐されたのでは〜」
ヘイズいの一番に話しかける。もしかしたらシルの事を知れるかもしれないと思ったからだ。他の従業員達もそちらに目を向ける。
「すいません、何だかご迷惑をおかけしたようで」
アスフィの反応は普通だった
なんせ『そうするように言われているから』
「それと少しヘルン氏に伝言をいいですか?」
「ヘルンに?」
ヘルンは現在ここにいない、だがこのタイミング、何かあるのではと周りの者たちは更に耳を傾けた。
「待ってくれ、俺が話す」
「了解」
「「「「「「ん!?」」」」」」
そしてアスフィの後ろにいた二人のうちの1人が前に出てきた。最初はアスフィがいきなり感情を消して『了解』と言ったことに驚いたが、すぐに後ろの男の方に注目が移った。
その男は白髪のヒューマンだった
片目は黒 片目は赤
そしてとある女によく似ていた
すると
「なんだい!ここは飯を食う場所だよ!」
面倒事の気配を感じたミアが怒鳴り声でそういった
店の客も従業員もそれに気圧されるなか、そのヒューマンは顔色を変えることもなくミアのほうを向いた。
「すまない店長、伝言を伝えてはh、、、ヘルンが動かなければそれでいい、どうなってもこの店でたらふく食べて金を落とすことは約束する。」
「、、、まるでこの店の事をよく知ってるみたいだが来たことあったかい?」
「、、、、正直いうと訳アリだ」
「そうかい、たらふく飯を食って金を落とすんならそれでいいよ」
「迷惑をかける」
「所でアンタ、『その面』ヘルンのなんなんだい?」
そう、それがヒューマンの一番の特徴
『ヘルン』とよく似た顔立ちだった
そして男は言った
「弟のメロが来たって伝えてくれ」
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ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
イノシシの如き足音が響き渡り、店の奥から一人の女性が姿を現した。その顔色はいいとは言えず、間違いなく青い方だが、その身だしなみは意外な事に綺麗だった。
つい先程意識を覚醒させたヘルンがやって来た
カツカツ!!と音を立ててヘルンが向かうのはとあるテーブル、そこにいるのは万能者と二人の男性、一人は顔を隠しておりよく見えない、だがもう一人の顔は隠されておらずその状態で食事を取っていた。二人とも若い男だからか結構な量の食事がテーブルに並べられている。それも高いものばかり頼んでおりめちゃくちゃ売り上げに貢献していた。恐らくミアに対して『余計なことは不要』とアピールしたかったのかもしれない。
全部、アスフィの財布からだが
「よう」
近づいてきたヘルンに男が話しかける
その男はヘルンにそっくりで『メロ』と名乗り更には弟と名乗った
「顔色は悪いが身だしなみはきれいだな?急いで整えたのか?」
その予想は当たっていた。最初にヘルンは飛び出そうとしたが、一旦冷静になって身だしなみを整えた。慌てていたのに何故そんな事をしたのか?理由は簡単
「あ、、、、、あなたが、、、」
「メロだ、そしてアンタの弟ってことになる」
「っ!!」
理由はその男が『未来の息子』だからだ
「身だしなみを整える元気があるなら大丈夫だな、店の業務に戻っていい」
戻れるかぁ!!!!!
そう叫びたかった。でもできなかった、何故なら思考が纏まらず勢いに任せた言語化すらできないからだ。なんせ未来の息子が自分の目の前にいるのだけでも血を吐きそうなのにその息子がいきなり自分の弟を名乗って現れるなんて誰が予想できようか、ヘルンは冗談抜きで正気を失いそうだった
「ヘルンには弟がいたニャ〜!?そっくりだニャ〜!」
「ちょっとは考えるニャ、アホアーニャ」
「なんニャいきなり!?」
「絶対訳アリだろ、ていうか本人が訳アリって言ってたし」
何の考えもないアーニャが興味深そうにこちらを見ていた。他の従業員は『それなり』の警戒心を表しているというのに
ぶっちゃけ顔は似ているが完全に信じているもののほうが少ない、今のヘルンの様子も相まってあまりにも怪しすぎるからだ。
恐らくメロもそれを分かった上で高い料理をたくさん頼んで余計なことをしないミアを納得させているのだろう。
「な、、、なんでここに?」
必死に意識を保って絞り出すような声でヘルンは質問した。
「はぁ、、、やっぱり座れよ、いいよな店長」
「今のままじゃ足手まといだから元に戻せるんなら戻しておくれ」
そしてミアの許可を得て、ヘルンはそのテーブルに座った。
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バックン!バックン!バックン!バックン!バックン!バックン!という自分の心臓の音を聞きながらヘルンは今にも死にそうだった。
今まで何があってもその場で呪詛を吐き出してきたヘルンだが、今は無闇矢鱈とそれを吐き出すことは出来ない。理由は簡単、隣に息子がいるからだ。
産んですらいない息子ではあるが、彼女の奥の奥にある心が叫んでいるのだ。『息子の前で呪いは吐きたくない』と
例え未来の存在であろうとも、自分の息子に呪いを吐くことなど、ヘルンの理性が許さなかった
つまりどうにもできない
頭が真っ白
何を喋ればいいのかそもそも会話が成り立つのかもわからない
それがヘルンの現状
「食べないのかよ『お姉さ〜ん』」
「!?」
そんなヘルンに話しかけるのは顔を隠したもう一人、シルから受信した事でその正体は分かっている。ヘイズの息子だ。あぁ血を吐きそう。
「からかうなフルト、まぁこんなとこにいる俺も同罪だが、様子を確認しに来ただけだ。」
「!」
「ひと目見ておきたくてな、アンタを」
「っ!!!」
「何か聞きたいことはあるか?」
メロからの提案、聞きたいことだと?そんなの山ほどあるに決まっている。歯を食いしばりながらヘルンは必死に思考をまとめて言葉にする。言語化をここまで命がけでやったのは初めてだった。聞くべきこと、そう、真っ先に聞かなければいけないのは!!!
