「いつまで続くんだよダンジョン立入禁止」
「何か複雑らしいぜ、繭のなかにモンスターがいるとか天啓物があるとか」
「デカい魔法でどかーんとやれねぇのかよ?」
「九魔姫とか猛者がやれば余裕だろ?」
「それじゃバベルまでぶっ壊れるだろ」
そこは外出自粛の通達が出ているにも関わらず逞しく酒場を開いている場所での会話だった
「何か万能者が誘拐されたとか」
「理由は神ヘルメスへの私怨らしいぜ」
「人の妻どころか人の夫に手を出したんだと」
「「「「怖ぇ〜」」」」
そして染み渡るようにヘルメスの悪評も広まっていた時だった
「ん?」
一人の感覚が鋭い獣人が違和感を感じた
地面から振動を感じる
それは地上ではありえないものだが
ダンジョンでよく感じるものだった
そして今はバベルにモンスターと思われる繭があり
その群体がバベル周辺には出没した
つまり
モンスターがまだいても不思議ではない
「おいお前ら!」
生き残りがいたわけではない
小さな群体はたしかにあの時全て倒された
しかし群体は
【卵】を産み落としていた
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ!!
「身体は大丈夫かい?エルフ君」
「身体は大丈夫だそうですが、、、何か精神がアレみたいで」
「ご迷惑おかけします」
そこは竈火の館、リューの自室
リューは例の件で寝込んでしまっておりニイナの介抱を受けていたのだが、そこにヘスティアが入ってきた、そもそもなんでこうなったか聞きに来たのだが、リューは何が何でも話さないし話せないというスタンスを取っており何も分からなかった。リューからしてみれば当たり前だが
(こんな事がバレたら何が起こるか分からない!とにかくファミリアの仲間たちには絶対絶対絶対バレないようにしなければ!)
「ベルくん関係かい?」
「ヒュッ!!!」
「やっぱりそうだよねぇ!君がこんなになるのはたいていベルくん関係だもんねぇ!一体何を知った!何を隠してる!?吐けぇぇぇぇぇ!!!」
「ヘスティア様落ち着いて!」
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「とりあえず起き上がってここに来てもらったけど」
竈火の館・大部屋
そこに全員が集まる。客人であるエイナやカサンドラ、そして警備をしてもらっているエインヘリアル(未来の子供たちのことをまだ知らない者達)
「てっきりシル某君も来ると思ったんだけど」
「エインヘリアルたちの話じゃ2日店を休んだからもうだめみたいで、泣く泣く働いてるそうです」
「はぁ〜アスフィ様誘拐事件の何かを絶対知ってるから話を聞きたかったんですけど」
「昨日は普通に店に来たそうですけど様子がおかしかったとか、、、それにヘルン様の弟が突然現れたと」
「何やらあちこちですれ違いが起こっている気がします」
バベルの繭やらアスフィの誘拐やら行方不明のベルやらで色々錯綜しまくっている。仕方ないことだ、なんせ下界の未知そのものである彼ら彼女らの存在など想像だにできないのだから。
「えぇ~いこんなところでじっとしていても仕方ない!リュー某君が復活したなら君も一緒に来てくれ!シル某君に聞き込みに行くぞ!」
「今からですか!!?」
「夕飯には少し早いような」
「今は16時か」
「まぁ早めだと思えば」
そうして一同は客人の二人も連れて豊穣の女主人に行くことになった
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「おい出てきたぞ」
シュバル
「「「「!」」」」
ヘスティア・ファミリア一同+2が館から出てきた。シュバルが遠くから唇を読んで向かう先が豊穣の女主人であることを知り、それを他の兄弟姉妹に伝える
その時
「アレ?モニカお姉ちゃんは?」
リコ
「「「「え?」」」」
「何?さっきアイズと話していたが?」
さっきまでアイズとモニカの二人と話していたリヴェリアもキョロキョロと首を振って探すがいつの間にかいなくなっていた。
するとティオナが
「そう言えばこの時代のじゃが丸くんがどうとか聞こえたような」
「「「「あの食いしん坊、、、、」」」」
「この外出自粛で逞しくじゃが丸くんを揚げてる店あんのかよ?」
全員がそれを察してため息をついた
どうやら二人はじゃが丸くん巡りに行ってしまったらしい
「それでどうします?」
ツヅミ
「そうだな、俺たちはもう行ったしな」
メロ
「メロとフルトの二人だけだろ?俺も見たい」
シュバル
「じゃあ尾行するか?」
トライア
「行くか」
アコーディオ
そうして十世長達もその後を追った
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「えぇ!アイシャの親戚の更に弟くん!?」
「ややこしいな!?」
