兎の群れ√ 出会いの果ての未来   作:サイセンサイ

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元祖集結

 

そこは異様な空間だった

 

 締め切られた大部屋、窓にはカーテンがかけられて一切の光が入ってこない。その代わり部屋中に赤い蝋燭の火が灯されており視界は良好と言ってもいい、だがその炎自体は千差万別の色をしており青い炎、紫の炎と特別な作りの蝋燭を使ってある意味幻想的である意味不気味な空気を作り出している、見る人によっては疎らな色で目を痛める光景なのだろう。

 

 大部屋の四方には動物の剥製が設置され、壁には鹿や熊の首のオブジェが立てかけてある。部屋の中心には大きな円卓の机が設置されており、その真上の天井には、暗いなかでも目を引く黄金のシャンデリアが吊るされていた。

 

 円卓の机に配膳されているのはたくさんの料理、ただしその見た目はインパクトの強いものが多く

【目と内臓をくり抜いた子豚の丸焼き】

【鶏の原型が強くのこっている北京ダック】

【巨大魚の兜焼き】

【鰐の頭が入った鍋】

子供が泣いて逃げ出すような絵面がそこに広がっており、人によっては悪趣味と言えるものだろう。しかしそのどれもが高級食材でそれに釣り合うように、料理とともに有名どころのラベルが貼られている酒やワインが同じく円卓の机に並べられていた。

 

 そして円卓に座る者たち。すなわちこの異様でありながら誰もが出来るわけではない贅沢を出来る選ばれし者たちが棘やら骨やらが飾り付けられた特注の椅子に座って【女神の一柱】を待っていた。

 

「ソーマ様の酒はまだなのかよ」

 

 オラリオでも有数の酒であるソーマの酒がないことに骨付き肉を齧りながら文句を言うのは一人の【パルゥ厶】 彼女は机に足をクロスして立てかけておりチンピラがやる所業の悪さを醸し出していた(ちなみに小人のため特別に足を長くした椅子を使わなければ机に足を乗せることはできない)口調も苛烈で前の彼女を知るものからは想像もできない変化、丁寧語も今は使っていない。

 

耳にはトゲだらけのピアスに髪の一部に金のメッシュを入れている。

 

余談だが、唯一無二のエロスを出すために全身入れ墨を入れようとしたこともあるが友達に殴られて止められた

 

リリルカ・クラネル

 

肩書『前衛攻手・チュール商会参謀・ごろつきの女王』

 

 

「お楽しみは最後まで取っておきたいと思いまして」

 

 リリルカの文句に答えるのは異様な空間ながらもその空気にのまれない儚げな美貌を持つ狐人、お猪口で食前酒を飲みながら今回のセッティングに手を貸した者の一人にして円卓の席に座るべき選ばれし女はリリルカの出す苛烈な空気に笑みを向けるあたり女もただ者ではない

彼女は今、黒い着物を着ておりそのわずかに浮き出る白い肌を目立たせていた。普段とは違う色香を纏う彼女を見れば大半の男たちは釘付けになるであろう

 

余談だが、彼女は髪を自分の身長より長いほどに伸ばしている、一度半分に折りたたまなければ日常生活に支障を来すほどだったが、神様に教えられた『髪ブラ』ならぬ『髪だけで大事なところを隠すチラリズム』『全裸でありながら全裸にならない奇跡』を再現するために気合でその身長より長い髪を毎日手入れしている。全ては夫を喜ばせるため

 

春姫・クラネル

 

肩書『妖術師・家庭豊穣代表・オラリオ一髪の長い女』

 

 

「料理の腕も上がったようですね、ツヅミ殿は」

 

 鰐の頭が入った鍋を小鉢に入れて食べているのは黒髪の女性、女性にしては身体も大きく腕も太いがそれが目にはいらないほどに彼女も容姿が整っていた。所作の一つ一つに極東特有の品の良さを感じさせながら、冒険者として力強い貫禄がある彼女は刀の腕だけでなく料理の腕も上げた弟子のことを思って笑みを浮かべた。

 春姫とお揃いの黒い着物を着ていながらもまた違った魅力を出す彼女は第一級冒険者にしてかつて英雄をささえたものの一人

 

ヤマト・命

 

肩書『タケミカヅチ・ファミリア最強・元ヘスティア・ファミリア』

 

 

「それよりリリ助、ま〜た俺の名前使って買い物しただろ?値切りも度が過ぎればアウトだぞ」

 