「その、、、貴方だけ?産まれたの?」
違うそうじゃない!!!
そうじゃないだろう!?何を言っている!?もっと他にあるだろう!?聞いてどうするんだ!?
「そうだな、正確に言えば俺を含めて『5人』産まれた」
「5!?」
「当然、同じ腹からだ」
「ぐはっ!!!」
「うわぁ!ヘルンが血を吐いた!!」
5人というワードにヘルンは衝撃を受けた。一人生まれただけでももう死ぬというのにそれが5人、もはや死なない理由にはなりはしない
「ちなみに俺の母親は俺を含めて『4人』産んだぜ」
「ヌゥ!!!」
そしてヘイズの息子であるフルトがそういった。話の内容を盗み聞きして首を傾げるヘイズに聞こえるのもお構いなしに
「つ、、、、つまり、、、結局、あの淫獣が悪いと」
「「当然」」
「とうぜ!?、、、その、、、、えっとぉ!!!」
『それ』をまるまる否定することは目の前にいる二人の存在の否定にすらなるので全力で拒否することなどできはしない
吐き出したいのに吐き出せない苦しみがヘルンを襲うなか、メロが再び口を開いた。
「仕方ない、やはりここでは無理か、めちゃくちゃ聞き耳立てられてるしな」
(((ギクッ!)))
こちらを盗み聞きしていた者たちが反応する中
「本当に様子を見に来ただけだ、食べ終わったらもう出るぞフルト」
「へいへ〜い」
「あ」
もう言ってしまう
そんな事を一瞬考えた
心の中はかつてないほどグチャグチャなのにそう思った
「、、、、、、」
するとメロは少し考える仕草をした後、ヘルンに近づいた。ビクリ!とするヘルンに耳打ちをするように近くに行って言葉を綴った
「他の奴らに聞こえないように『未来の父さん』について少しだけ教えとく、迷惑かけたお詫びだ」
「え!?」
「静かに」
未来の父さん、つまり未来のベル、知りたくて仕方ないワードをぶち込まれその衝撃で少し冷静になった
「いいか、父さんは、、、、、、、、、」
「ーーーーーーーーー!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「結局、ホントに弟だったのかよヘルン」
ルノアが質問するが、ヘルンは呆けておりよく分からず一点を見つめている。身体を揺さぶっても反応はなく、ただいつも以上に機械的に仕事をするだけだった。
「なんなんだ一体」
「しかし、高いものをたくさん食べたなあの二人」
「何十万と行きますよ」
「全部、万能者が出してた」
「貢ぎ?」
「メニューにある高いもの片っ端から頼んでる感じだった」
「万能者はただじっとしてたな?」
「やっぱり様子おかしくなかった?」
「シル様と関わりは?」
「ヘルン!、、、ダメだ人形だ」
「アンタらちゃんと働きなぁ!!!」
「「「「「はい!店長!!」」」」」
そんなこんなで豊穣の女主人は今日も1日店を続けた
「、、、、、、、、、、、、、うさぎ」
「ん?」
ヘルンがぼそっとつぶやいた単語
それをヘイズが聞いた
「上がってる、、、、、、むしろ上がってる」
「なんなんですか一体?」
ヘルンの心境など誰もわかるはずがなかった
あの時、メロは何と言ったのか
「未来の父さんは『髪を2つ結び』にしている。そこそこ伸ばして後ろの鎖骨あたりで2つに分けてるんだ。遠目から見れば『垂れ耳の兎』に見える形になる。身長は伸びたが童顔はそのままでな、兎っぽさは頭部だけ見れば今より『上がってる』くらいのビジュアルなんだ」
子供ウケがいいから兎らしさを強調したらしい
だから『垂れ耳兎』を彷彿とさせる髪型をしている
「、、、、、、、、くっ!みたい!」
「え?くっころじゃなくて?」
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ロキ・ファミリアホーム
「とりあえずただいま〜」
「オルガは?」
「え?まだアイシャ母と一緒なのか?」
「多分」
「、、、、、、あいつまさか」
「探すか?」
「私、そろそろこの時代のヘスティア・ファミリアみたい」