とある広場のとあるベンチに座っているのはアイシャの同士であるレナとサミラ、2人は三日前に突然連れてきたオルガというアイシャそっくりのアマゾネスだけでも驚きなのに更にその弟それもヒューマンが出てきたことに更に驚いた
事情が事情な為に親戚ということにした
「えっとアマゾネスはアマゾネスしか産まないから母親が同じというわけではなくて」
「父親が一緒だ」
「はぁ〜い♡偉大なる父さんから生まれし異母姉弟でーす」
2人は目の前のアマゾネスとヒューマンの姉弟をよく見る。共通点はその赤い目、どこかで見たことがあるような赤な気がするが、深くは考えなかった。
(なるほど、この2人が過去のサミラさんとレナさんか、、レナさんちっさいな〜)
「ていうか歓楽街の女どもが壁に隠れてこっち見てんだけど」
「あれは明らかに発情した目!それにアマゾネス以外もたくさん!」
サミラが指を差した先には隠れてこちらの様子を伺っている女たちがいた。オルガに食われた女たちである。その身に未知の経験をさせられた彼女らは瞳にハートを宿しながらオルガを見ていた。
オルガが目線を合わせて手を挙げて微笑むときゃー!と黄色いような桃色のような歓声が沸き起こった
「それで、これからどうするんですか?」
そしていろんな意味で巻き込まれたアスフィがこれからのことについて聞いた
すると
「「「ん?」」」
何やら騒がしい声が聞こえてきた。声色から本気度が伝わり意識を強めて耳を傾けてみると
「モンスターだ!この前の蚊みたいなモンスターがまた出たぞ!」
「「「!」」」
レナ達が喧騒の意味を理解するその前に
ブワッ!
フルトとオルガは風圧を出して駆けていった
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「ほらほら肉入りも美味しいよ!」
「う、うん、モニカ、そうだけどやっぱり私は王道の」
「はいあーん!」
「むぐっ!」
(姉妹?剣姫には姉妹がいたのか?)
そこはとある大通りでやっているのかじゃが丸くんの屋台
揚げているのは【タケミカヅチ】
資金援助のためにじゃが丸くん作りをやっているのかかの神は目の前の光景に興味を惹かれていた
ロキ・ファミリアの剣姫とそれにそっくりなモニカと呼ばれる美少女、彼もまた善良ではあるが娯楽を求める神であるためについ話しかけてしまった
「剣姫には姉妹がいたのか?」
「いやあのこれは」
「あはは〜親戚でーす♡」
「むぐっ!」
モニカはアイズの口に肉入りじゃが丸くんを突っ込みながら、過去の母親との逢瀬が楽しすぎてずっとハイテンションだった。ここに来てから暗い顔ばかり見ていた反動もあって笑顔を見せてくれるようになったのが本当に嬉しかった。ちなみにアイズは肉入りは邪道と言っているめんどくさい女のため美味しいと感じながらも複雑だった。
そしてそれは偶然だった
「あ」
「ん?」
「え?」
「「「ん?」」」
その場にヘスティア・ファミリア一同+2が現れたのは
「あ!」
モニカは現状を理解して冷や汗を流した
何故なら兜を被っておらず、母親と瓜二つの顔が丸出しだったからだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「「あのバカ!」」」
「よりにもよってアイ母様似のモニカと会ってしまうなんて!」
ツヅミ
「一番ややこしい」
ピアノ
「え?え?どういうこと?」
ティオナはみんなが焦る理由が分からなかった。確かにアイズに瓜二つの美少女が目の前にいるのは大事かもしれないが、何故そこまで焦るのかが分からなかった
彼らが焦っているのは【アイズが現時点での本命】だからだ、アイズはベルに想いを寄せる女達にとって越えられない壁と言ってもいい、そんな彼女と瓜二つの存在が現れてしまったら、、、、、、
「け、け、け、剣姫様が二人ぃぃぃ!!?」
はい☆こうなります♡
叫んだのはリリルカだった。自分の想い人の心の中に常にいる最大最強の恋敵が2人いるなど理不尽の沼に叩き落とされたような気分になるのは仕方なかった。
他の女たちも似たような反応をしている
「!!?!!?」
そして事情を知っているリューはモニカの姿を初めてみた。ロキ・ファミリアのホームの前に立ったはいいが、血を吐きまくる同胞(レフィーヤ)を見てしまい、アイズの娘なんて見てしまったら自分もこうなるのでは!?と思った瞬間、体調を崩してしまったため、逃げるようにその場を立ち去ったので、まだ会ってはいなかったのだ
「「あ、えっと、あの〜」」
親子揃ってテンパり同じリアクションをする。尾行していた彼らもどうするべきか?と思っていると
「ヘスティア様?」
春姫がとある違和感に気づいた。
いの一番に騒ぐはずのヘスティアの声が聞こえないのだ。下を向いて主神の顔をよく見てみると、瞳孔が開くまで目を開けて驚愕の表情をしている。この状況なら仕方ないかもしれないが、自分たちとは何かが違うような気がした。
そして
「え?ヘスティア様!?」
