フレイヤ・ファミリアは主神フレイヤの為なら全てを捧げる。それは前提、彼ら彼女らと接する時はそれを常に考えていかなければならない、同じエインヘリアルでなければその心境を想像することは難しいだろう。
だが『ベル』は別と言っていい
何故なら彼は『理解』しているから
一時期だろうと理不尽があろうと彼は『フレイヤ・ファミリアの一員』の立場にあったのだから
彼ら彼女らの女神フレイヤに対する忠誠も信愛も他の人達よりも近くで見ているのだから、その身で、その目で、その耳で、その心で、裏表のない関心を向けてくれる事は、向けてくれた側にとっては、心地のいいものなのかもしれない
そんなベルが出した条件は『今までの人生を変えろ』とも言うべきものだった。
意味わかって言ってんのか?そんな顔を全員がしていた。いつも冷静なヘディンも後ろでひっそりと隠れていたヘグニも他のファミリア故に細かいことを知らないヘスティアもその言葉の意味を理解している。だからこそ、信じられなかった。
最初に口を開いたのは四兄弟だった。
「あの女たちにとってはたとえ期限があろうと積み上げてきたもの全部捨てろと言っているのと同義だな」
「受けるわけがないと言いたいが、受けたからこの二人が産まれたんだから、受けたんだろうな」
「それも暗黒爆発アホアホ生命体みたいなヘルンとヘイズがだ」
「特に関心があるわけじゃないが、同じファミリアとしてフレイヤ様への忠誠を揺らがせる女が一人もいないのは断言できる」
「「「「ていうかベルが考えた条件なのか?」」」」
彼らの関心はそこにあった。もはやベルが呆れるほど甘い性格なのは分かりきっている、なんとかしようとするほうが馬鹿だと思えるほどにはだ、そんなベルが出した条件が『改宗』
排他性が根付いている彼女らに女神の寵愛そのものである恩恵に手をかけさせることは侮辱にも等しい、フレイヤ以外の女の機微など微塵もわからない彼らでもそこだけはわかる。
だからこそ気になったのだ
大げさかもしれないが自分たちの理解者である彼がその条件を突きつけたことを
「僕抜きで話す話じゃないよ、メロ」
「「「「「「!」」」」」」
いつの間にか屋根の上に未来のベルが飛び乗っていた。突然の本人強襲に皆の目が集まる中、メロは少し気まずそうに顔を下げていた。
「僕に気を使ってくれたのは嬉しいけど、話すなら自分で話すよ、、、そういうところ、ホントにヘルンに似てるね」
「、、、、はぁ、、あのめんどくさい母に似てると言われたら黙るしかないな」
メロが諦めるように天を仰ぎ、ため息をついた。そしてベルはその場にいるみんなに目を向けて口を開く
「全部僕が考えて僕が伝えたことです。あの人達には、間違っても他人の意思で押された案なんて言えませんから、、、あの人達の『堕落』を促すものなら尚更」
『堕落』
ベルはその言葉をはっきりと口にした。そのことにヘスティアの目が見開かれて他の者達も眉をひそめる。
やはりベルは彼女たちを理解している
そのうえで上記の条件を突きつけたのだ
自分の人生で主役をやるのを諦めろ
自分の人生の脇役になれ
そんな言葉とほぼ同義の言葉
他人をどこまでも優先してしまう誰よりも甘いベルがだ
「遠まわしに自分に従えって言ったんだな」
遠慮などかけらもないアレンのひと言がその場に響く、その言葉にヘスティアは肩を震わせるが肝心のベルは予想していたように苦笑いを浮かべた。
「はい、そのつもりで言いました。あの人達に中途半端はできませんから」
「、、、、、、他人が何を選ぼうが知ったこっちゃねぇが、あの方の寵愛を受けて全てを捧げていたアイツラが従ったってのか?」
アレンの発言はその場の誰もが考えていることだった。たとえ相手がベルであっても愛に生きる勇士である彼女達がフレイヤ以外の存在に従うイメージなどわかなかった。
全員がベルの発言を待っていると、ベルは真剣な顔で言葉を綴った
それもかなり切れ味のある言葉を
「飲めないなら『いらないって』はっきり言葉にしましたから」
「「「「「「!?」」」」」」
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英雄となった 自分の力で
自分の意志で英雄となった 他者の力も借りて
時に利用され 時に騙され 時に定められ
それでも自分の意志で英雄となった
だけど ソレを理解してくれる者ばかりでは無い
ベルを知らない者たちからすれば
ベルの偉業は まるで脚色された英雄譚
アレやコレやと物語が作られて
いつしか大衆の流れに飲み込まれる