 大ジョッキで麦酒を飲むのは大柄の男性、その大ジョッキを持つ手は傷だらけで彼がこれまで歩んできた道を表しているかのようだった。迫力のある見た目ながら優しげな目をするその男性は今や世界に名を轟かせる鍛冶師

この大部屋の晩餐に呼ばれた男は黒いスーツを着ておりある意味部屋の雰囲気に合う怖い空気を出しながらもその口から出る軽口は長い友情を感じさせるものだった

 

ヴェルフ・クロッゾ

 

肩書『世界有数の鍛冶師・ヘファイストス・ファミリアのエース・元ヘスティア・ファミリア』

 

 

「そうですか、この野菜のスープは貴女達が、、、」

 

 エルフが好む野菜を中心としたスープを家で働くメイドたちがよそって彼女に渡した。そのメイドたちはいずれ自分の娘になるかもしれない者たちなので関わることが多いのだが、自分より遥かに女子力が高い姿に複雑な心境をするのは仕方なかった。

 

なんなら一人自分より年上がいる

 

彼女は普段とは違う赤いドレスをメイド達に無理やり着せられてこの座についていた、脱ごうとしたが親友と夫に褒められたのでそのまま着ている

髪も長く彼女がアストレア・ファミリアにいた頃とほぼ同じ髪型をしていた

 

リュー・クラネル

 

肩書『オラリオ特殊憲兵官・ヘスティア・ファミリアNo.2』

 

 

「このメンバーだけで集まるのは本当に久しぶりですね」

 

 切り分けられた色鮮やかな魚のカルパッチョを口に運びながら彼女は昔を思い出していた。間違いなく人生最大尽くしだったあの頃、最後に加入したのでついていくのに必死だった子供の頃の自分を

そんな彼女もすっかり大人となり、幼さは消えて美しい女性となった彼女は姉と同じ眼鏡をかけていた。あの頃は子供だったため姉と大きく違いがあったが、成長した彼女は姉と同じ身長、そして姉の方も夫の好みに合わせて髪を伸ばしたため姉妹揃って髪の長さも同じ、今では双子でも通ずるビジュアルとなっていた

 

ニイナ・クラネル

 

肩書『オラリオ治癒師三本指の一人・チュール商会特別外交官』

 

 

 見るものによっては興奮や畏怖を抑えられないメンバーでその全員が、とある英雄と冒険を共にして、その伝説を誰よりも近くで見ることになった者たち。一癖も二癖も十癖もあるこのメンバーをまとめられるのは『生きる伝説』そして『最後の英雄』の彼しかいない

 

 

「たまにはあの頃のメンバーだけで集まりたかったから、忙しい中ごめんね」

 

「気にしないでください」

「私も嬉しいですよ」

「自分も感謝しています」

「たまには思い出に浸りてぇよ俺も」

「私もです」

「ふふっ毎日顔を合わせてるのに懐かしい」

 

全員がその男に笑顔を浮かべる

全員がその男に無償の愛を向ける

それが当然であるかのように

その現状こそが彼が成し遂げた偉業と積み上げてきた試練と今もなお積み上げている努力の証明にほかならない

 

 その男は幼い顔をしていた。身長もあの頃より伸びて平均的な大人の高さ、彼の妻たちよりかは高いがその雰囲気のせいか人によっては未だに少年に見えるという。少し長めの髪を鎖骨あたりで2つ結びにしてそのビジュアルは垂れ耳兎を彷彿とさせる、赤い目に白髪も相まって貫禄がありながら可愛さもあると彼の子供達と妻たちに好評だ。

 

彼は今、ヴェルフと同じ黒いスーツを着ているが首元に赤く長いスカーフを、背中には飾りがジャラジャラとつけられた特服風の羽織をかけている。当然、袖など通していない肩にかける男のロマン使用

 

 子豚の丸焼きを切り分けて大口を開けて頬張る彼は作ってくれたツヅミやフルトに感謝しながら、料理を仲間たちと共に味わう。元のファミリアに戻ったヴェルフや命、家族となった妻たち、今に不満はないが、その時のことを思い出してまた晩餐を囲みたいと時折願うのだ。

 

今も幸せだが、昔の幸せも味わいたいのだ

 

 

ベル・クラネル

 

肩書『英雄・ヘスティア・ファミリア団長・大家族の父親』

 

