モンスターの卵が羽化して人々を襲っている
その緊急事態の中でシュバルは思考していた
今は何をやるべきか?何から片付けるべきか?綻びは何処か?
この状況をどう利益に変えるか?
「全員!各々の母に付け!いない奴はそれ以外に付け!」
「「「「「了解!」」」」」
シュバルはこの状況すら利用することにした
曰く
(得体のしれない俺たちの言葉なんて神様が嘘じゃないと言っても簡単に信じるわけがない、恋愛関係による独占が失敗したとなったら尚更感情が先ばしって即否定するだろうよ。でも一緒に戦ったなら距離が縮まって多少の心は開いてくれるはずだ。なんやかんやお人好しの集まりだしな)
恐らくこの戦いが終わったらやる事になる説明会を少しでも楽にするための考えだった
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「命ちゃん!」
「春姫殿!後ろに!」
命が自分の仕事であるかのように春姫の前に立つ。来るのは虫型モンスターの群体、かなり小さいので刀で相手をするより重力魔法で一気にやったほうが効率的だが、詠唱の時間を稼ぐ必要が在る。
「動きをつかんでから!」
「フツノミタマの詠唱を!!」
「!?」
だが突然二人の目の前に現れ、守るようにその背を自分たちに向けるのは『狐人』の青年。2人は、特に命はその青年の顔を見て一瞬硬直してしまうが、目の前にモンスターがいるのですぐに立て直す。
その顔は、その金髪は、自分の友とあまりにも似通っていたから
「僕が詠唱の時間を稼ぎながら援護します!」
そして目の前の狐人の青年は『刀』を抜刀して迫りくる虫たちを的確に刻んでいく、動きを見ればすぐにわかった、目の前の青年は自分よりも強者のレベル4だと
「かあ、、、、春姫さん!レベルブーストを使ってください!守りますから!」
「は、はい!?」
春姫は突然話しかけられ裏返った声をしながらその声に応える。確かに今は非常時、出し惜しみなどできないと春姫も命と共に詠唱を始めた
ただその間ずっと気がかりだった
目の前の青年が 突然現れた青年が
今も自分を守ってくれている青年が
あまりにも
想い人の『目』と似ていたから
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「俺たちは未来から来た冒険者、そんでベル・クラネルは未来でハーレムを作った、俺達は全員その酒池肉林で生まれたベル・クラネルの子供たち。フレーズだけ覚えとけ考えるのは後でいい、じゃそういうことでアンタは俺が護衛する」
「、、、、、、、待て待て待て待て!!!」
突然現れた槍を携えたハーフ・パルゥムの青年が自分を守るように前に立ったかと思えば奇妙奇天烈を越えた混沌混雑煩雑のワードをぶち込まれてどうすればいいかまるでわからない、タダでさえ白髪の剣姫がいてヘスティアのベルの娘という言葉に頭が混乱しているというのに
「未来!?何言っているのですか!?ていうかハーレム!?子供!?もう一回言ってくださいもう一回!!!」
「俺の言葉を一回で覚えたならそれでいい、考えるのは後でいいって言ったし」
「考えさせなさいとりあえず!!」
「オラァ!」
「槍を振るう前に言葉を寄越せぇぇぇぇ!!!」
自分のオーバーヒートした脳みそなど歯牙にもかけず青年は襲ってきたモンスターの群体に槍を振るった。その姿を見ながらリリルカはその優れたオーバーヒートした頭で思考する。今の状況、意味不明なワード、圧倒的情報不足の中でリリルカは一体今何が起きているのかを思考する。そうしなければならないと本能が言っているから
(なんなんですかハーレムって!?未来って!?それにヘスティア様もなんですかベル様の娘って!?ホントだとしたらあんなに大きいはずが、、、、、、、、大きい?)