その本質や想いを理解されずに
それもまた英雄の宿命
仕方の無いこと
英雄になったからこそ気づいた見えない枷
ベルは
自由な人生を送る為に
望んだ人生を送る為に
自分の目で見て 自分で考えて 自分で選んで
周りに意思を委ねない生き方に進んだ
夢を見るのは自分の意志で
自分以外に夢など見せない
夢を見せるのは自ら選んだ者のみ
選ばなかった者たちは真摯に拒絶された
ベルが選んで選ばれた者たちは魅せられた
自分の生き様についてこいと
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「あの人達は僕が寝ていた半年間の間にすでに変わっていました」
「お前が昏睡していた期間のことか?」
「はい」
ベルが黒竜を倒していつ目覚めるかわからなかった半年間の間にすでに変化は始まっていた。
「僕が黒竜を倒したことであの人達の心境に変化が産まれた」
黒竜との戦いがどんなものだったか想像できないが、想像を絶する地獄だということは理解できる。だがそれでも彼女達がベルの提案を受け入れるのかがわからなかった
「あの人たちは僕の戦いを見て『牙が抜けた』と言いました」
「、、、、、つまり、、自分が以下に矮小かを理解したと?」
「ちょっ!言い方!」
「はい、そうみたいです。本人に聞きましたから」
「!」
言うなれば突きつけられた。自分では英雄になれないことに、女神の寵愛を受けられる特別になんてなれないことに、そしてその現実を目の当たりにして図らずしも『心境の中で上下が定まった』自分は選ぶ側なんかじゃないと、自分は運が良かっただけなのだと
『勇士』としての敗北ならまた挑めばいい
だが『人間』としての敗北は、死して蘇る勇士の心を陥落させた
故に強くなることに『燃え尽きた』
だがそれは『ベルを愛した』という前提があればこその話
結局、『愛』に命を賭けた彼女達を動かすことができるのは、やはり『愛』だけ
「そして母さん達は眠っていた半年間の間にそれはそれは『寂しがった』らしい」
フルトが彼女たちに起こったことを話す
彼女達はその『寂しさ』を感じたことで、改めてベルに心を奪われたのだということを心から理解した。愛は手に入れられない時、そして近づけない時、頭はそれをひたすらに欲しがり心が飢えてしまう。
近くにいるのに話せない、そばにいるのに遠い、当たり前の日々が渇く、触れても彼を感じれない、話したい、話してほしい、なのにそれが叶わない。
誰もいない一人の時に誰もが涙を流していた
「僕は知らないうちに、人の人生に『完結』を叩きつけていた」
挫折でもなければ、自棄でもない、思考放棄のヤケクソでもない、彼女達は本当の意味で強くなることに冷めてしまった。ベルの大きさを理解してしまったことで、もう前の自分には戻れなかった。
「だからこそ、僕が責任を持ってはっきりと『介錯』しました」
故に彼女達に道を与えた。自分の人生に通ずる道を、誰よりも厳しく誰よりも公平に、彼女達に叩きつけた
ここまでの話を聞いて彼らは何を思っただろう
ヘスティアがベルの『決断』の意味をいち早く察した。そして他の者達も『ベル』が『決断』した意味にすぐに気づく
それは、ベルが覚悟を持ってその言葉を口にしたこと
ベルは嘘がつけない、それどころが人を陥れる言葉を口に出来ない、たとえそれが一時期必要なものだと分かっていても、たとえそれが人を救うために必要なプロセスでも、ベルは人を傷つける言葉を簡単に口になどできない
救出作戦で寄生されたティオナに向かって救うためとはいえ暴言を苦悩して吐いたのがそのさしたる例
親しい女たちに『いらない』といったとき、どれほどの勇気と覚悟を持って言葉にしたのか想像出来ない
ベルは本気で自分の人生を考えていると理解した
「フレイヤ様に全てを捧げた状態で、貴様にも全てを捧げるようにしろと、女どもに決断させたのだな」
「はい、師匠」
状況を速攻で言語化してベルと女たちの間に起こったことを何の気遣いもなく口に出したヘディンも少し以外そうだった。ベルの甘さを人より知っているからだ。
「つまり、黒竜との戦いで『人としての器最強状態』になった君を見た女達は自分の雑魚さ加減、そして自分の器が小さい事を知ってしまった」
「更に半年の間お前と離れていた『寂しさ』が女たちの心を摩耗させ心境の変化に拍車をかけた」
「そして最後に『俺様系と同類』な生き方をお前が目指すと決めて、女達はそれに巻き込まれ」
「フレイヤ様への愛をそのままに自分にも愛を捧げろという論理めちゃくちゃオーダーをお前は突きつけたと?」