蝋燭の怪しげな炎が場を照らし、大部屋の飾りは禍々しいものばかり、生命の生々しさを感じさせる料理が配膳され、そこに座するのは赤黒く着飾った錚々たる面子

 

そして椅子はあと一つ残っている

 

「来たね」

 

ベルがその優れた聴力で最後の一人を、、、いや、最後の一柱がここに来るのを察した。他の面々も大部屋の扉に目を向ける

 

そして扉が開かれてカツンカツンと足音を響かせながら入ってきたのは『始まりの女神』

 

全てはその『女神』から始まった

その『女神』だったからここまでこれた

 

このメンバーで絶対欠かせない自分たちの『神様』

 

 

「待たせたね」

 

 長いツインテールをたなびかせてその小さな身体に着ている衣装はいつものホルターネックであるが、今回は『色が黒く』染められていた。部屋の雰囲気に合うように染められた黒い服、いつもの青い紐も染められて赤い紐がつけられていた。その風貌は『闇落』の言葉を連想とさせる

 

聖火の女神・ヘスティア

 

そして彼女は残り一つの椅子に

 

『座らずに』

 

大部屋の窓のほうに歩いていく

 

そして締め切ったカーテンを握り

 

両手で握り

 

 

握りしめて

 

 

 

筋が浮き出るほど握りしめて

 

 

 

 

 

 

 

「何だこの茶番はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

シャウトしてカーテンを開けた

 

開けられた窓からポカポカな日光が入ってきて怪しい蝋燭の光が目立たなくなる

 

今日は実にポカポカとしたいい天気

 

澄み渡った青空だった

 

もう限界だった

 

ツッコまずにはいられなかった

 

「なんで楽しみにしてた食事会が厨二心をくすぐる悪の組織・幹部集合シーンみたいになってるんだぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

そうそれなのだ。あからさま過ぎるくらい悪の組織っぽい部屋に悪の組織っぽい料理に悪の組織っぽい衣装を揃えておりもはやそれはベタとも言われる領域だった

 

「ファミリアに来た瞬間、小僧どもにこのスーツに着替えろって言われてなんなんだと思ったぞ俺も」

 

 ヴェルフがため息をつきながら堅苦しいスーツを脱いだ。此処にいる全員がこの衣装を着るようにベルの子供達に言われて無理矢理とも言える形で着替えさせられた。

 

「僕なんていつの間にかこの服以外全部洗濯されてていつの間にか染められていたこの服を着させられたよ!」

 

ヘスティアが叫んでいると

 

「あぁもう部屋にポカポカな日光が入ってきたら雰囲気ぶち壊しだよ」

 

大部屋の扉が開けられた

入ってきたのはシュバルを筆頭としたベルの子供達

 

「やいシュバルくん!一体どういうつもりだったんだい!!?」

 

「いやほら〜人によってはテンションが上がるメンツだけど俺たちは毎日のようによく会うから感動が薄くてさぁ〜俺たちでもテンションが上がるようにちょっとテコ入れしただけじゃ〜ん」

 

「それでなんで悪の組織モチーフ!!?」

 

「かっこいいから、アドバイザーのヘグニちゃんもノリノリだったし」

 

「ていうか部屋改修してるよね!!?いつの間に!!?」

 

「シュバル〜これいくらかかった〜?場合によっては怒るぞ〜」

 

母親であるリリルカが息子のシュバルに怪訝な目を向けるが

 

「大丈夫だ母さん、いらないの貰ってきたり手作りしたやつだからそこまで出費は出してない」

 

「ならばよし♡」

 

「じゃないだろーーーーーー!!!」

 

「やっぱりあれだ『水蒸気を作る魔道具』を買っといたほうがよかったかなぁ〜怪しげな霧を演出出来たのにケチっちまったから」

 

「そういう問題じゃないだろーーーーーー!!!」

 

騒ぎ立てるヘスティアを他所に他のメンバーは微笑みながら食事を再開した

 

「見た目はアレだけど味は美味いんだよなぁ〜」

 

「オッスヴェルフさん、それ俺が作った北京ダックです」

 

「おぉフルトか」

 

「美味かったんならもう一本俺のナイフ作ってくださいよぉ〜」

 

「賄賂かよ。予約を待てって言ってるだろ」

 

いつの間にかいたフルトがヴェルフに絡んでいると、いきなり首根っこをつかまれて引きずられていく

 

掴んだのはメロだった

 