「ちょ!どうしました!?」
「ヘスティア様!?」
ツカツカとヘスティアはモニカのほうに歩いていく、その様子にただならぬ物を感じた一同は声をかけて止めるが止まらない、後ろで尾行している彼らも様子がおかしい事に気づき、その一挙手一投足に目を向けた。喧嘩になるなら止めなくてはと全員が思っていた
そしてモニカの前に立ったヘスティアは
キュッ
両手でモニカの右手首を掴んだ
「神様?」
掴まれたモニカは気づいた。震えている
震えていることにほかの者たちも気づいた
そして
「なんだい、、これは」
「え?」
ヘスティアの喉から絞り出すような声が響く
「どういうことだい、、、ありえない」
ヘスティアの顔は信じられないという顔をしていた
「あり得るはずがないんだ、、、、けど、、、」
ヘスティアはモニカに視線を合わせた
「間違えるはずがないんだ、、、」
その顔は言葉では形容できない表情をしていた
「ありえない、、、僕が間違ってると思うのが普通だ」
「けど間違いないんだ」
「間違えるわけがないんだ」
「神である全知がそれを否定している」
「けれど僕の全部がそうだと言っている」
「おかしくなる!いや、もうおかしくなってるのか?」
「いや、今はおかしい事が正常なんだ」
「そうでなくちゃ説明がつかない!」
「そうでも思わなきゃ本当におかしくなる!」
「認めたくないし知りたくないし考えたくもない」
「けど、、、僕にはわかるんだ、、、、」
「君は確かにここに『在る』」
君はベル君の娘なのか?
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
モニカの瞳孔が開かれる。彼女の脳裏に駆け巡ったのは衝撃、動揺、そして『納得』彼女は目の前の女神をよく知っている。彼女達は女神の慈愛を知っている。生まれた時からずっと庇護されてきたのだから
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何だ?今なんと言った?娘?ベルの?
近くで聞いていた一同はあまりの支離滅裂な展開に理解が追いつかない、事情を知る彼らでさえ時を止めていた
何の情報も無しに
たった人目で
全てを見抜かれてしまった
何故なら彼女は女神だから
庇護と慈愛の女神
ベル・クラネルの子供達が神様と慕う女神
ヘスティアなのだから
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ!!!
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
だがそんな衝撃はお構いなしに、奴らは襲ってきた。
卵から羽化した子供の『モスキート』が群体となってこちらにやってきたのだ。全員が衝撃に身を固めているというのに
だが
「前に出るぞみんな!」
シュバル
「「「「!」」」」
兎の指揮官(ラビット・メーカー)の二つ名を持つシュバルがなによりも誰よりも意識をもとに戻し、そして命令した
「バレちまったもんは仕方ねぇ!戦うぞ!俺たちの説明はリヴェリア様お願い!」
「ま!待て!」
「俺たちは戦う!俺たちより強いアンタが説明しながら俺たちと一緒に戦う!一番適材適所だろ!」
「無茶を言うな!」
「行くぞ!」
そして彼らは飛び出した
ヘスティア・ファミリア一同の前に
モンスターが来たことで臨戦態勢となっていた彼らだが
突然後ろから現れた集団に驚き
そして目を見張った
何故なら『兎』の面影が在る集団だったからだ
「色々めんどくさいタイミングで現れやがって」
アコーディオ
「だけどもうコソコソしなくていいのは大きいな」
トライア
「神様の慈愛を甘く見てました」
ツヅミ
「誰が想像できるかよこんな展開」
シュバル
「神様はやっぱり神様」
ピアノ
「守ろう!今は全力で!」
リコ
「モニカ!アホ面をやめてとっとと構えろ!」
メロ
「は!はい!」
モニカ
「「「「「「「行くぞ!!!」」」」」」」
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「ヒィ〜!助けて!」
卵が羽化した周辺でたまたまそこにいた運のなき者たち
碌な武器もなく自衛すら出来ない彼らは
ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!!
「「「「え?」」」」
助けられた
「何だ!?何が起こった!?」
「虫どもがいきなり灰になって、、、、」
「倒された?」
「誰に!?」
状況が理解できないなか、一人の『目がいい冒険者』が一瞬その瞳にあるものを捉えていた
目に入ったのは人影
恐らくその人影が驚異的な速さでモンスターを倒したのだろう
そしてすぐに何処かへ行ってしまった
顔は見えなかった
辛うじて見えたのは人影が装備していた『得物』
黒いナイフ
そして
「アレは、、、、、、、メリケンサック?」