「はい、否定しません」
「「「「うわぁー.....魔王」」」」
引き気味ではあるが、あの女たちをぶった斬るならそれほどの事が必要だったのだろう。どんなに円満な夫婦だろうと最低限のヒエラルキーは存在する。人間味があることにこだわりがあるなら尚更
「ベル君は、、、大丈夫なのかい?」
ヘスティアが心配をあらわにした顔でベルを見る。『それでよかったのか?』という質問を一瞬考えついたが、そんな質問のどが裂けても言えるはずがない、何故ならその決断による未来が今目の前にいる『子供達』なのだから
「その時は大丈夫じゃありませんでしたね、のどから言葉を捻り出して言葉にするのは、正直命がけでした」
「ベルくん、、、、」
「、、、でもそのおかげでこの子たちに会えた」
「「「!」」」
ベルはフルトとメロの頭を両手で掴み少し強くそれで優しく小動物を愛でるかのようにワシャワシャと撫でる。メロは恥ずかしそうにして俯き、フルトは恍惚な表情で両指を合わせてエセ祈りのポーズをした。
「どんな子供たちが生まれてどう育つかなんて全然分からなかったけど、それが大変な道だということは、所帯を持つ前からわかってました。だからこの生き方に一切の妥協はしないと決めたんです。父親として家族の一番頼れる存在であり続けるために」
「女たちを貴様のエゴに巻き込んでもか」
「ヘディン!」
「えぇ巻き込みました。僕は悪い男です。だけどそれくらいの悪意がないと、大人として前には進めない」
純朴だったベルは悪意の使い方を覚えた。元から悪者になる覚悟を持っているベルからすれば、それは難しいことではなかったのかもしれない、ベルの言葉に載せられた覚悟に皆が魅せられた。
「そうか、織り込み済みならいい」
「「「「無作法エルフ」」」」
「ふふっ」
「死ねパルゥム、そして何故笑ったバカ弟子」
ベルの言葉を聞いて納得した。一瞬、女達はフレイヤへの愛を諦めたのかと思ったがそうではない、彼女達は一人の人間として一人の女として一人の母として、責任ある立場に就いただけ、自分の子を蔑ろにするような女はベルにもフレイヤにも拒絶されるから、たとえベルに人生を委ねる道になろうとも、その愛は失われてはいないのだろう。
そしてこんなこと恥ずかしくて口に出来ないが、ベルが相手なら大丈夫なのだろう。ベルは優しくて真面目で強いから、したたかさも身につけた彼なら安心して支えてもらうことが出来るのだと
自分の人生を背負った女たちの人生と共に前進する
それは今もなお変わっていない
「聞いていいかなベル君?」
「神様?」
「「んっ?」」
メロ&フルト
「一つ聞きたいんだけど、ベルくんの話じゃ、、その、、ベルくんのお嫁さんになったフレイヤの子たちはそれ相応の変化をしてるんだよね?」
「はい、そうですけど」
「じゃあ聞くけどさ、もしも、、もしもだよ」
未来のお嫁さんたちがこの時代の自分達を見たらどう思う?
「ベルくん?」
「「「「ベル?」」」」
「おい何を思考している」
「父さん?」
メロ
「くっ、、、ぷぷっ」
フルト
「ふぅ~」
((((((めっちゃ考えてる))))))
ヘスティアの思わぬ質問にベルは思考の海にダイブする。もしも未来の妻達がこの時代の妻達に出会ったら?頭に浮かぶのは愛してやまない彼女達の日頃の言動、過去とは違う距離のさしたる変化
フルトはある程度の想像がついたのか笑いをこらえている
もしそうなったら、、、、、、
ベル、、、あの、、、弟が欲しいとディディが
ベル〜、今気づいたんですけど、、、私貴方にならどんなに傷つけられてもいいです
なんかイルデの視線が最近怖くて、私なにかしたかなぁベルぅ
同じくらい触られてもま、、、コホンコホンそうされてるはずなのにロナの胸だけが大きくなってる気がするんですけど貴方はどう思いますかベル、、、、ごめんなさい!今のは忘れて!!
え!ガーターベルトのプレゼント!?夫婦円満の秘訣!?そんなの神様たちの悪ふざけに決まってるでしょ!!変なこと吹き込まれないで!もう!、、、え?自分の意志で?贈りたい?、、、、、いや、、、まぁ、、、だったら別に、、いいのぉ、、、かな?
※全てベッドの上での会話
「膝から崩れ落ちて『ずっとこんな風に生きたかったよ』といって壊れた泣き笑いを始めるでしょうね」
その赤い目を罪悪感と気まずさと自己嫌悪に黒く染めて自分自身を失笑するような声を出した。メロは口をパカリと空けて冷や汗を垂らした、フルトは腹を抱えて爆笑した
「「「「「えぇー」」」」」