誰もが混乱するなかで、リリルカはぶち込まれたワードを一つずつ紐解いていく、そして繋ぎ合わせた言葉と目に焼き付いて離れない彼の『赤い目』が組み合わさった瞬間、心の奥の奥が反射するように自分の身体を動かして俯いていた首を正面に向けた
目の前には槍を振るうシュバルの背中
「、、、、、、、、、、、、、まさか」
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「杖は持ってないみたいだね」
「え!?」
カサンドラは自分の目の前に現れた少女に話しかけられて肩を震わせるが、彼女の顔を見てすぐにその震えは止まった。正確にはびっくりして身体が硬直したのだ。
何故なら目の前の少女は自分の想い人を女にしたような姿をしていたから
「目を離さないで、誰がケガしてもすぐに治せるように癒やせるように」
「は!はい!」
彼とは違う無表情な顔でありながら凛とする様は彼の勇姿を連想させる。モンスターの襲撃に恐れを抱きながらもそれが吹き飛ぶくらいカサンドラは目の前の少女に目を奪われていた
「いざって時は私が守るから」
(はわわ!ベルさんに似た女の子がイケメン!?)
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「目覚めよ(テンペスト)!!」
「運べ(テンペスト)!!」
「行くよ!リコ!」
「はい!」
アイズがモニカと、ティオナがリコと前に出てモンスターの群体に蹴散らしていく、その後ろで武器を構えるのはリヴェリアとアコーディオ、その細身の身体でありながら小型のモンスターなど相手にならないと武器で叩き落としていく、さらにその後ろには残りの一同、エイナやヘスティアたちがいた
「リヴェリア様、戦いながら説明をお願いします、皆さん混乱しているので」
「だから無茶を言うな!」
「り、リヴェリア様!?どうしてここに!?」
「エイナ、、少し待ってくれ!」
色々と無茶振りされながら、リヴェリアは戦闘と説明を並行詠唱するしかなく、振り回されぱなしだった。
すると
ボオオオォォォォォォォ!!!
「「「「「!?」」」」」
近くで炎が灯った。それは美しい赤い色でありながらモンスターを消滅させていく強さの証、純粋な戦火が火の粉となってその場を舞っていた
「はっ!」
その発生源は『不壊属性の長剣』
炎を纏った通常よりも長い剣がモンスターを鏖殺していく、その構えや戦い方は隣で戦っているエルフとあまりにも似ていた
(炎の付与!?アリーゼの魔法と同じ!!?)
そしてその事実になによりも驚いていたのはリューだった
実感なんてなかった 湧くわけがなかった
しかし今、目の前で、自分に通ずる戦い方をしているレベル5のハーフ・エルフがそこにいる。リューはこの時初めて明確に実感したのだ。
トライアは自分の息子であると
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戦闘が始まって『約2分』
第一級冒険者もいるので短時間の殲滅は問題なく進んでいるが、数が多かった。鳥くらいの大きさのモスキートが群体となって襲い来る様は鳥葬のようで、少し油断すれば食い千切られるのは目に見える状況
だが
「大方『理解した』ぜ」
「!」
シュバルがニヤリと笑みを浮かべてその笑みをリリルカは見た。シュバルのいう理解とは【動き・習性・行動予測】を記憶したということをなんとなく理解した。
「行くぞお前ら!」
その瞬間、シュバルは『スキル』を発動させる
指揮想呼(コマンド・コール)
リリルカと同じ指揮官として有用なスキルをシュバルは持っている。そのスキルを発動させてやるのは当然、指揮
それもただの指揮ではない
「上下下右左下右下上下右左下右左上右左上右左下上下上右左上右下上右左上下上右左右上上上右左右下上上右左右左上右左下下上右下上上上左」
「なっ!」
それは一瞬の目配せをした後に方向だけを伝えるシンプルだがあまりにも情報が少なすぎる指示とは言えない指示。
だが彼らにはそれでよかった
トライアが焼き祓いその取りこぼしをメロが刈り取り炎の圧で後ろに下がったモスキートをリコが足止めしてモニカが一気に屠る、そしてその間にできた隙間をツヅミとシュバルが埋める。その全ての動きが群体であるモスキートを包囲するように誘導されていてなおかつ殲滅の速さが全く落ちていない