「今日は思い出に浸りながらの食事会だろうが俺たちは邪魔だ。さっさと出るぞお前ら、それとリリ母、ソーマ様の酒はそこに置いとくからな」

 

「「「「はぁ〜い」」」」

 

((((相変わらずいい子))))

 

メロの言葉に他の兄弟たちは素直に従い大人たちはメロに感心した。

 

「あ、ちょっといいかなメロ」

 

するとベルがそれを止めた

 

「何だよ父さん」

 

「実はその〜、、、、、ヴァンさん達から苦情が」

 

「失礼します」

 

「待ちなさい!」

 

ヴァンの名前が出た途端すぐに逃げようとしたメロ達をベルがものすごい速さで捕まえた

 

「その感じだとまた『ヤッた』の!?」

 

「安心しろよ【ヴァっさん】が本当に嫌がることはしない」

メロ

 

「そうだぜ【ヴァっさん】は尊敬する先輩だからな!」

フルト

 

「うちの商品をよく買ってくれるお客様でもあるからな【ヴァっさん】は!」

シュバル

 

※ベルの子供達はヴァンの事を最初はヴァンおじさんと呼んでいたがいつの間にか【ヴァっさん】と呼ばれるようになっていた

 

 ベルの子供達はヴァンを含めたエインヘリアル達を尊敬している。ベルの先達として時に厳しく時に優しく父親に接してくれた父の先達を心の底から尊敬しているのだ。死闘を乗り越えて強くなり、父と共に黒竜と戦ってくれたからこそ自分たちが生まれたと言っても過言ではない

 

確かな信念と積み上げてきた強さを持ち合わせるエインヘリアル達を子供達は大好きなのだ

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあなんで【弱みを握ることに全力を注いでるの?】」

 

 

 

「「「、、、、、、、、、、、、」」」

 

 

 

「なんでソーマ様のお酒で酔わせて【色々聞き出してるの?】」

 

 

ソーマの酒は例えどんな存在であろうとも影響を与える凄まじい力を持った酒なので使い方によっては【エインヘリアルから情報を引き出す】事もできる

 

 

ベルの子供という理由で普段隙のないエインヘリアル達も力を抜いてしまうことが多くそこを狙われて飲まされて弱みを握られる。ドチャクソ悪用していた。それもかなりの人数が被害にあっていた

 

「まぁでも昔父さんに監禁、洗脳、暴虐を働いたからな、弱みくらい握ってもいいだろ、もしかしたら何らかの大金になるかもしれないし」

 

「よくないよ!!あの時の事はもういいんだよ!」

 

「隙のないエインヘリアルから情報を抜き出すって結構難しいからいつの間にか【スリルのあるめっちゃ楽しいゲーム】になってて」

 

「人で遊ばないの!!」

 

「因果応報なところがあるから黙認してくれ、それに一応大丈夫な情報か確認はしてる」

 

「え?確認って誰に?」

 

「「「【帝王(カイザー)】」」」

 

「それ結果的に聞き出した皆さんの弱み全部マスターに知らせてるってことでしょ!?みんなにバレたらまたフォールクヴァングが始まっちゃうよ!!?」

 

「「「みたい」」」

 

「こらーーーーーーーー!!!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「というわけで俺たちの知ってるヘスティア・ファミリアとどう違うのか確認したいからちょっと観察に行ってくる」

 

「待ってくれないか」

 

この世界にきて三回目の夜を迎えた十世長はヘスティア・ファミリアの観察に行こうとしたのだが、フィンに止められた

 

「耳にトゲだらけのピアス?金髪のメッシュ?全身入れ墨未遂?未来のリリルカ・アーデはどういう状態なんだい?」

 

「団長!?あの小人の事を何故そこまで気にするのですかぁぁぁ!!?」

 

 ティオネがブチ切れながらフィンに詰め寄るが彼の頭には謎の頭痛が響いていた。なんというかこう前世の自分的な何かが脳破壊を起こして今の自分に伝わっているような

 

「自分の身長より長い髪で大事なところを隠すチラリズムやとぉ!?全裸でありながら全裸にならない矛盾を解決してしまうこの発想!まさかあのクソジジィが!!?」

 

ロキは春姫の話を聞いて興奮しながらある一人の神のことを思い浮かべた

 

 

 

 

「竈火の館周囲に気づかれないように陣取って遠くから観察するぞぉ〜」

 

「「「「「おぉ~」」」」」

 

 

 

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