リリルカの脳裏に浮かぶのはとある同胞の動き
あの時苦しめられて何とか攻略した無限の連携
「ブリンガルと同じ練度の連携!?それも七人で!?」
ヒーラーのピアノを除いた子供達七人による連携
ブリンガルの四重奏より多い七重奏
相手への理解と信頼と認知がなければ出来ないそれは間違いなく多くの時間を共にすることだけでは足りない、『血』の共鳴とも呼ぶべき動きだった。
(このモスキート、明らかに俺たちを狙って襲ってきてやがる)
そしてシュバルは短期間でモンスターの行動や習性の一部も理解し始めていた。
(多分、俺たちを、、、未来から来た俺たちを重点的に襲ってるのは、『最初』に抗戦したから、その匂いとかフェロモンとかを覚えられたのか?それに俺たちほどではないにしても母さん達にも意識を向けていることが多い、恐らく俺たちの母親だから匂いとかフェロモンとかが近いんだろうな。だとしたら歓楽街に向かわせたフルトと多分一緒にいるオルガも襲われてることになる。母親も狙いに定めたなら豊穣の女主人にも群体がいってるかもな)
槍を持って前線で戦いながら指揮官として冷静に状況を読み、盤上の駒のように一つ一つの情報を正確に理解して動かすのは母親譲りの頭脳があればこそだった。
シュバル・クラネル レベル3
仲間を指揮して仕留めさせる事をせず一人で戦い続けたなら今頃レベル4になっていた彼もまた逸材である
その時
「おい!?また来たぞ!」
「「「「「「!」」」」」」
殲滅しかかっていたモスキートの群体が再びやってきたのだ。恐らくほかのところに散らばっていたのがこちらにやってきたのだろう。
そして
「あれって!!?」
カサンドラが向かってくる群体の先端に何かを見た
それは人影
その周りにはモスキートが集まっている
そのせいでよく見えないがかすかに見えるのは『赤色』
近づいてくるたびにその姿が顕になる
「うグッ!」
エイナがその姿をはっきり見た瞬間、口元を押さえた
なぜなら
誰かが『食い千切られながら』こちらに走ってきているから
全員がそれを理解して助けようと動き出した瞬間
「フルトだやれ」
「ウラコス・ロア」
「「「「「え?」」」」」
どっかーーーーーーーん!!!
「「「「「ええええええええええ!!?」」」」」
何が起こったかというと、生きたまま食われてそれでも懸命にこちらに走ってきていた誰か諸共魔法で吹き飛ばした
「何をしている!?」
リヴェリアが死にかけて必死に喰われながら逃げている人間に向かって追い打ちをかけるように魔法をぶち込むというあまりにもあんまりな行いに怒りを乗せて注意しようとするが
「大丈夫、あいつは『自動治癒』かけてるから」
「!?」
シュバルの言葉に一瞬固まった。
『自動治癒(オートヒール)』身体が治っていく魔法
その言葉の意味を理解した瞬間、リヴェリアは吹き飛ばされた誰かを探す。その吹き飛ばされた誰かは床に転がっており周りで貪っていたモスキートも吹き飛ばされたのでその姿が露わになった。
上半身が赤く染まっており皮が剥かれて肉が裂けてさっき喰らった魔法のせいで一部が焦げていた。
しかしたちどころに『治っていく』
肉体の傷が治っていき顕になるのはとある治癒師に似通った男性の顔
「お〜いたいた〜☆」
先ほどまで生きたまま喰われていたのに何事もないように振る舞うのがフルト・クラネルだった
「あいつは大丈夫、『いの一番に突っ込んで貪られながらヘイトを稼ぐ』のがあいつのいつものやり方だから」
「はい!!?」
シュバルの隣にいたリリルカがさっきの発言に驚嘆の声を上げる。それはある種、人権やら尊厳やらをガン無視した行いだったから
「モンスターも生き物だからな。食欲が満たされれば動きが鈍る。だから自分の身体を差し出して食欲を解消して動きを鈍くした所を殺すもしくは仲間に殺してもらうっていうのがあいつの狩り方で」
「覚悟ガンギマリすぎでしょ!!?」
「おう、俺もそう思う」
どうやら第三者から見れば狂っているとしか言いようがない光景と所業でも彼らにとっては既に慣れたことらしい
「虫どもが集まってると思ったらやっぱりいたな!」
「あ、お帰りオルガ」
シュバルの隣にずっと離れていたオルガが舞い降りた。リリルカはアイシャとそっくりでありながら白髪赤目のアマゾネスの出現に再び思考を停止させた
シュバルは周囲を見渡す
十世長全員がそろった
モスキートの群体は包囲できるほどに減った
フルトとオルガの連れてきた群体も多くはない
現状を理解したシュバルは息を深く吸う
そして
「最後はパフォーマンスをして決めるぞ!構えろ!」
「「「「「「!」」」」」」
シュバルの声に全員が反応して視線を集める
そして十世長はシュバルの考えに気付いた
この戦いが終わったらしなくてはならない説明会
その内容に少しでも信憑性と理解を持たせるためのパフォーマンス
シュバルが何をしようとしているのかがわかった
「よっしゃ!お母さん離れて!」
「お母さんも!」
「「え!!?」」
モニカとリコが各々の母親に後ろに下がるように言われる。そして残りの群体がその流れる連携で一箇所に集められる。その周りをヒーラーのピアノも入れた十世長の十人が包囲した。まるで陣を描くようにまるで何かが放たれるように正確な円が十人の立ち位置で作られていた
そしてシュバルが再び大きく息を吸った
「刮目しやがれ!これが俺たちが未来から来たっていう証だ!!」
十世長全員が予備の武器である『ナイフ』に手をかけた
全員がナイフを同じように持ち
全員が同じ構えを取る
その瞬間
ボオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!!!
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
全員の身体が【燃えた】
聖火愛加
父親から受け継がれし炎
全員が親からもらった肉体から炎を噴き出した
そしてその炎はナイフに集まっていく
「これは」
ヘスティアが気付いた。それは戦争遊戯で見たベルの一撃であり、英雄の一撃と同じ構えだと
最愛の眷属と同じ炎、同じ構え、そして同じ背中が十つあるというその現実離れした光景に全員が目を奪われていた
前衛だろうとヒーラーだろうと関係ない
レベルですら関係ない
必要なのは想い 真っ直ぐな意思
他人に自分を委ねない自分の心
それを受け継いだのならば、自分の身を焼くことでそれは再現できるのだ
そして十人が一斉にその技を放った
偽現・聖火の英斬(ディオス・アルゴ・ウェスタ)!!!
「「「「「「「「「「燃えろ!」」」」」」」」」」
「どういうことだ?」
そこは豊穣の女主人、その周囲には戦闘の跡がありながらも店本体は無傷、戦った者の頑張りが目に見える成果
モスキートはこの時代に来る前に十世長と戦った
そしてそのフェロモンを覚えた
その記憶は卵にも受け継がれ覚えたフェロモンに向かって羽根を伸ばし本能のままに襲いかかった
メロとフルトの母親であるヘルンとヘイズは子供と似たフェロモンを持っていたので狙われた
モスキートの群体が店にやってきてエインヘリアル達が戦っていたその時
群体の半分が一瞬で塵となった
そして残りの半分はいきなり方向転換して店とは違う方向に飛んでいった
誰も知る由もないがそこには【覚えたフェロモンに近いフェロモンを持つ人間】がいた
突然戦いが終わったエインヘリアル達は意味がわからなかった
誰も目で追えていなかったからだ
誰が半分の群体を倒したかわからなかった
ただ1人を除いて
「何者だ、あいつは、、、」
店の護衛をしていたレベル6の冒険者アレン・フローメル
彼は状況を大雑把であるが理解した。恐らく群体の半分を倒した誰かは店から引き離すために群体を自分に引きつけて離れていったのだろうと
アレンは群体を引きつけて店から離れていく人影を目にしていた。すぐに後を追って正体を突き止めたい衝動にかられるが、ここには護衛対象と最愛の妹がいるので離れられるはずもなかった
ただその機嫌はぶっちゃけ悪かった
凄まじい速さだったからだ
「あの黒いナイフは、、、それにアレは、メリケンサックか?」
離れていく人影の姿に正確に思い出す。片手に持っていた見覚えのあるナイフ、そして反対の手に装着していたメリケンサック
そして
その近くに【複数人】がいたのも目撃していた
次の話でイレギュラー・チルドレンの前半を終わりとします
また新しい『ネームド』も出る予定です
どうかお楽しみください